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ロジカルシンキング 重要回 仮説思考

久しぶりにロジカルシンキングの授業紹介です。
近々授業紹介を別ページにコーナーとして設けます。
とりあえず、重要回であることと、授業掲載の実験としてメモ程度ですがブログに載せます。

今週は「仮説思考」の回でした。
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未知の問題に出会った時に、「知らない」「分からない」「習ってない」と反応してしまう生徒は、
絶対勉強なんてできるようになりません。これは断言できますね。絶対です。

そもそもそういった姿勢が小学生から身についていては、社会にでてからどうするんだろうと心配になります。

今週の「仮説思考」、
「『答え』や『結論』が分からなくても、その時点での『いったんの答え』を作り出し、それを用いることで、『答え』や『結論』により、早く近づくための考え方です。
(テキストページリンク)

小学校3,4年のうちになんとか身につけてほしい考え方です。
(もはや考え方というより能力です。それだけ身につけた生徒とそうでない生徒では問題解決能力に雲泥の差がでます。)


さて、実際問題文を見てみましょう。4,5年生のクラスで扱う例題です。

◇◇◇【問題例】◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ミネラルウォーターについての問題  (生徒配教材にはフリ仮名があります)

[説明1]  鹿児島県はミネラルウォーター生産量が日本第4位
鹿児島県についての説明・・・九州の南側に位置し、2つの半島(薩摩半島・大隅半島)とたくさんの島を有する。世界遺産の屋久島や、種子島宇宙センター、火成岩が基盤となっている活火山、霧島山などがあり、自然・文化・観光・産業などの面において、豊富な資源を有している。

[説明2] 静岡県はミネラルウォーター生産量が日本第3位
静岡県についての説明・・・茶(静岡茶)やみかん・温室メロン・温室イチゴなどの農産物の生産がさかんであり、伊豆半島から沼津市、焼津市では漁業がさかんである。日本で一番高く、活火山である富士山があり、温泉も数多くあることから観光の名所である。

[説明3] 富山県はミネラルウォーター生産量が日本第5位
富山県についての説明・・・昔から稲作がさかんであり、一部の地域ではチューリップ栽培がさかんである。また、飛騨山脈や黒部峡谷など大自然に恵まれている。飛騨山脈にある立山連峰は活火山を有しており、日本三霊山の一つとして有名である。日本海側に面するので県内全域が日本海側気候であり、雪が多く降る。

[説明4] 山梨県はミネラルウォーター生産量が日本第1位
山梨県についての説明・・・ミネラルウォーターの生産量は日本の総生産量の40%を占める。静岡県から山梨県にかけて活火山である富士山がまたがり、県の面積の8割を山が占める。甲府盆地は水はけの良い平らな土地で農業に適しており、ぶどうやももなどの栽培がさかんである。

*注釈
世界遺産…ユネスコによって登録された、人類が共有すべき貴重な価値をもつ遺跡や景観、自然などのこと。
活火山…過去に噴火した火山、もしくは現在活動している火山。
火成岩…マグマが冷えて固まった岩や石のこと。
峡谷…深い谷のこと。
連峰…連なった山をまとめて呼ぶ呼び方。
霊山…信仰の対象となっている山。

さて問題です。

ミネラルウォーターの生産量第2位の県は、どこでしょう?
各県についての説明を参考に下の①~③から選び、また選んだ理由を説明しなさい。

選択肢①山口県
・・・・・・・・・本州でもっとも西に位置する県。東側を除く三方を海に囲まれ、そのまんなかの部分を中国山地が横たわっている。下関市はフグの水あげ場として有名である。かつては石炭が採掘がさかんであったが、現在では石炭に代わって石灰石の採掘が行われている。秋吉台(国内最大のカルスト台地)や秋芳洞などの洞窟等、観光地として名高い所が多い。


選択肢②茨城県
・・・・・・・・・茨城県の気候は温暖な太平洋側気候である。日本屈指の農業地帯として有名である。県の土地の大半を平地が占め、その多くが農地である。県庁所在地は水戸市。また、国の政策によって作られた筑波研究学園都市がある。日本百名山の一つでもある筑波山や、淡水湖である霞ヶ浦などがある。


選択肢③兵庫県
・・・・・・・・・阪神工業地帯や播磨臨海工業地帯といった日本有数の重化学工業の集まった地域となっていて、近畿地方ではもっとも工場の数が多い。兵庫県の人口密度は国内8位と高い。県庁所在地は神戸市。車の交通をせきとめる原因となっている中国山地や、山のほとんどが火成岩でできている六甲山地がある。

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さて、まずミネラルウォーターの生産量第2位の県を知識として知っている小学生なんてまずいません。

ここで「習っていない」「知りません」「わかりません」という発言・態度から入る生徒は要注意です。
絶対に勉強できるようにはなりません。

まず生徒は必死にリード文からヒントを探します。
慣れてくるとこの時点で「ミネラルウォーターをたくさん作る場所に共通することはなんだろうか」
と目標点を念頭に置きながら読み込みます。

まず速い生徒がリード文から
「わかった。山だ。山が多いところだ。」と考えます。

しかし、上手くいきません。
山口にも茨城にも兵庫にも、山地や名山の記述があり決められません。

そして試行錯誤がはじまります。

次に、
「わかった! 活火山だ!活火山があるところだ。」と顔をパッと明るくさせます。
仮説構築の瞬間です。

(直接)書いてあることでもなく、また既に知っていることでもない仮説をいかにすばやく
作れるか、この授業のメインパートです。

「本当にそうかどうかわからないけど、おそらくこういうことだろう。」

この思考をクイックに積み重ね、検証し、思考を止めずに進んでいく。
この思考方法が日常生活や社会に出てからの生活・業務の中でいかに大切か、我々大人はよくわかりますね。

問題にもどりましょう。

活火山がミネラルウォーター生産のキーワードだという仮説を作りました。

しかし、
山口にも茨城にも兵庫にもキーワードと思われた「活火山」の記述はありません。

「活火山がミネラルウォーターに関係するはず」という仮説が揺るぎながらも、生徒は必死にテキストに目を通します。

すると、注釈の「火成岩」に気づきます。

ここで「火成岩は火山活動の結果できる」ということが分かります。

「ということは、火成岩があれば活火山がある(あった)といえるのではないか」という仮説が先ほどの仮説に重ねられます。

そして、選択肢③の兵庫の記述の中に、「火成岩」を見つけて解答とします。

ちなみに理由の記述・発表は必須です。
理由なき予想はあてずっぽうです。

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難易度の高い入試問題では、また、皆さんの身の回りの日常生活・社会生活では、

知識からダイレクトに解答、または解決が導かれることは希です。

「知らないこと」「習っていないこと」が当たり前です。(ですよね)


与えられた情報、常識を組み合わせて「仮説」をつくり、
それを検証し、その仮説を使って解答を導く。

これがこの授業のエッセンスです。


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