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2006年12月11日

もう一歩先に踏み込む執着心が求められます。 2006-12-11



もう一歩先に踏み込む執着心が求められます。


 海では赤茶色、湖や沼では青緑色の模様が水面に見られること があります。これは,水にすむ小さな生物が異常に増えたもので,それぞれ赤潮,アオコと呼ばれています。

(1) 下のグラフからわかる,赤潮が発生する原因を書きなさい。
(2) (1)で答えたことのほかに,どのようなことが赤潮やアオコの発生に影響をあたえていますか。君の考えを書きなさい。

(武蔵中)


グラフの読み方は、(A)全体の傾向をつかむ (B)特異点(目立つところ)に着目するの2ステップが基本です。


(1) 水面にとどく太陽の光が、プランクトンが光合成を行い、また活動に適した水温にするために十分な量となること。
(2)プランクトンの栄養分となる、工場からの廃水や、家庭からの生活排水が海に流れ込むこと。


(1) で、「十分な温度となること」と解答しただけでは、満点は得られないはずです。

正解者の思考プロセスとしては、

グラフをみて、冬より、夏に赤潮が頻繁に発生することに気付く

「ってことは、温度か?」と仮説をたてる(ここまでで解答用紙に走ってしまうとダメです)

「でもまてよ。なぜ、6月と8月はは発生回数がすくないのだろう・・・」とクリティカルシンキングを持つ

(なんだろうか。と、いくつもの仮説と検証をスピーディーに行う。
ここのステップでの試行回数の多さが、「頭のよさ」につながることが多いです)

東京での6月、8月の様子を思い浮かべ、
「梅雨と台風により、曇りや雨の日多い!」ということに気付く

「つまり、赤潮の発生回数を増やしているのは、温度よりも日光照射量だ」と気付く

ロジムの教室でもよくやりますがグラフを読み、分析するコツは、
・全体をつかむ
・特異点に着目する 
です。この2点について言及すれば大抵はずすことはありません。

今回、「夏のほうが発生回数が多い」という全体傾向を掴むだけでなく、6月と8月という特異点に着目し、日光のことに言及しなくてはいけません。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
「もう一歩踏み込めるのではないか」と絶えず疑うハングリー精神

計算や語句の能力は正直どの学年でも努力でいくらでもカバーできます。

しかし、上記の「ちょっとまてよ」と疑う能力・習慣というのは、
小学校3年生前後までに身についていないと、受験を前にして一朝一夕でつくものではありません。
(上の問題でいえば、「温度」という仮説のあとに、「あれ、6月と8月は・・」と立ち止まる能力です)

ほとんどの受験生が一度は「自分はケアレスミスが多い」と思ったことがあるのではないでしょうか。
「ケアレスミス」というのは便利な言葉で、まるで不正解の免罪符のごとくに使っていませんか?

皆さんが言うケアレスミスの多くは、「注意が足りない」のではなく本当は「勉強が足りない」のです。
もっといえば、普段の勉強の中で、「もう一歩踏み込もう」、「ちょっとまてよ、、、これって。。。」
という姿勢が足りないのです。

「自分がかんたんに出せるような解答は、
だれでもできるものであって、貴重なものではないのだ」
と自覚できている小学生はあまりに少数です。
だからこそ、それを自覚し、絶えず「いやちょっとまてよ」と
考える習慣を付けるだけで、集団から一歩抜け出せるのです。

「自覚」から始めてみてはどうでしょうか。



2006年10月30日

豊島岡女子・理科より。実験結果分析に関する基礎的な問 題です。情報整理・分析・考察という生徒の能力を見事にチェックしています。 2006-10-30



豊島岡女子・理科より。実験結果分析に関する基礎的な問題です。情報整理・分析・考察という生徒の能力を見事にチェックしています。


アサガオは,夏の早朝に花が聞く植物ですが、なぜ朝に花が開く のでしょう。このような疑問を持った東京に住む豊子さんは次のような実験を行いました。その実験と結果に関する以下の問いに答えなさい。
【実験方法】
 いくつかの鉢を用意してアサガオの種をまき、夏休みに花が咲くように準備しました。8月の初めにつぼみをつけたアサガオの鉢植えを、次のような条件にし て、花が開く時刻を観察しました。

条件1:日の当たる庭(日の出午前4時50分頃、日の 入り午後6時50分頃)に置く。
条件2:外からの光がいっさい入らない部屋の中で電灯 をつけ、ずっと明るい状態にする。
条件3:条件2と同じようにずっと明るい状態にし、6日目の午後4時頃から7日目の午前11時頃まで電灯を消し暗い状態にする。
条件4:条件2と同じようにずっと明るい状態にし、6日目の午後7時頃から7日目の午前11時頃まで電灯を消し暗い状態にする。
条件5:条件2と同じようにずっと明るい状態にし、6日目の午後11時頃から7日目の午前11時頃まで電灯を消し暗い状態にする。
 
【実験結果】
 条件1:日の出時刻とほぼ同時刻に花が開いた。
 条件2:花は開かなかった。
 条件3:7日目の午前2時頃に花が開いた。
 条件4:7日目の午前5時頃に花が開いた。
 条件5:7日目の午前9時頃に花が開いた。

(1)アサガオと同じ時期に花を咲かせる植物を、次のア~オから一つ選び記号で答えなさい。
 ア.アブラナ  イ.スイセン
 ウ.イネ    エ.アジサイ
 オ.ツツジ

(2)実験結果から、アサガオの花が開く理由はどのように考えられますか。次のア~クから正しいものを一つ選び記号で答えなさい。
 ア.アサガオは、明暗とは関係なく花を開く。
 イ.アサガオは、明るい状態から暗くなって一定時間後に花を開く。
 ウ.アサガオは、暗い状態から明るくなって一定時間後に花を開く。

(3)実験結果から考えて,夏のこの時期、北海道と沖縄ではアサガオの花が開く時刻はどのようになると考えられますか。それぞれについて,次のア~ウから 一つずつ選び記号で答えなさい。
 ア.その地域の日の出時刻とほぼ同時刻に開く。
 イ.その地域の日の出時刻よりも早く開く。
 ウ.その地域の日の出時刻よりも遅く開く。

