2006年01月30日

今週は武蔵中学理科入試より1問です。 2006-01-30



今週は武蔵中学理科入試より1問です。


 ある 干潟で,ある晴れた日に,「海水面の高さ」と「貝を食べに集まる鳥の数」を調べたところ,下のグラフ1とグラフ2のようになりました。

(1)干潮のとき,貝を食べに集まる鳥が少ないのはなぜだと思いますか。最もふさわしい理由を次の(ア)~(エ)の中から1つ選んで,記号を○で囲みなき い。
     
(ア) 鳥を集う動物がたくさんあらわれるから
(イ) ほとんどの貝が沖の方に行ってしまうから
(ウ) 貝がすっかり砂の中にもぐってしまうから
(エ) 貝が海水におおわれてしまい,鳥が見つけにくいから

(2)
 ① 鳥が貝を食べにたくさん集まるのは,海水面の高さがどのようなときですか。
 ② ①で答えた海水面の高さのときに.鳥がたくさん集まるのはなぜだと思いますか。 君の考えを書きなさい。
                          
  (武蔵中)


海水面が低いときは、エサがたくさんとれるため、鳥が多く干潟に下りてくるはずだ という短絡的な思考にと らわれてしまうとなかなか前に進みません。自分の常識ではなく、グラフを事実として思考を組み立てる能力が必要です。


(1) (ウ)
(2) 
①満潮と干潮の間の範囲で、海水面が浅いとき
②鳥にとってエサとなるカニ・貝殻等が干潟の表面近くに上がってくるため。


(1)
(2)

思考の流れとしては、 
水があふれているときは、鳥はもぐってエサをとることは難しいだろうから、水がなくなったときに鳥はエサを求めて集まるはずだ。 → いや、まてよ、グラ フを良く見ると水が最も干いたとき、集まる鳥の数は最大ではない・・・ → ??? → なんでだ??? 

こう考えると、
(ア)→鳥を襲う動物の登場を類推できる情報がない。
(イ)→貝が水深のある場所を求めて移動するとしたら、貝は最初から深い海にいればいいはずです。
(エ)→海水が干上がったときのことが問題になっています
はそれぞれ正解にはなりません。

貝は、海水が干上がると(≒水深が浅くなると)地表面近くにでてくるのですが、海水が干上ってしまうと、逆に砂の中にもぐりこんでしまい、鳥にとっては かえって見つけにくくなるということがグラフ・問題から類推できます。

(3)鳥が集まるのは、もちろんエサをとるためです。それを上手に説明できますか?という問題です。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・与えられた資料が事実です。あなたの常識は事実ではありません
・仮説をつくり、撤回し、また思考を組み立てる。この作業を面倒と思ってほしくない

与えられた前提(本問の場合はグラフ)から考察し、未知の結論に至る。多くの学問の基本であり、中学入試、とりわけ上位校と言われる学校で多く問われる能 力です。

ここで学校側が確認したいのが、
「あなたの主観ではなく、与えられた前提を事実として思考を組み立てられますか」
ということ。

ハイレベルな問題では、たいてい主観・常識をもって臨むとどこかで「あれ?」という箇所に当たります。
そこで、常識(多くは独断)を捨て、白紙に帰り、改めて与えられた条件から思考を組み立てることが必要となります。

本問でいえば、まず「貝は水深が浅ければ浅いほど表面にでてくるんだろう」という常識・最初の仮説を、グラフを見ていかにすばやく修正できるかなのです。

(仮説の取捨選択をすばやく行い、トライ&エラーの回数を増やすという重要な能力については、
ロジム授業、または今後の「今週の1問」で扱います。)

常識やヒントを元に仮説を作る。そして、その仮説に矛盾が生じたらすばやく撤回し、あたらしく思考を構築する。
受験勉強にとどまらず、「考える」という作業にとって必ず必要なこの能力を武蔵中では
受験生に求めているのです。



2006年01月23日

今週は麻布中学算数入試より1問です。 2006-01-23



今週は麻布中学算数入試より1問です。


容器A に食塩水が400g入っています。これを空の容器BとCに200gずつ入れ、さらにBには食塩を10g、Cには水を100g入れてよくかき混ぜました。次 にB、Cから食塩水を210gずつAにもどしてよくかき混ぜたところ、最初と同じ濃さの食塩水ができました。この食塩水の濃さは何%ですか。ただし、濃さ とは食塩水の重さに対する食塩の重さの割合のことです。                          

(麻布中)   


「食塩水を混ぜる問題と言えば」で機械的に解き始めてしまうとお終いです。


容器Aの食塩水400gに含まれる食塩を【2】とおくと、(*以下、【 】を用いて比を表す)
最初の作業で分けられた容器Bと容器Cにそれぞれ食塩が【1】ずつ含まれることになる。

ここで、容器Bに食塩を10g加えると結果として
(【1】+10)gの食塩が容器Bの中に残る。

そして、容器Cに水100g加えると、食塩水全体は
200+100=300g
になる。この中に10gの食塩が含まれていることになる。

以上より、容器Bから戻される210gの食塩水の中には
【1】+10g
の食塩が含まれ、
(容器Aには200+10=210gしか食塩水がないので、含まれる食塩はすべて戻される)
容器Cから戻される210gの食塩水の中には
【1】×210/300= 【0.7】
の食塩が含まれる。
容器Aに戻された食塩水は420gであり、
これが最初の食塩水と同じ濃さであるからこの戻された食塩水に含まれる食塩は
【2】×420/400= 【2.1】  となる。

