2008年08月11日

限界を考えることは、意外と難しいものです。 2008-08-11



限界を考えることは、意外と難しいものです。


正方形の向かい合う辺の真ん中の点どうしを結ぶと、2つの合同な長方形に分割できます。

さらに、その長方形の長い方の辺の真ん中の点どうしを結ぶことで、右の図のように正方形を
作ることができます。そして、これを1回の「操作」と呼ぶことにします。
 下の図は、1辺が1cmの正方形について、この操作を3回繰り返したものです。これについ
て次の問いに答えなさい。

問1 
上の図で、3回までの操作を行ったときの最も小さな正方形(色つき部分)と、それ以外の部分の面積比を求めなさい。

問2 
1を順に半分にしていくと、1/2 、1/4 、1/8 、1/16 、1/32 、1/64 、…となります。このような数のならびで、1番目を 1/2 とし、順に番号をつけていきます。つまり 1/64  は6番目となります。この数のならびで、100番目までの数の和と1はどちらが大きいですか。上の図を参考にして考え、大きい方を答えなさい。



図の各正方形の1辺に注目してみましょう。


問1 1:63
問2 1


問1 

最も小さな正方形(色つき部分)ともとの大きな正方形は、相似比が1:8の正方形です。よって、面積比は1:64になるので、もとの正方形から最も小さな正方形(色つき部分)を除いた分は63になります。

問2 

実際、100番目の数を求めようとするのは、かなり厳しいでしょう(10番目でさえも、  ですから)。

100個もたしていくわけですから、1くらい平気で超えそうですが…。

さて、ここで図をもとに考えてみましょう。もとの1辺1cmの方形の下の辺を「操作」によってで

きた正方形ごとに見てみましょう。すると、順に、1/2、1/4、1/8、1/16、1/32、1/64、・・・・ となりますが、

どれだけ操作を繰り返して分割していっても、絶対にもとの正方形の1辺を超えることはありません。
よって、たとえ何番目まで足したとしても、1の方が大きいのです(極限の考えは除きます)。

まとめ
 「ひたすら足しまくるのだから、1くらい超えるだろう」という、常識(?)を覆す問題です。

高校数学でで極限を学べば、ある程度当たり前に感じることのできる内容ですが、小中学生には少々想像しがたいことでしょう。特に、問題のような図を与えず、ただ言葉や文章だけで出題したとすれば、おそらく全て(に限りなく近い数)の子供たちが1の方が小さいと答えるのではないでしょうか。

しかし、そんなイメージがわきにくいことも、図を用いてみるとあっけなく納得できるのです。図の力とは偉大ですね。
(どんなに1に近づこうとも、常にそのゴールまでの半分しか進めないというもどかしさがわかるはずです)
 この問題を通して、不思議だと思い、少しでも算数や数学に興味をもってもらえたら嬉しい、そんな一問です。




2008年08月06日

図を書いて試すのをためらったことはありませんか? 2008-08-04

タイトル 2008-06-23



図を書いて試すのをためらったことはありませんか?


 下の図のような「あみだくじ」があります。これは、たとえば一番左のAを選択した場合、図の太線をたどって左から4番目の位置に移動するものです。同じように、左から2番目のBを選択すれば、左から3番目に移動することがわかります。このあみだくじについて、次の問いに答えなさい。


問1 A~Iのうち、もとの位置よりも右に移るものはいくつありますか。
問2 このあみだくじをいくつか縦につなげて長いあみだくじを作ったところ、左から順にA、B、…、Iというように、はじめと同じ順番になりました。このとき、縦につなげたあみだくじは最も少なくていくつですか。


 ありません。


問1 5つ(A、B、C、E、G)
問2 12個



 ABCDEFGHIは、このあみだくじによって下の図のようにDFBAHCIGEと入れ替わります。
つまり、このあみだくじを1回通ることで、次の表のように整理できます。

つまり、左から1番目→4番目→1番目→…と、AとDは2回ごとにもとにもどります。
同様に、左から2番目→3番目→6番目→2番目→…と、BとDとFは3回ごとにもとにもどります。
さらに、左から5番目→9番目→7番目→8番目→5番目→…と、
EとGとHとIは4回ごとにもとにもどります。

