
思い切った視点の切り替えが求められる問題です。
下の図のように4つの長方形と2つの台形からできた容器に水が 入っています。これにさらに水を注ぎ込んだところ、水面の高さは21cm上昇し、水面の面積は252平方センチメートルになりました。
(1)最初の水面の高さは何cmですか。
(2)最初の水面の面積は何平方センチメートルですか。
(3)省略
(大阪星光学院中)
「立体図形の問題」だということにとらわれると選択肢が狭まってしまいます。
(1)
下のように真横から見た形で平面図形として考えます。
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水を増やす前の水面をFL、注ぎ足したあとの水面をEMとします。
求めるのはFB=CGの長さです。
EMの長さは、252÷12=21cm
AI=EH=FG=BC=9cmなので
HMの長さは21-9=12cm
ここで三角形CIDと三角形CHMの相似を考えると
ID:HM=(30-9):12=7:4
よって
CI:CHも7:4
CI=84cmなので
CH=84×4/7=48cm
GHは、水を注ぎ足したときの水面の上昇分なので問題文より21cm。
よってもとめるべきCGの長さは
48-21=27cm
答え: 27cm
(2)
求めるべき面積は
FL×12で求めることが出来る。
ここで三角形LKMと三角形CIDの相似を考える。
LK:CI=21:84=1:4
よってKM:IDも1:4
ID=21cmなので
KM=21×1/4=5.25cm
よってEK=FL=EM-KM=21-5.25=15.75
故に求めるべき面積は
15.75×12=189平方センチメートル
答え: 189平方センチメートル
面積を求める問題では、
「目で見て見当をつける」
という作業が大きな重要性を持っています。
相似、合同や二等辺三角形、正三角形の発見は、
大体の見当をつけて、確認作業をするというプロセスで
ほとんどの場合に対応しているといえるでしょう。
本問のように、立体上の面積を求める場合、
与えられる図は多くの場合が斜め上方からの描写になります。
こうして与えられた図形上において、
面積を求めるべき図形は、当然実際とは違った形で描かれます。
そのような状況では、合同や相似の活用など
「目で見て見当をつける」
ことを手がかりに進める解法を発見しづらいのは言うまでもありません。
面倒くさがらずに平面に落とし込む。
その図を見ると、
頭が平面図形モードに切り替わり
「補助線」「合同、相似」などへの感度が高まるのです。
~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
場面に応じて最適な視点に切り替えることが大 事
今週の一問で何度も扱っている「単純なモデルへの変換」という思考技術ですが、
本問は「単純化」という効用だけでなく、
「見慣れた形式へと土俵を移す」
ことに大きな価値があります。
解説にもあるとおり、見たことのある風景の中では
武器を選択する判断力も格段に高まるのです。
初めての問題に対応するとき、
「今までに同じ問題に出会わなかったか」
と考えるパターン認識力をもつことは応用力の第一歩ですが、
単純に同じ問題を探すのではなく問題を分解して
「自分の知っている知識・技術を使える部分はどこか」
という思考でとっかかりをつかむという
高次のパターン認識力を持つことはさらに大きな武器になります。
その場その場で視点を切り替える柔軟性と思い切りの良さが問われる良問です。