よって(【1】+10g)+ 【0.7】 =【 2.1】   という関係が成立する。
これより
【0.4】=10g
となる。

はじめの食塩水に含まれていた食塩は【2】であるから、
10÷0.4×2=50g
となる。
よって、食塩水の濃さは
50÷400×100=12.5%
となる。

答え  12.5%



この問題の難しいところは、一見普通の濃度の 問題に見えるところです。

この年(平成15年度)の麻布中の算数は、異例の1番小問題4問というスタート。
長いリード文と積み重ねていくタイプの小問が並ぶ
通常の形式とは違った出題に戸惑った受験生も多数でした。

小問ということですが、内容はさすが麻布中。
すべてがパターン解法では太刀打ちできないものでした。

問題をしっかり読み、条件を書き出す。その書き出し方も重要。
正確で用途にあった形の線分図など、問題文をよく読み、必要な形で整理する能力が問われています。
基本をあやふやにしたままに、
試行錯誤タイプの麻布対策だけをしてきた受験生を、きちんと落とす良問ぞろいでした。

本問は、なにも考えずに天秤図を書き出してスタートすると迷路に迷い込みます。
・時間経過に沿って出 来事を整理する。
・数式化して整理し、比較してみる。
という算数においてもっとも基本的な作業を丁寧に行うことが必要です。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・麻布でも地道な作業をする能力は重視します。

御三家レベルでは、計算問題や小問は、受験生のレベルからすると必要ないと判断されることが多く、出題も少ないのですが、本問においては反射神経でとくだ けではなく、丁寧な作業を毎回きちんと、すばやく行うという気構えが必要だと言えます。


ここ数年、麻布中の算数は地道な数え上げや当てはめなどの地道な作業を伴う問題が多くなって気ました。もちろん、それぞれに高度なセンスが求められるもの ではありますが、かつてのような「ひらめき」への偏りはなくなっています。

麻布中志願者の典型的な志向として、洗練された切れ味鋭い解法を求めるというものがありますが、その質実な能力を 麻布中が求め始めたのは明らかです。

夢見る数多くの未来の麻布志願者に、麻布受験者になる覚悟を問うているともいえます。
あらゆる問題で丁寧な読み込み、精密な計算能力、書き出しと数え上げが求められます。

世間一般の自由・洗練なイメージのみで麻布中を志願している子供たちには、
一度取り組ませてあげることで麻布中の本当の姿を確認させることのできるメッセージ性のある良問です。



2006年01月16日

今週は開成中学入試より1問です。 2006-01-16



今週は開成中学入試より1問です。


40人 の生徒が、問題A・Bの2問からなるテストを受けました。得点は2問とも正解ならば10点、どちらか1問の正解ならば5点、どちらも不正解ならば0点です。その結果について次のようなことがわかっています。                   
(ア)40人の平均点は6点でした。
(イ)得点が0点と5点の生徒はあわせて30人でした。
(ウ)問題Aを正解した生徒の人数は、問題Bを正解した人数の2倍でした。
問題 Aが正解で問題Bが不正解であった生徒は何人でしたか。                                           (開 成)


「重複」や「相当」を考える問題は、図式化することが必須手順です。


(イ)の条件より、AB正解の10点の人数は40-30=10人だとわかる。
また、(ア)より40人の合計点が6×40=240点であることが判明する。

以上より、5点をとった人数は、(240-10×10)÷5=28人であることがわかる。
よって、AB不正解の0点は、40-(10+28)=2であることがわかる。

上のベン図で、上記の部分の人数が判明している。
また、(ウ)よりA正解:B正解=②:①と置いている。
ここで、AかBの少なくとも一方を正解した人数は、40-2=38であることがわかるので、
A正解+B正解-AB正解=38人であるといえる。
これを線分図で考えると  

(Aを正解:②)+(Bを正解:①)-(ABを正解10人)=38人

よって
③=48人
①=16人
Aを正解:②=32人
よってもとめるべきAだけ正解は
32-10=22人

答え 22 人


算数を勉強することで身につけてほしい技術・ 思考法の中でも、もっとも大切な部類に入るのが数え上げです。
碁石や日付の数え上げ、場合の数など、
「一見して見えてくるものと、実際の数の差を把握する」
技術のことです。

すでに問題意識をお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、
上位中学校入試で苦手とする生徒の多い分野です。

この分野は、小学生にとって解き方に「気付く」ことがもっとも難しい分野なのです。
方程式をはじめとする数学知識を身につけた
中学・高校生でも、中学入試のこの分野の問題にはかなりてこずります。


突破口は、「きちんとした書き出しときれいな図式化」です。

数え上げのポイントは、
「重複する部分の発見」

「比の相当の発見」
です。

これらは、問題文や計算の中で気付くのはとても難しく、
具体的に図式化することで視覚で気付くことの方がとても簡単なことが多いのです。

正確で、きれいに整理された書き出しからは規則性を見つけやすく、
線分図をはじめとする図からは、
何と何が同じ量を表しているのかという「相当」を見つけやすくなります。

本問は、開成中入試問題の中でもかなり易問です。
ハイレベルな受験生が唯一陥る落とし穴は、数式のみで解こうとして時間をとられることです。
解答の線分図を書き出す(少なくとも頭のなかでイメージする)ことで、わずか数分で解答が可能です。