以上より、2、3、4の最小公倍数である12回で、すべてもとにもどるのです。

まとめ
 誰もが一度は触れたことのあるであろう、あみだくじを題材にした問題です。それぞれの線が交差することで、一見複雑な動きをしていそうなあみだくじですが、要はただの入れ替え問題に他なりません。解説の表のとおり、どことどこが入れ替わるのかを整理すればさほど難しい問題ではないでしょう。

 しかし、実際にこの問題に取り組んだ子供たちは、多くが途中で諦めてしまいます(小学生に限らず、中学生でさえもです)。この理由は以下の2点が考えられます。

1)点や線が多く、面倒臭がって意欲が減退するであろうこと
2)図が大きいため、実際につなげて試すことが困難であろうこと

 過去にも、今週の一問で「調べ上げる」ことの重要性をお伝えしていますが、まさに本問も同様です。1)は学習姿勢に関係する避けがたい問題ではありますが、2)は工夫次第で容易に避けることのできる問題です。本問では、結局どこへ移動したのかさえ分かればよいので、下のように簡略した図で整理してみることが有効です(下の図では、例として1番目~3番目の移動先を図示しています)。このような工夫は、ぜひ経験から学び取って欲しいものです。



2008年07月28日

あたなは、図を疑う勇気がありますか。 2008-07-28




あたなは、図を疑う勇気がありますか。

 下の図のように、長さ100㎝の糸を図のような天井からつるし、100gのおもりをつけたふり子があります。はじめ、おもりをA点から静かにはなしたところ、おもりはA点とB点のあいだを往復しました。図のC点はおもりの一番低いところです。C点と天井の角であるD点の間の長さは50㎝です。このとき、図のACとBCの長さについて、正しいものを次のア~エから選び、記号で答えなさい。
 ア.ACはBCよりも長い。
イ.ACはBCよりも短い。
ウ.ACとBCの長さは同じである。
エ.特にきまりはないので、これだけではわからない。



ふり子の運動(軌道)は、あくまでも円の周回運動(の一部)です。




 ACの運動の中心は糸のつけ根です。また、BCの運動の中心はDです。
よって、右の図のように軌道を描いてみると、答えは明らかです。問題の図
ではAC=BCに見えますが、実際はちがうのです。ひっかけです。

まとめ
 入試問題には、図が多く登場します。そして、これらの図は、必ずしも正確に描かれているとは限りません。

「ん?」と思ったときほど、図の見た目で解答の見当をつけてしまいがちですが(こういう場合に限って、誤答であることが多い)、このような場合にこそ注意が必要です。

これは理科に限ったことではありません。たとえば算数の求角問題で、勝手に直角と思い込んでしまったり、勝手に二等辺三角形と決め付けてしまったり…ということも同じです。与えられていない条件には必ず根拠があるはずですから、その場合は必ずチェックする必要があるのです。

 本問の場合、条件としてAC=BCと与えられていれば悩むことはないのですが、そうではない以上、きちんと吟味しなければなりません。そのためには、背景に隠れた本質を理解しておくことが、やはり重要ですね。



2008年07月21日

整数問題は、(整数という限定があるにもかかわらず)避けられがちです。 2008-07-21



整数問題は、(整数という限定があるにもかかわらず)避けられがちです。


 0より大きい整数は、自然数とよばれます。そして、これらの自然数の多くは、連続したいくつかの自然数の和で表すことができます。たとえば、3=1+2、12=3+4+5、100=18+19+20+21+22などがその例です。これについて、次の問いに答えなさい。

(1) 98を連続した自然数の和で表すとどうなりますか。
(2) 1000以下の自然数の中で、連続したいくつかの自然数の和で表すことができないものはいくつありますか。


・奇数とはどのような自然数ですか?
・まったくイメージがわかなければ、とにかく調べることです。


(1) 11+12+13+14+15+16+17
(2) 10個



まず、偶数は2の倍数なので、必ず同じ自然数2つの和(□+□)で表すことができます。
これに対し、奇数は偶数よりも1大きい数(□+□+1)ですから、
必ず□+(□+1)という2つの連続した自然数で表すことが可能です。
 