(4)実験結果から考えて,実験の時期を秋にずらしていくと,アサガオの花が開く時刻はどのようになると考えられますか。次のア~ウから一つ選び記号で答 えなさい。
 ア.その日の日の出時刻とほぼ同時刻に開く。
 イ.その日の日の出時刻よりも早く開く。
 ウ.その日の日の出時刻よりも遅く開く。

                             (豊島岡女子)


(3) が考察できるかどうかが分かれ目です。東京、沖縄、北海道で異なるものはなんでしょうか。 また、(3)の選択肢中の「その地域」とは東京のことではない ことに注意です。読み違えると解答できません。


(1) ウ (2)イ (3)北海道・・・ ウ  沖縄・・・ イ (4)イ


(2)おそらく下のような図を(簡単にでもいいので)
問題文を読みながら書けるかどうかが分かれ目です。

条件1: --04:50======18:50---------------04: 50========
条件2: =04:50================04:50========
条件3: =04:50===16:00-----------02:00----04:50--------11:00==
条件4: =04:50=======19:00--------------05:00------11:00==
条件5: =04:50========23:00----------------09:00--11:00==

( -- は夜   == は光を当てている時間  下線付き赤字は 花が咲いた時刻 )

ここで
・面倒くさがって図を書かない生徒
・国語力不足から、そもそも実験内容を読み取ることができない生徒
の多くはここで撃沈します。

ここで
「夜になってから10時間後に開花する」
または、
「夜が10時間続くと開花する」
ということがわかります。 
(上記のどちらが正しいかは、(3)を解いている途中で気付きます)

それでは、「夜になって10時間後に開花もしくは、夜が 10時間続いたら開花」
 にどうやって気付けばいいのでしょうか。 
「よくみなさい」「よく考えなさい」と言いたくなりますが、
これは助言として成立していませんね。悪い教師の台詞です。

まず
条件2と、条件1から5の相違点を探します。
→花が咲くには夜が必要。
つぎに
条件1、3、4、5 の共通点を探します

このように情報から何かを判断するときは、「相違点」「共通点」に着目して考えます。

普段から小学生の皆さんも自然と行っている行為ではありますが、
情報整理のフレームとして認識している小学生は少ないのではないでしょうか。

結果考察でどうしていいかまったく分からなくなったら、とにかく
「違うところ(相違点)」「同じところ(共通点)」を列挙してみてください。

(3)
選択肢の「その地域」が東京ではなく、それぞれ北海道と沖縄であることを
きちんと把握してください。これを勘違いすると解けません。
(教室ではここを勘違いしての誤答が多数ありました)

東京と、沖縄・北海道で何が違うのかに着目します。
経度・緯度がそれぞれ違いますね。

◎経度の違い 
→ 北海道は東京より東  沖縄は東京より西 →

北海道: 日の出 4:50以前  日の入 16時50分以前
沖縄: 日の出 4:50以後 日の入 16時50分以前

となります。
東京の日の出に対しては、10時間の夜が明ける(=花が咲く)時間はずれますが、
それぞれ、北海道、沖縄の日の出時刻に花が咲くことには変わりません
(選択肢をよく見てください)
なので経度による違いは考えません

◎緯度の違い
→北海道は東京より北 沖縄は東京より西 →

夏の北半球では、緯度が大きくなるほど(=北に行くほど)、夜の時間に対して昼の時間は長くなる。
(下図参照)

よって、北海道では、東京よりも昼が長く、夜が10時間以下になります。
(解答の選択肢に「咲かない」というものがないため、ここで、
「開花は、夜が10時間続くと起きる、
ではなく、夜になってから10時間後に起きるのだ」
ということに気付きます。)
なので、開花は、夜になってから10時間後つまり日の出後に起きます。

同様に沖縄では日の出前に夜になってから10時間後を迎えます。

(4)は (3)が分かる生徒は100%解答できるはずです。(3)をあてずっぽで正解した
生徒と、理解して正解した生徒の得点差をつけるために設置されているのがこの(4)だと
思ってください。 


~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
差(=違い)を網羅的に把握することへの意識をもつ

教 室でこの問題をやった際には、
(3)で経度による差のみを考え、混乱する生徒が多数いました。
地球上の2地点の差異を考えるのに、緯度による差に気付かなかったのです。

(1)でのアサガオが開花する条件探しにおいても必要な能力となるのが、この

「差違を網羅的に並べる」  です。

我々が物事を判断するとき、大概の場合において何かと何かを比較しています。
比較が判断を生んでいるのです。
そしてその比較こそ、「差違を考える」行為なのです。

なにか判断に困ったときには、
「両者の差はなんだろう」
「両者の差はこれだけで十分なのか」
と強く意識してみてください。


2006年10月09日

渋谷幕張中より。未知/未習の問題の解答を推し量方法の基礎をここで勉強します。 2006-10-09



渋谷幕張中より。未知/未習の問題の解答を推し量方法の基礎をここで勉強します。


 遺伝子は,生物の形や性質を,親から子へ伝えています。親子が似ているのは,遺伝子が受け継(つ)が れている証(あかし)です。しかし遺伝子のはたらきは,親から子へ形や性質を受け継ぐだけ ではありません。生物の体も,机やエンピツと同じように,いろいろな物質の集合体です。そして,生物の形や性質を決めているのは,タンパク質という物質で す。タンパク質は,細胞の構成成分であり,また酵素(こうそ)として体内のさまざまな化学 反応を進めています。

 一言でタンパク質と書きましたが,タンパク質には無限とも言えるほど多くの種類があります。私たちヒトの体も,何万種類ものタンパク質でできています。 しかし,どんなタンパク質にも共通していることがあります。それは,タンパク質がアミノ酸の集合体だと言うことです。

また,(1)タンパク質の材料となるアミノ酸は、どのような生物であっても20種類で共通してい ます。
 また,材料だけでなく、細胞がタンパク質を合成する基本のしくみは、動物、植物あるいは細菌まで,すべての生物で共通しています。タンパク質の種類にお いても,植物や動物,そして細菌まで,共通するものがたくさんあります。

