麻布中より。作業量の見通しの有無が、試験の全体を左右する問題です。
次の問に答えなさい。
(1)0.32をできるだけ簡単な分数で表しなさい。
(2)ある分数を小数で表し、小数第3位を四捨五入すると0.32になりました。このような分数のうちで、
分母が最も小さいものを求めなさい。
(麻布中)
(2)は(1)の答えをスタートラインにしてみましょう。
(1)
32/100を約分して8/25
答え:8/25
(2)
(1)の答えである8/25は小数では0.32であるから、
「四捨五入して0.32になる」という条件に適する。
つまり、「分母が25より小さい分数」という範囲内で探せばよい。
しかし、この範囲で探すとなると
分母1:1/1
分母2:1/2,2/2
分母3:1/3~3/3
分母4:1/4~4/4
を順に小数化して「0.315以上0.325未満」が現れるまで試行することになり、
範囲が大きくなりすぎる。
ここで分子に着目すると、
8/24が0.333・・・となり条件の範囲を超えることから、
8/25よりも分母が小さく、条件の範囲に入る分数の分子は7以下であることがわかる。
つまり分子1~7で条件に適する分母を探せばよい。
分母1について考えると
1÷0.325=3.07・・・・
1÷0.315=3.17・・・・
より分母が3.07・・・より大きく3.17以下となればよい。
この間に整数は存在しないので分母1は不適
同様に分母2以上を調べていくと
分母6について
6÷0.325=18.46・・・・
6÷0.315=19.04・・・・
となり、その範囲内に初めて整数19が現れる。
よって求める答えは6/19とすることができる。
答え:6/19
ある程度の作業を通じて絞り込んでいく問題ですが、
工夫をする力によって解答に至るまでにかかる時間が大きく変わってくる問題です。
小問のようですが、平成16年度試験の大問5番です。
見た目の簡単さによりほぼすべての生徒が取り組んだはずですが、
ほかの大問と同様手ごたえのある問題です。
調べ上げの方針を立てながらも、作業の分量をしっかりと計算し、
ほかの近道を検討する。時間配分を他の問題とバランスをとらなくていけない
本番ではとても重要な能力です。
「分母が問題になっているときに分子に着目する」これは、
図形の問題で「容器の中で水が入っている部分が問題になっているときに、
空の部分に着目する」というように様々な応用が利く思考技術です。
単問として取り組ませるよりも、
試験の中に配置することで取り組む生徒の能力を緻密に判断する問題です。
~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
作業の見通しを検討する力が大切
場合の数など、「地道な数え上げ」という解法が存在する分野では、
一歩間違えると途方もない作業に陥ってしまうことがあります。
また、意外と少ない書き出しで確実に答えを確認できるのにも関わらず、
計算のみで誤答に至ってしまうこともあります。
これらの分野では、「だいたいの作業量」を常にイメージしておくことが大切です。
数十の書き出しなのか、数千なのかがわかるだけでも方針がある程度固まるはずですし、
それくらいの概算はあまり知識やひらめきを必要としません。
気合を持って踏み出す地道な一歩が、どれだけの道のりに続いているのかを計算すること。
冷静と情熱の間にバランスよく立つことを求める良問です。