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生物 アーカイブ

2008年12月29日

データは、何となくではなく目的意識をもって見ると色々なことに気づけます。2008-12-09



データは、何となくではなく目的意識をもって見ると色々なことに気づけます。

あるこん虫Xを、たて、よこ1mの正方形の形をした箱に入れ、その中で産まれた卵の数を調べる実験を行いました。

下の表は、そのときの箱に入れた成虫の数と、産まれた卵の数を表したものです。
ただし、どの箱もオスとメスの数はすべて同じで、産まれた卵もすべてオスとメスが同数であると考えてよいものとします。

(1)表のアにあてはまる数はいくつですか。


この実験で、最初に箱に入れた成虫を第1世代とよぶことにすると、
これらの成虫が産んだ卵 (第2世代)が成長し、
成虫になって産んだ卵は第3世代となります。

このようにして、世代に 順番をつけてよぶことにします。
また、1つの世代は、次の世代が成虫になるまでに一生を終えてしまいます。

(2) はじめに箱に入れた成虫が100匹のとき、
第4世代として生まれてくる卵は何個と考えられますか。
ただし、産まれた卵は死ぬことなく、すべて成虫まで成長し、
産卵すると考えてよいものとします。


(3) この実験で使った箱を、たて、よこ2mの正方形の箱に変えた場合、
はじめに200匹の成虫を入れると、第4世代として産まれてくる卵は
何個になると考えられますか。ただし、産まれた卵は死ぬことなく、
すべて成虫まで成長し、産卵すると考えてよいものとします。


 























もしも、箱に1億匹の成虫を入れたらどうなるでしょう?


(1) 300
(2) 800
(3) 2400


(1) 箱の大きさが決まっている以上、箱の中のあるこん虫の数には限りがあります。
そこに注目して表を見てみると、成虫の数が200匹以降では「成虫の数+卵の数=1100」で一定になっています。
よって、ア=1100-800=300とわかります。


(2) はじめ、100匹であれば、表から第2世代が800匹とわかります。
第2世代が成虫になると、第3世代は1100-800=300匹、
これらが成虫になると第4世代は1100-300=800匹となります。


(3) たて、よこが2mになれば、面積は最初の実験の箱の4倍になります。
よって、右の図のように、4つの部分に分けて考えれば、
ばじめの実験の結果がそれぞれA~Dの部分で表の結果が利用できます。
200匹の成虫をこの箱に入れると、4つそれぞれの部分には50匹ずつと考えることができます。
ここで、Aの部分に注目すれば第4世代まで50匹→600匹→500匹→600匹とわかるので、
第4世代はA~D全部で600匹×4=2400匹とわかります。

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2008年11月17日

大問における小設問は、いわば「ヒント」に他なりません。2008-11-17



大問における小設問は、いわば「ヒント」に他なりません。


生物は呼吸をします。



呼吸とは、空気中の酸素と体の中の栄養分を結びつけて、生きるために必要なエネルギーを取り出すことです。

この反応で使われた栄養は二酸化炭素と水になって体の外に放出されます。

呼吸に必要な栄養分(呼吸材料)には、ブドウ糖、脂肪、タンパク質があります。



呼吸材料の種類によって、反応するのに必要な酸素の割合がちがうので、

生物がどの呼吸材料を使って呼吸をしているのかは、

放出された二酸化炭素と吸収した酸素の体積比で調べることができます。この比を呼吸商といい、

以下の計算式で求めることができます。



 ブドウ糖、脂肪、タンパク質がそれぞれ呼吸材料として使われた場合の呼吸商の値を調べると、次のようになることが分かっています。





発芽直後のダイズ種子について呼吸の状態を調べるために、図のような装置を使って実験をしました。


[実験]

 図のように、赤い水滴が同じ位置に入った装置A、Bを用意し、光を当てて3時間おき、ガラス管内の水滴の移動を調べました。なお、装置Bで用いる濃い水酸化ナトリウム水溶液は、空気中の二酸化炭素を吸収するはたらきがあります。


結果]

 装置A:ガラス管内の水滴が、左の方向に4目盛り動いた。

 装置B:ガラス管内の水滴が、左の方向に20目盛り動いた。


このとき、実験に用いた発芽直後のダイズ種子の呼吸商の値を求めなさい。


                                  (栄東 東大選抜)