比の難問は、「相当」を見つけることが関門となります。
図式化することで、見つけやすくするという手順を必ず踏むことが急がば回ることにつながります。


~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・数字と条件の意味を正確に捉えることが重要

開成中に限らず、上位校の問題には付け焼刃的に習得した方程式等の、
指導要領範囲外の高度な算術が全く通用しない問題が数多く出題されています。

その学校の教務能力を披露する場とも言える入試問題において、
新機軸の
「基本的な項目に対する深い洞察力を要求する問題」

を作ることに力を置いている上位校ならではの問題です。

ポイントは、一つ一つの数字・条件の意味を深く、多面的に把握することです。
本問の条件「(ア)40人の平均点は6点でした。」に対して、
「40人の合計点は240点」という言い換えをきちんとしていくなどの基本的な作業のことです。

平坦な日本語で書かれた条件を、具体的な算数の言葉に置き換えたり、図式化するという、「問題文の意味を理解し、わかり やすく変換してつかいこなす力」が求められるのです。

普段から、問題に対して
「この条件から何がわかるのか」
「そもそも何が起きているのか」

を面倒くさがらずに、丁寧に確認する作業の積み重ねだけが、この力を養います。
ひとつの問題に対して、どれだけ粘り強く考察をし続けられるのか。
開成中の「強い」生徒を求める姿勢が見て取れる問題です。



2006年01月09日

今週は女子学院・算数入試問題からの1問です。 2006-01-09



今週は女子学院・算数入試問題からの1問です。


たて 135cm、横183cmの長方形の場所に図のように1cmの間をあけて、正方形のタイルをしきつめよう
と思う。タイルのしき方は4すみとも図のようになる。できるだけ大きな正方形を使うとすると、タイルの一辺は何cmになるか。また全部で何枚のタイルが必 要になるか。             (女子学院)


「公倍数・公約数」の範囲で、とても似た問題に必ず出会っているはずです。それらとの差は何なのでしょう か。


図2のように、隙間までふくめた正方形のタイルを敷き詰めることをかんがえる。
長方形のたてとよこをそれぞれ1cmずつ広げて考えれば、
ここで算出された正方形のタイルの1辺が、
「求めるべきもの+1cm」となり、
敷き詰められた枚数が、求めるべき枚数になる。
よって、
たて:135+1=136
よこ:183+1=184
という長さの長方形に隙間なく、正方形のタイルを敷き詰めることを考える。
この2つの数の最大公約数は8
よって、図2のように考えたときの正方形のタイル(斜線のもの)の1辺は8cm
これを図1で考えると、求めるべき正方形のタイルの1辺は
8-1=7
答え  7cm

また、このとき必要となる正方形のタイルの枚数は
(136÷8)×(184÷8)=391
答え391 枚



「たて、よこがそれぞれ15cm、18cmの長方形をなるべく大きな正方形に切り分け、余りがでないようにするとき、正 方形の1辺は何cmになりますか。」
4,5年生が勉強する「公倍数・公約数」の範囲で、
最大公約数の考え方をつかった問題として必ず取り組む練習問題です。

本問とこの問題の類似性に気付き、違いを考えることがスタートとなります。

解き方、つまり隙間の処理の仕方は解答で示した1通りだけではありません、大切なのは
「邪魔な隙間をどうにかして処理することで、最大公約数の簡単な問題に変形できないか。」
という工夫に、時間をすべて費やすことです。

その中から、解答例のような処理のしかた等が、導かれるのです。

この問題を難しくしている要因はなにか。
言い換えれば、
この問題はどの基本問題を難しくしているのか。
という視点は、問題の本質を見抜く力として求められる技術です。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・基礎知識をベースに、走りながら情報を取捨選択する瞬発力のある思考が大切

基本問題が多く、比較的高得点の争いになるのが女子学院中学校です。
しかし典型問題であっても、必ずひねった部分を付け加えることも忘れていません。

こうした問題をすばやく解き進めることのできる生徒は、
どこまでが基本でどこが解答を導きだす上でのボトルネックとなっているのかを判断する能力に長け、
余計な情報に時間をとられることがありません。

逆に、間に合わない生徒は、余計な情報の整理に時間がかかってしまうのです。

よく言われる処理能力とは、「鉛筆のスピードが速い、計算が速い」だけでなく「情報に対する優先順位付けがうまい」というものが含まれます。

典型問題が解説できるレベルまで完全に習得されていること。
そして、とりあえず思考を進めてみてボトルネックを確認すること。

じっと立ち止まって一本道の解答を検討するだけではなく、
すぐに走り始め、判断をし、余計な情報をそぎ落としながら解き進めるという思い切りの良さ。

女子校としては特に際立ってこの傾向が顕著な
女子学院中の求める人物像が見て取れる問題となっています。



2005年12月26日

今週は桜蔭中学の理科入試問題から抜粋です。 2005-12-26



今週は桜蔭中学の理科入試問題から抜粋です。


問  2003年8月27日、21世紀最大という「火星大接近」が話題になりました。火星とその他の太陽系の星について、図と表を参考にして以下の問いに答えなさい。

問 水星の方が金星より太陽に近いのに、表面温度が金星の方がが高いのはなぜか。次のア~エから選びなさい。

ア) 水星は太陽のまわりを金星に比べ高速で回っているので太陽からの熱を受け取りにくい
イ) 水星の体積が金星に比べて小さいため熱を受け取る量が少ない
ウ) 水星の地表は水におおわれていて暖まりにくい
エ) 金星の大気が熱を吸収して温度が下がりにくい



知識問題ではありません。問題文にあるように図と表を参考にして解く、資料読解問題です。



問題文中の表から、水星には大気がなく、金星の大気はその大部分が二酸化炭素であることが分かる。

頻繁に話題になる地球温暖化現象を思い出す

二酸化炭素が大気におおく含まれることで星の温度が上がる


頻繁にニュースや科学トピックで話題になり、
また教科書にも必ず載っている
「二酸化炭素が増えると、地球の温度が高くなり、南極の氷がとけることで海面が上がる」
という話を資料と結び付けられるかが鍵となる問題です。

