2005年11月07日

今週は、算数分野からの一問です。 2005-11-07



今週は、算数分野からの一問です。


ひとつの台の上に、点Aを中心とする一辺の長さ1cmの正八角形板と、一辺の長さ1cmの正六角形版が、図1のようにのっている装置を考えます。


正八角形板は台の固定されていて、台は壁に取り付けられています。正六角形板は図1の状態から1秒後に辺①と辺イが重なり、次の1秒後に辺③と辺ウが重 なり、この後も同じように動きます。
 このとき、次の問いに答えなさい。ただし、正六角形や正八角形とは辺の長さと角の大きさがすべて等しい多角形のことです。

(1)辺アと辺①が再び重なるのは、図1から何秒後ですか。
(2)正六角形板は図1から8秒間で中心Bの周りを何回転しますか。ただし、答えが整数にならないときは分数で答えなさい。

 今度はこの台全体も点Aを中心に32秒ごとに1回転するとします。例えば、図1から4秒後には装置は図2のようになっています。このとき、次の問いに答 えなさい。


(3)図1から36秒後に正六角形板のどの辺と正六角形板のどの辺が重なっていますか。
(4)図1から、初めて図3になるのは何秒後ですか。
                                      (麻布中改題)


回転の意味を考えてみてください。正八角形に対する回転、台に対する回転、見ている私たちに対する回転をき ちんと理解することが大切です。


(1)六角形の辺の数6と、八角形の辺の数8の公倍数を考えます。つまり24辺分回転するともとにもどります。よって24秒後。 
(答え 24秒後)

(2)8秒間で、正六角形自身は   8÷6=1と1/3  回転します。そして、この8秒間で、正八角形のまわりを1周することで、さらに1回転するの で、答えは 2と1/3回転。      (答え 2・1/3 回転)

(3)台が回転しても、正六角形と正八角形の関係はかわりません。
1秒後は②の辺が正八角形に接しています。2秒後は③が、そして6秒後に①の辺が正八角形に接しています。36÷6=6・・・0 (36は6の倍数)    であり、
正六角形の①の辺が、正八角形のいずれかの辺と重なっていることがわかります。
また、正六角形は8秒間で正八角形のまわりを一周するから、36÷8=4・・・4 より、
4週と4秒後を考える。これより、正八角形の辺オが、正六角形の辺と重なっていることがわかります。     
(答え 正六角形の辺①と正八角形の辺オ)

4)図3では、正六角形の辺①と正八角形の辺オが重なっています。この状態は(3)の答え より、36秒後に起こることがまずわかります。また、(1)より、正六角形と、正八角形の重なる辺の組み合わせは、24秒後ごとに同じになることがわかるります。
したがって、
辺①と辺オの組み合わせは、
12秒後、36秒後、60秒後、84秒後、108秒後・・・ (ア)
に発生することがわかります。

また、台そのものについては、32秒で1回転しています。最初に図3の状態になるのは、4秒後である図2から180度回転すればよいので
4+32÷2=20秒後
です。その後は、32秒ごとに1回転するので
20秒後、52秒後、84秒後、116秒後・・・  (イ)

に、同様の状態になることがわかります。
(ア)と(イ)より、84秒後に初めて図3の状態になることがわかります。 
(答え 84秒後)


大きな差を生んだ昨年度の問題です。

解く上での基本は、【ヒント】にも書いたとおり、
正六角形の回転数を、限られた正六角形と正八角形だけでなく、台も含めて考え、最終的に見ている私たちとの関係性
で回転数を答えなくてはいけません。

それを考えずに解けるのは(1)まででしょうか。
そして、同時にまわる正六角形と台の回転を分けて考えるなど、
図形をイメージする力だけでなく、論理的な数え上げ力も必要になってきます。
いずれにしても、公倍数の考え方を知らなくても出来る題材で、思考力の差をしっかりと測ることのできる良問でした。
(2)の解答の中にある、「さらに1回転するので」をすばやくイメージできたでしょうか。実際に考えてみてください。