 























装置A、Bのガラス管内の水滴の移動は、どうして起こったのでしょうか。


0.8


 まず、それぞれの装置で水滴が動いた理由を考えます。


A、Bどちらも水滴が左に動いていることから、フラスコ内の気体の量が減少していることは間違いありません。

発芽したばかりの種子は、激しく呼吸をすることから(これはこの問題の流れから容易に読み取れます)酸素が減少することはわかります。



ここで、装置A、Bのちがいは水酸化ナトリウム水溶液の有無です。


 水酸化ナトリウム水溶液のあるBでは、もともとフラスコ内に二酸化炭素はなく、さらに呼吸によって発生した二酸化炭素も吸収されてしまうため、実験の前後では酸素の量しか変化はありません。



 一方で、装置Aでは呼吸に使われた酸素が減る一方で、発生した二酸化炭素の分気体の量は増えます。つまり、この差の分だけフラスコの体積が減ることになるのです。


 このことから考えれば、装置A、Bでの水滴の動いた目盛りの差は、発生した(呼吸によって放出した)二酸化炭素の量であることがわかります。


 これより、以下のとおり呼吸商が求められます。





[以上、2008栄東・東大選抜より一部抜粋]


 さて、この問題がヒントなしですんなりと解答できたでしょうか。



このやや長いリード文と初めて聞く「呼吸商」という言葉から考えるとこれは難問の部類に入るでしょう。



正しい理論を持って、正答を導くにはかなりの時間を要した受験生が多かったはずです。

何よりも、装置A、Bの違いが二酸化炭素に関係することはわかっても、答えをどのように導き出してよいかわからないためです。



 しかし、実際の入試問題ではこの設問の前に次のような設問が用意されています。


問 装置A、Bのガラス管内の水滴の移動は、それぞれ何の体積が変化したことによるものですか。次のア~キから選び、記号で答えなさい。

 ア 呼吸により生じた二酸化酸素の体積

 イ 呼吸により吸収された酸素の体積

 ウ 呼吸により生じた二酸化炭素の体積と吸収された酸素の体積の差

 工 光合成により生じた酸素の体積

 オ 光合成により吸収された二酸化炭素の体積

 力 光合成により生じた酸素の体積と吸収された二酸化炭素の体積の差

 キ 呼吸および光合成により出入りした酸素の体積と二酸化炭素の体積の差


 まさに、今回「ヒント」として与えた内容です。

これにより、装置A、Bの差異が明確になり、正答までの距離が大きく短縮されます。



ただ「初見問題を解くときは知らないからという理由だけであきらめないという姿勢が大切」というだけでなく、

具体的に身近なところからヒントを探る意識を持ちましょう。


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2008年11月03日

前回に続き、新傾向問題は「誘導にのれるか」が勝負の鍵です。 2008-11-03



前回に続き、新傾向問題は「誘導にのれるか」が勝負の鍵です。

生物が子孫を残すとき、多くの場合で子は親と似ていることに気がついた太郎君は、図書館でいろいろと調べてみました。
すると、親の持っている特徴は子に伝わっていき、それを遺伝とよぶことを知りました。

また、この遺伝について最初に詳しい研究をしたのは、オーストリアの司祭であったメンデルです。
メンデルは、エンドウという植物を観察していたところ、図1のような2種類の形の種子があることに気づきました。
そして、その形のちがいを利用して、次のような4つの実験を行いました。これについて、あとの問いに答えなさい。

<実験1> 丸い種子をまいて受粉をくり返すと、何度受粉をしても丸い種子しかできなかった。
<実験2> しわの種子をまいて受粉をくり返すと、何度受粉をしてもしわの種子しかできなかった。
<実験3> 実験1、2でできた丸い種子としわの種子をまいて、人工的に一方の花粉をもう一方のめしべに付けると、その子は丸い種子しかできなかった。
<実験4> 実験3のあと、子の種子をまいて受粉させて孫を作ったところ、丸い種子としわの種子ができた。