(記号選択問題ですのでこのトピックを思い出した時点で正解はできます。)

また、ここで「なぜ大気に二酸化炭素が多いと大気の温度が上がるのだろうか」
と考えることが重要なのです。もちろん小学生はこのことを習いません。

しかし、
「きっと、二酸化炭素は熱をたくわえる性質があるのだ」
と仮説を立てることが重要なのです。

この仮説が立てられれば、たとえこの問題が完全記述の問題でも正解が導けます。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・ マニアックな知識に頼らず、与えられた資料と常識から仮説を立てる能力が重要

この問題を見て、また市販の過去問題集でこの問題の解説を見て、
「金星の大気が二酸化炭素だらけなんて知らないよ。なんて難しい問題だ・・」
「二酸化炭素が多いと、保温効果があるなんて習ってないよ」
と言っているようでは、どうやっても桜蔭中レベルには合格できません。

またこの問題の解説を読んだ上で、
「なるほど。金星の大気は二酸化炭素なのか。覚えてしまえ」
という学習をしているようでは将来が不安です。

・「知らない」という事実を受け入れること
・与えられた情報を冷静に読み取ること
・常識(知っていること)を与えられた情報と組み合わせて仮説をたてること

まさに中学入試にとどまらず、高等教育、さらに実社会で活躍するのに
必須な能力ではないでしょうか。桜蔭中が求める生徒が持つ能力です。

ロジムの授業や「今週の1問」ではおなじみのメッセージではありますが、

「知らない」「習ってない」では、何も起こらない。そこで終わります。
与えられた情報から仮説をつくり、推論を行い、解答に少しずつ近づく思考力が、中学校が、そして社会が求める力なのです。

(参考)
未知の問題に出会ったときに、どうやって仮説・推論を組み立てるのか。これがまさにロジカルシンキングです。 (ロジムテキストより抜粋)



2005年12月19日

今週は、東京大学入試からの一問です。小学校5年生以上で、「考える」練習を積んでいれば解答可能です。ロジムの5,6年生では5割の生徒がほぼ満点の解答でした。 2005-12-19



今週は、東京大学入試からの一問です。小学校5年生以上で、「考える」練習を積んでいれば解答可能です。ロ ジムの5,6年生では5割の生徒がほぼ満点の解答でした。


下の図 は、自動車の国内生産台数と輸出入台数の推移をみたものである。
下記の言葉を参考もしくは引用して、この資料について説明しなさい。

(円高 オイルショック 貿易摩擦 海外生産) 

(東京大学 改)


グラフの問題は、傾向が大きく変わっているところ(増加から減少への変化など)に注目することが大切です。
その変化の「なぜ?」について考えて見ましょう。


1976年のオイルショックで石油の値段が上がったことを機会に、日本製の燃費の良い車が世界中で注目さ れ、国内生産台数も輸出台数も急激に増えた。しかし、1980年代のアメリカやヨーロッパとの貿易摩擦や円高の発生以来、日本のメーカーが海外生産を進め 始めたので、国内生産台数、輸出台数ともにその分 が減ってきた。


グラフのポイントは、

・1975年ごろから国内生産・輸出ともに急増
・1985年ごろから輸出が急落
・1990年ごろから国内生産台数が急落

です。
グラフ問題では、トレンド(全体の傾向)が変化したところに印をつけて、
「何が起こったのか?」について考えることが大切です。
算数や理科のグラフ問題でも同じです。

上記のポイントに着目すれば、用語が大きなヒントになります。

オイルショック:1973年→石油価格の高騰
円高:1985年以降→輸出品にとって不都合
貿易摩擦:1980年以降→日本の貿易黒字拡大や外国の雇用問題

は、いずれも誰もがおぼえることになる基本事項です。

あとは、それぞれの用語の意味、背景に関する知識を結び付けるだけです。
用語を答えるのではなく、用語の説明をできるような学習をしているかどうかが分かれ目でしょう。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・他分野の知識・常識への意識が大切
東大の入試が変わると、同時に上位校の中学入試が変わるといわれているほど影響のある東大の2003年度地理の問題です。例年、小学生でも十分に取り組むことのできる思考力重視の良問が出題されていますし、参考にしたと思われる中学入試問題もとても多く見ることが出来ます。

問われているのは、
既習の知識を有機的に結びつける力です。
上位中学校が求めるものと同じものです。

この能力は、常日頃から上記のような趣旨の問題に集中して取り組む時間をとっているかどうかに大きく左右されます。

目の前の「厳密さに欠けるデータ」を前にして、知識と常識を動員して考察を試みる。唯一の正解を探し出すことになれてしまっていると、この取り組みはとて もハードルが高いものに思えるでしょう。中学入試でも国語・算数・理科と違って、社会は、「受験学年前の一問一答式中心の学習」と「入試で出題される総合 問題」のレベルにはとても大きな隔たりがあります。

暗記中心(これで6年夏までのテストはほとんど対応できます。)になりがちな社会の学習計画ですが、低学年時からその場で「知っていることを組み合わせ て、新しい考察を試みる」という作業を取り入れることは思考力の下地を作るのにとても役立ちます。

子供は、教科書の中の知識とテレビや新聞などに載る世の中の出来事を結びつけるのが意外に苦手です。しかし、一度そのよ うな考察をすることを覚えると、身の回りのものを結び付けてみようという意識が普段の生活の中で飛躍的に高まりまるのです。