また、奇数の倍数(3の倍数、5の倍数、7の倍数、…)は、
等しい奇数個の自然数で表すことができるので、以下のとおり必ず連続した自然数で表すことが可能です。


3個 □+□+□→(□-1)+□+(□+1)
5個 □+□+□+□+□→(□-2)+(□-1)+□+(□+1)+(□+2)
7個 □+□+□+□+□+□+□→(□-3)+(□-2)+(□-1)+□+(□+1)+(□+2)+(□+3)

など…

 つまり、連続した自然数で表すことができない数は、偶数の中で奇数の倍数ではないものとわかります。
よって連続した自然数で表すことができない数は、素因数分解したときに奇数を含んではいけないわけですから唯一偶数の素数である2ばかりをかけあわせた数となります(1を除く)。

(1) 98は7の倍数なので、14+14+14+14+14+14+14→11+12+13+14+15+16+17と表されます。
(2) 1、2、4、8、16、32、64、128、256、512の10個です。


まとめ

整数問題は、難しいと思われがちですが、それは「調べる」作業を怠っている証拠です。
整数の問題は、特にことわりがなくても何か決まりがあるものです(そうでなければ問題になリません)。

この作業を面倒くさいと思うか、面白いと思うかは、大きな差であるといえるでしょう。

「勉強はつまらない」ではなく、
「何かの答えは自ら導き出してこそ意味がある」ことこそが勉強であることを知ってほしいですね。




2008年07月14日

納得するには、それなりの知識が必要になります。 2008-07-14



納得するには、それなりの知識が必要になります。


 下の図のように、温度計を入れた3本の試験管A、B、Cに、それぞれ水、氷、砂を20gずつ入れ、水は0℃に、氷と砂は-10℃に冷やしました。そして、同じように加熱しながら時間と温度の変化を調べた結果、下の表のようになりました。表の中の空らんX~Zにあてはまる数値を、それぞれ答えなさい。


ヒントではありませんが、実はXの正答率が非常に低いです。

X…100
Y…0
Z…23



まずは、状態変化について説明します。

物質には、固体、液体、気体と3つの姿があり、これは温度によって変化していきます。
つまり、外から与えた熱エネルギーによって温度が上がっていき、姿を変化させられる温度になったところで変化しはじめるのです。

このとき、受け取ったすべての熱エネルギーを変化のために使うので、その間温度は一定になります。
つまり、受け取った熱エネルギーの使い道は、
(1)温度上昇、
(2)状態変化しかないということです(厳密には、発熱・吸熱が関係しています)。

いま、試験管A(水)に注目してみましょう。

最初0℃だったものが、規則的に変化していることがわかります。
水は、0℃で氷→水に変化し、100℃で水→水蒸気に変化します。
つまり、0℃から100℃の間では状態変化が起こらないため、受け取った熱エネルギーをすべて温度上昇に使っていることになります。

2分間で12℃ずつ上昇していることから、18分後は96+12=108としたいところですが、
100℃を越えてからは水→水蒸気の状態変化が起こることで、温度上昇は起こらなくなります。

すなわち、Xは、100℃となります。


続いて、試験管B(氷)に注目すると、

2分後から12分後まで0℃で一定であることがわかります。
これはまさに、氷→水の状態変化が起こっている証です。

ここで、16分後を見てみると、温度が11℃まで上昇しています。
つまり、すでに状態変化が終わり、温度上昇の段階に入ったということです。
水になってからは、試験管Aと同じ変化が起こるはずですから、2分間で12℃変化しなければなりません。

よって、Yは11-12=-1℃と考えられます。

しかし、12分後で0℃だった状態から下がることはあり得ないので、Yは0℃ということになります。


このグラフを見て分かるとおり、14分の段階ではまだ氷があり、
14分を過ぎてすべて水に変化し終えたあとで再び温度上昇がはじまったと考えられます。
すべて水に変化したあとであれば、試験管Aと全く同じ状態になるので、
2分間で12℃変化していきます。

よって、Zでは11+12=23℃を示すことになります。

まとめ

 まず、X…108、Y…-1、Z…22と誤答していませんか?

