今週は、東京大学入試からの一問です。小学校5年生以上で、「考える」練習を積んでいれば解答可能です。ロ ジムの5,6年生では5割の生徒がほぼ満点の解答でした。
下の図 は、自動車の国内生産台数と輸出入台数の推移をみたものである。
下記の言葉を参考もしくは引用して、この資料について説明しなさい。
(円高 オイルショック 貿易摩擦 海外生産)
(東京大学 改)
グラフの問題は、傾向が大きく変わっているところ(増加から減少への変化など)に注目することが大切です。
その変化の「なぜ?」について考えて見ましょう。
1976年のオイルショックで石油の値段が上がったことを機会に、日本製の燃費の良い車が世界中で注目さ れ、国内生産台数も輸出台数も急激に増えた。しかし、1980年代のアメリカやヨーロッパとの貿易摩擦や円高の発生以来、日本のメーカーが海外生産を進め 始めたので、国内生産台数、輸出台数ともにその分 が減ってきた。
グラフのポイントは、
・1975年ごろから国内生産・輸出ともに急増
・1985年ごろから輸出が急落
・1990年ごろから国内生産台数が急落
です。
グラフ問題では、トレンド(全体の傾向)が変化したところに印をつけて、
「何が起こったのか?」について考えることが大切です。
算数や理科のグラフ問題でも同じです。
上記のポイントに着目すれば、用語が大きなヒントになります。
オイルショック:1973年→石油価格の高騰
円高:1985年以降→輸出品にとって不都合
貿易摩擦:1980年以降→日本の貿易黒字拡大や外国の雇用問題
は、いずれも誰もがおぼえることになる基本事項です。
あとは、それぞれの用語の意味、背景に関する知識を結び付けるだけです。
用語を答えるのではなく、用語の説明をできるような学習をしているかどうかが分かれ目でしょう。
~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・他分野の知識・常識への意識が大切
東大の入試が変わると、同時に上位校の中学入試が変わるといわれているほど影響のある東大の2003年度地理の問題です。例年、小学生でも十分に取り組むことのできる思考力重視の良問が出題されていますし、参考にしたと思われる中学入試問題もとても多く見ることが出来ます。
問われているのは、
既習の知識を有機的に結びつける力です。
上位中学校が求めるものと同じものです。
この能力は、常日頃から上記のような趣旨の問題に集中して取り組む時間をとっているかどうかに大きく左右されます。
目の前の「厳密さに欠けるデータ」を前にして、知識と常識を動員して考察を試みる。唯一の正解を探し出すことになれてしまっていると、この取り組みはとて もハードルが高いものに思えるでしょう。中学入試でも国語・算数・理科と違って、社会は、「受験学年前の一問一答式中心の学習」と「入試で出題される総合 問題」のレベルにはとても大きな隔たりがあります。
暗記中心(これで6年夏までのテストはほとんど対応できます。)になりがちな社会の学習計画ですが、低学年時からその場で「知っていることを組み合わせ て、新しい考察を試みる」という作業を取り入れることは思考力の下地を作るのにとても役立ちます。
子供は、教科書の中の知識とテレビや新聞などに載る世の中の出来事を結びつけるのが意外に苦手です。しかし、一度そのよ うな考察をすることを覚えると、身の回りのものを結び付けてみようという意識が普段の生活の中で飛躍的に高まりまるのです。
(参考)
未知の問題に出会ったときに、どうやって仮説・推論を組み立てるのか。これがまさにロジカルシンキングです。 (ロジムテキストより抜粋)