 すべての生物は,自分が必要なタンパク質を,自分で合成します。そのときの設計図になるのが,遺伝子なのです。つまり生物は,合成するタンパク質の種類 の分だけ,遺伝子を持っているのです。

 親から子へ伝わる遺伝子の一部に変化があり,合成するタンパク質が変わると,生物の形や性質にも変化が表れてきます。生物は,長い年月をかけて,小さな 遺伝子の変化を積み重ねてきました。私たちヒトが一人一人ちがうのも,その結果なのです。



 下線(1)についてです。動物の体は,20種類すべてのアミノ酸をつくることはできません。 ヒトの成人の場合,体内でつくることができるのは12種類 です。
 では,植物の場合はどうでしょうか。適切なものを,次の(ア)~(ウ)から選びなさい。また,選んだ理由を,「植物は……。」という文で説明しなさい。

(ア)20種類すべてをつくることができる。
(イ)自分では1種類もつくれない。
(ウ)植物ごとにつくれる種類が異なる。

                         
  (渋谷教育学園渋谷幕張中 問題の一部を抜粋)



植物を構成するアミノ酸などもちろん未習だと思います。だからこそ、論理的に仮説設定および断定・論述をするのです。

記号: (ア)
理由:植物は、動物のように他生物をエサとして摂取することがないため、もしも自分でアミノ酸を全種類作れないと、すべてのアミノ酸を体内に取り入れるこ とができない。



シ ンプルでいい問題だと思います。

ポイントは、
・知らない問題にあたったときにあきらめずに思考をすすめられるか
・仮説をつかった論理展開 → 説明記述 ができるか
です。

自分の常識や感想を駆使すると、
「植物はいろいろな種類があるんだから、つくることのできるアミノ酸だっていろいろなはずだ」
と思ってしまうものですが。ここで、自分の主観にしばられない思考が必要なのです。

動物はアミノ酸20種類中、数種類しか作れない(ヒト成人で12種類)

自分で作ることができないアミノ酸はどうやって得ている??
↓↓
食料として、他のからとっているはず!

それでは、植物は、

もし、植物が20種類すべてのアミノ酸を作れないとしたら

植物は(少数の食虫植物を除いて)エサをとらないので、自分で作れないアミノ酸を摂取できない

植物が作るアミノ酸や、そもそもアミノ酸って??という
受験生でも、思考力により解答できる問題です。 

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
仮説をもつことが出発点

ロ ジムではお馴染みのフレーズですが、

「知らない、習ってない」では何もすすみません。

手を止めずに、仮説設定→自分の知識・常識をつかった検証を、
多数かつ高速に繰り返すことができる人間こそが、中学校に求められる人材でないでしょうか。

さらに、仮説を検証し、解答を類推する過程で是非知っておいてほしいのが、
「もし~~だとすると」と仮定をおいて、その矛盾を説明し、「~~ではない」と
説明する方法です。

仮説設定・検証や、背理法による論理展開にしろ
年長者にとってのスキルのようですが、実は中学入試の世界でも
シビアにもとめられています。

そういったことを、近年人気急上昇の渋谷幕張中の
入試問題を通して実感してください。
(渋谷幕張2次の記述問題は、論理能力を試す良問ぞろいです)


2006年08月21日

開成中理科入試より。理科の問題と考えずに、情報整理能力を問う問題だと考えるべきです。 2006-08-21



開成中理科入試より。理科の問題と考えずに、情報整理能力を問う問題だと考えるべきです。


 植物は光が当たると二酸化炭素を吸収し、酸素を放出して、でんぷんをつくります(これを光合成といいます)。その一方で、私たちと同じように呼吸も行っ ています。二酸化炭素と酸素だけに注目してみると、次のようになります。
%E5%9B%B32.jpg

今、話を簡単にするために、次のようにします(本当は少し違います)。

・光合成で吸収される二酸化炭素と、放出される酸素の体積は同じ。
・呼吸で吸収される酸素と、放出される二酸化炭素の体積は同じ。
・光合成の行われ方は、光が強くなったり、温度が高くなれば活発になるが、呼吸の方は、温度が高くなると活発になるが、光の強さには左右されない。

  これらをもとに、次の実験を行いました。

[実験]
右の図のように、とう明なプラスチックの箱を 6つ用意し、それぞれの箱の中に、同じ大きさのヘチマのなえを入れます。
 (各箱内のヘチマは、条件が同じなら、同じ割合で光合成と呼吸
  を行うものとします。)
 
条件として、
光の強さは3種類(強い光…A、弱い光…B、暗黒…C)、
温度は2種類(30℃…a、20℃…b)    とし、

これらを組み合わせて右の表のように6種類の 箱(イ~ヘ)をつくりました。

  なお、強い光なら、光合成での二酸化炭素や酸素の出入りの方が、呼吸での出入り よりもはるかに多量です。

実験を続けて3時間後に、箱内の二酸化炭素と酸素の割合を、それぞれ気体検知管で調べました。その結果を考えて次の各問いに答えなさい。答えは箱の記号 イ ~ヘで答え、同じものを何度選んでもかまいません。また、これまでに述べた条件だけからでは1つにしぼれない場合は、その可能性があるものすべてを選びなさい。


 間1 30℃のときの呼吸による変化だけがあらわれたのはどれですか。
 問2 酸素の割合が最も多くなったのはどれですか。
 間3 二酸化炭素の割合が最も多くなったのはどれですか。
 間4 二酸化炭素と酸素の割合が、実験開始前とほとんど変わらなかったのはどれですか。


とある結果に対する原因を特定、整理します。


問 1 ハ
問2 イ、 ニ
問3 ハ
問4 ロ、 ホ


「同時に複数のことを考える」
小学生ならずとも多くの人が苦手とする行動ではないでしょうか。
しかも、その複数が、互いに影響していればなおさらですね。

光を強くすると、光合成を活発にして酸素を増やせるが、同時に呼吸も活発になるので、酸素は減る。
違う方向の反応が同時に起きるわけです。

こういった問題を考えるときは、

・問題をよく読む → 条件整理の準備を徹底する
・ドライバー(結果を生む要素)に視点を置く

が必勝法です。
まず、問題文をよく読んだ上で、
下記のような表を書きます。こういった表が書ければ、話はずっと簡単になります。

問1 
30度において呼吸だけ → 光合成しない → 30度で光がない → ハ
問2 
上図より温度をあげることにより、酸素と二酸化炭素の増減は相殺されるため、温度の差を無視することができる。よって、光を強くしている イとニが解
問3
二酸化炭素の割合が多い→ 光合成を出来るだけしなく、呼吸を盛んにしている
光合成をゼロにしても呼吸はできるため、光をゼロにし、呼吸を盛んにするために温度を上げる。
光ゼロ、温度最高の ハ が解
問4. 