「水の状態変化」であることをあまり考慮せず、ただ表から「予想」した結果ではないでしょうか。

理科の実験では、データからの予想と、予め持っている知識を合わせなければ正答を導き出せない問題が多数あります。
(その力が重要視されている証拠です)

実験から得られた情報をもとに仮説を立て、それを論理的に証明する手順と同じですね。

 さて、その意味で最も大きな意味を持つのはXです。

表だけみれば明らかに108ですが、解説のとおりそうなるはずがありません。
しかし、小学校2年生くらいにこの表を見せ、Xに入るのは?と問えばおそらく全員が108と答えるでしょう。

そのようなはずがないと言われて「あっ!そうか」と思えるのは、水の状態変化についての知識を持っている者だけでしょう。
やはり、予備知識や周辺知識を持っている者とそうでない者とでは大きな差が開くようです。

ちなみに、大手進学塾のある選抜試験では、X、Y、Zどれも受験者の半分以上が上記のとおり誤答を導いていたようです。




2008年07月07日

公式は、理解してこそものになります。 2008-07-07



公式は、理解してこそものになります。


 図1のような幅2cmの長いテープをさまざまな角度で多くの部分に切り分け、長さの同じ切り口どうしをつないでいきます(のりしろは考えません)。つなぐときの内側の角はすすべて180°より小さくなるようにします。これをつないでいったところ、図2のように1周してちょうどつながりました。この図形の外周の長さは117cm、内周の長さは99cmです。

 

       
問1 図2の図形の面積を求めなさい。

問2 図2の図形を、下の図3のように外周と内周ちょうど真ん中のところで2つに切り分けました。このとき、外側の部分と内側の部分(色つき部分)の面積の比を求めなさい。


そもそも、このテープの長さは何cmでしょう?



問1 216cm2
問2 25:23



問1 
テープを切り分けたそれぞれの台形の上底と下底に注目します。
図2のつなぎ方では、これらのうちすべて短い方をつないで内周、すべて長い方をつないで外周が作られています。
つまり、すべての台形の上底と下底の合計(下の図でのア+イ)は、外周と内周の和の117cm+99cm=216cmとわかります。


             

よって、このテープの長さは、216cm÷2=108cmです。
図2の図形の面積は、テープ全体の面積なので、答えは2cm×108cm=216cm2となります。

問2 
外周と内周ちょうど真ん中のところで2つに切り分けた線は、テープを半分に切り分けた線になるので、その長さは108cmです。

ここで、図3の外側の部分、内側の部分ともに高さ1cmの台形の和と考えることができます。
まず、内側の部分は、
上底の和が99cm(図2の内周)、
下底の和が108cm(テープを切り分けた線)とわかります。

同様に、外側の部分は、
上底の和が108cm(テープを切り分けた線)、
下底の和が117cm(図2の外周)とわかります。

すべて高さの等しい台形ですから、面積の比は上底と下底の和で求められます。
これより、外側の部分:内側の部分=(99+108):(108+117)=25:23になります。


まとめ  問1について、最終的に面積を求めた式を思い返してみてください(2cm×108cm=216cm2)。
何か気付く ことがあるでしょうか? 

2cmはテープの幅、108cmはテープの長さでありちょうど真ん中で切り分けた線の 長さでもあります。
つまり、図2の図形の面積は、図形のちょうど真ん中の長さ(センターライン)に
テープの幅をかけて求められているのです。
(幅2cmのローラーで、108cmまっすぐ引けば、塗られた面積はもちろん 216cm2になりますね)

この公式は、中学入試の世界でセンターラインの公式とよばれ、
主に図形の転がり移 動の問題などで重宝されているものです。

しかし、このような公式もむやみやたらに使っていては、本来使るはずのない状況で使ってしまう危険性もあります。
どのような場合に、どのような部分を求めるために使う公式なのかを、日頃から意識していろいろな公式とつきあっていってほしいところです。




