今週は岡山・金光学園中より1問です。
図1は、地球儀を電燈で照らしているところを示しています。図 2は、図1を真上から見た図です。また、A~Hの地点には、マッチ棒を垂直に(地球の中心に向けて)立てています。電橙を太陽と考えて、次の問いに答えなさい。
(l)図のように光を当てているときA、B、Hの地点のマッチ棒のかけはどのようにできますか。下の(ア)~(ク)から選びなさい。
(2)地球の自転の方向は、図2のア、イのどちらですか。
(3)地球儀を回転させて、真北にできるマッチ棒のかけの長さを見るとき、D地点のときにできるかげの長さと等しいかけができる地点はどこですか。
(4)A地点は、ちょうど太陽が南中しているときにあたります。G地点の時刻は何時ですか(午前・午後を使って答えなさい)。 (金光学園)
図 1や図2をにらめっこしていると余計に混乱します。そもそも影の長さと向きは、差し込む太陽の方向と高度が決めるということに立ち返ってみてください。
(1) A・・・ア B・・・ク C・・・ウ
(2) イ
(3) F
(4) 午後6時
(1) まず、A、D、H の位置での観測時、太陽が南中しているから、影は真南・真北にのびる。
(↑ 上記解説の意味が分からない人は、もう少し学習がすすんでからこの問題を考えること)
上図のように、A・Hそれぞれの位置の地平線がどうなっているのかを考える。
A は南側から太陽の光が当たる → 影は北にできる → (ア)か(イ)
H は北側から太陽の光が当たる(30-23.4=6.6度分だけ) → 影は南にできる → (ウ)か(エ)
Aの影が(イ)だとすると、それより影が明らかに長くなるHでの影を(ウ)か(エ)から選べない。
よって、Aの影は (ア)であり、Hの影はそれより明らかに短い(ウ) となる。
Bに関しては、Aと同じ緯度であるため、Aと同じ角度で、南側から太陽がさしこむ。
また、自転の方向を考えると太陽は西側から差し込む。
つまり 南西から太陽の光が差し込む → 影は北東方向にのびる
したがって解答を得る。
(3) マッチ棒の長さが共通ですから、影の長さはそれぞれの位置の地平線に対する、
太陽の差し込む角度によります。
太陽の差し込む角度は、緯度が同じならば同じです。よって、Dと緯度が同じFが解答。
(4) 時差をきめるのは経度です。
(同一経度上の時刻は等しいということの詳細解説は割愛します。
この図で言えば、例えばC-F-G は同じタイミングで南中を迎えます。)
したがって、Gの南中時刻とCの南中時刻は等しい。
CはAにくらべ、90度東側に存在する。つまり 90度分、例えば、先に南中を迎えたり、朝日を迎える。
360度回転するのに24時間かかるので、90度分だと、6時間分 (360度:24時間=90度:時間)
先に南中を迎える。
~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・ 仕組みを理解して初めて暗記を行うこと
→ 暗記はしようとしてするのではなく、完全な理解と同時に自然としてしまうもの
理科天体分野ほど、教科書知識の丸暗記により点数を落とすことにつながる
分野はないでしょう。
頭の中で物事をグルングルン動かさなくてはいけないという性質上、この分野を苦手とする生徒は
大変多いのが実情です。
「上弦の月の一週間後は満月だ」
「北極星の周りを星は反時計回りに回る」
「夏のほうが日が長い」
「月の公転周期と、満月から満月になるまでの期間は2.2日ずれる」
「冬至の日の南中高度は90度-緯度-23.4度だ」
などということを、他者に説明できない状態で暗記していると、
「あれ、上弦だっけ、下弦だっけ?」
「あれ、南の空では反時計?時計回り?」
「南半球ではどうなるの?単純に反対?」
「冬至の南中高度の式中の記号はプラスだっけマイナスだっけ?」
などと、すぐに受験生の暗記主義を打ち崩すべく用意された問題に混乱することとなります。
たとえば、本問(1)でも
「冬の季節に北半球では太陽は南側を通って東から西へ進む」という知識からでもA=ア は解答可能です。ですが、上記カッコの丸暗記で済ませている場合、 Hを考える際に「あれ、南半球の時はどうなるんだっけ」と戸惑うことは必至でしょう。丸暗記で足元をすくわれることの多い事の例です。
前回の今週の1問でも書きましたが、
「とりあえず覚えてしまえ」という勉強法および指導法は、
長く将来にわたって活きる能力をつけるという目的に対しては悪です。
自分が原則を理解したうえで学習を進めているのか、
(上に紹介した天体分野の約束事を他者に説明できますか??)
自分の教師は将来にわたり役立つ学習指導をしているのか
(あなたの指導者は「とりあえず覚えちゃって」などと言っていませんか??)
を計るのに良い機会を提供してくれる1問です。