また、上位校では本問のように、
「その場でルールを与えてゲームをしたり、ものを動かす」
といった問題が頻出しています。

この問題では、そもそも問題文(つまりルール)を理解できずに終わってしまう生徒も散見されます。理科と社会にも同じことが言えますが、問題文を理解する 国語読解力こそすべての基本だという学校側からの強いメッセージと問題意識の現われでしょう。
国語から逃げていては、このレベルでは全教科に渡って全く太刀打ちできません。

~ 今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・数式展開だけでな く、実際のものの動きを正確にイメージする力が重要
 近年、解法のパターン化が進み、問題を読んだだけで答えまでの数式の展開を一気に書き連ねる生徒が増えています。

しかし、数式は言語です。元になる現象のイメージを正確に理解して初めて、意味を持つのです。

途中式で出てくる数字が何を意味するのか、単位は何なのかきちんと把握できるイメージ力が求められています。麻布では、その場でルールを与えるゲーム形式 の問題や、図形の複雑な移動問題が頻出となっています。

・論理的な数え上げの能力
 
もれなく、ダブりなく数え上げる能力は、算数におけるもっとも基本的、かつ習得が難しい分野です。大学受験レベルと同様の問題の出題もめずらしくありま せん。思いつきで数え上げるのではなく、しっかりとした場合分け、数え上げの基本技術を身につけてください。その場で確実に正解にたどりつくというのは、 解答を理解することの何十倍も難しいことです。継続的な学習が必要な分野です。

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ここに挙げた2つの力は、受験勉強最後の1年や数ヶ月で身につくことは絶対にありません。低学年のころから、良問に取り組み、過程を重視した指導を受け続け ることが必要です。ここを怠ると、高学年においてこれらの分野が非常に高い壁として感じられるようになり、「センスがない」という言葉で逃げざるをえなく なるのです。普段の学習の姿勢について考えさせられる問題です。



2005年10月31日

今週は、算数分野からの一問です。 2005-10-31



今週は、算数分野からの一問です。


0から9までの数字を1つずつ書いたカードがたくさんあります。このカードを組み合わせて整数を作り、下のように1から順に並べていきます。ある数まで作った ら、カードを全部で2989枚使いました。この数はいくつですか。また、このとき、1のカードは何枚使いましたか。(桜蔭中)


この問題を難しく感じる原因を考えましょう。1つの数字が1枚のカードで作られていれば答えは簡単ですよね?今回は、数とカードの枚数の当たり前の関係に着目してください。
 

1桁の数(1~9):9個×1枚=9枚
2桁の数(10~99):90個×2枚=180枚
3桁の数(100~999):900個×3枚=2700
この時点で 9+180+2700=2889枚 つまり残りは100枚
ここから先は、4桁の数なので 100÷4=25
25番目の4桁の数が答え。


2,889 枚目の数は、1024。
ここまでにつかった1のカードの数を求める。
一の位に1がある数は
1、11、21、31、41、・・・・・1001、1011、1021:合計103 個
十の位に1がある数は
10~19、110~119、210~219、310~319、・・・・・1010~1019:合計10×11=110個
百の位に1がある数は
100~199:合計100個
千の位に1がある数は
1000~1024:合計25個
(※なぜ11を「一の位に1」「十の位に1」の2回数えてもいいのか。
各自考えてみてください。111なども同様です。)

合計: 338個


解答を読んでいただければおわかりのとおり、かなり単純に見える問題ですが、桁数ごとに数え上げることで大幅に解答時間が短縮されます。
(桁ごとと言わず、すべての数を書き出せば解けそうに見えますし、実際解けるのですが、作業に多くの時間をとられ、他の問題にまで影響が出てしまいます。)

問われる力は大きく2つです。
・問題を複雑にしている原因を探ろうとする注意力
この問題を面倒なものにさせているのは、使うカードの数が桁数によって違っているということです。桁数ごとの場合わけがこの問題の突破口です。桁数ごとに数字を分けることは、意外と手間がかからず、1桁:9個、2桁:90個、3桁:900個ととてもきれいな数字になります。
・数え上げの基本能力
2桁の数10~99を99-10=89個と数える。25番目の4桁の数を1000+25=1025とするなど、大人でも間違えることの多い数え上げの落とし穴が随所にちりばめられています。桜蔭中を受けるハイレベルの受験生でも、当日のプレッシャーのなかでこの単純な落とし穴に次々とはまってしまいます。