種子を丸くする遺伝子をX、種子をしわにする遺伝子をYとすると、実験1で作った種子のもつ遺伝子はXXとなり、実験2で作った種子のもつ遺伝子はYYとなるはずです。実験3で、丸い種子の親から子へ伝わる遺伝子はX、しわの種子の親から伝わる遺伝子はYとなるので、表1のように子のもつ遺伝子はすべてXYとなることがわかります。

ここで、種子を丸くする遺伝子Xの方が、種子をしわにする遺伝子Yよりも強くあらわれる性質をもっているので、子はすべて丸い種子であることが説明できるのです。
そして、この性質を優性とよびます。実験4では、XYの遺伝子をもつ子が親になって孫をつくるので、表2のように孫のもつ遺伝子は4通り考えられます。ただし、表の中には実際の孫の遺伝子の組み合わせは書かれていません。


問1 
実験4でつくった孫の種子について、丸い種子としわの種子の割合は何:何ですか。

問2 
実験4でつくった孫の種子をすべてまき、自然に受粉をさせると、丸い種子としわの種子の割合は何:何になりますか。
ただし、エンドウは自然界では自家受粉を行います。

問3 
オシロイバナは、不完全優性という性質をもつ植物です。
例えば、オシロイバナの赤い花と白い花で子を作ると、子はピンク色の花をさかせます。
これは、赤い花になる優性の遺伝子Pが不完全であるために、白い花になる遺伝子QとでできたPQが、赤ではなく中間のピンク色になってしまうのです。ピンク色の花と白い花で子を作ると、赤色の花は何%の割合であらわれますか。  

 























  ただ「決まり」に従うだけです。



問1 3:1
問2 5:3
問3 0%



問1 それぞれの遺伝子を組み合わせると、下の図 のようになります(赤=丸い種子)。


問2 自家受粉をするエンドウは、人工的に手を加 えない限りその花の中で受粉が行われるので、同じ 組み合わせの遺伝子で遺伝が繰り返されていきます。 よって、問1の4つの組み合わせに対して、下の図 のような組み合わせが考えられます。

問3 ピンク色の花がもつ遺伝子の組み合わせはPQ、 白色の花がもつ遺伝子の組み合わせはQQなので、右 の図のような遺伝になります。ここで、赤色の花がも つ遺伝子はPPしかないので、この場合赤色の花がさ くことはないことがわかります。


 
 


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2008年09月08日

複数の段階を踏んだ計算問題は、中学入試理科の主流となりつつあります。2008-09-08



複数の段階を踏んだ計算問題は、中学入試理科の主流となりつつあります。


植物の光合成と呼吸について調べるために、同じ大きさのメダカ2匹と、葉の面積がほぼ等しいオオカナダモ3つを用意し、同量の水を入れた容器A~Eに次のように入れました。

容器A:水のみを入れた。
容器B:水にオオカナダモを入れた。
容器C:水にオオカナダモを入れ、アルミはくで包んだ。
容器D:水にメダカを入れた。
容器E:水にオオカナダモとメダカを入れた。

<実験> 数日間くみ置きした水道水を使ってA、B、C、Eをつくり、ふたをして十分な光を1時間当てた あと、それぞれの容器の酸素量を測定した結果、下の表のようになった。

(1) オオカナダモがこの1時間でつくった酸素量は、何mgですか。
(2) メダカの呼吸によって、この1時間で使われた酸素量は、何mgですか。


それぞれの容器内で何が起こっているのでしょうか。


(1) 5.3mg
(2) 2.6mg



植物のはたらきのうち、重要な3つは光合成、呼吸、蒸散です。植物は光が当たると光合成を行い、自ら養分(デンプン)を作り出すことができます。そして、このときに二酸化炭素を取り入れて酸素に変えて出しています。また、作った養分からエネルギーを取り出す呼吸を行うと、光合成とは逆に酸素を取り入れて二酸化炭素に変えて出します。そして、この呼吸は光を必要とはしないので、一日中絶えず行っているのです。さらに、メダカは呼吸によって酸素を取り入れて二酸化炭素を出しています。


