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「植物は、光が当たるほどよく育つ」と単純に思い込んでいませんか?2008-05-19



植物の育ち方と光の関係。多くの生徒が間違って理解しています。


同じ条件の畑で、ヒマワリやホウセンカの種をまき、その育ち方を調べました。これについて、次の問いに答えなさい。

問1 ヒマワリの種を図1のA、Bのようにまきました。その後の育ち方について正しいものを次のア~オから選び、記号で答えなさい。ただし、すべてBと比べたときのAのようすを表しています。

問2 図2のようにホウセンカの種をまき、数日後育って大きくなったあとでX-Yの断面を調べました。これについて、次の(1)、(2)に答えなさい。


 (1) X-Yの断面として、最も適当なものはどれですか。下図のア~ウから選び、記号で答えなさい。
 (2) (1)で選んだ断面について、~のホウセンカのうち最もくきが太いのはどれですか。数字で選び、番号で答えなさい。


「植物は、光が当たるほどよく育つ」と単純に思い込んでいませんか?


問1 ウ
問2 (1)ウ、(2)



問1 

植物は、「光合成」によって、光のエネルギーを得て、自ら養分を作り出すという特別なはたらきをしています
(正確に言えば、光のエネルギーを閉じ込めるために養分を作るわけですが…)。

  太陽からの光は、この地球全体に届きます。つまり、単純に考えれば、この世界を植物が覆い尽くすほどエネルギーが盛んに作られることになります。では、想像してみてください。地面いっぱいに植物が茂っていたら…?

  ●ヒトが暮らす場所がなくなる?
  ●緑で土の水分が奪われ、地割れで地球がこわれる?
  ●むしろ、地球温暖化を防ぎ、暮らしやすくなる?

  いいえ、そもそも植物が地面を覆い尽くすことはないのです。
  
植物が生きていくためには、もちろん光が必要です。しかし、地球に届く光は限られています。つまり、増えすぎた植物どうしは、光の奪い合いを行うのです。簡単に言えば、限られた食料の中で、多数の動物が生きるには限度があるということと同じです。  

この問いでは、Bに比べて密集したAだと、光の当たりにくい場所ができ、十分に育つヒマワリが少なくなると考えられます。

しかし、多くの植物は生命のエネルギー源である光を心底求めています。そして、全エネルギーを光を浴びることを優先に使います。この結果、本来葉を大きくし、茎を太くし、効率よく光を浴びることを忘れて、光の当たりにくい植物は背丈をひたすら伸ばしてできる限り光を浴びようとする傾向にあるのです。

問2

 同種の植物どうしで光を奪いあうわけですから、問1と同様に考えることができます。ここで、太陽の動きを考えてみると、東→南→西となります。つまり、右図のように光の当たりやすいところ()、当たりにくいところ()に分けられます。

よって、X-Yの断面を見れば、中央部分は光が当たりにくく、端の方は光がよく当たることがわかります。

光が不足するほど植物は背を伸ばそうとするわけですから、中央部分は背が高く、端の方は背が低くなるのです。また、このことより中央部分はくきが細く、端の方がくきは太くなります。

たしかに植物は、光が当たるほどよく育つのですが、それは茎の太さ、背丈、葉の大きさ、根のはり方などの総合バランスについてであって、この問題のように背丈だけで考えれば必ずしも「光が当たるほどよく育つ」とは言えないのです。


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