今週は麻布中学算数入試より1問です。
容器A に食塩水が400g入っています。これを空の容器BとCに200gずつ入れ、さらにBには食塩を10g、Cには水を100g入れてよくかき混ぜました。次 にB、Cから食塩水を210gずつAにもどしてよくかき混ぜたところ、最初と同じ濃さの食塩水ができました。この食塩水の濃さは何%ですか。ただし、濃さ とは食塩水の重さに対する食塩の重さの割合のことです。
(麻布中)
「食塩水を混ぜる問題と言えば」で機械的に解き始めてしまうとお終いです。
容器Aの食塩水400gに含まれる食塩を【2】とおくと、(*以下、【 】を用いて比を表す)
最初の作業で分けられた容器Bと容器Cにそれぞれ食塩が【1】ずつ含まれることになる。
ここで、容器Bに食塩を10g加えると結果として
(【1】+10)gの食塩が容器Bの中に残る。
そして、容器Cに水100g加えると、食塩水全体は
200+100=300g
になる。この中に10gの食塩が含まれていることになる。
以上より、容器Bから戻される210gの食塩水の中には
【1】+10g
の食塩が含まれ、
(容器Aには200+10=210gしか食塩水がないので、含まれる食塩はすべて戻される)
容器Cから戻される210gの食塩水の中には
【1】×210/300= 【0.7】
の食塩が含まれる。
容器Aに戻された食塩水は420gであり、
これが最初の食塩水と同じ濃さであるからこの戻された食塩水に含まれる食塩は
【2】×420/400= 【2.1】 となる。
よって(【1】+10g)+ 【0.7】 =【 2.1】 という関係が成立する。
これより
【0.4】=10g
となる。
はじめの食塩水に含まれていた食塩は【2】であるから、
10÷0.4×2=50g
となる。
よって、食塩水の濃さは
50÷400×100=12.5%
となる。
答え 12.5%
この問題の難しいところは、一見普通の濃度の 問題に見えるところです。
この年(平成15年度)の麻布中の算数は、異例の1番小問題4問というスタート。
長いリード文と積み重ねていくタイプの小問が並ぶ
通常の形式とは違った出題に戸惑った受験生も多数でした。
小問ということですが、内容はさすが麻布中。
すべてがパターン解法では太刀打ちできないものでした。
問題をしっかり読み、条件を書き出す。その書き出し方も重要。
正確で用途にあった形の線分図など、問題文をよく読み、必要な形で整理する能力が問われています。
基本をあやふやにしたままに、
試行錯誤タイプの麻布対策だけをしてきた受験生を、きちんと落とす良問ぞろいでした。
本問は、なにも考えずに天秤図を書き出してスタートすると迷路に迷い込みます。
・時間経過に沿って出 来事を整理する。
・数式化して整理し、比較してみる。
という算数においてもっとも基本的な作業を丁寧に行うことが必要です。
~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・麻布でも地道な作業をする能力は重視します。
御三家レベルでは、計算問題や小問は、受験生のレベルからすると必要ないと判断されることが多く、出題も少ないのですが、本問においては反射神経でとくだ けではなく、丁寧な作業を毎回きちんと、すばやく行うという気構えが必要だと言えます。
ここ数年、麻布中の算数は地道な数え上げや当てはめなどの地道な作業を伴う問題が多くなって気ました。もちろん、それぞれに高度なセンスが求められるもの ではありますが、かつてのような「ひらめき」への偏りはなくなっています。
麻布中志願者の典型的な志向として、洗練された切れ味鋭い解法を求めるというものがありますが、その質実な能力を 麻布中が求め始めたのは明らかです。
夢見る数多くの未来の麻布志願者に、麻布受験者になる覚悟を問うているともいえます。
あらゆる問題で丁寧な読み込み、精密な計算能力、書き出しと数え上げが求められます。
世間一般の自由・洗練なイメージのみで麻布中を志願している子供たちには、
一度取り組ませてあげることで麻布中の本当の姿を確認させることのできるメッセージ性のある良問です。