開成中理科入試より。理科の問題と考えずに、情報整理能力を問う問題だと考えるべきです。
植物は光が当たると二酸化炭素を吸収し、酸素を放出して、でんぷんをつくります(これを光合成といいます)。その一方で、私たちと同じように呼吸も行っ ています。二酸化炭素と酸素だけに注目してみると、次のようになります。
今、話を簡単にするために、次のようにします(本当は少し違います)。
・光合成で吸収される二酸化炭素と、放出される酸素の体積は同じ。
・呼吸で吸収される酸素と、放出される二酸化炭素の体積は同じ。
・光合成の行われ方は、光が強くなったり、温度が高くなれば活発になるが、呼吸の方は、温度が高くなると活発になるが、光の強さには左右されない。
う
これらをもとに、次の実験を行いました。
[実験]
右の図のように、とう明なプラスチックの箱を 6つ用意し、それぞれの箱の中に、同じ大きさのヘチマのなえを入れます。
(各箱内のヘチマは、条件が同じなら、同じ割合で光合成と呼吸
を行うものとします。)
条件として、
光の強さは3種類(強い光…A、弱い光…B、暗黒…C)、
温度は2種類(30℃…a、20℃…b) とし、
これらを組み合わせて右の表のように6種類の 箱(イ~ヘ)をつくりました。
なお、強い光なら、光合成での二酸化炭素や酸素の出入りの方が、呼吸での出入り よりもはるかに多量です。
実験を続けて3時間後に、箱内の二酸化炭素と酸素の割合を、それぞれ気体検知管で調べました。その結果を考えて次の各問いに答えなさい。答えは箱の記号 イ ~ヘで答え、同じものを何度選んでもかまいません。また、これまでに述べた条件だけからでは1つにしぼれない場合は、その可能性があるものすべてを選びなさい。
間1 30℃のときの呼吸による変化だけがあらわれたのはどれですか。
問2 酸素の割合が最も多くなったのはどれですか。
間3 二酸化炭素の割合が最も多くなったのはどれですか。
間4 二酸化炭素と酸素の割合が、実験開始前とほとんど変わらなかったのはどれですか。
とある結果に対する原因を特定、整理します。
問 1 ハ
問2 イ、 ニ
問3 ハ
問4 ロ、 ホ
「同時に複数のことを考える」
小学生ならずとも多くの人が苦手とする行動ではないでしょうか。
しかも、その複数が、互いに影響していればなおさらですね。
光を強くすると、光合成を活発にして酸素を増やせるが、同時に呼吸も活発になるので、酸素は減る。
違う方向の反応が同時に起きるわけです。
こういった問題を考えるときは、
・問題をよく読む → 条件整理の準備を徹底する
・ドライバー(結果を生む要素)に視点を置く
が必勝法です。
まず、問題文をよく読んだ上で、
下記のような表を書きます。こういった表が書ければ、話はずっと簡単になります。
問1
30度において呼吸だけ → 光合成しない → 30度で光がない → ハ
問2
上図より温度をあげることにより、酸素と二酸化炭素の増減は相殺されるため、温度の差を無視することができる。よって、光を強くしている イとニが解
問3
二酸化炭素の割合が多い→ 光合成を出来るだけしなく、呼吸を盛んにしている
光合成をゼロにしても呼吸はできるため、光をゼロにし、呼吸を盛んにするために温度を上げる。
光ゼロ、温度最高の ハ が解
問4.
光を強くすると、上図の(3)の列の影響が大きく、必ず酸素と二酸化炭素のバランスは必ず崩れる(酸素が多くなる)
光をゼロにすると、上図の(2)の列の反応しか起こらず、バランスは必ず崩れる(二酸化炭素が多くなる)
光を弱い光Bにすることで、(1)(2)(3)の列の反応がバランスをとって相殺することがありえる。
問題文の「また、これまでに述べた条件だけからでは1つにしぼれない場合は、その可能性があるものすべてを選びなさい。」に注意してください。実際、ロとホが同時に「実験開始前後の酸素、 二酸化炭素量が同じ」であることはありえません。
~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
「ドライバー」をさぐる意識
ロジム今週の1問ですっかりおなじみとなった常套句「構成要素」に分解する
理科・算数だけでなく、国語や社会、はたまた身の回りの困難を
処理するときにとても効果的な方法論です。
全体を動かす部分要素をドライバーといいます。
(変数≒パラメータ と近い意味です)
全体の結果を生む構成要素は何か。
導かなくてはいけない解までの距離が遠ければ遠いほど、この「ドライバーをおさえる」
という考え方は効果的です。
本問では、全体として「酸素が増える」という結果を引き起こしているドライバーが
いったい何かを正確に樹形図としてとらえる必要があります。
全体を把握するために、構成要素の複雑な関係を把握する。
構成要素を把握するために、正確に場合分けをする。
本問は、これから各界の未来のリーダーとして、多くの複雑な問題を解決することを期待されている
皆さんにおくる、開成中学からの挑戦状であり、贈り物です。