光を強くすると、上図の(3)の列の影響が大きく、必ず酸素と二酸化炭素のバランスは必ず崩れる(酸素が多くなる)
光をゼロにすると、上図の(2)の列の反応しか起こらず、バランスは必ず崩れる(二酸化炭素が多くなる)
光を弱い光Bにすることで、(1)(2)(3)の列の反応がバランスをとって相殺することがありえる。

問題文の「また、これまでに述べた条件だけからでは1つにしぼれない場合は、その可能性があるものすべてを選びなさい。」に注意してください。実際、ロとホが同時に「実験開始前後の酸素、 二酸化炭素量が同じ」であることはありえません。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
「ドライバー」をさぐる意識

ロジム今週の1問ですっかりおなじみとなった常套句「構成要素」に分解する

理科・算数だけでなく、国語や社会、はたまた身の回りの困難を
処理するときにとても効果的な方法論です。

全体を動かす部分要素をドライバーといいます。
(変数≒パラメータ と近い意味です)

全体の結果を生む構成要素は何か。

導かなくてはいけない解までの距離が遠ければ遠いほど、この「ドライバーをおさえる」
という考え方は効果的です。

本問では、全体として「酸素が増える」という結果を引き起こしているドライバーが
いったい何かを正確に樹形図としてとらえる必要があります。

全体を把握するために、構成要素の複雑な関係を把握する。
構成要素を把握するために、正確に場合分けをする。

本問は、これから各界の未来のリーダーとして、多くの複雑な問題を解決することを期待されている
皆さんにおくる、開成中学からの挑戦状であり、贈り物です。


2006年07月10日

今週 は桜蔭中より1問です。 2006-07-10



今週 は桜蔭中より1問です。


『カエルが、からだのどこを使って産卵池の位置を知るのか』を 調べるために以下の実験を行いました。

【実験】池に向かうカエルを池から50~200m離れたところでつかまえて,3つのグループ(う)、(え)、(お)に分け、以下のようにしました。

グループ(う):目が見えないようにした後、(う)の目印をつける
グループ(え):鼻でにおいがかげないようにした後、(え)の目印をつける
グループ(お):目や鼻には何もせず、(お)の目印をつける
 
 グループ(う)、(え)、(お)のカエルをつかまえた場所で放し、1週間で、どれくらい池にたどり着いたかを調べた結果が図3です。

問4 【実験】の結果について、つぎの問い(1)~(4)に答えなさい。


(1) 池の位置を知るのに、カエルが主に目を使って いるといえる場合は○、いえない場合は×を書きなさい。
(2) (1)はグループ(う)~(お)のどれとどれ の結果を比べるとわかりますか。
(3) 池の位置を知るのに,カエルが主に鼻を使って いるといえる場合は○、いえない場合は×を書きなさい。
(4) (3)はグループ(う)~(お)のどれとどれ の結果を比べるとわかりますか。

                                      (桜蔭中)



上記、(1)から(4)を解くにはヒントはい らないと思います。この問題は、解答の先にとても大事な考え方を知るチャンスがあります。必ず解説にも目を通してください。

(1) × 
(2) (う)と(お)
(3)○
(4) (え)と(お)


こ の問題の隠れたポイントは、
(2)で、なぜ、(う)と(え)をくらべてはいけないか
(3)で、なぜ、(う)と(え)をくらべてはいけないか
が説明できるかどうかです。

(上記が説明できなくても試験では解答できてしまうのが残念なところです)

グループ(う) → 目隠し
グループ(え) → 鼻せん
グループ(お) → なにもしない

ソラマメの発芽実験問題が有名ですが、この問題も対照実験について扱った問題です。
「対照実験とは」 → 「比べることにより結果の理由を特定する実験」
→ 「2者の異なる点が1つだけならば、生じた結果の原因は、その異なる点だと結論ずける方法論」

グループ(う)とグループ(お) 
・・・・ 異なる点は、「目隠しをしているかどうか」 の1点

グループ(う)とグループ(え)
・・・・ 異なる点は、「目隠しをしているかどうか」と、「鼻せんをしているかどうか」の2点

となります。グループ(う)とグループ(え)を比べても、池に帰ってくるカエルの割合が違う原因が、特定できないのです。異なる点が2つあるからです。ど ちらが理由なのか特定できません。

この問題は、本来、
「カエルが目をあまり使っていない」ことを言うために、(う)と(え)をくらべてはいけない理由を説明しなさい。
とするべきだったのではないでしょうか。  (答えは、「(う)と(え)は異なる点が2つあるから」)

「一つの結論に対して、一つだけの相違点をみつける」
対照実験の根本を理解しているかを確認してください。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
「対照実験」のような基本的方法論の徹底理解をすること

以前にも同様のメッセージを読み解きました。とかく頻出の対照実験問題ですが、
上位校ほどその根本的意味の理解を確認してきます。

さて、教室で本問を扱いました。学年問わず8割の生徒は正解できましたが、こと、

(2)で、なぜ、(う)と(え)をくらべてはいけないか
(3)で、なぜ、(う)と(え)をくらべてはいけないか

という問いを追加すると、白紙になってしまう生徒がほとんどでした。
(対照実験の意味が理解できていない証拠です。)

「目隠ししても、多くのカエルが帰ってくるけど、
鼻せんをすると、ほとんどのカエルがかえってこられない。」

日常の感覚だと、上のセンテンスからでも、「カエルにとって目は大事ではない」と
結論づけることもできそうです。
しかし、この日常の感覚を疑い、科学的な方法論で物事を判断するスキルを
桜蔭中は求めているのです。

