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「卒業生が語る我が母校」第1回開成学園:堤天心さん

苅野です。予告はしたもののスタートが非常に遅れてしまいましたが、インタビュー企画「卒業生が語る我が母校」第1回です。卒業生の皆さんに率直に語ってもらいます。

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堤天心さん
(経歴)
開成中学・高校、東京大学工学部卒。情報サービス会社の営業、経営企画を経て、現在は大手通信会社の新規事業の担当部長。


LOJIM(以下L):よろしくお願いします。堤さんの現在のお仕事の内容について教えてください。

堤さん:通信会社の新規事業として、「テレビとネットがつながって動画が見れたら」を考えてカタチにする仕事です。テレビ向けIP動画配信新サービスの企画・立上げて未曾有の大成功させろというミッションです。

L:今日は堤さんの母校である開成学園のことについてお話を伺いたいと思います。開成にはいつ入学されたのですか。

堤さん:中学校からです。

L:やはり中学入試のための勉強はかなりされたのですか?

堤さん:現在のように親主導で中学受験が過熱していたような時代でもないので、好きにやっていたという記憶しかないですよ。塾には行っていましたが、特に厳しく管理されていたこともないので、勉強したな、がんばったなという感じはあまりないです。

L:それは良くできるお子さんだったんですね。世の中のお母さん方がうらやましがりますね。

堤さん:いや、当時はやりたい奴がやるというだけだったんではないですか。私の地元がそうだったのかもしれませんが。

L:確かに、最近は半ば義務のように中学入試がありますからね。当時の方が趣味の世界に近かった。

堤さん:そうですね。

L:開成の同級生を見渡しても、いわゆるガリ勉みたいな感じはないんですか。

堤さん:勉強だけみたいな生徒は少ないんですよ。勉強も運動もみたいな優等生タイプが多い。

L:イメージと違いますね。そんな中で尊敬を集める生徒はどんな生徒なんですか。

堤さん:どこかしか足りない点があるとゆるやかに指摘し合う雰囲気があるため、尊敬を集めにくい雰囲気があるかな。運動も出来て・アタマも良くて・女の子からもモテモテで・リーダーシップもあって・夢もある奴が尊敬を集めますが、そんな奴はそうそういません。

L:それぞれの家庭、塾、学校で「すごい」と言われてきた子供たちだけが集められるとやはり大変な部分がありますか。

堤さん:勉強は基本的にみんなできますからね。勉強だけしかないとアイデンティティーを保つのも大変なんですよ。特に、特定の分野に対する興味とかがなく、単純に競争が好きみたいな感じだと。

L:逆立ちしても勝てないような同級生が沢山いるということですか。

堤さん:おかげで、いわゆる頭が良いとか優秀と言われている人を見たり・聞いたりしても一切驚かずに済むようになりました。でも、その状況にうまく対応出来ない人も多いんですよ。

L:「競争意識のみで来ると・・。」ということですか。

堤さん:やはり、一応各学校、各塾でトップクラスだった子供があつまって、序列が出来きてしまうわけです。早くからナマナマしい競争社会の原理を味わうので、人によってはナイーブになってしまう傾向があるとおもいます。

L:まあ、だれかはビリになるわけですから、大変ですよね。

堤さん:そうですね。そうなると子供ですから自己防衛が働くわけです。不安さからか、とにかく落ちたくない、安定したいという気持ちを強くして、必要以上に自分のポジションを決めてしまって可能性を閉ざしている感じがあります。特に、地方の公立高校なんかと比べると伸び伸び感が足りませんよ。医者・弁護士・会計士志望が多すぎです。

L:トップ層の中にいると、普通の子供も引き上げられるという期待も多いと思うのですが、やはりそれなりに大変さもあるんですね。

堤さん:まあ、その伸び伸び感のなさ、手堅さをよしとする人もいるので、人それぞれでは。世間から言われるようにナイーブで覇気があまりない傾向は認めます。結構妄想癖のあるタイプが多くて、現実感を卒業後に取り戻そうとするキライも(笑)

