桐朋中より。基礎知識は複合化できてこそ理解したといえます。
aグラムのアルミニウムを試験管に入れ、これにbグラムの塩酸を入れたところ、アルミニウムがすべてとけました。とけた後の水溶液の重さをはかったところ、cグラムでした。この水溶液を加熱して、水を蒸発させていくと、にごりはじめ、水が無くなるとdグラムの個体Eが得られました。
問1
以下の量の組み合わせで、右に記した重さが大きい場合は、「右」、左に記した重さが大きい場合は「左」、等しい場合は「同」と書きなさい。
(1)(aグラム+bグラム、cグラム)
(2)(cグラム、dグラム)
(3)(aグラム、dグラム)
問2
個体Eをdグラム取り、これがちょうどとけるまで水を加えました。ここで生じる水溶液の重さがfグラムとすると、fとcではどちらが大きいですか。次のア~エから1つ選び、記号で答えなさい。
ア. fの方が大きい
イ. cの方が大きい
ウ. fとcは等しい
エ. これだけでは判断できない
(桐朋中・抜粋)
受験生ならだれでも知っている反応です。現象を丸暗記せずに式のかたちで理解できていますか。
問1 (1)左 (2)左 (3)右
問2 イ
下の(化学)式が書けるかどうかですべては決まります。
書けない人は、どういった反応が起きているのかという理解をおこたり、教科書に書いてある結果のみを暗記し
理解したつもりになっている人です。
そして大事な基礎知識が反応の前後で質量の変化はありません。つまり上記反応の左辺と右辺の質量は等しくなります。
また、塩酸水溶液が、塩酸が水に溶けたものだという基礎知識がきちんと応用できるかどうかも確認すべき点ですね。
問1
(1)上式を参考にするまでもなく、逃げていった水素の分だけcが軽くなります。
(2)上式参照
(3)塩酸とアルミニウムの反応は、大雑把に言えば、「塩酸が2つに分解し、一つは水素として気体として空気中に出ていき、もう一方はアルミニウムと化合する」反応です。アルミニウム自体は複数に分かれてはいません。
問2
「にごりはじめる」という状態がどういう状態であるかに着目できるかどうかが鍵となります。
にごりはじめる→飽和水溶液となるということであり、これがつまりfの状態です。
cグラムから水をとりのぞいて、fグラム になるのですから c>fです。
~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
知識の複合化ができるまで理解を掘り下げる
この問題であつかっている内容は、我々が普段「塩酸」として扱うものが本来「塩酸水溶液」であることの理解であったり、
塩酸とアルミニウムの反応であったり、飽和水溶液の知識であったり、
それぞれは基礎中の基礎といった知識です。
が、これらがうまく複合され出題されると、その知識理解の甘さが露呈するものです。
「基礎問題はわかるのに応用になるとどうも」 といった声の大半はここにあるのですが、
こういった場合、基礎問題も本来分かっていないのです。本当に「理解」したというレベルまでいっていないのです。
この問題が教えてくれることの一つは、
「基礎として紹介される事象でも、それを応用するには想像を超える努力が必要であること」であり、
「簡単に『理解した』と納得しない癖をつける大切さ」です。
そして、保護者・指導者は、苦労をいとわず、そして決められたカリキュラムを消化することにとらわれることなく、
教科書レベルの事象の深堀の重要性を生徒に今一度説くべきです。
本当に生徒は、基礎レベルの知識を理解しているのか。疑ってかかることも時には必要です。