「感覚を疑え!」などと格好良く言い放つことは簡単ですが、「疑い方」が伝えられていないのが
現在の理科教育の現状ではないでしょうか。
「感覚を疑う」ことは、闇雲に疑心暗鬼になることではありません。
また、「感覚」は否定すべきものではありません。

自分の直感・常識・感覚を補強し、視点を増やすために、対照実験のような基本的な方法論を
徹底的に理解する必要があるのです。


2006年05月29日

今週 は麻布中理科より1問です。 2006-05-29



今週は麻布中理科より1問です。


 生き物の体は,脳もふくめてたくさんの正常なたんぱく質でつくられています。ウシの海綿状脳症(狂牛病)は,異常なたんぱく質が体の中に入り,それが病原体となって起きます。この異常なたんぱく質が脳に入ると,脳が必要としている正常なたんぱく質が足りなくなって,脳が海綿状(スポンジ状)になってしまうのです。
 ヒトでも,狂牛病の病原体と同じような異常なたんぱく質が体に入ることにより,脳がスポンジ状になる病気が知られています。その異常なたんぱく質Xはヒ トの体に入ると,正常なたんぱく質AをXに変える働きをします(図1)。XはAを変化させますが,自分自身は変化せずxのままです。また,このXがヒトの 体の中にまったく無いときAはxになりません。
>
問1 なぜ,このXが体の外から少量でも入ると,重大な病気になってしまうのですか。図1から考えて説明しなさい。

問2 もし,このXがAをXに変化させるときに,自分はYという別のたんぱく質に変化してしまうとすると,XとYの量はどうなりますか。下のア~カの中か ら,正しいもの2つを選びなさい。
ア.Xは増えていく  イ.Xは変わらない  ウ.Xは減っていく
エ.Yは増えていく  オ.Yは変わらない  カ.Yは減っていく
  

 上のように,ヒトの体の中でつくられたたんぱく質が,それ自身をつくることに関係していることはよくあります。体に必要なたんぱく質Cはそのようなたん ぱく質で,たんぱく質Bからつくられます。そしてこのCは,BからCへの変化をおさえる働きをします(図2)。またBはいつもつくられていて,Cはゆるや かに分解されています。
>
間3 つぎの(1),(2)の場合,BからCがつくられる量はどうなりますか。図2を参考にして答えなさい。
 (1) 何らかの原因でCの量が増えたとき
 (2) 何らかの原因でCの量が減ったとき

問4 ヒトの体を健康に保つために必要なたんぱく質の多くは,図1のXをつくるような経路ではなく,図2のCをつくるような経路でつくられます。そうなっ ている利点について図1,図2を比べて説明しなさい。 


たんぱく質Aが仮に、10個だけ存在し、そこにたんぱく質Xが1個投入されると。。。。 とシミュレーションしてみてください。


問1  
Xの作用により、AはXとなる。XはXのままであることから、時間がたつと正常なたんぱく質AはすべてXとなってしまうから。

問2
エ, イ

問3
(1)減る (2)増える

問4
図1の経路だと特定のたんぱく質が極端に増えたり、減ったりするが、図2の経路だと、特定のたんぱく質が増えたり減ったりしても、それを抑える方向の働き が生じ、たんぱく質の量が一定に保たれるという利点がある。


問 1 
仮に正常なたんぱく質Aが10個あるとします。そこに、1つの異常たんぱく質Xが混じると、1個の正常たんぱく質Aが1個のXとなります。つまり、Aが9 個、Xが2個。つぎには、この2個のXの働きで、A2個がXに変化するので、Aは7個、Xは4個となります。この動作を繰り返すとAはなくなってしまいま す。

10A + X → 9A + 2X → 7A + 4X → 3A + 8X → 0A + 11X

問2

・AはXになる
・もとからあったXはYになる

以上から、全体としては AがYに変わる 変化だと考えることができる。
つまり、Xの量は不変、Yの量は増える。

問3
「Bは放っておくとCに変化し、つくられたCは今度は自分が作られるのを邪魔する」とイメージします。

Cが増えると、B→C の変化は邪魔されます。
Cが減ると、B→Cの変化は邪魔者が少なくなり、B→Cの変化量は増えます。

問4
問3から考えます。
Cが増えると、BからCが作られる変化はおさえられ、結果、Cはそれ以上なかなかふえません。問題文にあるように、Cがゆるやかに分解されると、Cは減る ことになり、BからCが作られる変化は促進され、結果Cは増えます。そしてCが増えると・・・・

と増えては減り、減っては増えるというプロセスを延々と繰り返すことになります。
これにより存在するたんぱく質の量が一定に保たれます。

とある最適な量のたんぱく質を保つという人間のメカニズムです。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・いくつかの結論を重ねて、求められる結論に到達する持久力が必要

まず気付いてほしいのが、本問は生物分野の知識は何一つ必要とされてはいない点です。
題意を噛み砕いて説明すれば、小学校低学年の生徒でも回答可能です。
純粋に、「AならばB」「Aだ。ということはBだ。」という思考を積み重ねることで回答する、
論理思考力を計る問題です。

結局この問題で必要とされる能力・技術とはなんなのでしょうか。
それは、公式やパターン学習を完全に捨てた、結論を積み上げる持久力です。
簡単に言えば、バテずに「ってことは」を積み重ねる力です。

一つの結論が出た後に、その結論をつかって新たな結論に向かう。そしてさらに、その次の結論に。
大人にとっては普段から慣れたこの能力・スキルですが、小学生にとっては我々の想像以上に
困難な作業となることがあります。特に、積み重ねるべき結論の数に比例して音を上げる生徒は
増えるのです。

論理思考力と言われるものは、往々にして脳の「結論積み上げ持久力」だと言い換え可能です。
普段から、安易に答えを確認しようとせずに、複数のヒントから答えにたどり着くという、「積み重ね」
を訓練する環境を作ることが必要です。