方針を立てるのに時間がかかり、4つの場合分けをしていくなかでも正確な数え上げ(計算)をこなす。正解者平均は5分での解答、不正解者の多くは20分程度数え上げに時間を費やし、結局間違いをするという結果でした。非常にレベルが高く、思考力により差のつく良問です。



2005年10月24日

今週は、理科分野からの一問です。 2005-10-24



今週は、理科分野からの一問です。


 天気のよい日には、太陽が昇るにつれて温かく感じるようになりま す。太陽による、ものの暖まり方や、気温と地中の温度の変化について考えてみましょう。

  太陽の光を利用して、日なたで1リットルの水をできるだけ早く温める工夫をしました。

(1) 次の1)、2)のような工夫をしたところ、水が早く温まりました。その理由をそれぞれ書きなさい。

工夫1) 水を金属製の容器に入れた。
理由:                                

工夫2) 容器にふたをした。
理由:                              

(2) 上の1)、2)以外にも、いろいろな工夫があるでしょう。そのうち3つを考え、工夫と理由を書きなさい。

(武蔵中 改題 平成12年)


(1)
 工夫1:日なたにおいた鉄の棒と、プラスチックの棒では触れたときの温度に違いがあるのは感覚的に分かるはず です。さて、それでは金属の性質を考えてみましょう。
 工夫2:ふたをするときとしないときで、変わるものは何かということに着目しましょう
(2)身の回りで、温度が高いものを思い浮かべ、どうしてそれが高温になっているのか考えてみましょう。


(1)
工夫1)の理由:
金属は熱を伝えやすく、太陽の熱を効率良く容器中に つたえることができるから。
工夫2)の理由
熱が逃げるのを防ぐことができるから。

(2)
(工夫例1)容器の色を黒色にする 
(例1理由)黒い色は光をより多く吸収することができるから。

(工夫例2)凸レンズで光を集め、容器にあてる 
(例2理由)より多くの光の量を容器にあてることができるから。

(工夫例3)細長い容器に水を入れる /広く平らな容器に水を入れる
(例3理由)容器が太陽光を受ける表面積を大きくすることで、受ける光量の合計を増やすことができるから。

(工夫例4)容器の周囲を鏡で囲む
(例4理由)太陽から直接あたる光だけでなく、鏡から反射しゃれる光も受け取ることができるから。

(工夫例5)密閉された透明のガラス箱の中に水の入った容器を置く 
(例5理由)容器のまわりの空気の温度が保温され、周囲の暖かい空気により容器が冷えるのを防ぐから。


(1)
(工夫1)金属は熱を伝えやすい性質をもっています。

(工夫2)ふたをすることで、水面から熱が逃げるのを防ぐことができます。また、水蒸気の発生がおさえられるので気化熱による温度減少をおさせることがで き ます。

(参考)水分が蒸発するときに表面の熱を奪います。これが気化熱です。例えば、予防注射の前に、脱脂綿で消毒をします。そのときヒンヤリするのは、消毒薬 (アルコール)が蒸発するときに、腕の表面から熱を奪うからです。

(2)
早く温めるということは、
・ より多くの熱を吸収する
・ 熱の放出をより防ぐ
ということです。ここに着目します。

つまり

・より多くの熱を吸収するためには?
→より多くの光をあてる

・より熱の放出を防ぐには?
→熱がにげるのを防ぐ。熱をできるだけその場にとどめる

と考えはじめるのがスタートであり、科学的視点の基礎である論理的な考え方です。

また、身の回りの「温かいもの」がどうして温かくなっているのかを考えます。例えば、炎天下に白い帽子をかぶるのは、黒い頭髪が熱を吸収するのを防ぐため です。ビニールハウスの中が温かいのは、熱が逃げるのを防いでいるからです。

