渋谷幕張中より。未知/未習の問題の解答を推し量方法の基礎をここで勉強します。
遺伝子は,生物の形や性質を,親から子へ伝えています。親子が似ているのは,遺伝子が受け継(つ)が れている証(あかし)です。しかし遺伝子のはたらきは,親から子へ形や性質を受け継ぐだけ ではありません。生物の体も,机やエンピツと同じように,いろいろな物質の集合体です。そして,生物の形や性質を決めているのは,タンパク質という物質で す。タンパク質は,細胞の構成成分であり,また酵素(こうそ)として体内のさまざまな化学 反応を進めています。
一言でタンパク質と書きましたが,タンパク質には無限とも言えるほど多くの種類があります。私たちヒトの体も,何万種類ものタンパク質でできています。 しかし,どんなタンパク質にも共通していることがあります。それは,タンパク質がアミノ酸の集合体だと言うことです。
また,(1)タンパク質の材料となるアミノ酸は、どのような生物であっても20種類で共通してい ます。
また,材料だけでなく、細胞がタンパク質を合成する基本のしくみは、動物、植物あるいは細菌まで,すべての生物で共通しています。タンパク質の種類にお いても,植物や動物,そして細菌まで,共通するものがたくさんあります。
すべての生物は,自分が必要なタンパク質を,自分で合成します。そのときの設計図になるのが,遺伝子なのです。つまり生物は,合成するタンパク質の種類 の分だけ,遺伝子を持っているのです。
親から子へ伝わる遺伝子の一部に変化があり,合成するタンパク質が変わると,生物の形や性質にも変化が表れてきます。生物は,長い年月をかけて,小さな 遺伝子の変化を積み重ねてきました。私たちヒトが一人一人ちがうのも,その結果なのです。
問
下線(1)についてです。動物の体は,20種類すべてのアミノ酸をつくることはできません。 ヒトの成人の場合,体内でつくることができるのは12種類 です。
では,植物の場合はどうでしょうか。適切なものを,次の(ア)~(ウ)から選びなさい。また,選んだ理由を,「植物は……。」という文で説明しなさい。
(ア)20種類すべてをつくることができる。
(イ)自分では1種類もつくれない。
(ウ)植物ごとにつくれる種類が異なる。
(渋谷教育学園渋谷幕張中 問題の一部を抜粋)
植物を構成するアミノ酸などもちろん未習だと思います。だからこそ、論理的に仮説設定および断定・論述をするのです。
記号: (ア)
理由:植物は、動物のように他生物をエサとして摂取することがないため、もしも自分でアミノ酸を全種類作れないと、すべてのアミノ酸を体内に取り入れるこ とができない。
シ ンプルでいい問題だと思います。
ポイントは、
・知らない問題にあたったときにあきらめずに思考をすすめられるか
・仮説をつかった論理展開 → 説明記述 ができるか
です。
自分の常識や感想を駆使すると、
「植物はいろいろな種類があるんだから、つくることのできるアミノ酸だっていろいろなはずだ」
と思ってしまうものですが。ここで、自分の主観にしばられない思考が必要なのです。
動物はアミノ酸20種類中、数種類しか作れない(ヒト成人で12種類)
↓
自分で作ることができないアミノ酸はどうやって得ている??
↓↓
食料として、他のからとっているはず!
それでは、植物は、
もし、植物が20種類すべてのアミノ酸を作れないとしたら
↓
植物は(少数の食虫植物を除いて)エサをとらないので、自分で作れないアミノ酸を摂取できない
植物が作るアミノ酸や、そもそもアミノ酸って??という
受験生でも、思考力により解答できる問題です。
~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
仮説をもつことが出発点
ロ ジムではお馴染みのフレーズですが、
「知らない、習ってない」では何もすすみません。
手を止めずに、仮説設定→自分の知識・常識をつかった検証を、
多数かつ高速に繰り返すことができる人間こそが、中学校に求められる人材でないでしょうか。
さらに、仮説を検証し、解答を類推する過程で是非知っておいてほしいのが、
「もし~~だとすると」と仮定をおいて、その矛盾を説明し、「~~ではない」と
説明する方法です。
仮説設定・検証や、背理法による論理展開にしろ
年長者にとってのスキルのようですが、実は中学入試の世界でも
シビアにもとめられています。
そういったことを、近年人気急上昇の渋谷幕張中の
入試問題を通して実感してください。
(渋谷幕張2次の記述問題は、論理能力を試す良問ぞろいです)