L:やはり東大・医学部至上主義って強いんですか。落ちると落ちこぼれ扱いとか。

堤さん:それは塾と保護者の作ったイメージです。もちろん東大・医学部志望者は多いですが、受からなかった同級生に対してどうこう思うなんてことはないですよ。普通そうでしょう。

L:それはそうですね。

堤さん:だた、その周りからの視線を強く感じすぎるナイーブな子供は必要以上にそう思ってしまうことはあるようです。

L:世間からの高い注目度は繊細な中・高生には重い部分がありますね。しかし学校側からは運動会などのイベントで結構強く育てようという意識が見られるのですが。

堤さん:その点は、良い器だと思います。勉強ガリガリ・学校の授業が厳しいというのは全くのウソ。授業は殆ど教師のマイ・ワールドな空間で、受験対策なんて一切なかったです。漢文に有名なおじいちゃん先生がいて、非常に含蓄に富んでてハマリました。ただ、もうその先生はいないと思うなぁ。

L:同級生はおとなしいようですが、反面マニアックな生徒もいるのでは?

堤さん:はい。先程お話したような受験競争社会の申し子のような弱い子もいますが、つきぬけた我が道を行くタイプもいます。そのレベルは、他の学校ではなかなか会えないほど高いので貴重です。今でも、ちょっとだけ弱々しかったけど親が教授で学者肌だったI君にはかなり感謝しています。(彼はおぼえていないと思いますが・・・)しょうもない質問から素朴だけどちょっとだけ高度な質問まで、時には大学の専門書みたいのを引き合いに出して全力でウラ技を色々伝授してくれて、かなりレベルアップしました。

L:塾には通われていたのですか。

堤さん:通っていませんでした。周りに優秀な奴がゴロゴロしているので彼らに色々と日夜質問をしたりしていると気がつけば学力がつきます。持つべきはどこまでもトコトン議論しつくせる良質な「ディスカッションパートナー」です。ピュアな知的好奇心さえあれば、非常に高いレベルで相手をしてくれる「ディスカッションパートナー」に必ず巡り合える環境だと思います。

L:学外との交流などはあるのですか?

堤さん:男の子も女の子もアルイバイトで知り合う・同級生の紹介で知り合う。飲み会で知り合う。いたって普通です。遊びも当時はボーリング・カラオケ等々、こちらもいたって普通です。

L:このインタビューは中学からの入学を考えている方が多くご覧になっているのですが、堤さんから見てどのような子供に向いている学校で、どのような子供に向いていない学校だと思いますか。

堤さん:校風自体は非常に自由で頭ごなしな所は一切ないので(今は分かりませんが・・)、多様性に対する学校自体のキャパシティは広いんです。知的好奇心が旺盛で、自分の興味に集中できるピュアさがある子供には向いているとおもいます。一方で、相対的な評価にとらわれるナイーブな性格だと、子供の早い内から現実的な自分のポジションニングを考えすぎてしまうと思います。低学年時から非常に現実的な将来設計をする子供が多いので。

L:ご自身のお子さんを開成に入れたいと思いますか。

堤さん:先程お話したとおり、知的好奇心へのピュアな探求がちゃんと育っていれば、開成は悪くないと思います。同じようなピュアな同級生が少なからずいるはずなので、刺激を受けられればいいなと。ピュアさが不十分だと、小さくまとまってしまうリスクがあるので避けるかな。

L:卒業生でよかったと思う機会はありましたか。

堤さん:良くも悪くも働きますが、ブランドはそれなりにあります。先入観ともいえるその評価をうまく活用するか否かは自分次第だと思います。ただ受験生の保護者だけは無条件にほめてくれます(笑)。

L:ありがとうございました。

(終わり)

次回第2回は雙葉学園の卒業生杉岡由梨さんです。インタビューは終わっているので近々アップします。第3回、第4回は慶応義塾中等部・慶応義塾湘南藤沢高校の卒業生(男性)と普連土学園の卒業生の方を予定しています。このお二人へのご質問を受付けております。karino@lojim.jpまで件名は「~中学の卒業生の方への質問」としてください。


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