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栄光学園中より。与えられた条件の意味を掘り下げる力が問われます。 2007-05-07



栄光学園中より。与えられた条件の意味を掘り下げる力が問われます。


20名のあるクラスで次のような方法で席替えを行いました。
(1)くじで2人1組のペアを10組つくる。
(2)そのペアになった2人の間で席を入れ替える。
(3)(1)、(2)をもう一度くりかえす。
席替えをした後も席替えをする前と同じ席に座っている生徒が11名になることはありえません。その理由を答えてください。

(栄光学園中)


ありえないとされる「11」という数字の特性に着目してみましょう。


1回目の(1)(2)の席替えで必ず全員が自分の席を離れることになる。
2回目の席替えを考える。

ある人が元の席に戻るためには、
1回目終了時点で元の自分の席に座っている人、
つまり1回目の席替えでペアになった人と2回目の席替えでもペアにならなくてはいけない。

このとき、相手も元の席に戻ることになる。
つまり、2回目の席替えである人が元の席に戻るということは、
1回目の席替えの相手も元の席に戻ることを意味する。
よって2回目の席替え終了時点で、
元の席に戻る人数は必ず2人の倍数になるので問題の「11人」は該当しない。


「どんな方法によっても」11人がありえないことを説明するというのは、コツが必要です。

A)すべての方法を試して11人という結果がないことを示す。
B)「11人」という個別の数字ではなく、
「奇数はありえない」「過半数はありえない」など「11」のもつ特性に着目して証明の目標を緩くして論証する。

のどちらかです。
A)を稚拙だと決め付けてはいけません。高々数十通りの可能性であればそのほうが完結な場合もあります。
今回は、B)です。ほとんどの受験生が2回の席替えの場合の数はかなり多いことを容易に想像すると思いますので、
B)の方針で検討したことかと思います。

「すべて」「かなら」の証明にはある程度の習熟が必要ですので、
身の回りや通常のディスカッション・説明の機会を活かしていくことが大切です。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
論点を適宜変形していく力が大切

証明は中学生の範囲ですが、
論点の整理と論証の方向付けの能力というものは小学生に対しても十分に問うことの出来る分野です。


本問で問われているのは
「とあること」を証明するということは、何を意味するのか。
ということを掘り下げる力です。

直接は説明できなくても、同じことを意味するものを見つけ出し、
そちらの説明へと方針を転換する。

身近なものでは対偶をつかった証明など「間接的な」証明能力が問われる場面は少なくありません。

与えられた条件を様々な角度から検討し、知識を動員して同値なものに確実に変形していく力は、
未知の問題を身近な問題に引き寄せる能力としてまさに応用力そのものと定義できます。

本問はその力を測る良問ですし、同じ形式を出題し続ける本校が最も大切だと考える能力であることを宣言している問題ともいえます。


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