分からなかった問題に対して、答えや解説を提示するのではなく、
ヒントを徐々に与え答えまで導くような学習環境づくりこそ、保護者・先生のやるべきことだと思います。


2006年05月08日

今週は豊島岡女子中・理科より1問です。 2006-05-08



今週は豊島岡女子中・理科より1問です。


アサガオは,夏の早朝に花が開く植物ですが,なぜ朝に花が開く のでしょう。このような疑問を持った東京に住む豊子さんは次のような実験を行いました。その実験と結果に関する以下の問いに答えなさい。

【実験方法】いくつかの鉢を用意してアサガオの種をまき,夏休みに花が咲くように準備しました。8月の初めにつぼみをつけたアサガオの鉢植えを,次のよう な条件にして,花が開く時刻を観察しました。
                       
粂件1 日の当たる庭 (日の出午前4時50分頃,日の入り午後6時50分頃)に置く。
粂件2 外からの光が いっさい入らない部屋の中で電灯をつけ,ずっと明るい状態にする。
粂件3 条件2と同じよ うにずっと明るい状態にし,6日目の午後4時頃から7日日の午前11時頃まで電灯を消し暗い状態にする。
粂件4 条件2と同じよ うにずっと明るい状態にし,6日目の午後7時頃から7日目の午前11時頃まで電灯を消し暗い状態にする。
粂件5 条件2と同じよ うにずっと明るい状態にし,6日目の午後11時頃から7日目の午前11時頃まで電灯を消し暗い状態にする。

【実験結果】
条件1:日の出時刻とほぼ同時刻に花が開いた。
条件2:花は開かなかった。
条件3:7日目の午前2時頃に花が開いた。
条件4:7日目の午前5時頃に花が開いた。
条件5:7日目の午前9時頃に花が開いた。

(1)アサガオと同じ時期に花を咲かせる植物を,次のア~オから一つ選び記号で答えなさい。
  ア.アブラナ  イ.スイセン  ウ.イネ    エ.アジサイ  オ.ツツジ

(2)実験結果から,アサガオの花が開く理由はどのように考えられますか。次のア~ウから正しいものを一つ選び記号で答えなさい。
  ア.アサガオは,明暗とは関係なく花を開く。
  イ.アサガオは,明るい状態から暗くなって一定時間後に花を開く。
  ウ.アサガオは,暗い状態から明るくなって一定時間後に花を開く。
                           
(3)実験結果から考えて,夏のこの時期,北海道と沖縄ではアサガオの花が開く時刻はどのようになると考えられますか。それぞれについて,次のア~クから 一つずつ選び記号で答えなさい。
 ア.その地域の日の出時刻とほぼ同時刻に開く。
 イ.その地域の日の出時刻よりも早く開く。
 ウ.その地域の日の出時刻よりも遅く開く。

(4)実験結果から考えて,実験の時期を秋にずらしていくと,アサガオの花が開く時刻はどのようになると考えられますか。次のア~クから一つ選び記号で答 えなさい。
 ア.その日の日の出時刻とほぼ同時刻に開く。
 イ.その日の日の出時刻よりも早く開く。
 ウ.その日の日の出時刻よりも遅く開く。

     (豊島岡女子)     


アサガオが咲く条件を【実験方法】【実験結果】から導き出すことが第一歩です。そのために、条件を整理しましょう。


(1)ウ (2)イ (3)北海道…ウ 沖縄…イ (4)イ


解説
まず、条件の整理からです。
(受験勉強に限らず、問題に当たったら手持ちの情報を視覚化整理し、
帰納法的に仮説を導くことは必要不可欠な能力です。)
下記の表のようなものを手書きでささっと書けるようにはなってほしいものです。

条件1: 18時50分(日の入り)→04時50分(日の出)(開花) 
条件2: ずっと明るい状態
条件3: 16時(消灯)→02時(開花)→11時(点灯)
条件4: 19時(消灯)→05時(開花)→11時(点灯)
条件3: 23時(消灯)→09時(開花)→11時(点灯)

多くの受験生が問題を読む前は、
「アサガオは、日の出をサインに開花するはずだ」
ということを常識として考えています。

が、上のように条件を整理していくうちに、

「いや、ま てよ。。。 条件3,4,5 をみると、真っ暗闇の中でも咲いてるな・・・。ってことは・・・」
と考えるでしょう。

この「ってことは・・・」が大事なのです。
ここまでくればあとは多少の試行錯誤の結果、

「開花している場合、いずれも消灯から10時間で開花する!」

という仮説に行き当たるはずです。((2)解答参照)
この時点でこの問題の勝負はありです。一山は超えました。

次に、問題(3)です。
---------------------------------------------------
まず、北海道―東京―沖縄で違うもの、ここで考えるのは
1. 経度の違い
2. 緯度の違い
です。
---------------------------------------------------

1.経度の違いを考えて、「北海道のほうが、
東京、沖縄よりも日の出が早くて、日の入りも早い」と言うことに気付くとします。
その後、先に進むとポイントは日の出日の入りの時刻ではないことに気付きます。
(結局日没→日の入りの「時間」は経度に左右されない。時刻は変わる。自分で納得するまで
地球儀を回し続けるべきです。暗記はしないで下さい。)

経度の違いは本問では意味がないのです。

2.緯度の違い
緯度が違う → 昼の長さが違う

ここまでくればさらに一山超えました。

夜の時間: 沖縄>東京>北海道

東京は、日没から開花までの時間(10時間)がちょうど日没から日の出の時間でした。 

沖縄は、夜が東京のそれより長いのですから、

開花は日の出の前です。

北海道は、夜が東京のそれより短いのですから、

開花は日の出の後です。

となります。
この問題のポイントは、沖縄と北海道の開花時刻を比べてはいないことです。
開花時間に着目し、また東京の本ケースでは、日没→日の入の時間がちょうど10時間であることも、
はっきりとあまたに入れておく必要がある。

(4)ですが、
秋に近づくとは、つまり夜が長くなるのですから、開花は日の出時刻より遅くなります。


~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・常識を捨てて実験から仮説を導けるか

高校生になると数学の教科書に登場する「帰納法」という概念。
もともと帰納的な思考とは、
「いくつかの断片的な事象から『いえそうな事実≒仮説』を結論として導き出すこと」です。