・Bでは、オオカナダモが光合成と呼吸を行いますが、十分な光があたっていると考えられるので光合成の方がさかんです。よって、二酸化炭素が減ることになります。

・Cでは、光があたらないためにオオカナダモは光合成を行うことができません。よって、呼吸のみを行う ので二酸化炭素が増えていきます。

・ Dでは、メダカが呼吸のみを行います。つまり、Cと同じ状態になります。

・Eでは、オオカナダモが光合成と呼吸を行うと同時に、メダカが呼吸を行います。ここで、光合成は酸素量が増えるはたらき、呼吸は酸素量が減るはたらきですから、表にまとめると、

Cの結果から、オオカナダモの呼吸によって1時間あたり0.8mgの酸素が減っていることがわかります。
よって、Bに注目をすればオオカナダモの呼吸によって0.8mg減っているにもかかわらず、結果4.5mg増えているので、光合成によって5.3mg増えることがわかります。同様に、Eに注目すればメダカの呼吸によって減った酸素量が求められます。


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2008年06月09日

有名な心臓の問題、あなたは「何」で心房、心室を判断していますか?2008-06-09



有名な心臓の問題、あなたは「何」で心房、心室を判断していますか?


下の図は、ヒトの心臓を表したものです。これについて、次の問いに答えなさい。





問1 上の図のは、心臓の4つの部屋です。これについて、正しいものを次のア~エから選び、記号で答えなさい。






問2 上の図のA~Dは、心臓につながる4つの太い血管です。これについて、正しいものを次のア~クから選び、記号で答えなさい。






問3 下の図は、体循環と肺循環を模式的に表したものです。これについて、次の(1)、(2)に答えなさい。

(1) 上の図の血管Bは、下の図のどれにあたりますか。E~Hから選び、記号で答えなさい。

(2) 心臓が収縮するとき、の部屋と一緒に縮むのはどの部屋ですか。下の図のから選び、記号で答えなさい。







よく見る図、ここにこそ注意が必要です。


 問1 ウ

 問2 キ

 問3 (1)  (2) 


問1 

私たちがよく見る心臓の図は、決して自分のものではありません。その心臓の持ち主と向かい合った状態で見ているわけですから、左右が逆になってしまいます。また、上の部屋にあたるは、血液がもどる部屋で「心房」とよばれ、下の部屋にあたるは、血液を送り出す部屋で「心室」とよばれます。



問2 

血液が心臓から出ていくための血管は動脈とよばれ、血液の勢いが強いために分厚い壁でできた管になっています。一方で、血液が体の各部をまわった後、心臓に戻るための血管は静脈とよばれ、血液の勢いが弱いために薄い壁でできた管で、逆流を防ぐための弁があります。



また、ヒトの血液の循環には2種類あり、肺へ行って酸素を補給する循環と、体全身へ酸素を運ぶ循環に分けられ、それぞれ肺循環と体循環(大循環)とよばれます。



A 全身から心臓へもどる血液→静脈

B 全身へ心臓から出て行く血液→動脈

C へ心臓から出て行く血液→動脈

D から心臓へもどる血液→静脈



問3 

あくまで、模式図です。きちんと図をみて、整理しましょう。

E 全身から心臓へもどる血液→大静脈

F 肺へ心臓から出て行く血液→肺動脈

G 全身へ心臓から出て行く血液→大動脈

H 肺から心臓へもどる血液→肺静脈



また、心臓の収縮は、左右同時に心房、心室、心房、心室…と行われます。は全身から心臓に血液がもどる部屋なので右心房とわかります。つまり、左心房を選べばよいのです。ここで、肺から血液がもどる部屋ですから、となります。




まとめ


 心臓の図で、左右が逆になることは有名ですね。各部屋、各血管の名前もふくめた基本知識はさておき、この問題で一番注意して欲しいところは「模式図の罠」です。



 この問題の図のように、よく見る心臓の図では、上が心房、下が心室です。また、言い換えれば肺側が心房、その反対側が心室です。しかし、これは模式図でもあてはまるとは限りません。



 たとえば、この問題の模式図でいえば、上側であるが心房か? 肺側であるが心房か? いいえ、どちらも違います。血液がもどる部屋が心房ですから、でなければなりません。もちろん、心房はとなり合った部屋のはずですから違和感はありますが、模式図だからかまわないのです。