(参考)
未知の問題に出会ったときに、どうやって仮説・推論を組み立てるのか。これがまさにロジカルシンキングです。 (ロジムテキストより抜粋)



2005年12月12日

今週は、灘中入試から算数分野の一問です。 2005-12-12



今週は、灘中入試から算数分野の一問です。


6桁の 整数 5ABC15 が999の倍数となるとき、3桁の整数 ABC を求めなさい。

(灘中学校)


「999の倍数」とは、どのような数なのか?について考えることが出発点になります 。

5ABC15は999の倍数であることから、
5ABC15=999×□と表すことができる。
この□に入る整数を探しだす。

まず、□は3桁の数である。

なぜなら、

1.最大の2桁の数99を代入しても6桁の数にはならない。(答えは98901となる)
2.最小の4桁の数1000を代入しても、999000となり、問題の数をこえてしまう。

からである。

それでは、この3桁の数を考える。
まず一の位が5であることが確定する。
5ABC15の一の位が5であることから、
999の一の位の9と、□の一の位を掛け合わせた場合の
商の一の位が5となることがわかる。

よって、
□の一の位は5となるのである。

このことから、
百の位も5となることがわかる。
なぜなら
百の位が6だとすると、
□が最小の605の場合でも999×605=604395となり不 適。
また百の位が4だとすると、
□が最大の495の場合でも999×495=494505となり不 適。
だからである。

この時点で5ABC15=999×5☆5 と置くことができる。
以下、☆に0から数字を代入して調べる。
☆=0のとき…504495
☆=1のとき…514485
☆=2のとき…524475
☆=3 , ☆=4, ・・・・・・・・・・
☆=8のとき…584415
(☆=8を代入して初めて 5ABC15 というカタチになる)
よって、ABC=844     答え 844


虫食い算の典型問題です。

1.概算で桁数を判別する。
2.九九の答えの特徴についての知識を活かす。

という2つの作業で、桁数すらわからない「□」を見つける労力が大幅に減ります。
いずれも、虫食い算の基本的な作業です。

このように、ある数を計算ではなく
数に関する知識で求めなくてはいけない問題は実は多くありません。

知識を使わなければ、「数式化⇒算術による計算作業」では、試験時間を超える膨大な時間を要し、まったく手も足もでないという状況に陥ることも事実です。

実は、この2つの作業は、「正確で迅速な計算力」を支える大きな柱です。

小数の計算における小数点の打ち間違いは、
概算によってほぼ確実に避けることができます。

本番ではあまり出題されることのない虫食い算ですが、
本問は、計算問題や数の性質の重要性について考える
良い機会となるメッセージ性のある良問といえるでしょう。

灘中をはじめとする上位校の計算問題は、単純な反復練習だけではなく、数の性質について日ごろから注目し、考察を重ねながら解いてきたかどうかで大きな差 が生まれます。低学年でも太刀打ちでき、とても多くのことを学べる内容ですので、是非取り組んでみましょう。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・定義・仕組みの根本的な理解が大切

灘中学校の1日目は、

膨大な量を適切にこなす正確性とスピードが問われる問題構成となっています。

それをこなすには、反復練習で身に付けたスピードだけでは太刀打ちできません

基本知識の深い理解からのみ導き出せる洗練された解法で、
簡潔に解き進めなくてはいけません。

普段何気なく活用している、公式や知識は結果にすぎません。

それぞれの背景について、
しっかりと説明することができるのかどうかが問われています。
良く使う簡単な知識ほど、その背景を忘れてしまいがちなのです。

.本問では、もっとも基本的な、「九九と計算」に関して問われています。
「一の位が5になる九九を挙げてみよう!それらに共通点や規則性はあるかな?」
小学校2年生のクラスで必ず取組む問題です。

この知識を忘れてし まうだけでなく、いつのまにか解説という結果だけを吸収しようする姿勢になってしまっていては、本問にはもちろん、上位校の問題、そして入学後の勉強にも 対応することはできないでしょう。

掛け算や割り算の筆算や、つるかめ算や差集め算などの算術を中心に「なぜその方法で答えがでるのか?」について考えた り、九九、分数などの仕組みについてもう一度復習してみることはとても大きな意義があることでしょう。

「2つの三角形が相似ならば・・・」
についての知識はとても確かなものになっているかと思いますが、
「2つの三角形が相似となる条件」
について正確に挙げることのできる生徒は意外なほどに少ないのです。



2005年12月05日

今週は、早稲田中入試から理科分野の一問(抜粋)です。 2005-12-05



今週は、早稲田中入試から理科分野の一問(抜粋)です。


植物の 体の表面から水が蒸発するしくみを調べる実験をしました。下図のように目もりをつけた試験管に水を入れ,これに新しいツバキの枝をさしたものを A~D 4個用意し,風通しのよい日かげにおいた。下の表のように条件を変え,数日後に水面のさがった量をしらべたところ表の結果をえた。これをもとにして, (1)~(5)の問いに答えなさい。

(ただし、ワセリンは水や空気を通さない)

(1)葉の表側・葉の裏側・茎の表面から蒸発した水の量の 目もり数はそれぞれいくつですか。

(2)葉の表側にワセリンをぬったとすると,水面がさがった目もり数はいくつになりますか。             

(早稲田中 改)


・親切にも「ワセリンは水や空気を通さない」と注意書きが問題文中にあります。つまり、ワセリンを塗った箇 所からは、蒸散(植物が水分を水蒸気として空気中に放出すること)が行われないということです。
・なぜDでも水面が減っているのでしょうか。


