|
テキスト学習の弊害は、所見問題に手が出ないことです。
ある地方のコオロギを使って、次のような実験をしました。ただし、このコオロギは9月の中ごろに卵を産むことがわかっています。
<実験>
うまれてすぐの卵を野外から数多く採集し、10℃以上に保って育てた結果、卵がかえるまでに、次の3つの段階があることがわかった。
◇第1段階◇ 卵の内部でからだが作られていく変化が見られる。
◇第2段階◇ 卵の内部のようすに変化が見られない。
◇第3段階◇ 卵の内部でからだの成長が見られる。
<結果1>
A)第1段階と第2段階の長さの和は、卵によってまちまちで、最も短いので3か月、最も長いもので5か月だった。
B)第3段階の長さはどの卵も同じで、1か月だった。
次に、飼育中に温度を下げ、10℃より低い温度において実験を行った。
<結果2>
C)第1段階と第3段階の卵は、内部の変化や成長は見られなくなり、1か月以内に死んでしまった。
D)第2段階の卵は、10℃よりも低い温度に保った後、再び10℃以上にすると、やがて第3段階に入り、卵はかえった。
(1) 10℃以上に保って育てた卵は、何月にかえりましたか。正しいものを次のア~オから選び、記号で答えなさい。
ア.10月~12月
イ.11月~1月
ウ.12月~2月
エ.1月~3月
オ.2月~4月
(2) 実際、野外においては1年を通して気温が10℃をこえたままであることはありません。この地方の各月の平均気温を調べたところ、以下の表のようになりました。これから、野外では、卵はいつかえると予想できますか。最も適当なものを次のア~オから選び、記号で答えなさい。
ア.2月
イ.4月
ウ.6月
エ.8月
オ.10月
ありません。
(1) エ
(2) ウ
(1) 気温が10℃以上とあるので、実験結果の A) と B) を利用すればよいのです。第1段階と第2段階の和が3ヶ月~5ヶ月、かつ第3段階は1ヶ月なので、卵がかえるまでに必要となる時間は4ヶ月~6ヶ月です。
(2) 実際の野外では、表を見てわかるとおり気温が10℃を下回ってしまう月が存在します。つまり実験結果の C) や D) も考慮に入れなくてはなりません。
ここで、C) や D) からわかることとしては次の2点です。
・・・第1段階、第3段階の卵の状態では10℃以下の気温の中では死んでしまうこと。
・・・第2段階の状態で10℃以下の気温の中に入った場合、再び気温が10℃をこえるまで卵は保たれ、その後第3段階に入ること。
これより、9月以降に気温が10℃を下回る11月を境に、次の3つのパターンを考えます。
パターン1 )
11月に入った段階で第1段階だった卵…死んでしまいます。
パターン2 )
11月に入る前に第2段階に入った卵…その状態のまま保たれ、翌年の5月に第3段階に入ります。
パターン3 )
11画月に入る前に第3段階に入った卵…ありえません(少なくとも3ヶ月必要です)。
以上のことから、野外でかえる卵は、第2段階のまま冬を越えたBパターンのものしかありえず、その結果翌年の5月に第3段階に入り、6月にかえることがわかります。
さて、この問題を解くために「市販のテキストに載っているような詰め込み型の知識」が必要でしょうか。
おそらく、与えられた条件を精査することになれない受験生こそ、頭が真っ白になる可能性の高い問題です。近年の中学入試で問われている本当の学力を知ってください。
※ちなみに、テキスト学習ではコオロギの冬越しが「卵」であることは基本知識です。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------
~2箇所でブログランキングに参加しています~
1.
2.
-------------------------------------------------------------------------------------------------------
ところで、こんなのはじめました。
参考書選びの参考にご利用ください。
ロジム2階参考書コーナー