2008年05月20日

「植物は、光が当たるほどよく育つ」と単純に思い込んでいませんか?2008-05-19



植物の育ち方と光の関係。多くの生徒が間違って理解しています。


同じ条件の畑で、ヒマワリやホウセンカの種をまき、その育ち方を調べました。これについて、次の問いに答えなさい。

問1 ヒマワリの種を図1のA、Bのようにまきました。その後の育ち方について正しいものを次のア~オから選び、記号で答えなさい。ただし、すべてBと比べたときのAのようすを表しています。

問2 図2のようにホウセンカの種をまき、数日後育って大きくなったあとでX-Yの断面を調べました。これについて、次の(1)、(2)に答えなさい。


 (1) X-Yの断面として、最も適当なものはどれですか。下図のア~ウから選び、記号で答えなさい。
 (2) (1)で選んだ断面について、~のホウセンカのうち最もくきが太いのはどれですか。数字で選び、番号で答えなさい。


「植物は、光が当たるほどよく育つ」と単純に思い込んでいませんか?


問1 ウ
問2 (1)ウ、(2)



問1 

植物は、「光合成」によって、光のエネルギーを得て、自ら養分を作り出すという特別なはたらきをしています
(正確に言えば、光のエネルギーを閉じ込めるために養分を作るわけですが…)。

  太陽からの光は、この地球全体に届きます。つまり、単純に考えれば、この世界を植物が覆い尽くすほどエネルギーが盛んに作られることになります。では、想像してみてください。地面いっぱいに植物が茂っていたら…?

  ●ヒトが暮らす場所がなくなる?
  ●緑で土の水分が奪われ、地割れで地球がこわれる?
  ●むしろ、地球温暖化を防ぎ、暮らしやすくなる?

  いいえ、そもそも植物が地面を覆い尽くすことはないのです。
  
植物が生きていくためには、もちろん光が必要です。しかし、地球に届く光は限られています。つまり、増えすぎた植物どうしは、光の奪い合いを行うのです。簡単に言えば、限られた食料の中で、多数の動物が生きるには限度があるということと同じです。  

この問いでは、Bに比べて密集したAだと、光の当たりにくい場所ができ、十分に育つヒマワリが少なくなると考えられます。

しかし、多くの植物は生命のエネルギー源である光を心底求めています。そして、全エネルギーを光を浴びることを優先に使います。この結果、本来葉を大きくし、茎を太くし、効率よく光を浴びることを忘れて、光の当たりにくい植物は背丈をひたすら伸ばしてできる限り光を浴びようとする傾向にあるのです。

問2

 同種の植物どうしで光を奪いあうわけですから、問1と同様に考えることができます。ここで、太陽の動きを考えてみると、東→南→西となります。つまり、右図のように光の当たりやすいところ()、当たりにくいところ()に分けられます。

よって、X-Yの断面を見れば、中央部分は光が当たりにくく、端の方は光がよく当たることがわかります。

光が不足するほど植物は背を伸ばそうとするわけですから、中央部分は背が高く、端の方は背が低くなるのです。また、このことより中央部分はくきが細く、端の方がくきは太くなります。

たしかに植物は、光が当たるほどよく育つのですが、それは茎の太さ、背丈、葉の大きさ、根のはり方などの総合バランスについてであって、この問題のように背丈だけで考えれば必ずしも「光が当たるほどよく育つ」とは言えないのです。


2008年04月28日

答えを予想する時の頭の使い方を意識します。2008-04-28



根拠をもって予想する≒仮説をつくって問題を解く練習を数多くしましょう


メダカは5月~8月の朝早い時間に産卵を行います。メダカが水草に産みつけた卵を、同じ数ずつ10℃, 20℃, 30℃, 40℃, 50℃の水温の水槽に入れ、それぞれ水温を一定にたもち、3週間の間に卵からかえった数をしらべました。その結果をグラフにしたのが下のグラフです。正しいグラフはどれですか。一つ選び、それを選んだ理由を説明しない。