(1)葉の表側 6 / 葉の裏側 58 / 茎の表面 3 
(2)62


暗記学習ではなく、考えて問題を解くことができる生徒の思考プロセスに沿って解説します。この問題の最初の 鍵は、水面からの蒸発を捉えられるかどうかです。
「表から、葉の表・葉の裏・茎 から試験管の水が外に出されているんだな」

「あれ、まてよ、D の試験管の水も減っている。ということは、葉の表裏・茎以外からも水が減る原因があるのだ。」

「水面からの蒸発だろう(ここでは、水面から蒸発ということに気付かなくても、葉の表裏・茎以外からも水減らす要因があるということに気付 けばいいのです)」

このように、論理的に実験において影響をあたえる要因を考えることがスタートです。

D の試験管から 
水面からの蒸発=1 (目盛り)


C の試験管から
茎からの蒸散 + 水面からの蒸発 =4 (目盛り) 
茎からの蒸散 +   1  (目盛り)    =4 (目 盛り) 
茎からの蒸散  =3 (目盛り) 

B の試験管から
葉の表からの蒸散 + 茎からの蒸散 + 水面からの蒸発 =10 (目盛り) 
葉の表からの蒸散 + 3 (目盛り) + 1 (目盛り)  =10 (目盛り)
葉の表からの蒸散 = 6 (目盛り)


A の試験管から
葉の裏からの蒸散+ 葉の表からの蒸散+茎からの蒸散+水面からの蒸発 =68 (目盛り) 
葉の裏からの蒸散 + 6 (目盛り) + 3 (目盛り)  + 1 (目盛り) =68 (目 盛り)
葉の裏からの蒸散 =58 (目盛り)


下のような表を即座につくってもいいでしょう。

2.jpg

(2) 葉の裏からの蒸散 と 茎の表面からの蒸散 と 水面からの蒸発 の3つをたすと
   58+3+1 で62

こういった、条件を変えて、その差違(他と異なるところ)から特定したい情報を導く実験を『対照実験』といいます。

たとえば、今 りんご の重さを特定したいとします。しかし、りんごの重さを直接測ってはいけないというルールがあるとします。
また、今、みかんの重さと、 かごの重さと、 みかんとりんごをかごに入れた時の重さは分かっているとします。 この場合、

りんごの重さ= みかんとりんごをかごに入れた重さ - かごの重さ -みかんの重さ

で求めることが可能です。
このように対照実験をもちいると、直接測定不能なデータを得ることができわけです。

この対照実験はきわめて論理を要し、また科学の世界では基本中の基本とされる考え方です。なので、高校・中学入試は頻出となっています。
上位校では、対照実験の結果からの考察だけでなく、「正しく対照実験を行うにはどういった設定で、何と何を比べればいいのか」を問われることもありま す。

また、この問題も国語読解力によっ て大 きく差が開く問題です。問題文から、「どんな実験をしているのか」を把握できない生徒が多数でした。実験操作になれることも大事ですが、そ れ以上に問題文に書いてあることを、自分の言葉に翻訳して理解する、また図示するという能力が必要となります。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・基本的かつ重 要な方法論を理解する ~実験の本質を俯瞰(ふかん)してほしい~
 解説にも書きましたが、今回の実験は対照実験という有名な実験方法論です。このワセリンの問題のほかにも、唾液とデンプンの問題、光合成の問題、ソラマ メの発芽の問題等として入試問題には頻出です。さらに言えば上位校では対照実験の状況設定を行う能力が最も重要なのです。つまり、「あと、どの実験をすれ ば欲しい情報が得られるか」を思考する能力です。「差違をつかって欲しいデータを導く」という思考です。

「ほしい情報をどうやったら手に入れることができるのか」を試行錯誤し、最短の方法でそれを手に入れ、整理し考察するという能力は入試に限らず広く社会で求められています。もちろん、そういった社会で多分に求められる能力を備えた生徒を、中学が欲しがるのは至極当たり前ではないでしょうか。

この問題を通して、
「へー、葉の裏からの蒸散が一番おおいんだ。おどろき。」
と思うのも大事ですが、
それ以上に、
「へー、なるほど、こういう実験をすれば 分からないデータを手に入れることができるんだー。おどろき。」と考えて欲しいものです。


・図示するチカラ、整理するチカラ~手を動かしてください~
今回の問題は、問題文と提示された表をにらめっこしていたのでは回答にはたどり着かないはずです。解説で書いたような表を即座に自分でつくることができる か、もしくは、解説に書いたように、蒸発部分を特定する「言葉の式」を組み立てることができるか、が鍵になるのです。

そういった作業をする間に「あ、水面からも蒸発するんだ!」と気付くわけです。基礎知識など要りません。試行錯誤をきちんとするか、試行錯誤の間に 「ん??」と考えることができるかが求められるているのです。

ロジムでも、問題とひたすらにらめっこしながらうんぬんうなっている生徒が時々います。そして「表にしてごらん」「問題文を箇条書きにしてごらん」と言い うと、瞬時に解けてしまうことが大半です。とにかく手を動かすことを怠けないで下さい。

「最も簡単で最も効果 のある学習法は問題文を箇条書きに直す習慣をつけること」と言われるのも、あながち大げさではないのです。むしろ、その通りだと思います。



2005年11月28日

今週は、昨年の巣鴨中入試から算数分野の一問です。 2005-11-28



今週は、昨年の巣鴨中入試から算数分野の一問です。


下の図 のようなおもてが1、3、5、7、9 うらが順に2、4、6、8、10と数が書かれている5枚のカードがあります。この5枚のカードのうち4枚を右下の (ア)、(イ)、(ウ)、(エ)の上に、おもてまたはうらにして置いて、正しい式を作ります。このとき、次の問いに答えなさい。