これ自体は、もちろん小学生から日常的に行っていることです。
「黒い雲が空に広がっているときは、雨が降るだろう」
という仮説を立てたり、
「盆地がある県はくだものの生産量が多い。したがって、盆地のある福 島県では果物生産が盛んなはずだ」
と仮説を立てたり、
日常生活から入試問題 まで利用されるもっとも基本的な思考フレームです。

本来小学生のうちから思考方法として教わるべき帰納的思考。
これを我々が始めて教わるは、高校数学教科書の中で、
n だの n+1 だの難しい「スウガク」として習う時なのです。これは悲劇です。

本問でも「複数の実験結果から仮説を出す」という帰納的思考がない限り、
「日の出を合図ににアサガオは咲くはずだ」という一般的な常識に縛られて解答不能となります。

ロジム授業、今週の1問でくどいように繰り返しますが、
「よく聞く常識、あたなの常識から離れて、
与えられた情報の整理から新たに仮説をつくる」という能力がここかしこで求められているのです。


・キーパラメーター(重要な変数)を絶えず念頭におけるか

また、開花に関するのが、暗くしてからの「時間」であることを意識すれば、
北海道-東京-沖縄の比較ポイントが「東西」ではなく「南北」になることがわかるはずです。

本問で経度に気をとられて拘泥した人は、
注意する変数が「時間」であって「時刻」ではないということへの意識不足でしょう。

なにも「変数」という難しい考え方をしなくても、「今どの単位に着目すればいいのか」という
意識をより強固にもってほしいものです。


2006年04月17日

今週は筑波大附属駒場中学理科より1問です。 2006-04-17



今週は筑波大附属駒場中学理科より1問です。


種子の発芽に必要な条件を調べるために実験をし、下のような結 果を得た。この実験だけからわかることはどのようなことですか。「種子の発芽には、」に続けて、発芽に必要な条件を説明する文を書きなさい。

[実験1] シャーレに水を1cmの深さに入れ、その中にダイズの種子を10個入れ、良く日のあたる机の上に置いた。
[実験2] シャーレに水を1cmの深さに入れ、その中にダイズの種子を10個入れ、ポンプで空気を送りながら、よく日のあたる机の上に置いた。
[実験3] シャーレに水を1cmの深さに入れ、その中にアサガオの種子を10個入れ、ポンプで空気を送りながら、光が当たらないように大きな箱をかぶ せ、実験1,2と同じ机の上に置いた。

(実験結果)
実験1:種子はひとつも発芽しなかった。
実験2:すべての種子が発芽した。
実験3:すべての種子が発芽した。
                                                   (筑波大駒場中)


ロジム生にとってははおなじみの質問ですが、「比べること」とは結局なんでしょうか。「同じことと違うことを見つけること」です。比べる対象同士の差と、その差の数に注目しましょう。


「種子の発芽には、空気が必要となる。」


この解答で、「光が必要ない」と書いた場合、それは不正解です。

また、「空気が必要で、光は必要ない」と書いた場合も部分点なしの不正解となって然るべきです。
光が必要ないと書いた瞬間にゼロ点となるべきだと思ってください。

なぜなら対照実験の意味がわかってないということになるからです。
(声の教育社発行の過去問では解答に「光が必要ない」とありますが、
とんでもない誤答です。気をつけてください。)

ヒントにも書きましたが、「比べる」とはどういうことでしょうか。
「物事の同じことと似ていることを見つける」ことです。

この問題は典型的な対照実験ですが、
上記の「比べること」の意味がわかっていないとしっかり減点される仕組みになっている、
まさに「うなりたくなるほどの」良問です。

実験1・2・3の「差」に注目しましょう。


実験1と2の差は「空気の有無」です。そして結果に1つの違いが生まれています。
つまり、この1つの結果の原因が、この「差」にあたるのです。

つぎに、
実験2と3を比べます。両者の差は、「ダイズなのかアサガオなのか」と、「光の有無」です。
つまり、差(ちがうところ)が2つあるのです。
差が2つあって、結果がひとつ。
結果の原因となる「差」が一つに特定できないことに気づいてください。


つまり、対照実験とは、「1つ」の差違を特定するという作業です。

差違が二つあれば、どちらの差が、結果を生み出しているのかだれもわかりません。

まわりくどいい方ですが、例えばこの場合、
「ダイズの発芽に光が必要かどうかはわからない」のです。
たまたま、アサガオが日光のないところで発芽できる種類かもしれなく、
その真義の確認はこの三つの実験からはわかりません。

実際の試験では、多くの受験生が、
「種子の発芽には空気が必要で、日光は必要ない」という解答をし、
ゼロ点となっていったと予想できます。
もう一度、対照実験とは、そして「比べるとは」という基礎技術の復習をしてみてください。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・ 自分の常識にしばられないことが重要
・ 基礎的な実験・思考方法を根本からわかっていることが重要

どの教科書にも「種子の発芽に光は必要ない」と書いてあります。
筑波大駒場志望の生徒なら絶対知っている知識です。

しかし、この問題は、あくまで「この実験からわかることを」と明記してあり、
「既知のこと、常識とされていること」に関わらず、
対象から「論理的」に結論を導く能力を厳密に確認しているわけです。

常識や知識は、あくまで思考の土台です。
そこに胡坐(アグラ)をかいたままの生徒は必要とされていないのです。

また、ここでいう論理的とは、「比べる」能力です。
そして、比べる能力とは、物事の類似点と差異を明らかにする能力のことです。

そもそも対照実験とはなんなのか、

「1つの差」をみつけ、1つの「結果」に結びつけること

だと理解できているでしょうか。
対照実験のような基本的な思考方法について、もう一度、
「そもそもどういう考え方なのか」と自問してみてください。


2005年12月05日

今週は、早稲田中入試から理科分野の一問(抜粋)です。 2005-12-05



今週は、早稲田中入試から理科分野の一問(抜粋)です。


植物の 体の表面から水が蒸発するしくみを調べる実験をしました。下図のように目もりをつけた試験管に水を入れ,これに新しいツバキの枝をさしたものを A~D 4個用意し,風通しのよい日かげにおいた。下の表のように条件を変え,数日後に水面のさがった量をしらべたところ表の結果をえた。これをもとにして, (1)~(5)の問いに答えなさい。