予想する方法は、自分の知っていることと、与えられたヒントを組み合わせる以外にはありません。



生徒A「メダカは25℃前後の水温でもっとも多く産卵すると習ったし、問題にも5月~8月に産卵すると書いている。つまり暖かくなるとたくさん卵がかえるのではないか。」

生徒B「ということは、グラフ(イ)だね。」

生徒A「ちょっとまって、でも水温40度って言えば普段入っているお風呂と同じくらいの温度だし、50度なんていったら卵はゆであがっちゃうんじゃないの?!」

と、わざとらしい会話ですが上のように「自分の知っていること」「常識」「文章中のヒント」を組み合わせます。
メダカについての学習範囲を覚えていないという理由でこの問題を放棄するようでは先は明るいとはいえません。


2007年07月02日

頌栄より。対照実験から仮説を導く基本問題です。 2007-07-02



頌栄より。対照実験から仮説を導く基本問題です。


サツマイモを半分に切って水栽培をし、芽や根がどこから出るかを調べた。イモができたとき、茎に近かった方をA、その反対側をBとして実験を行ったところ、(1)~(4)のような結果を得た。

(1)Aの上下をそのままにして栽培すると、芽は上から、根は下から出た。
(2)Aの上下をさかさまにして栽培すると、芽は下から出、その根元から根が出た。(3)Bの上下をそのままにして栽培すると、芽は上から、根は下から出た。

(4)Bの上下をさかさまにして栽培すると、芽は下から出、その根元から根が出た。

問)
この実験から分かることを、 (a)芽の出かた (b)根の出かた それぞれについてまとめなさい。

(頌栄中・抜粋)


Aの部分とBの部分の違いはなんでしょうか。


(a)芽は上下の置きかたに関係なく、もともと茎に近かった部分から出る。

(b)根は、もともとの位置に関係なく、下に置いた部分から出る。


芽、根についてそれぞれ(1)~(4)の共通点を探します。

芽の置き方については、上下の置き方に無関係であることがわかる。
ここからは「気付かなくてはいけない」ところではあるが、そもそもAとBの部分は何が異なるかを考えると、
「もともと地中にあったときに茎に近かったかどうか」という点に着目できる。

この点に着目すれば、
切り取る前に最も茎に近かった場所から、芽が出ていることが分かる。

根については、単純に(1)~(4)の共通点を探すことで、下に置いた部分から根が出ていることが分かる。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
まず仮説をたてる方法を知る

科学の世界では常識であり、ロジカルシンキングの授業でも多く取り上げる「仮設を立てる」というテーマ。

多くの参考書や問題集、また授業でも取り上げられるこの種の問題ですが、
ではどうやって仮説をたてるのかということには全く触れていないのが実情ではないでしょうか。

仮説を立てる重要な方法の1つは「共通点と差異」(同じここと違うこと)に注目することです。

違いを明確にし、対象をグループ分けし、そのグループの中で共通点を探す。
たとえば、A~Dの対象物の共通点がすぐに見つからない。そういった場合、 A~Dの対象物をグループ分けできる差異を見つけ、
そのグループの中で共通点を考えます。

こういった方法論は、たしかに日々の実験や試行錯誤で身につくものですが、まずフレームとして学習する機会を持つべきではないでしょうか。


2007年04月30日

開成中より。問題文を読み解く力。グラフの二段階読解。 2007-04-30



開成中より。問題文を読み解く力。グラフの二段階読解。


あきら君は,ミツバチに興味を持ったので,ミツバチについてよりくわしく調べてみることにしました。ミツバチは,ミツを探しにいくときには胃の中はほとんどからの状態で巣から飛び出していきます。ミツバチが花のミツをすうと,胃にミツをため,それを巣に持ち帰って巣にたくわえていきます。屋外で飼われているミツバチについて,まず巣の中にミツを用意して,ミツをすわせたとき(これを「巣内」とします)の重さを調べました。次に,巣から出ていくとき(「出巣時」とします)の重さと,ミツを集めて巣にもどってきたとき(「帰巣時」とします)の重さを調べました。このときの重さの変化は,すべてすったミツによるものだと考えられます。それについて100匹ずつのミツバチの重さを調べ、どの重さのミツバチが何匹いるかを調べたものをグラフにまとめました。

問1 ミツバチの胃の中には、平均的に何mgのミツをためることができると考えられますか。もっとも適切な数値を、次のア~オの中から1つ選び、記号で答えなさい。

ア 30mg イ 40mg ウ 70mg エ 120mg オ 150mg

問2 ミツを見つけるのに成功したミツバチは、1匹あたり平均して、どのくらいのミツをすってもどってきたと考えられますか。もっとも適切な数値を、次のア~オの中から1つ選び、記号で答えなさい。