基礎的な知識を使い、柔軟な思考力により解答を導く良問です。

教科書に書いてある「より早く容器の中の水の温度を上げるには」の工夫 例を丸暗記していたのでは成績はのびませんし、「考える力」という観点から生徒の将来が不安です。

解説にも書きましたが、
「容器の温度をより早くあげる」とは
→1.受け取る熱量をふやす
→2.にげていく熱量を減らす  であり、

このように物事を構成 要素に分解して考える思考法を身に付けることが、将来につながる勉強法です。

そういった意味で、この問題は、「物事を構成要素に分解し、整理し、論理的に 結論を導く」
能力の基礎が身に付いているかを試す問題なのです。

 また、身の回りで「温かいもの」を想像して答えを導くという能力も必要とされています。身の回りの科学的事象に多く関心をもち、理由を考える。まさ に中学校が生徒に望む能力ではないでしょうか。
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~ 今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~

・物事を構成要素に分解する能力が重要
たとえば、有名な例だと、「やせる方法」を
1.エネルギー消費を増やす 
2.エネルギー摂取をへらす 
3.排せつ量を増やす(下剤の使用や脂肪除去) 
というよ うに、物事を構成要素に「もれなくだぶりなく」分解します。その要素ごとに対策を考えると言う能力は、試験問題だけでなく、科学の現場やビジネスの現場で も最 重要される能力の一つです。

・ 身の回りの科学事象にたえず関心をもつことが重要
暗記に頼らない解答作成で、やはり重要なのは「経験」からの「類推」です。できるだけ多くの身近な事象に対し「なんでだろう」を持ち、それを調べるという 習慣を持つようにして下さい。



2005年10月17日

今週は、算数分野からの一問です。 2005-10-17



今週は、算数分野からの一問です。


ある階段があります。
まさるくんは1段ずつとばして、たけしくんは2段ずつとばして登りはじめました。
すると一番上の段まで、ふたりともその歩幅のまま、ちょうど登りきりました。
登りきるまでの2人の歩数のちがいが14歩だったそうです。
この階段は一体何段だったのでしょう。    
(雙葉中改題)


ノートに階段の絵を書くことからはじめてください。問題とにらめっこしていても何も
進みません。「まず手を動かす」、重要な習慣です。


下の図のように、2と3の公倍数である6段目でちょうど1歩の差がつくことがわかる。
つまり6段ごとにちょうど1歩差がつく。
二人ともちょうど登りきり、歩数の差が14歩だったので、
階段は6×14=84段だということがわかる。

こたえ, 84段


この問題から、考えるべきことは以下の2点です。
  ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
  1.単位に対するの注意力・意識力
  2.起こっている事象をイメージし、図示する力
  ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

解答を見る限り、とても簡単な問題です。
実際、4年生のクラスでも半数以上が1分以内に答えをだすことができました。
しかし、この問題の誤答例は、とても重要なことを気づかせてくれるものです。

試験当日も含めて、不正解の解答のほとんどは、
「3-2=1 14÷1=14 14×2=28段」 もしくは
「3-2=1 14÷1=14 14×3=42段」の
どちらかになりました。

つまり、

「1回の行動で二人の差は1。そして最終的に差は14。
つまり14回同じ行動が繰り返された。1回につき2段(たけしくんを基準とした場合は3段)
進むので2×14=28 (たけしくんを基準とした場合は3×14=42)」
という論法です。

この誤った論法に陥っている原因は、

1. 差の単位について「歩」と「段」を混同もしくは無視している。
2. 解答の図のような具体的なイメージをしていない。

に集約されます。

この問題は、「歩く」ことによる「差」は、まず「距離」か「時間」だと
決めつけがちな生徒たちに、

「問題文を読みながら『具体的なイメージ』を描こうとしていますか、
そして『単位』に敏感になっていますか」

と問うているのです。

この問題は、6年生の上位クラスの教室でも上記のような誤答が散見されます。

解くスピードを重視するあまり、式のみで論を進めようとすることが
「具体的なイメージ」をつくることを省略させ、
単位のない式のみの展開に陥らせるのです。

本当のスピードは「具体的なイメージ」によって加速されます。
そして、単位の意識こそがその「具体的なイメージ」を助けてくれます。
正答者の8割以上が解答のような図を描いて考えています。
また不正解者で、図を描いた生徒は0でした。

「ちょっと絵と日本語で説明してもらえる?」という問いかけで、
お子様の思考の癖が垣間見ることのできる良問です。




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