今週は東邦大学付属中東邦より1問です。
下の図のように左から順に正方形をならべ、各頂点を結んでいきます。この直線(対角線)について次の問いに答えなさい。
(1)4枚目をならべると、3枚ならべたときよりも直線は何本増えますか。
(2)7枚ならべると、直線は全部で何本になりますか。
(3)直線が150本を越えるには、少なくとも何枚の正方形が必要ですか。
(東邦大学付属中東邦)
(2)までの結果をしっかりと考察してみましょう。
正方形の枚数と直線の本数を表にしてみると下のようになる。
正方形の枚数がn枚のとき、直線の本数は
n×(n+1) 本
となっています。
(1)表より、
20-12=8
答え 8本
(2)上記の式において、nが7の場合を考えると
7×(7+1)=56
答え 56本
(3)
nが11の場合
11×(11+1)=132
nが12の場合
12×(12+1)=156
よって
答え12枚
見抜く力と同時に、
・すばやく整理し規則性の発見のための考察
・検討に時間を割くという思考プロセス
が身についているかどうかが勝負の分かれ目です。
そもそも理系志向の強い生徒が集まる学校です。
こういった問題に、粘り強く取り組む姿勢は身につけておいてほしいものです。
本問のように、規則性を見たことのない式で表さなくてはいけない問題は近年頻出です。
「nを使っ た式であらわせ」という出題もかなり見られるようになりました。
まず多くの漸化式タイプの問題に当たっておくことが大切です。
規則性のパターンは、高校生でも手を焼くぐらい様々なものが考えられます。
少なくとも典型パターンだけは頭に入れておいたほうが良いでしょう。
「漸化式を作る」という意識付けもとても大切な要素です。
合格最低点という考え方では、(1)と(2)でどうにかなるものですが、
普段の思考トレーニングとしてしっかりと取り組んでおきたいタイプの問題です。
きちんと表にしたり、「見やすい形に整理する」ことは、「気付き」が重要となる本問においてはとても大切なものです。論 理の積み上げだけでなく、「見やす くすることで、ある突破口に気付く」というアプローチは、中学受験においてとても大切な身につけておいて欲しいものです。
~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・初見の事象に対し粘り強く考察する力が大切です。
理系教育に力を入れていると公言する東邦大学附属東邦中学校。
その言葉通り、理科系研究において最も基本的な能力である「粘りづよい考察力」を問う良 問です。
(1)と(2)は、丁寧に見やすく(この作業の正確さも、理系として必須の能力ですね。)書き込んでいけば全く問題ありません。
(3)が問題です。
1枚目~7枚目まで(鋭い生徒は4枚目まで)の結果を元に、法則を見つけ出さなくてはいけません。
本問は図形の範囲ではなく、数の規則性、数列で言う漸化式の問題です。
f(n)=n×(n+1)を導き出すのは、そう容易いことではありません。
(もちろん、nというパラメーターの概念がなくても、□や?等と置くなど、小学校中学年の生徒でも
回答可能です。)
そもそも図形が前面に押し出されていること、そして図形内の直線の複雑さにかなりの受験生が圧倒され、とばしてしまいがちです。
(1)と(2)の誘導により、かなり易しくなっています。(1)、(2)で、書き出し可能な範囲の問題により誘導し、(3)で何百番目というような、規則 性を活用しなくては対応できない問題を出すというのは典型的な流れです。
試験当日はともかく、折角の受験勉強の過程においては、このような実験考察問題に時間をかけて取り組んでいくことは貴重な体験となるのではないでしょう か。