問1)(エ)における数のうちでもっとも大 きな数を求めて、
   そのときの(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)に置ける数の例を一つ書きなさい。
問2)(エ)に置ける数のうちでもっとも小 さな数を求めて、
   そのときの(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)に置ける数の例を一つ書きなさい。
(巣鴨中)


問題となっている部分にしっかりと注目して、作業することが大切です。
式に、1から10までの数を自由に入れるのならば簡単です。この問題を難しくしている要素は何でしょうか。


問1)(ア・イ・ウ・エ)=(10・4・2・8)か(10・6・3・8)のいずれか 1つ。
問2)(ア・イ・ウ・エ)=(3・10・5・1)のみ

問1)
(エ)に10を置くことはできません。
(ア)にも10を置き、(イ)÷(ウ)を0にすることは無理だからです。
(ア)から何かを引いてエになるのですから、エに最大の数字10は入りません)
また、9を置くこともできません。
(ア)に10を置き、(イ)÷(ウ)を1にしなくてはいけないのですが、
(イ)÷(ウ)を1にするということは、(イ)と(ウ)を同じ数にすることで、
それは不可能だからです。

このように(ア)に置ける数を大きいものから実際に代入して、試行していきます。
(エ)に8を置く場合を考えます。

・(ア)に10を置いて、(イ)÷(ウ)を2にする。
・(ア)に 9を置いて、(イ)÷(ウ)を1にする。

の2通りの方法が考えられます。

しかし、後者は(イ)÷(ウ)を1にすることが前述の理由で不可能なことから、不適合。
よって、前者を考えます。
(イ)÷(ウ)を2に出来る組み合わせは、
(イ・ウ)=(2・1)(4・2)(6・3)(8・4)(10・5)
の5通りある。

しかし、(2・1)は、同じカードの表と裏なので不適、
(8・4)(10・5)は、それぞれ8、10をすでに使っているので不適となる。

よって、
(エ)に8を置いて、考えられる組み合わせは
(ア・イ・ウ・エ)=(10・4・2・8)と(10・6・3・8)の2通り。
(エ)に可能なもっとも大きな数を入れた場合について問われているので、
(エ)に7以下を置く試行は行わなくても良い。
よって
(答え)
(ア・イ・ウ・エ)=(10・4・2・8)か(10・6・ 3・8)のいずれか1つ。

問2)
問1と同様の考え方で、(エ)について小さいものから順に試行していく。
(エ)に1を置く場合を考える。

問1で判明している通り、(イ)÷(ウ)を1にすることは不可能であることから、
①(ア)に 3を置いて、(イ)÷(ウ)を2にする。
②(ア)に 4を置いて、(イ)÷(ウ)を3にする。
③(ア)に 5を置いて、(イ)÷(ウ)を4にする。
④(ア)に 6を置いて、(イ)÷(ウ)を5にする。
を考える。

これ以降は、(ア)を10以上かつ(イ)÷(ウ)を7以上にすることが明らかに不可能なため試行しない。
--------------------
①の場合、
(イ)÷(ウ)を2に出来る組み合わせは、
(イ・ウ)=(2・1)(4・2)(6・3)(8・4)(10・5)の5通りあるが、
(2・1)は、同じカードの表と裏なので不適、 (6・3) 3そのもの、
(4・2)(8・4)は、4の表の3をすでに使っているので不適となる。
よって、
(ア・イ・ウ・エ)=(3・10・5・1)のみ適合。
---------------------
②の場合、
(イ)÷(ウ)を3に出来る組み合わせは、 (イ・ウ)=(9・3)のみ
これは、すでに3の裏である4を(ア)に使っているので、不適。
--------------------
③の場合、
(イ)÷(ウ)を4に出来る組み合わせは、
(イ・ウ)=(8・2)のみ これは、すでに2の表である1を(エ)に使っているので、不適。
--------------------
④の場合、
(イ)÷(ウ)を5に出来る組み合わせは、(イ・ウ)=(10・2)のみ
これは、すでに2の表である1を(エ)に使っているので、不適。
--------------------
以上より、(エ)に1を置いて、考えられる組み合わせは
(ア・イ・ウ・エ)=(3・10・5・1)の1通りのみ。
(エ)に可能なもっとも小さな数を入れた場合について問われているので、
(エ)に2以上を置く試行は行わなくても良い。
よって
(答え)
(ア・イ・ウ・エ)=(3・10・5・1)のみ


まず、(エ)を決めることがすべてである ことを見抜かなくてはいけません。
問題は、(エ)に最大・最小を置いたときに、それを成立させる(ア)(イ)(ウ)の一例を挙げろいうものなので、(エ)に大きな(小さな)ものから代入し ていき、それが不成立であることを確実に明らかにし、成立であることは部分的に(一例のみ)明らかにすればよいのです。

適当に(多くの場合(ア)への10の代入からスタート)探す生徒の多くは、


(1)の場合(10・9・3・7)を答えとして挙げます。

問題のルールの制約(数字が2つ表裏となっていて同時使用が不可能)を忘れ、左から大きなものを試行しているのです。


「問題は(エ)であること。」
「(エ)に入るものは10通りしかないこと。」
を考えると、代入して試行していくことがもっとも近道であることに気づかなくてはいけません。