2008年06月30日

「当たり前」のことが、大きなヒントになることもあります。 2008-06-30



「当たり前」のことが、大きなヒントになることもあります。


 廊下や階段に、2ヶ所にあるスイッチで、点灯させたり消灯させたりできるライトがあります。下の図はそのしくみを再現した回路図を途中まで書いたものです。以下の約束にしたがって、回路図に導線を書き加えて完成させなさい。
 


ヒントがあったら面白くありません。




 落ち着いて考えてみましょう。2つのスイッチそれぞれでON、OFFができるわけですから、経路は2つなければなりません。1つの経路でスイッチが2つある場合、片方で回路を遮断してしまえば、他方でどのようにしても回路をつなげることはできるわけがありません。

よって、まず1本の道を作ります(上の図A-B)。
そして、切り替え用に別にもう1本の道を作ります(上の図のC-D)。
これにより、一方で回路を遮断してももう一方で回路をつなげることができるのです。


まとめ
 平成15年度入試で、渋谷教育学園幕張中で出題されて話題になった問題です。さらに、平成19年度入試において桐朋中と鴎友学園女子中で同時に出題されたことで一気に認知度が広がりました。時間をかけて考えれば気付くことですが、試験時間内で初見問題として処理するにはパニックに陥る対策甲斐のある問題です。

 この問題でのポイントは、「そもそも」の前提条件を考えることが必要です。解説にもあるとおり、スイッ
チ2つでON、OFFができるわけですから、経路は2つなければなりません。

たとえば算数でも、未知の1つの値を求めるためには、1つの式があれば十分ですが、未知の2つの値を求めるためには2つの式が必要です(消去算・代入算)。

このように、「そもそも」の前提条件に意識が向けられることは、問題を処理する大きな武器になることも少なくないのです。

この問題は理科の問題ですが、電流を題材にした「前提条件を意識して処理させる」という出題者の大きな意図が隠された良問といえるでしょう。



2008年06月23日

初見の問題は、難しいと思い込んでいませんか?2008-06-23

タイトル 2008-06-23



初見の問題は、難しいと思い込んでいませんか?


地層がいつごろできたものかは、地層の中に含まれている物質が長時間かかって別の物質に変化する性質を利用して求めることができます。そのような物質の中にウランとよばれる物質があり、ウランは7億年たつと、もとの重さの半分が鉛という物質に変化します。すなわち、
 100gのウランは7億年たつと50gが鉛に、さらに7億年たつと残り50gのウランのうち25gが鉛に変化することになります。

問題 
とある地層を調べると、ウランの重さが1.0g、ウランから変化したと考えられる鉛の重さが7.0gでした。この地層ができたのは、今からおよ そ何億年前ですか。答えが割り切れないときは、小数第一位を四捨五入して整数で答えなさい。



問題文から、ウランは7億年ごとに半分が鉛に変化していることがわかります。


21億年前



問題文から、ウランは7億年ごとに半分が鉛に変化していることがわかります。

例えば、最初のウランを1とすると、
[第1段階]7億年後にはウランが1/2になり、鉛が1/2できています。→ウラン:鉛=1:1   [第2段階]さらに7億年後には、1/2のウランが半分になるので1/2×1/2=1/4になり、そのときにできた1/4の鉛をあわせて鉛は全部で1/2+1/4=3/4できています。→ ウラン:鉛=1:3 

[第3段階]さらに7億年後には、1/4のウランが半分になるので1/4×1/2=1/8になり、そのときにできた1/8の鉛をあわせて鉛は全部で3/4+1/8=7/8できています。→ ウラン:鉛=1:7 

ここで、問題ではウラン1.0g、鉛が7.0gになっているので、上記から第3段階まで進んでいることがわかります。よって、答えは21億年前となります。

この問題では、7億年ごとにウランの半分が鉛に変わっていくわけですが、結果的にウランと鉛の合計量は変化しません。つまり、上記のように最初にウランが1あったとすれば、第2段階以降における鉛の量は、(1-ウランの量)で求めることができます。また、このことを利用すると次のような別解で比較的簡単に求められます。