(ただし、ワセリンは水や空気を通さない)

(1)葉の表側・葉の裏側・茎の表面から蒸発した水の量の 目もり数はそれぞれいくつですか。

(2)葉の表側にワセリンをぬったとすると,水面がさがった目もり数はいくつになりますか。             

(早稲田中 改)


・親切にも「ワセリンは水や空気を通さない」と注意書きが問題文中にあります。つまり、ワセリンを塗った箇 所からは、蒸散(植物が水分を水蒸気として空気中に放出すること)が行われないということです。
・なぜDでも水面が減っているのでしょうか。


(1)葉の表側 6 / 葉の裏側 58 / 茎の表面 3 
(2)62


暗記学習ではなく、考えて問題を解くことができる生徒の思考プロセスに沿って解説します。この問題の最初の 鍵は、水面からの蒸発を捉えられるかどうかです。
「表から、葉の表・葉の裏・茎 から試験管の水が外に出されているんだな」

「あれ、まてよ、D の試験管の水も減っている。ということは、葉の表裏・茎以外からも水が減る原因があるのだ。」

「水面からの蒸発だろう(ここでは、水面から蒸発ということに気付かなくても、葉の表裏・茎以外からも水減らす要因があるということに気付 けばいいのです)」

このように、論理的に実験において影響をあたえる要因を考えることがスタートです。

D の試験管から 
水面からの蒸発=1 (目盛り)


C の試験管から
茎からの蒸散 + 水面からの蒸発 =4 (目盛り) 
茎からの蒸散 +   1  (目盛り)    =4 (目 盛り) 
茎からの蒸散  =3 (目盛り) 

B の試験管から
葉の表からの蒸散 + 茎からの蒸散 + 水面からの蒸発 =10 (目盛り) 
葉の表からの蒸散 + 3 (目盛り) + 1 (目盛り)  =10 (目盛り)
葉の表からの蒸散 = 6 (目盛り)


A の試験管から
葉の裏からの蒸散+ 葉の表からの蒸散+茎からの蒸散+水面からの蒸発 =68 (目盛り) 
葉の裏からの蒸散 + 6 (目盛り) + 3 (目盛り)  + 1 (目盛り) =68 (目 盛り)
葉の裏からの蒸散 =58 (目盛り)


下のような表を即座につくってもいいでしょう。

2.jpg

(2) 葉の裏からの蒸散 と 茎の表面からの蒸散 と 水面からの蒸発 の3つをたすと
   58+3+1 で62

こういった、条件を変えて、その差違(他と異なるところ)から特定したい情報を導く実験を『対照実験』といいます。

たとえば、今 りんご の重さを特定したいとします。しかし、りんごの重さを直接測ってはいけないというルールがあるとします。
また、今、みかんの重さと、 かごの重さと、 みかんとりんごをかごに入れた時の重さは分かっているとします。 この場合、

りんごの重さ= みかんとりんごをかごに入れた重さ - かごの重さ -みかんの重さ

で求めることが可能です。
このように対照実験をもちいると、直接測定不能なデータを得ることができわけです。

この対照実験はきわめて論理を要し、また科学の世界では基本中の基本とされる考え方です。なので、高校・中学入試は頻出となっています。
上位校では、対照実験の結果からの考察だけでなく、「正しく対照実験を行うにはどういった設定で、何と何を比べればいいのか」を問われることもありま す。

また、この問題も国語読解力によっ て大 きく差が開く問題です。問題文から、「どんな実験をしているのか」を把握できない生徒が多数でした。実験操作になれることも大事ですが、そ れ以上に問題文に書いてあることを、自分の言葉に翻訳して理解する、また図示するという能力が必要となります。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・基本的かつ重 要な方法論を理解する ~実験の本質を俯瞰(ふかん)してほしい~
 解説にも書きましたが、今回の実験は対照実験という有名な実験方法論です。このワセリンの問題のほかにも、唾液とデンプンの問題、光合成の問題、ソラマ メの発芽の問題等として入試問題には頻出です。さらに言えば上位校では対照実験の状況設定を行う能力が最も重要なのです。つまり、「あと、どの実験をすれ ば欲しい情報が得られるか」を思考する能力です。「差違をつかって欲しいデータを導く」という思考です。

「ほしい情報をどうやったら手に入れることができるのか」を試行錯誤し、最短の方法でそれを手に入れ、整理し考察するという能力は入試に限らず広く社会で求められています。もちろん、そういった社会で多分に求められる能力を備えた生徒を、中学が欲しがるのは至極当たり前ではないでしょうか。

この問題を通して、
「へー、葉の裏からの蒸散が一番おおいんだ。おどろき。」
と思うのも大事ですが、
それ以上に、
「へー、なるほど、こういう実験をすれば 分からないデータを手に入れることができるんだー。おどろき。」と考えて欲しいものです。


・図示するチカラ、整理するチカラ~手を動かしてください~
今回の問題は、問題文と提示された表をにらめっこしていたのでは回答にはたどり着かないはずです。解説で書いたような表を即座に自分でつくることができる か、もしくは、解説に書いたように、蒸発部分を特定する「言葉の式」を組み立てることができるか、が鍵になるのです。

そういった作業をする間に「あ、水面からも蒸発するんだ!」と気付くわけです。基礎知識など要りません。試行錯誤をきちんとするか、試行錯誤の間に 「ん??」と考えることができるかが求められるているのです。

ロジムでも、問題とひたすらにらめっこしながらうんぬんうなっている生徒が時々います。そして「表にしてごらん」「問題文を箇条書きにしてごらん」と言い うと、瞬時に解けてしまうことが大半です。とにかく手を動かすことを怠けないで下さい。

「最も簡単で最も効果 のある学習法は問題文を箇条書きに直す習慣をつけること」と言われるのも、あながち大げさではないのです。むしろ、その通りだと思います。


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