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今週は、理科分野からの一問です。 2005-10-24



今週は、理科分野からの一問です。


 天気のよい日には、太陽が昇るにつれて温かく感じるようになりま す。太陽による、ものの暖まり方や、気温と地中の温度の変化について考えてみましょう。

  太陽の光を利用して、日なたで1リットルの水をできるだけ早く温める工夫をしました。

(1) 次の1)、2)のような工夫をしたところ、水が早く温まりました。その理由をそれぞれ書きなさい。

工夫1) 水を金属製の容器に入れた。
理由:                                

工夫2) 容器にふたをした。
理由:                              

(2) 上の1)、2)以外にも、いろいろな工夫があるでしょう。そのうち3つを考え、工夫と理由を書きなさい。

(武蔵中 改題 平成12年)


(1)
 工夫1:日なたにおいた鉄の棒と、プラスチックの棒では触れたときの温度に違いがあるのは感覚的に分かるはず です。さて、それでは金属の性質を考えてみましょう。
 工夫2:ふたをするときとしないときで、変わるものは何かということに着目しましょう
(2)身の回りで、温度が高いものを思い浮かべ、どうしてそれが高温になっているのか考えてみましょう。


(1)
工夫1)の理由:
金属は熱を伝えやすく、太陽の熱を効率良く容器中に つたえることができるから。
工夫2)の理由
熱が逃げるのを防ぐことができるから。

(2)
(工夫例1)容器の色を黒色にする 
(例1理由)黒い色は光をより多く吸収することができるから。

(工夫例2)凸レンズで光を集め、容器にあてる 
(例2理由)より多くの光の量を容器にあてることができるから。

(工夫例3)細長い容器に水を入れる /広く平らな容器に水を入れる
(例3理由)容器が太陽光を受ける表面積を大きくすることで、受ける光量の合計を増やすことができるから。

(工夫例4)容器の周囲を鏡で囲む
(例4理由)太陽から直接あたる光だけでなく、鏡から反射しゃれる光も受け取ることができるから。

(工夫例5)密閉された透明のガラス箱の中に水の入った容器を置く 
(例5理由)容器のまわりの空気の温度が保温され、周囲の暖かい空気により容器が冷えるのを防ぐから。


(1)
(工夫1)金属は熱を伝えやすい性質をもっています。

(工夫2)ふたをすることで、水面から熱が逃げるのを防ぐことができます。また、水蒸気の発生がおさえられるので気化熱による温度減少をおさせることがで き ます。

(参考)水分が蒸発するときに表面の熱を奪います。これが気化熱です。例えば、予防注射の前に、脱脂綿で消毒をします。そのときヒンヤリするのは、消毒薬 (アルコール)が蒸発するときに、腕の表面から熱を奪うからです。

(2)
早く温めるということは、
・ より多くの熱を吸収する
・ 熱の放出をより防ぐ
ということです。ここに着目します。

つまり

・より多くの熱を吸収するためには?
→より多くの光をあてる

・より熱の放出を防ぐには?
→熱がにげるのを防ぐ。熱をできるだけその場にとどめる

と考えはじめるのがスタートであり、科学的視点の基礎である論理的な考え方です。

また、身の回りの「温かいもの」がどうして温かくなっているのかを考えます。例えば、炎天下に白い帽子をかぶるのは、黒い頭髪が熱を吸収するのを防ぐため です。ビニールハウスの中が温かいのは、熱が逃げるのを防いでいるからです。

基礎的な知識を使い、柔軟な思考力により解答を導く良問です。

教科書に書いてある「より早く容器の中の水の温度を上げるには」の工夫 例を丸暗記していたのでは成績はのびませんし、「考える力」という観点から生徒の将来が不安です。

解説にも書きましたが、
「容器の温度をより早くあげる」とは
→1.受け取る熱量をふやす
→2.にげていく熱量を減らす  であり、

このように物事を構成 要素に分解して考える思考法を身に付けることが、将来につながる勉強法です。

そういった意味で、この問題は、「物事を構成要素に分解し、整理し、論理的に 結論を導く」
能力の基礎が身に付いているかを試す問題なのです。

 また、身の回りで「温かいもの」を想像して答えを導くという能力も必要とされています。身の回りの科学的事象に多く関心をもち、理由を考える。まさ に中学校が生徒に望む能力ではないでしょうか。
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~ 今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~

・物事を構成要素に分解する能力が重要
たとえば、有名な例だと、「やせる方法」を
1.エネルギー消費を増やす 
2.エネルギー摂取をへらす 
3.排せつ量を増やす(下剤の使用や脂肪除去) 
というよ うに、物事を構成要素に「もれなくだぶりなく」分解します。その要素ごとに対策を考えると言う能力は、試験問題だけでなく、科学の現場やビジネスの現場で も最 重要される能力の一つです。

・ 身の回りの科学事象にたえず関心をもつことが重要
暗記に頼らない解答作成で、やはり重要なのは「経験」からの「類推」です。できるだけ多くの身近な事象に対し「なんでだろう」を持ち、それを調べるという 習慣を持つようにして下さい。


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