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今週は灘より1問です。 2006-05-15



今週は灘より1問です。


下の図で、ABとCDは垂直になっています。AE=24cm、 BE=6cm、CE=18cm、DE=8cmになっています。円の面積は785cm となっているとすると、斜線部分の面積の和を求めなさい。


公式で求めようのない図形の面積を測定するには、いくつかの方針しかありません。


下の 図のように、CDに平行な補助線KLとABに平行なHGを、AB、CDと対称となるように引きます。
(交点にはそれぞれ記号をふります。)
問題の円を下のようにア~ケの9の部分に分けて考える。
斜線部=ア+イ+カ+ケ
残り=キ+ク+エ+ウ+オ
である。
斜線部と残りのそれぞれを構成する部分を比較すると
ア=キ、イ=ク、カ=エ、ケ=ウであるので、オの部分の面積がそのまま両者の差となる。
オの面積はIE×EF=18×10=180となるので、
和差算を使い、(785-180)÷2=302.5cm

答え  302.5cm


図形は単純ですが、いくつもの思考の山場がある難問です。
まず、本問のようないびつな図形の面積は、そのまま求めることはできません。

1)等積・相似の基本図形を見つける。
2)基本図形に分解する。
がオーソドックスな方針です。

2)で補助線による分解が本問の方針となります。
基本図形とは、
「正三角形や正方形、おうぎ形、等脚台形などの求積が容易なもの」、
「問題の図形と合同、相似なもの」
「対称性のある形」
の3パターンと考えてよいでしょう。

本問では、「対称性のある形」に分解してみます。
この分解という作業に短時間で論理的に
(つまり上述の基本的な選択肢の外に無駄に陥ることなく)たどり着くことが、
本問において測定されている能力といっても過言ではないでしょう。

解答のような、和差算タイプの求積問題は、一度は取組む基本問題です。
(これまで出会ったことのない人は、今回がその機会でしょう。)
そこにたどり着くまでの条件を整えさせるという難問です。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・思考の類型化が大切
算数のカリキュラムは、題材によって分けられています。
例えば、速さ、面積、割合・・・・。
しかし、本問はそのような題材ごとのパターン演習のみで作り上げられた算数の力を
簡単に切り捨てる問題です。

中学受験算数の題材がどのようなものかは、
テキストの目次や過去問の分析表によって明らかになっています。
しかし、どのような頭 の使い方が要求されているのかに着目して勉強し、
内容を整理している生 徒はほとんどいません。
この問題を単なる求積問題の一つとして片付けているようでは、いくら量をこなしても、
このレベルの問題の要求に答えることはできません。
あるトップクラスの生徒は、本問について「ベン図の考え方と似ているかな?」と
ノートに書き記していました。自分の頭で、思考の類型化を試みている確かな証拠です。

「総合問題」とは、見たことのない題材に、基本的な思考方法を当てはめる問題です。
その「基本的な思考方法」をきちんと整理することを怠っていると、
教科書の範囲名の書いていないテストが始まる時期、全く手も足もでなくなります。
出来る子は、自然と頭の中でやっていて、出来ない子はやっていない。
そして普通 のカリキュラムは、これを要求する形では並んでいないのが現状なのです。

この差を地頭の差といって、諦めるのではなく、勉強の中つねに
「これはあの問題と頭の使い方が似ている。」といったフォローをしてあげることが指導者、
保護者として大切な作業です。


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