« 駒場東邦中より。複雑な立体切断を基本定理に落とし込みます。 2007-06-04 | メイン | 灘中より。割り算の筆算ができますか? 2007-06-18 »

麻布中より。求められているのは直感力や発想力なのでしょうか。 2007-06-11



麻布中より。求められているのは直感力や発想力なのでしょうか。


高いところから静かに小石を落とすと,小石はどのように落ちていくでしょう。

 16世紀から17世紀に活躍したイタリアの学者ガリレオ・ガリレイは,この「落体の運動」について初めてくわしい実験を行い,その法則を明らかにしました。そのころの学者はみんな「重い物体のほうが軽い物体より速く落ちる」と考えていました(図1)。ガリレオは「重い物体も軽い物体も同じ高さから落とすと,同じ速さで落ちて同時に地面に落下する。」と主張して,ピサの斜塔の上から大小2つの鉄の砲弾を落とす実験をしてみせたという話が伝わっています。

 ガリレオは実験だけでなく,(1)同じ高さから物体を落としたとき,重い物体のほうが,軽い物体より速く落ちると仮定すると,矛盾が生じることを示しました。以下この矛盾について考えます。

 大きく重い鉄の球A,小さく軽い鉄の球B,そして,A,Bと大きさと重さがそれぞれ等しい2つの鉄の球を接着剤でくっつけたものをCとし(図),それらを同時に同じ高さから落とすとどうなるか考えてみます。

まずCをひとかたまりのものと考えます。

問1 下線部(1)の仮定が正しいとすると,A,B,Cはどの順で落下することになりますか。下のア~オの中から選びなさい。
ア.A,B,Cの順に落下する。
イ.A,C,Bの順に落下する。
ウ.C,A,Bの順に落下する。
エ.AとCが同時に落下し,Bが後で落下する。
オ.Aが先に落ち,後でBとCが同時に落下する。

 つぎにCを重い球の部分と,軽い球の部分の2つに分けて考えると,(2)(1)の仮定から,重い球の部分は速く落ちようとし,軽い球の部分はおそく落ちようとして,たがいに引き合うことになります。

問2 下線部(2)から考えると,A,B,Cはどの順で落下することになりますか。問1のア~オの中から選びなさい。

問3 問1,問2から考えると,「重いものが軽いものより速く落ちる」という仮定はまちがっていることになります。その理由を説明しなさい。

(麻布中・抜粋)


知識を当てはめようとせず、これまで使ったことのある「考え方」を当てはめてください。


問1 ウ
問2 イ
問3 「重いものが軽いものより早く落ちる」とすると、その仮定にもとづいてCを一つのかたまりと考えるときと、CをAとBの二つの部分で考えたときで、本来同一となるはずの実験結果が異なる。これは明らかにおかしい。よって、最初の仮定が誤っていたということが言える。



問2 大きい球の重さをG、小さい球の重さをgとする。 G>g。

AとCをくらべる。C大きな球はCの小さな球に引っ張られるためAの球よりも遅く落ちる。 

BとCを比べる。Cの小さな球はCの大きな球に引っ張られるためBの球よりも速く落ちる。

これより、Cの球は、Bよりも速く落下し、Aよりも遅く落下する。

問3 <<とある事象が間違っていることを説明する方法>>
   
とある事象が正しいとして、話を続けると明らかな矛盾や、あきらかな事実との相違があることを説明。
⇒よって、とある事実が正しいという仮定がまちがっている。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
思考方法で分類された学習方法を確立してほしい

麻布中学や武蔵中学でよくあるタイプの問題ですが、教科書に掲載されているような問題とは全く違い、おそらく同様の問題を解いたことのある受験生はいないと思います。

見たところ、勘のいい小学校低学年・中学年の生徒でも正解できるのではないかとすら思われます。
(実際、教室では3年生で複数人正解の記述ができていました。)

麻布中は、これまでの受験勉強の内容ではなく、ひらめきや直感力、勘の良さを持った生徒を欲しているということでしょうか。

もちろんそんなことはありません。

この問題などは典型的に「論理の積み重ね」を行う訓練をしてきたか、仮設を持って話を進める訓練をしてきたか、そして、「説明する」といった作法を体系的に学習してきたか、を試している問題です。

たしかに教科書や問題集の章立て構成に従い、学習塾のカリキュラム消化につき合わされっぱなしの生徒にとってこの種の問題は大変やっかいです。

教科書の章立てでの勉強方法は確かに便利で分かりやすいです。しかし、「今日は滑車の章だから滑車の知識をつかって問題を解く」というような学習パターンが身についてしまうと、上のような問題に対して対応できなくなることがあります。


日々の学習の中で、自分が使っている思考方法をたえず意識する。
「この問題は典型的な推論問題だな」「この問題はいつもの『間違っていることを証明』するタイプだな」
e.t.c

与えられた知識分野別の章立てカリキュラムだけでなく
「思考法で分類された学習方法」を自分で実践すべきです。


メールで更新を受信

「今週の1問」のメール配信を受け取る場合はこちら:

2014年07月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

アーカイブ

lojim_official_blog