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納得するには、それなりの知識が必要になります。 2008-07-14



納得するには、それなりの知識が必要になります。


 下の図のように、温度計を入れた3本の試験管A、B、Cに、それぞれ水、氷、砂を20gずつ入れ、水は0℃に、氷と砂は-10℃に冷やしました。そして、同じように加熱しながら時間と温度の変化を調べた結果、下の表のようになりました。表の中の空らんX~Zにあてはまる数値を、それぞれ答えなさい。


ヒントではありませんが、実はXの正答率が非常に低いです。

X…100
Y…0
Z…23



まずは、状態変化について説明します。

物質には、固体、液体、気体と3つの姿があり、これは温度によって変化していきます。
つまり、外から与えた熱エネルギーによって温度が上がっていき、姿を変化させられる温度になったところで変化しはじめるのです。

このとき、受け取ったすべての熱エネルギーを変化のために使うので、その間温度は一定になります。
つまり、受け取った熱エネルギーの使い道は、
(1)温度上昇、
(2)状態変化しかないということです(厳密には、発熱・吸熱が関係しています)。

いま、試験管A(水)に注目してみましょう。

最初0℃だったものが、規則的に変化していることがわかります。
水は、0℃で氷→水に変化し、100℃で水→水蒸気に変化します。
つまり、0℃から100℃の間では状態変化が起こらないため、受け取った熱エネルギーをすべて温度上昇に使っていることになります。

2分間で12℃ずつ上昇していることから、18分後は96+12=108としたいところですが、
100℃を越えてからは水→水蒸気の状態変化が起こることで、温度上昇は起こらなくなります。

すなわち、Xは、100℃となります。


続いて、試験管B(氷)に注目すると、

2分後から12分後まで0℃で一定であることがわかります。
これはまさに、氷→水の状態変化が起こっている証です。

ここで、16分後を見てみると、温度が11℃まで上昇しています。
つまり、すでに状態変化が終わり、温度上昇の段階に入ったということです。
水になってからは、試験管Aと同じ変化が起こるはずですから、2分間で12℃変化しなければなりません。

よって、Yは11-12=-1℃と考えられます。

しかし、12分後で0℃だった状態から下がることはあり得ないので、Yは0℃ということになります。


このグラフを見て分かるとおり、14分の段階ではまだ氷があり、
14分を過ぎてすべて水に変化し終えたあとで再び温度上昇がはじまったと考えられます。
すべて水に変化したあとであれば、試験管Aと全く同じ状態になるので、
2分間で12℃変化していきます。

よって、Zでは11+12=23℃を示すことになります。

まとめ

 まず、X…108、Y…-1、Z…22と誤答していませんか?

「水の状態変化」であることをあまり考慮せず、ただ表から「予想」した結果ではないでしょうか。

理科の実験では、データからの予想と、予め持っている知識を合わせなければ正答を導き出せない問題が多数あります。
(その力が重要視されている証拠です)

実験から得られた情報をもとに仮説を立て、それを論理的に証明する手順と同じですね。

 さて、その意味で最も大きな意味を持つのはXです。

表だけみれば明らかに108ですが、解説のとおりそうなるはずがありません。
しかし、小学校2年生くらいにこの表を見せ、Xに入るのは?と問えばおそらく全員が108と答えるでしょう。

そのようなはずがないと言われて「あっ!そうか」と思えるのは、水の状態変化についての知識を持っている者だけでしょう。
やはり、予備知識や周辺知識を持っている者とそうでない者とでは大きな差が開くようです。

ちなみに、大手進学塾のある選抜試験では、X、Y、Zどれも受験者の半分以上が上記のとおり誤答を導いていたようです。



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