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市川中より1問です。 2006-06-05



市川中より1問です。


下の図のようなおうぎ形OABがあります。このとき,次の問い に答えなさい。
(1)円周率は3.14とし、おうぎ形OABのまわりの長さを、四捨五入して上から3けたのがい数で求めなさい。
(2)円周率を3として計算すると,おうぎ形OABについて,いくつかの問題が起きます。この間題の1つを13字以上52字以内で説明しなさい。(市川中)


(2) は(1)を導入として使ってみましょう。


(1)弧AB=2×3.14×1/6=1.046・・・
よって半径2つ分を加えると
1+1+1.046・・・=3.046・・・
うえから3けたのがい数に 直すと
3.05
よって
答え  3.05平 方センチメートル

(2)
(1)におい て、求めた弧ABの長さは、円周 率を3とするt
2×3×1/6=1
となり、半径と 同じ長さになる。
つまり、おうぎ 円ではなく、明らかに正三角形となってしまう。


(1)を導入に使うことが、唯一の突破口。
あとは、何百回としてきた円の面積、周の計算をどのように見つめてきたかが問われました。

導入授業で最初に示された後、
ほとんど触れられることのない公式や定数の意味をしっかりと捉えなおす出題は、
超上位レベルの学校で 出されても低正解率になります。

しかし、数の性質と同様、普段何気なく処理し ている手法の仕組みは、
大学入試にまで応用が利くとても重要な考え方です。
3年、4年、5年で「初めて習ったときの説明」を再度確認してください。
勉強が進んだ後でも、大きな気付きがあるはずです。


~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・出会った知識を掘り下げる探求心こそがすべて

円周率3騒動
(実際は、円周率を3としてすべての指導が行わるという方針だったたわけではないのですが、
大騒ぎでしたね。)の時の出題です。

当時は、東大でも似たタイプの出題がありました。

「文科省への出題による抗議」という特異な時代背景を持った出題だと捉えず、
算数の勉強姿勢を正すきっかけとしてもらいたい出題です。

そもそも、円周率とは何の「率」なのだろうか。
円の面積を求める仕組みはどのようなものか。

小学生が知識として叩き込まれるものの成り立ちには、先人たちのとても柔軟な発想が寄与しています。

「身の回りのものを測量できればよい」という立場では、
これらはブラックボックスの中に入れたままにしても全く問題はないでしょう。
それどころか、余計な体力を使わずに済みます。

しかし、皆さんが進もうとしている中学校は、
数学を含め新しい知の枠組みを作り出す人間を育てようとしている学校です。

「とりあえず入学してから。」「まずは目先の試験。」といった姿勢は、
結局は入学後も続き、大学受験の訓練場としてしか中学・高校の場を活かすことができないでしょう。

何よりも、ものの成り立ち・背景・本質にこだわる。

この姿勢を身につけることは、志望校対策の何倍もの力を身につけさせてくれることでしょう。
当時も今も、過去問分析に奔走する関係者に、学校が本当に欲しい人物像を見せ付けてくれる良問です。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・ 「計算方法を知っている」ことと、
「計算の意味を理解している」ことは違う
・「筑波大附属は、基本問題中心だから、基本問題集を何度もくり返すべき」

本校に限らず、よく聞かれる浅はかな過去問分析です。
特にハイレベル校において、
「基本問題中心」とは、「計算問題や教科書的典型問題をスピーディーかつ正確に解かせる問題構成」という意味ではありません。

四則演算や図形の成り立ちなど、基本原理を活用して、複雑な問題を美し く解く。
と定義したほうが近いでしょう。


基本原理は、必ず(とくに小学校の教科書や塾の導入章において)説明されています。
その部分を飛ばして、表面的な演習(つまりとりあえず慣れろという方法論)に走る子どもたち(むしろ指導者たち?)に強く警鐘を鳴らす問題です。

例えば、ガウスの等差数列の和の公式と台形の面積の求め方の基本原理は同じです。
どちらも必ず習う公式ですが、基本原理の類似性をしっかりと理解していると、
この2分野以外でも応用のきく考え方になります。

折角たくさんの問題に取組むのです。帰納的に収斂させ、検証するという作業を加えることで、
高い仮説検証能力を身につけることに繋がります。
「基本事項からの出題」という縛りの中で、ハイレベルの受験生に対応してきた本校の問題は、
「基本」の大切さをきちんと理解できる生徒を選りすぐるのに適した良問となっています。


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