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W2:テキスト学習が全てではない アーカイブ

2009年03月02日

「知っている」と「読み取る」は異なります。 2009-03-02



「知っている」と「読み取る」は異なります。

 植物の蒸散について調べてみたところ、環境の変化に大きく左右されることがわかりました。下のグラフは、ある1日の蒸散量、太陽からの放射熱、気温を、それぞれ1日のうちの最高値を100として相対的に表したものです。このグラフからわかることとして正しいものを次のア~オから選び、記号で答えなさい。
 ア.蒸散によって、根から水や肥料を吸収するはたらきがさかんになる。
 イ.気温が高いほど、蒸散はさかんに行われる。
 ウ.太陽の放射熱が強いほど、蒸散はさかんに行われる。
 エ.昼の1時間で行われる蒸散量は、夜の間に行われる蒸散量と等しい。
 オ.蒸散は、正午前の3時間よりも、正午後の3時間の方がさかんである。

 
   






















きちんと吟味してください。



それぞれの選択肢を見てみます。


×ア…蒸散の説明としては正しいですが、このグラフからわかることではありません。


×イ…一般的に、「気温が高くなると蒸散はさかんになる」とテキスト等には書かれています。

しかし、実際に蒸散量は気温のみに左右されるわけではありません。グラフを見てみると、14~15時くらいで気温が上昇しているにもかかわらず、蒸散量は減少してしまっています。これより、気温が高ければ必ずしも蒸散がさかんであるとは言えないことになります。


×ウ…イと同様に、12~13時くらいで放射熱が減少しているにもかかわらず、蒸散量は増加しています。よって、正しいとは言えません。


×エ…このグラフには夜の蒸散量が描かれていないので、等しいかどうかを判断することはできません。しかし、一般的に昼間の1時間で行われる蒸散量は夜間に行われる蒸散量全体と等しくなるか、それ以上に達するといわれています。


○オ…正午の左側と右側に分けて見てみれば、一目瞭然です。


 よって、このグラフから読み取れることはオとなるのです。


 さて、この問題で圧倒的に多く見られる誤答は「イ」です。


上の解説にもあるとおり、さまざまなテキストでは、ただ1つの知識として「気温が高いほど蒸散はさかんである」とまとめられています。もちろん、気温のみの影響だけを考えれば正しいのですが、その他さまざまな影響が複雑にからみあえば必ずしもそうとは言えなくなります。問題は「このグラフからわかることとして」ですから、イは正解にはなりません。



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2009年02月01日

テキスト学習の弊害は、所見問題に手が出ないことです。2009-02-01



テキスト学習の弊害は、所見問題に手が出ないことです。

  ある地方のコオロギを使って、次のような実験をしました。ただし、このコオロギは9月の中ごろに卵を産むことがわかっています。

<実験>
 うまれてすぐの卵を野外から数多く採集し、10℃以上に保って育てた結果、卵がかえるまでに、次の3つの段階があることがわかった。

◇第1段階◇ 卵の内部でからだが作られていく変化が見られる。
◇第2段階◇ 卵の内部のようすに変化が見られない。
◇第3段階◇ 卵の内部でからだの成長が見られる。

  <結果1>
 A)第1段階と第2段階の長さの和は、卵によってまちまちで、最も短いので3か月、最も長いもので5か月だった。
 B)第3段階の長さはどの卵も同じで、1か月だった。

  次に、飼育中に温度を下げ、10℃より低い温度において実験を行った。

<結果2>
 C)第1段階と第3段階の卵は、内部の変化や成長は見られなくなり、1か月以内に死んでしまった。
 D)第2段階の卵は、10℃よりも低い温度に保った後、再び10℃以上にすると、やがて第3段階に入り、卵はかえった。

(1) 10℃以上に保って育てた卵は、何月にかえりましたか。正しいものを次のア~オから選び、記号で答えなさい。
   ア.10月~12月
   イ.11月~1月
   ウ.12月~2月
   エ.1月~3月
   オ.2月~4月

(2) 実際、野外においては1年を通して気温が10℃をこえたままであることはありません。この地方の各月の平均気温を調べたところ、以下の表のようになりました。これから、野外では、卵はいつかえると予想できますか。最も適当なものを次のア~オから選び、記号で答えなさい。
   ア.2月
   イ.4月
   ウ.6月
   エ.8月
   オ.10月






















ありません。


(1) エ
(2) ウ


(1) 気温が10℃以上とあるので、実験結果の A) と B) を利用すればよいのです。第1段階と第2段階の和が3ヶ月~5ヶ月、かつ第3段階は1ヶ月なので、卵がかえるまでに必要となる時間は4ヶ月~6ヶ月です。

(2) 実際の野外では、表を見てわかるとおり気温が10℃を下回ってしまう月が存在します。つまり実験結果の C) や D) も考慮に入れなくてはなりません。

 ここで、C) や D) からわかることとしては次の2点です。

・・・第1段階、第3段階の卵の状態では10℃以下の気温の中では死んでしまうこと。
・・・第2段階の状態で10℃以下の気温の中に入った場合、再び気温が10℃をこえるまで卵は保たれ、その後第3段階に入ること。

 これより、9月以降に気温が10℃を下回る11月を境に、次の3つのパターンを考えます。


パターン1 )
11月に入った段階で第1段階だった卵…死んでしまいます。

パターン2 )
11月に入る前に第2段階に入った卵…その状態のまま保たれ、翌年の5月に第3段階に入ります。

パターン3 )
11画月に入る前に第3段階に入った卵…ありえません(少なくとも3ヶ月必要です)。


以上のことから、野外でかえる卵は、第2段階のまま冬を越えたBパターンのものしかありえず、その結果翌年の5月に第3段階に入り、6月にかえることがわかります。

さて、この問題を解くために「市販のテキストに載っているような詰め込み型の知識」が必要でしょうか。

おそらく、与えられた条件を精査することになれない受験生こそ、頭が真っ白になる可能性の高い問題です。近年の中学入試で問われている本当の学力を知ってください。

※ちなみに、テキスト学習ではコオロギの冬越しが「卵」であることは基本知識です。


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