大阪星光学院中より1問です。普段の問題演習に対する姿勢が問われます。
下の図のような、AからGまでの道があり、その距離は30km です。道ABとFGは平地で、他は坂道です。平地を時速4km、坂道は、上りを時速2km、下りを時速6kmで歩くと、AからGへ行くのに7時間30分か かり、逆にGからAへ行くのに11時間30分かかります。
AからGへ行くとき、すべての下りの距離の和は上りの距離の和より何km長いですか。
(大阪星光中)
ノーヒントです。
問題で与えられた図は、下のように上りと下りをそれぞれ1つにまとめて考えることができます。
AからGへ行くのに7時間30分、GからAへ行くのに11時間30分かかったということは、
つまりAからGへ進むときのほうが、GからAへ進むときよりも合計の距離は同じでも、
下りの部分が多いということです。それは、下の図の丸で囲まれた部分のことです。
つまり、この部分の長さを求めればよい。
問題は、時速6キロで歩く時と、時速2キロで歩くときに
11時間30分-7時間30分=4時間
の差がつく距離を求めるということになる。
時速6キロと時速2キロは、速度の比は3:1。
つまり同じ距離を進むのにかかる時間の比は1:3となる。
この比の差の2が4時間なので、比の1つ分は2時間となる。
時速6キロでかかる時間は2×1=2時間、時速2キロでかかる時間は2×3=6時間である。
よって、求める距離は
時速6キロ×2時間=12キロ(時速2キロで考えても時速2キロ×6=12キロ)
答え:12 キロ
ポ イントは、そもそも問題において「上りと下りの合計」が問われているということ。
また与えられた時間が、AからGとGからAという単位で考えられていることです。
この状況を鑑みて、単純化つまり
「問われている数値を求めるために必要十分な形に変形」することが突破口になります。
そもそもこの単純化(モデル化)によってよけいな情報をそぎ落とす技術は、
限られた知識しか持っていけない試験会場において初見の問題を解く上でもっとも重要なものです。
本問のようにそもそもの情景自体を変形させるのは、なかなかレベルの高いものですが、
普段の問題演習のなかで、「取り組んだ問題は単純化すると、どの基本問題に行き着くのか」
について考えることは単純化(モデル化)の技術力を高めます。
本文では、有名な「峠を含んだ速さと比」の基本問題に行き着くのです。
~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
実験、体験から学ぶ基本姿勢が大切
単純化、モデル化に完全な正解はありません。
自分が同じだと思った類題が本質的には違っていたり、
違うと思っていたものが本質的には同じだったりすることが多々あります。
大切なことは、次に出会った問題、事象に自分で考えたモデルを当てはめ、修正していく仮説 検証能力です。
この能力を身につけるための大前提は、
手探りの中で仮説を立ててみるという姿勢です。
教科書の目次に並ぶタイトルが、最適な整理基準とは限りません。
(むしろ近年ではこれらのタイトルを横断した出題が意識的に増やされているとさえ言えます。)
正解のない中で、自ら試行錯誤の中で体系化を試みる姿勢は、同校の求める人物像です。
そして本問は、その姿勢を数年間の受験勉強の中で身につけてきたかを問う良問となっています。