また、このようなゲーム形式の問題では、
「ルールの中で、何かこのゲームを複雑にしているのか」
という視点で、問題文を読み解くことが重要です。

この問題は前述の通り、数字を自由に入れることが出来ない。(つまり1と2、3と4、5と6、7と8、9と10は同時には使えない)が唯一かつ最大の制約 です。ここに気付けば、正確なチェックをすることが出来ます。

3年生でも十分に解答可能な易問ですが、上位校特有の「読解力を問う作業問題」 は、不得意とする生徒の多い分野です。
国語読解力によって大きく差が開く分野の近年の広まりは、「コミュニケーション力」と「試行錯誤の中で規則を発見する力」という、旧来型の受身の受験勉強では力 がつきにくい能力を測ろうという試みです。社会では当然求められるこれらの能力に関しての
対策が求められるメッセージ性の強い良問です。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・すべての基本は国語力である。

近年、上位校では四教科すべてにおいて「国語力ありき」の問題が多くを占めています。丁寧な読解力で、問題文の構造とメッセージを把握できなければ、全く手も足も出な いという設問です。その上で、基本的な知識の深い理解が問われています。

相手のメッセージ、構造、気持ちなどの、その場ではじめて与えられる条件にきちんと対応する能力。これは、机上での一般的ルールの習得とは一線を画すレベ ルの高い要求です。
社会人としてもっとも重要なこの「状況対応力」を求める上位校の傾向こそが、上位中学校受験が「精神的に大人であるこ と」が要求されているとされる所以でしょう。

かつて(今でも?)「とにかく復習重視。一度見た問題は絶対に間違えない。」という反復によるパターン認識力向上が叫ばれた受験勉強ですが、こと上位校に 関しては、その傾向のの偏重に一石を投じる意味で、この分野の出題の広まりは続きそうです。

複雑な文章題に丁寧に取り組む時間を低学年時からしっかりととることが重要です。


・具体的に手を動かし、試行錯誤する中でイメージをすることが重要
ルールがどのような制約を与えるのか。
それは、具体的に試行錯誤することで、実感できます。本問では、(エ)に数字を代入して、それを成立させるものを探して更に代入してみることです。

「問題をひたすらにらみ続けている」
「ノートがあまりにもきれい(試行錯誤の痕跡がない)」

は、このような問題に太刀打ちできない生徒の行動の典型例です。
とにかく、具体的なイメージを把握することが先決。そのための行動力は必須能力です。
「例えば~」と適当な試行をしてみる習慣 をつけることが大切です。
「実験と考察を同時にすばやく行う力」は理系に強いといわれる学校では必ず問われる能力です。




2005年11月21日

今週は、昨年の海城中入試から算数分野の一問です。 2005-11-21



今週は、昨年の海城中入試から算数分野の一問です。


掛け算 九九の表の答えのひとつひとつを4で割って、割り切れるなら青、1余るとき赤、2余るとき黒、3余るとき緑で表のマス目をぬ ります。
(1)このとき、一番少ない色は何色ですか。また何個ですか。
(2)5の段で一番多い色は何色ですか。
(3)3とかけて、答えの欄が黒になるマス目は何個ですか。          

(海城中)


今回はノーヒントです。小学2、3年生でも取り組むことのできる問題です。
九九の表を書き出してみれば、簡単です。実際塗りつぶしていく中で規則を見つけてみましょう。


(1)緑 12個 (2)赤 (3)6個 (1×2、2×1、2×3、3×2、1×6、6×1)


短時間での綿密な作 業が求められるだけではありません。このような「数の性質」の問題は、初見で解くのがとても難しい分野です。
典型問題の暗記で はなく、数を見る視点を自分の中に蓄えておくことが重要です。

4で割り切れる数→4の倍数
4で割って1余る数→最小が1で、その後5、9、13、といったように4×n+1で出現
4で割って2余る数→最小が2で、その後6、10、14、といったように4×n+2で出現
4で割って3余る数→最小が3で、その後7、11、15、といったように4×n+3で出現

と整理して、格段ごとに調べていくことも出来ますし、具体的に4の段まで手を動かしてみれば、その規則を容易に発見することができます。
本問は作業が面倒なこと以外は難しくない低学年でも解ける易問ですが、九九の表から、様々なことが学べるということを知るきっかけとなる良問です。

九九を違った視点から捉えなおすことをテーマにした問題は頻出です。
・1の位が0になるのはどのよう場合か。
・そもそも九九の表には答えは何種類あるのか。
・1~9の倍数は、それぞれどのような特徴があるのか。

など、様々なテーマが考えられますし、毎年出題されています。
ひとつひとつを覚えるのではなく、日ごろから数字を様々な形に分解してみたり、見た目を比べてみるなどの習慣が、数へのセンスを高めていきます。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・結果 をさまざ まな視点でグループ分けする考察力が重要
 計算のスピードを上げることが、九九の暗唱の目的ではありません。九九の表から規則性を見つけてみようと試みることで、様々な角度から考察する力が身に つきます。本問は「余り」による分類です。

 また、状況に合わせて、その場で多くの視点を試すスピードも大切です。ひとつの結果 や常識に対して、絶えず違った視点から考察を試みる姿勢が求められて います。
算数の分野としては、
算術だけでなく、数学的センスの基本である数に対する意識を高めてもらいたい
というメッセージの込められた出題です。

また算数に限らず、目の前の当たり前の現象を、違った角度で捉えなおす姿勢というのは、理系教育に力を入れている海城中の求める人物像だといえるでしょう。




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