タイトル 2008-06-23
初見の問題は、難しいと思い込んでいませんか?
地層がいつごろできたものかは、地層の中に含まれている物質が長時間かかって別の物質に変化する性質を利用して求めることができます。そのような物質の中にウランとよばれる物質があり、ウランは7億年たつと、もとの重さの半分が鉛という物質に変化します。すなわち、
100gのウランは7億年たつと50gが鉛に、さらに7億年たつと残り50gのウランのうち25gが鉛に変化することになります。
問題
とある地層を調べると、ウランの重さが1.0g、ウランから変化したと考えられる鉛の重さが7.0gでした。この地層ができたのは、今からおよ そ何億年前ですか。答えが割り切れないときは、小数第一位を四捨五入して整数で答えなさい。
問題文から、ウランは7億年ごとに半分が鉛に変化していることがわかります。
21億年前
問題文から、ウランは7億年ごとに半分が鉛に変化していることがわかります。
例えば、最初のウランを1とすると、
[第1段階]7億年後にはウランが1/2になり、鉛が1/2できています。→ウラン:鉛=1:1 [第2段階]さらに7億年後には、1/2のウランが半分になるので1/2×1/2=1/4になり、そのときにできた1/4の鉛をあわせて鉛は全部で1/2+1/4=3/4できています。→ ウラン:鉛=1:3
[第3段階]さらに7億年後には、1/4のウランが半分になるので1/4×1/2=1/8になり、そのときにできた1/8の鉛をあわせて鉛は全部で3/4+1/8=7/8できています。→ ウラン:鉛=1:7
ここで、問題ではウラン1.0g、鉛が7.0gになっているので、上記から第3段階まで進んでいることがわかります。よって、答えは21億年前となります。
この問題では、7億年ごとにウランの半分が鉛に変わっていくわけですが、結果的にウランと鉛の合計量は変化しません。つまり、上記のように最初にウランが1あったとすれば、第2段階以降における鉛の量は、(1-ウランの量)で求めることができます。また、このことを利用すると次のような別解で比較的簡単に求められます。
[別解1]
さかのぼって考えると、鉛は1段階もどるごとに倍になっていくことがわかります。よって、結果の1段階前は鉛が1×2=2gあったことになるので、ウランに変化したのは2-1=1gとわかります。よって、ウランはこのとき7-1=6gあったことになります。このようにして、1段階ずつさかのぼってみると、
[別解2]
鉛とウランの合計量は一定であることに気づければ、この問題でははじめ鉛が1+7=8gあったことがわかります。1段階さかのぼるごとに鉛の量は2倍になっていきますから、1g→2g→4g→8gと3段階さかのぼればよいのです。よって、7億年×3=21億年前となります。
まとめ
理科の問題の中にも、算数的処理をすることで楽になるものは決して少なくありません。
この問題が別解2 で処理できるならば、どれだけ入試で有利であるかは容易に想像できるでしょう。
しかし、それ以外の解法は 普段避けるべきなのでしょうか。
いいえ、それはちがいます。
たとえばこの問題のように、多くの生徒が初見と感じる問題に「最適な解法」がその場で即座に浮かぶはず がありません。そもそも、自分が最適と思った解法であっても、それを越える適当な解法が出てくることもそ う珍しいことではありません。
要は、「知らない、わからない」という段階から、「調べる、確かめる」という段階を経て、正答を導き出す中で、何か規則を見出すことが非常に重要なことといえます。
これは時に、特別な解法を知っていて即答できることよりも絶大な力を発揮することが多いものです。
近年、子供たちは間違えることを恐れて一発で(妙に美しく)正答を得ようとしなければならないと思い込んでいる姿が多く感じられます。そうではない、いかに多くの考え方を知るか、気付くか、ということが大切なのではないでしょうか。
これこそ、受験(合格)が目的なのではなく、「成長」が目的である学習の軸であるといえるでしょう。