渋谷教育学園渋谷中学より。表面的な知識ではなく論理の積み上げを行わせる1問。
地球上では,いろいろな物が太陽の熱をうけとります。うけとった熱は,ほかの物に伝わりながら,宇宙へ放出されていきます。うけとった熱のほうが多いと温度は上がり,放出された熱のほうが多いと温度は下がります。うけとる物によって,温まりやすさ,さめやすさにちがいがあります。水は,どちらかというと,温まりにくく,さめにくい性質をもっています。このような性質の物は,その中に多くの熱をためることができ,地球上からの熱の放出を防いでいます。
地球上では,赤道付近が最もうけとる熱が多くなっています。また,赤道付近では,うけとる熱にくらべて放出される熱が少なく,北極や南極の近くでは逆にうけとる熱よりも放出される熱のほうが多くなっています。このままでは,赤道付近はどんどん暑くなり,極付近はどんどん寒くなってしまいますが,実際には熱が移動するので,そのようなことはありません。
空気が冷やされると,空気中にふくむことのできる水蒸気の量が少なくなるため、ふくむことのできなくなった水蒸気は,液体の水になります。こうしてできた水の粒が空気中にただよっているのが雲や霧(きり)です。また,何かの表面についたのが露(つゆ)です。
(1)空が雲でおおわれた日は晴れた日にくらべ,1日のうちの気温の変化が小さくなります。 気温が上がらないのは,太陽の光が当たらないのが原因です。では,夜から朝にかけて気温があまり下がらないのはなぜですか。その理由を上の文の内容にそって説明しなさい。
(2) 平野部で朝に霧が発生していると,その日の天気は良くなることが多いです。その理由を簡単に説明しなさい。
(3)秋の朝,地面は乾いているのに,駐車場にとめてあった自動車の車体には,夜露がついていました。地面に露がついていないのに,自動車の車体に露がついているのはなぜですか。その理由を上の文の内容にそって説明しなさい。
(渋谷教育学園渋谷 抜粋)
霧ができるとはどういうことですか。そしてそもそも気温が下がるとはどういうことですか。
(1)地温が大気に放出されるのを雲がさまたげるから
(2)霧の発生の原因は急激に温度が下がったことだと考えられる。急激に温度が下がったということは、地上の熱が大量に大気中に放出されためであり、上空に熱の放出をさまたげる雲がなかったと考えられるから。
(3)自転車が地面にくらべより温度が大きく下がったから。
「気温が上がる」という事象は太陽の存在からイメージしやすいのですが、
「気温が下がる」というのはいったい何がおきているのかきちんと考えたことがある小学生はごく少数です。
まず、気温をあげているのは、直接的には太陽の光ではありません。
太陽の光が地面を暖め、そして地面が空気を暖めているのです。
気温が下がるということは、地面が熱を放出し、そして冷え、周辺の空気の熱を奪うということです。
(熱は高いところから低いところへしか伝わりません。
多くの生徒が間違えて理解していますが、 何かが冷えるのは、冷たい何かが伝わったのではなく、熱をうばわれるからです)
これを前提として、
霧が発生 →なぜなら、温度が急に下がったから → なぜなら、地面が急に冷えたから → なぜなら、地面の熱が大量に放出されたから → 熱の放出をさまたげる雲が上空になかったから
つまり、雲がなかったわけです。雲がない → 晴れ ということです。
~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
数段階の「だから」「なぜなら」に耐える粘り強さを。
以前にも同じメッセージをあつかったと思います。
「論理的思考力」とはまさに、断片的なヒントや知識を「だから」や「なぜなら」でつなぐ力です。
「あの人は優秀」「あの人はあたまがいい」といわれる生徒に共通して身についているのが、
長い時間をかけて、何段階にもおよぶ「だから」をつなげあわせる忍耐力 です。
普段から、塾や学校で反射・反復練習に終始している生徒や、すぐに保護者や先生から答えや解説を
受け取っているような生徒には決して身につかない能力です。
たとえばですが、
「ツバメが低いところを飛ぶと雨がふる」
http://freedom.mitene.or.jp/~tsune/page8-4-12.html
(ロジムでは低学年の生徒でもイメージしやすいように、羽が重くなるという説明を採用しています。)
この内容を、
まず大人が生徒に一旦説明する
→
生徒が大人にその内容を説明する
というのはロジムでもやっている論理積み上げの練習の一つです。
ぜひご家庭でもやってみてください。たとえば、途中で
「虫が低いところを飛ぶから、ツバメも低いところをとぶ」という説明になるかと思います。
ここでも厳しく「なんで虫が低いところを飛ぶと、ツバメが低いところをとぶのかの説明がぬけている」と指導してみてください。
大人と違って小学生はすぐにコツをつかんでくれるはずです。