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今週は桜蔭中理科より1問です。 2006-03-06



今週は桜蔭中理科より1問です。


 地球上に存在する水の重さの97%が海水です。その他の2%が南極大陸やグリーンランドの氷河、1%が北極海の氷山や地下水などであると考えられていま す。南極大陸やグリーンランドの氷河だけがすべて海水となると、関東地方のかなりの部分は完全に海水面の下になると予想できます。このとき海水面の高さは およそ何メートル上昇(じょうしょう)しますか。
 答えは四捨五入して整数で答えなさい。ただし、海水面の上昇により陸地の面積は変わらず、また水温の変化などによる水の体積変化もないものとします。必 要があれば下の数値をしようしなさい。

地球の表面積全体に対する陸地の割合 :29パーセント
海の平均の深さ :3800メートル
地球の半径 :6400キロメートル
(桜蔭中)


物事をいかにシンプル化できるか、モデル化で きるか、です。
「必要あれば」とあるとき大抵ヒントの数値は使うものですが、本問では・・・


78 メートル

問題文には(水⇔氷)の体積変化を無視するとあるので、南極の氷すべてが溶けると、地球上の水が2%分増加することになる。

(もとからある海水の体積):(増加した海水の体積)
=97 : 2
=(もとからある海の深さ):(増加した海面の高さ)
=(3800メートル): ?

よって、?= 3800 / 97 ×2 =78.35・・・

答え 78  メートル



球の表面積・体積を習っていないのですから、球で考え始めたらアウトです。
(仮に大人が、球で考え始めても海面と陸地の標高差の条件がないのでドツボにはまります)

では、どうするのでしょうか。

地球を直方体のシンプルなモデルとして考えます。
(「そんなの思いつかない」と思うかもしれないでしょうが、球を書いてみたり、円を書いてみたりして試行錯誤を続ければ行き着くはずです。)

上図の ? が求めたい、海水面の上昇分です。
問題文には(水⇔氷)の体積変化を無視するとあるので、南極の氷すべてが溶けると、地球上の水が2%分増加することになる。

(もとからある海水の体積):(増加した海水の体積)
=97 : 2
=(もとからある海の深さ):(増加した海面の高さ)
=(3800メートル): ?

よって、?= 3800 / 97 ×2 =78.35・・・

答え 78  メートル


「南極の氷がすべてとけると、海面が約70メートルあがる」と言うのは、有名な話です。
(ためしに、「南極の氷」 「溶ける」 「海面」 といったキーワードで検索してみてください)


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・複雑な事象を、シンプルに考えることができますか?
・手持ちの知識をつかって数段階におよぶ思考を展開できますか?

解説にも書きましたが大人がこの問題にトライすると、大抵、球の断面図の絵を書き、
4πr2乗等の表面積の公式をいじくり、途中で挫折します。また、与えられた数式を
いじっているうちにそれらしい答えがでることもありません。

物事をシンプルに考えられますか。複雑な物事を、シンプルなモデルとして捉えられますか。
これが今回桜蔭が投げかけているメッセージです。

そして、「シンプルに考える」というのは、一朝一夕にできる能力ではありません。

答えまでの作業マップを絶えず頭に描いては修正していく必要がある問題が桜蔭では頻出です。
目の前の数字や数式をいじくり答えにたどり着くことはありません。答えを求めるために求めなくては
いけないもの、さらにその求めなくてはいけないものを求めるために、必要なものはなにか、
絶えず数歩先を見ながら処理を行う能力が必要なのです。
その処理を繰り返した先に本問のようなシンプルなモデル化があるのです。

いくつもの模式図をかき、自分ができること、できないことを考えた末に上のような直方体の
モデルにたどり着くのです。そして桜蔭中学が求めているのが、まさにそういった経験をつんでいる生徒なのです。

「考えに考えて、結局シンプルなモデルにたどり着く」科学者が得る喜びとは、
こういったものなのかもしれません。


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