ア 30mg イ 40mg ウ 70mg エ 120mg オ 150mg

(開成中・抜粋)


帰巣時のグラフの山がきれいに二つに分かれていることに着目します。


問1 ウ(70mg) 
問2 イ(40mg)


問1
まず、たとえば、100mgのミツバチが二匹、80グラムのミツバチが1匹いたら、
平均の1匹の体重は、(100mg×2匹 + 70mg×1匹)÷3匹=90mg となる。
この平均の考え方を理解していることが出発点となります。

巣内の状態では満腹であり、出巣時には、胃の中のミツは空になっている(だから、巣から出てミツをとりにいく)と、考えると、
(ミツバチが胃に蓄えられるミツの量)=(ミツバチの巣内の体重)-(ミツバチの出巣時の体重) で求められる。
ミツバチの巣内の体重=(140mg×10匹 + 150mg×80匹 + 160mg×10匹)÷100匹=150mg
ミツバチの出巣時の体重=(70mg×20匹 + 80mg×60匹 + 90mg×20匹)÷100=80mg
となり、この差の70mgが解答となる。

問2
帰巣時の体重のグラフを見ると山がきれいに二つできていることに気がつきます。
このグラフのカタチをみて「ん?なぜだ?」と立ち止まれるかどうかがこの問題を解けるかどうかの分かれ道となります。
ここで頭に「?」が浮かべば、二つの山のうち左側は「ミツを取ってくることができなかったハチだ」と考えることができます。
なので、グラフ右側の山のミツバチだけを考えます。

(ここは厳密に考えるとまだ考察ポイントがあります。後述。)

(ミツバチが取ってこられるミツの量)=(ミツバチの帰巣時の体重)-(ミツバチの出巣時の体重)で求められる。
ミツバチの帰巣時の体重=(100mg×1匹+110mg×7匹+120mg×24匹+130mg×7匹+140mg×1匹)÷40匹=120mg
ミツバチの出巣時の体重=80mg ←問1より
となり、この差の40mgが解答となる。
-------------------------------------------------------------------

*上記の「山の左側はミツをとってこられなかったハチだ」と仮定し、解答を得ていますが、厳密にはそうでない場合もありえます。

たとえば、出巣時70mgが20匹おり、このうち、12匹がミツをとれずに帰ってきて、8匹が80mgになって帰ってきた。
出巣時80mgが60匹おり、このうち、28匹がミツをとれずに帰ってきて、12匹が90mgになり、1匹が100mgになり、7匹が110mgになり、12匹が120mgになって帰ってきた。
出巣時90mgが20匹おり、このうち、12匹が120mgとなり、7匹が130mgとなり、1匹が140mgとなって帰ってきた。
という場合を想定すると、与えられたグラフと同様のものが描けます。この場合、問2と同じ解答は導くことはできません。
つまり、左側の山が「ミツをとってこなかったハチ」ではない場合もあり得、その場合この問題は解答を得られません。
グラフをみて、きれいな二つの山から考察し、仮定を立てる力を試す問題であるという点で良問ではありますが、「そうはならない可能性」がある点に問題文でなにかしら触れるべきであるという思いはぬぐえません。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
グラフの裏側にあるメッセージを探る

解説でも触れたように、本問の鍵は、グラフの読み取りです。
たんなる読み取りではなく、グラフが語る事象を読み解く能力です。

グラフをみて、そのグラフが何を語るかは数段階あります。

たとえば、人口増減のグラフをみて、
「日本の人口は減っている」ということを読むことが第一段階。
「このままだと、労働力が不足するかもしれない」という仮説を含んだ思考を創るのが第2段階です。