[別解1]
さかのぼって考えると、鉛は1段階もどるごとに倍になっていくことがわかります。よって、結果の1段階前は鉛が1×2=2gあったことになるので、ウランに変化したのは2-1=1gとわかります。よって、ウランはこのとき7-1=6gあったことになります。このようにして、1段階ずつさかのぼってみると、

[別解2]
鉛とウランの合計量は一定であることに気づければ、この問題でははじめ鉛が1+7=8gあったことがわかります。1段階さかのぼるごとに鉛の量は2倍になっていきますから、1g→2g→4g→8gと3段階さかのぼればよいのです。よって、7億年×3=21億年前となります。

まとめ

 理科の問題の中にも、算数的処理をすることで楽になるものは決して少なくありません。

この問題が別解2 で処理できるならば、どれだけ入試で有利であるかは容易に想像できるでしょう。
しかし、それ以外の解法は 普段避けるべきなのでしょうか。

 いいえ、それはちがいます。

 たとえばこの問題のように、多くの生徒が初見と感じる問題に「最適な解法」がその場で即座に浮かぶはず がありません。そもそも、自分が最適と思った解法であっても、それを越える適当な解法が出てくることもそ う珍しいことではありません。

 要は、「知らない、わからない」という段階から、「調べる、確かめる」という段階を経て、正答を導き出す中で、何か規則を見出すことが非常に重要なことといえます。

これは時に、特別な解法を知っていて即答できることよりも絶大な力を発揮することが多いものです。

 近年、子供たちは間違えることを恐れて一発で(妙に美しく)正答を得ようとしなければならないと思い込んでいる姿が多く感じられます。そうではない、いかに多くの考え方を知るか、気付くか、ということが大切なのではないでしょうか。

 これこそ、受験(合格)が目的なのではなく、「成長」が目的である学習の軸であるといえるでしょう。



2008年06月16日

「当選確実」、あなたは確実に処理できますか? 2008-06-16 



「当選確実」、あなたは確実に処理できますか?


生徒数が480人の学校の生徒会で、4人の委員を決める選挙にA、B、C、D、E、F、Gの7人が立候補しました。開票数が410票になったところで1回目の中間集計を行うと、上位5名の得票数は下の表のとおりでした。この選挙で、無効票はなかったものとして、次の問いに答えなさい。


問1 第1回の中間集計で、当選確実となったのは誰ですか。すべて答えなさい。


問2 開票数が450票になったところで、2回目の中間集計を行ったところ、CとDを除いた5名の得票数は下の表のとおりでした。このとき、Cが当選確実であるためには、最低何票獲得している必要がありますか。


数多く得票すれば当選確実ですが、そのラインとなるのは、むしろ「どれだけ少ない票で当選するか」です。


問1 AとB
問2 76票


問1 



まず、当選確実となるライン(最低得票数)は、

「これ以上自分に票が入らないにもかかわらず、ギリギリ(最下位で)当選できる得票数」
を表します。



たとえば、得票数の多いAを考えてみます。

Aを当選させないとすれば、B、C、D、EがAの得票数をこえて101票ずつ獲得しなければなりません。

つまり4人で404票必要です。



しかし、これまでのB、C、D、Eの得票数と残りの票数を合わせても335票しかありませんから、これはありえません。



よって、Aの当選は確実です。





次に、Bを考えてみます。

Bが当選確実であるならば、Bにこれ以上票が入らなくても当選できるわけですから、

現時点で得票数が多いAも間違いなく当選確実になります。



よって、残り2人の枠を、CとDとEで争うことになります。ここで、C、D、E合わせて(86×3=)258票あればBを敗れますが、これまでのC、D、Eの得票数と残りの票数を合わせても250票にしかならないため、やはりBも当選確実です。





さらに、Cを考えてみます。この場合、残り1人の枠を、DとEで争うことになります。ここで、D、E合わせて(71×2=)142票あればCを敗れます。そして、これまでのD、Eの得票数と残りの票数を合わせると180票になるため、Cは当選確実とはいえません。


