学習院女子中より。「ものを考える」とはどういうことかを教えてくれる良問です。
シドニーオリンピックの聖火リレーでは、特別に開発された水中 用トーチ(たいまつ)が使われました。これは水中でも陸上と同じように、聖火が光をだして燃え続けることができる装置です。どのようなしくみにすれば、水中で聖火を燃やしつづけることができるのでしょうか。あなたの考えを書きなさい。図を用いてもかまいません。
(学習院女子中)
闇雲にアイデアを考えてはいけません。「発火 するとは」ということにまず落とし込みます。「要件を満たすようにうする」という言葉/考え方が最大のヒントになります。
(例 1)燃料の出口を発火点とし、火元に酸素をおくりこむ酸素ボンベをとりつける。また、この酸素によって水をたえず押し出し、発火点に水が入り込まないよう にする。また、最初に点火をしてから水中に入れる。
(例2)熱を加えると酸素を発生する物質と火薬をまぜたものを棒状にする。燃えた分だけ、棒状の装置から火薬と酸素発生物質の混合物がせり出してくるよう にする。点火後に水中にいれる。
も のが燃えるためには、
1) 酸素がある
2) 発火点以上の温度である
3) 燃えるものがある
という条件が必要です。
本問は、この三点を満たす装置を考えることで解答の作成が可能です。
「水中トーチってどうやってつくる?」と闇雲に考えるよりも、
「酸素を十分に供給するには?」
「燃えるもの自体を供給するには?」
「火元の温度を下げないようにするためには?」
と、構成要素ごとに細分化して考えるほうが格段に思考は先に進みます。
つまり、この問題を言い換えると、
「燃焼条件を整理し、その条件ごとに対策を考えなさい」という問題になります。
実用できる完璧な装置を考えるのではなく、
「必要要素」に物事を分解するスキルを問われているのです。
~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
物事の「構成要素」に着目、そして整理する能力を身につける
物事を考えるときに、とくに、アイデアがまったくうかばないときにどうすればいいか。
受験生に限らず多くの人々が抱える悩みではないでしょうか。
そして、多くの人が抱える悩みであるのに、
それが教育という現場できちんと教えられているかというとはなはだ疑問です。
(欧米にくらべ、日本では小学生が「物事を考える方法」を教わる機会が余りにすくない!と痛感し、
そういった場の提供をするというのがロジムのそもそもの設立目的です。)
今回の問題では、
「物事を構成要素に分解することで、具体的にアイデアをすすめる」というスキルを紹介しています。
「お金もちになる方法は?」という課題に際し、思いつくままにアイデアを列挙するよりも、
お金持ちになる方法を、 1) 収入を増やす 2)出費をへらす に分解して、それぞれの場合でさらに分解してアイデアを考えるほうが、思考は進むし、ア イデアに網羅性が生まれます。
ほかにも「ダイエットする方法は?」を「入ってくるエネルギーをへらす」「消費するエネルギーを増やす」「脂肪を除去する」というように分解して、それぞ れ考えるなどは、ロジムの授業だけでなく、「ロジカルシンキング」という分野ではおなじみの題材です。
「考える」というありふれた行為ではありますが、そこにはスキルがあるのです。
本問は、そんなスキルの一つ、「構成要素に分解する」という最も重要な思考スキルの一つを
チェックする代表的な問題です。