グラフを正確によみとることはもちろん大事ですが、
その先にある事象を考えることが求められています。


2007年03月12日

ラ・サール中より。自然科学・理科の学習で特に必要な能力「式の意味を日本語で理解する」というスキル。 2007-03-12



ラ・サール中より。自然科学・理科の学習で特に必要な能力「式の意味を日本語で理解する」というスキル。


<1> ある地域で生活する動物の数をおおまかに予想する方法を考えてみましょう。ある地域に1000匹の動物が生活しています。このうちの100匹をつかまえて印を付け,逃がします。再びこの地域から100匹をつかまえ,10匹に印が付いていたとすると,式(X)をつくることができます。ただし,式(X)を利用して,動物の数を予想するには次のA~Dの条件を満たしていなければなりません。

 A 印を付けたものと,印を付けていないものが自由に動きまわり,十分混じり合うこと。
 B 調査する地域で,動物の数の変化や入れ代わりがないこと。
 C 付けた印が,とれないこと。
 D 印を付けたものと,印を付けていないものの,つかまりやすさに差がないこと。

<2> 畑で生活するモンシロチョウの数の調査についてまとめました。畑において,飛んでい るモンシロチョをつかまえたところ,150匹がオス,50匹がメスでした。これらすべてに印を付け,つかまえた場所で逃がしました。翌日,再び同じ場所で同じ時間に飛んでいるモンシロチョウをつかまえたところ, 160匹がオス,60匹がメスでした。その中には,前日に印を付けたものがオスに80匹,メスに6匹含まれていました。この調査において,オスとメスでつかまえた数に違いが生じたのは,メスは卵を産むために,オスほど飛びまわることができないからです。

(1)<1>の式(X)について,(つかまえた後,印を付けた動物の数)をP,(ある地域で生活する動物の数)をQ,(再びつかまえた中で印が付いている動物の数)をR,(再びつかまえた動物の数)をSとした場合,式(X)として成り立つものを選びなさい。

 ア.P:Q=S:R  イ.P:S=Q:R  ウ.P:S=R:Q  エ.P:Q=R:S

(2)<2>の畑で生活するモンシロチョウのオスとメスの数をそれぞれ予想しなさい。

(ラ・サール中)


A:B=C:Dというのは、Bの中にAがいる割合と、Dの中にCがいる割合が同じであると読むことができます。


(1)エ.P:Q=R:S

(2)オス:300匹 メス:500匹


(1)
問題文をじっと見ていても答えにたどり着くまでに時間がかかってしまいます。

問題文を自分の言葉で読み替えるのがコツです。(と、いってもそれが難しいのですが・・)

Q匹のうち、P匹に印をつけて、それをまたごちゃごちゃにまぜます。

つまり

Q匹のうち、P匹はいつでも印がついている というわけです。 (Q=100 P=10 ならば いつでも10匹に1匹は印)

つまり、どういった数をとりだしても、その中には、〈Q匹中 P匹〉という割合で印のついた個体がいます。

これを式にあらわすと、P:Q=R:S になります。

【別解】
また、より統計学的に考えると、

どの集団にも P/Q の割合で 印のついた個体が存在するので、

R=S×(P/Q) ⇒ P:Q=R:S

(なんにせよ、この種の問題を解くには、しっかり問題文を読み込める読解力が最低限必要となります。)

(2)
(1)で導いた比例の式に条件となる数字を当てはめます。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
具体的な数字を一般化する力を培う

この種の問題は問題集をいくらやってもなかなか出会うことはありません。
多くの受験生にとって、初めて出会う問題になったのではないでしょうか。

しかし、ここで「難しい。よく分からない」と投げ出す生徒と、
「とにかくもう一度よく読んで考えてみよう。」という生徒の差がまさに合否の差になったのでしょうか。

そういった意味で、初見の問題に対する粘り強さ、基本的な数式の意味の根本理解、
数に対するセンス、思考力を瞬時にチェックする良問といえますね。

とりわけこの問題でチェックできるのが、「数字を一般化する能力」です。
具体的な数字や事象を読み解き、それを文字式にしたり、図式化する。言ってしまえば簡単ですが、
受験から社会生活まで大きな差を生む大事な能力です。


具体的な数字を処理するというのは与えられた公式・定理・フレームに物事を当てはめることです。
しかし、本問出題校が求めるものは、物事をあてはめる応用力以上に、フレームを生み出す創造力です。
社会の枠にはまる人間でなく、枠を創りだす人間になってほしいという卒業生に求める資質がこの問題からも汲み取れます。


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