問2 

Cの当選確実を考えるのですから、AとBは無条件で当選確実です。



ここで、AとB以外の2人の枠をC、D、Eの3人で争うわけですが、これまでのこの3人の獲得票数と残り票数は合わせて225票です。



よって、(225÷3=)75票を越えれば、この3人の中での最下位はありえません。

よって、票以上獲得すれば、間違いなく当選できるのです。




まとめ


 この先、○○が△△票とったとすると…と、いろいろ考えすぎてしまいがちですが、

いかに必要な人物を見極めて、それらの得票数とまだ開票していない残りの票数を考えられるかが重要になります。



 当選確実について、解説にもあった次の2点が大切です。

当選確実となるラインは、「これ以上自分に票が入らないにもかかわらず、ギリギリ(最下位で)当選できる得票数」であること

誰かが当選確実であるならば、その人物よりも現時点で得票数が多い人物の間違いなく当選確実であること


 1つ1つ整理しながら、何度も何度も考えてみる価値のある問題です。



2008年06月09日

有名な心臓の問題、あなたは「何」で心房、心室を判断していますか?2008-06-09



有名な心臓の問題、あなたは「何」で心房、心室を判断していますか?


下の図は、ヒトの心臓を表したものです。これについて、次の問いに答えなさい。





問1 上の図のは、心臓の4つの部屋です。これについて、正しいものを次のア~エから選び、記号で答えなさい。






問2 上の図のA~Dは、心臓につながる4つの太い血管です。これについて、正しいものを次のア~クから選び、記号で答えなさい。






問3 下の図は、体循環と肺循環を模式的に表したものです。これについて、次の(1)、(2)に答えなさい。

(1) 上の図の血管Bは、下の図のどれにあたりますか。E~Hから選び、記号で答えなさい。

(2) 心臓が収縮するとき、の部屋と一緒に縮むのはどの部屋ですか。下の図のから選び、記号で答えなさい。







よく見る図、ここにこそ注意が必要です。


 問1 ウ

 問2 キ

 問3 (1)  (2) 


問1 

私たちがよく見る心臓の図は、決して自分のものではありません。その心臓の持ち主と向かい合った状態で見ているわけですから、左右が逆になってしまいます。また、上の部屋にあたるは、血液がもどる部屋で「心房」とよばれ、下の部屋にあたるは、血液を送り出す部屋で「心室」とよばれます。



問2 

血液が心臓から出ていくための血管は動脈とよばれ、血液の勢いが強いために分厚い壁でできた管になっています。一方で、血液が体の各部をまわった後、心臓に戻るための血管は静脈とよばれ、血液の勢いが弱いために薄い壁でできた管で、逆流を防ぐための弁があります。



また、ヒトの血液の循環には2種類あり、肺へ行って酸素を補給する循環と、体全身へ酸素を運ぶ循環に分けられ、それぞれ肺循環と体循環(大循環)とよばれます。



A 全身から心臓へもどる血液→静脈

B 全身へ心臓から出て行く血液→動脈

C へ心臓から出て行く血液→動脈

D から心臓へもどる血液→静脈



問3 

あくまで、模式図です。きちんと図をみて、整理しましょう。

E 全身から心臓へもどる血液→大静脈

F 肺へ心臓から出て行く血液→肺動脈

G 全身へ心臓から出て行く血液→大動脈

H 肺から心臓へもどる血液→肺静脈



また、心臓の収縮は、左右同時に心房、心室、心房、心室…と行われます。は全身から心臓に血液がもどる部屋なので右心房とわかります。つまり、左心房を選べばよいのです。ここで、肺から血液がもどる部屋ですから、となります。




まとめ


 心臓の図で、左右が逆になることは有名ですね。各部屋、各血管の名前もふくめた基本知識はさておき、この問題で一番注意して欲しいところは「模式図の罠」です。



 この問題の図のように、よく見る心臓の図では、上が心房、下が心室です。また、言い換えれば肺側が心房、その反対側が心室です。しかし、これは模式図でもあてはまるとは限りません。



 たとえば、この問題の模式図でいえば、上側であるが心房か? 肺側であるが心房か? いいえ、どちらも違います。血液がもどる部屋が心房ですから、でなければなりません。もちろん、心房はとなり合った部屋のはずですから違和感はありますが、模式図だからかまわないのです。






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