ラ・サール中より。自然科学・理科の学習で特に必要な能力「式の意味を日本語で理解する」というスキル。
<1> ある地域で生活する動物の数をおおまかに予想する方法を考えてみましょう。ある地域に1000匹の動物が生活しています。このうちの100匹をつかまえて印を付け,逃がします。再びこの地域から100匹をつかまえ,10匹に印が付いていたとすると,式(X)をつくることができます。ただし,式(X)を利用して,動物の数を予想するには次のA~Dの条件を満たしていなければなりません。
A 印を付けたものと,印を付けていないものが自由に動きまわり,十分混じり合うこと。
B 調査する地域で,動物の数の変化や入れ代わりがないこと。
C 付けた印が,とれないこと。
D 印を付けたものと,印を付けていないものの,つかまりやすさに差がないこと。
<2> 畑で生活するモンシロチョウの数の調査についてまとめました。畑において,飛んでい るモンシロチョをつかまえたところ,150匹がオス,50匹がメスでした。これらすべてに印を付け,つかまえた場所で逃がしました。翌日,再び同じ場所で同じ時間に飛んでいるモンシロチョウをつかまえたところ, 160匹がオス,60匹がメスでした。その中には,前日に印を付けたものがオスに80匹,メスに6匹含まれていました。この調査において,オスとメスでつかまえた数に違いが生じたのは,メスは卵を産むために,オスほど飛びまわることができないからです。
(1)<1>の式(X)について,(つかまえた後,印を付けた動物の数)をP,(ある地域で生活する動物の数)をQ,(再びつかまえた中で印が付いている動物の数)をR,(再びつかまえた動物の数)をSとした場合,式(X)として成り立つものを選びなさい。
ア.P:Q=S:R イ.P:S=Q:R ウ.P:S=R:Q エ.P:Q=R:S
(2)<2>の畑で生活するモンシロチョウのオスとメスの数をそれぞれ予想しなさい。
(ラ・サール中)
A:B=C:Dというのは、Bの中にAがいる割合と、Dの中にCがいる割合が同じであると読むことができます。
(1)エ.P:Q=R:S
(2)オス:300匹 メス:500匹
(1)
問題文をじっと見ていても答えにたどり着くまでに時間がかかってしまいます。
問題文を自分の言葉で読み替えるのがコツです。(と、いってもそれが難しいのですが・・)
Q匹のうち、P匹に印をつけて、それをまたごちゃごちゃにまぜます。
つまり
Q匹のうち、P匹はいつでも印がついている というわけです。 (Q=100 P=10 ならば いつでも10匹に1匹は印)
つまり、どういった数をとりだしても、その中には、〈Q匹中 P匹〉という割合で印のついた個体がいます。
これを式にあらわすと、P:Q=R:S になります。
【別解】
また、より統計学的に考えると、
どの集団にも P/Q の割合で 印のついた個体が存在するので、
R=S×(P/Q) ⇒ P:Q=R:S
(なんにせよ、この種の問題を解くには、しっかり問題文を読み込める読解力が最低限必要となります。)
(2)
(1)で導いた比例の式に条件となる数字を当てはめます。
~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
具体的な数字を一般化する力を培う
この種の問題は問題集をいくらやってもなかなか出会うことはありません。
多くの受験生にとって、初めて出会う問題になったのではないでしょうか。
しかし、ここで「難しい。よく分からない」と投げ出す生徒と、
「とにかくもう一度よく読んで考えてみよう。」という生徒の差がまさに合否の差になったのでしょうか。
そういった意味で、初見の問題に対する粘り強さ、基本的な数式の意味の根本理解、
数に対するセンス、思考力を瞬時にチェックする良問といえますね。
とりわけこの問題でチェックできるのが、「数字を一般化する能力」です。
具体的な数字や事象を読み解き、それを文字式にしたり、図式化する。言ってしまえば簡単ですが、
受験から社会生活まで大きな差を生む大事な能力です。
具体的な数字を処理するというのは与えられた公式・定理・フレームに物事を当てはめることです。
しかし、本問出題校が求めるものは、物事をあてはめる応用力以上に、フレームを生み出す創造力です。
社会の枠にはまる人間でなく、枠を創りだす人間になってほしいという卒業生に求める資質がこの問題からも汲み取れます。