今週は桜蔭中学の理科入試問題から抜粋です。
問 2003年8月27日、21世紀最大という「火星大接近」が話題になりました。火星とその他の太陽系の星について、図と表を参考にして以下の問いに答えなさい。
問 水星の方が金星より太陽に近いのに、表面温度が金星の方がが高いのはなぜか。次のア~エから選びなさい。
ア) 水星は太陽のまわりを金星に比べ高速で回っているので太陽からの熱を受け取りにくい
イ) 水星の体積が金星に比べて小さいため熱を受け取る量が少ない
ウ) 水星の地表は水におおわれていて暖まりにくい
エ) 金星の大気が熱を吸収して温度が下がりにくい
知識問題ではありません。問題文にあるように図と表を参考にして解く、資料読解問題です。
エ
問題文中の表から、水星には大気がなく、金星の大気はその大部分が二酸化炭素であることが分かる。
↓
頻繁に話題になる地球温暖化現象を思い出す
↓
二酸化炭素が大気におおく含まれることで星の温度が上がる
頻繁にニュースや科学トピックで話題になり、
また教科書にも必ず載っている
「二酸化炭素が増えると、地球の温度が高くなり、南極の氷がとけることで海面が上がる」
という話を資料と結び付けられるかが鍵となる問題です。
(記号選択問題ですのでこのトピックを思い出した時点で正解はできます。)
また、ここで「なぜ大気に二酸化炭素が多いと大気の温度が上がるのだろうか」
と考えることが重要なのです。もちろん小学生はこのことを習いません。
しかし、
「きっと、二酸化炭素は熱をたくわえる性質があるのだ」
と仮説を立てることが重要なのです。
この仮説が立てられれば、たとえこの問題が完全記述の問題でも正解が導けます。
~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・ マニアックな知識に頼らず、与えられた資料と常識から仮説を立てる能力が重要
この問題を見て、また市販の過去問題集でこの問題の解説を見て、
「金星の大気が二酸化炭素だらけなんて知らないよ。なんて難しい問題だ・・」
「二酸化炭素が多いと、保温効果があるなんて習ってないよ」
と言っているようでは、どうやっても桜蔭中レベルには合格できません。
またこの問題の解説を読んだ上で、
「なるほど。金星の大気は二酸化炭素なのか。覚えてしまえ」
という学習をしているようでは将来が不安です。
・「知らない」という事実を受け入れること
・与えられた情報を冷静に読み取ること
・常識(知っていること)を与えられた情報と組み合わせて仮説をたてること
まさに中学入試にとどまらず、高等教育、さらに実社会で活躍するのに
必須な能力ではないでしょうか。桜蔭中が求める生徒が持つ能力です。
ロジムの授業や「今週の1問」ではおなじみのメッセージではありますが、
「知らない」「習ってない」では、何も起こらない。そこで終わります。
与えられた情報から仮説をつくり、推論を行い、解答に少しずつ近づく思考力が、中学校が、そして社会が求める力なのです。
(参考)
未知の問題に出会ったときに、どうやって仮説・推論を組み立てるのか。これがまさにロジカルシンキングです。 (ロジムテキストより抜粋)