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地学 アーカイブ

2006年09月18日

学習院女子中より。物事を説明する基本技をここで一つ習得してください。 2006-09-18



学習院女子中より。物事を説明する基本技をここで一つ習得してください。


月を注意 して観察すると、私たちでも、地球上にいながら、下の表のことがらを知ることができます。どのようなことから、それがわかりますか。それぞれについて、説明しなさい。
(1)月は、夜空に明るくかがやいているときでも月の内部からは光を出していない。
(2)月がかがやいて見えるのは、太陽の光を反射しているからである。
(3)月は満月のとき、平らな円板のように見えるが、実際の月の形は球形である。
(4)地球から見ると、月は太陽とほぼ同じ大きさに見えるが、月は太陽より私たちに近いところにある。
(5)月のまわりには、ほとんど大気がない。


「Aでない」と仮定して、その話が確実に間違いならば、「Aである」といえます。


(1) 月が満ち欠けをすることから。
(もしも月が自分で光を発しているならば、月は満ち欠けせずに、(自ら光を発する太陽のように)いつでも満月状に輝いている。しかし、実際には月は満ち欠 けをすることから、月は自ら光を出してはいない。)

(2)月食が起こるから。
((月-地球-太陽)と並んだときに、月食が起きることから。)

(3)月の中央部のクレーターは円形なのに、端に行くにしたがってつぶれた形(だ円形)になっているから。


(4)日食がおこることから。
(もし、月が太陽と同距離、もしくは太陽より遠い場合、地球と太陽の間に月が入ることでおきる日食は起きない。が、実際には、月の影が影をつくり日食は起 きため、月は太陽より地球に近いことがわかる)

(5)光の屈折が観測されないから。 / 月に大気が存在するとしたら、月が他の遠い(小さい)星を隠すときに、まず月の大気が星を隠すため、はじめ星が ぼやけ始め、その後、月本体によってその星が隠れるはずである。しかし、月が星を隠す際は、段階的に星が暗くなることはなく、一瞬で消えるため。



(3)
授業の際、
「たまたまはじにあるクレーターがだ円形で中央にあるクレーターが正円に近いだけではないか」
という意見もでました。
とある一つのクレーターを観察しつづけ、このクレーターが中央にあるときと、はじにあるときで形がかわることまで言えば、この疑問は解決されます。

-------------------------
物事を説明・証明するときの大事なテクニック

「Aである」ことを証明・説明するために、

「Aでないとしたら」と仮定し、その矛盾を示し、

したがって、

「Aである」と結論する。
--------------------------
中学以降「背理法」として紹介される方法論ですが、もちろんみなさんも
日常的に行っている論理展開です。

何かを説明する。
訓練を積んでいないとなかなか難しいはずです。
上記の説明テクニックは中学入試でも活用箇所が大変多いですので、
覚えておいて損はないはずです。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~

「あたりまえ」の事実を言葉で説明できる能力 をもって入学してほしい

算 数の公式や定理・公理、
理科の常識をあらためて説明することは、想像以上に骨が折れる作業です。

現状教育の現場では、とあるルールを与え、それを応用する能力が重要視されているといえます。
みなさんが慣れ親しんでいる試験はまさにこの分野でしょう。

しかし、その反面、ルール自体や、定義・定理、身の回りの常識の理解が
おろそかになっている生徒を多数生み出しています。

本問は、
・ とりあえず公式や常識をマスターしてそれをつかえればいい
・ 説明は苦手。塾や学校で教わった説明を覚えておこう

という生徒が増えた現状に警笛を鳴らし、改めて定義や常識を説明することの重要性を
教えてくれる良問といえるのではないでしょうか。

近年上位校と呼ばれる学校で「定義の理解確認。常識とされる事柄の論理的説明」
問題が多く出題されています。
この機会に「何気なく前提としている常識」を見直してみてはいかがでしょうか。
(塾や学校の先生の説明を聞きっぱなしにしたり、小学生の学習範囲かどうかを気にするのではなく、
意地悪いほどに、「そもそもなぜ。なぜなぜ。」と質問してみるべきです。)


2006年06月19日

岡山・金光学園中より1問です。 2006-06-19



今週は岡山・金光学園中より1問です。


図1は、地球儀を電燈で照らしているところを示しています。図 2は、図1を真上から見た図です。また、A~Hの地点には、マッチ棒を垂直に(地球の中心に向けて)立てています。電橙を太陽と考えて、次の問いに答えなさい。

(l)図のように光を当てているときA、B、Hの地点のマッチ棒のかけはどのようにできますか。下の(ア)~(ク)から選びなさい。

(2)地球の自転の方向は、図2のア、イのどちらですか。
(3)地球儀を回転させて、真北にできるマッチ棒のかけの長さを見るとき、D地点のときにできるかげの長さと等しいかけができる地点はどこですか。
(4)A地点は、ちょうど太陽が南中しているときにあたります。G地点の時刻は何時ですか(午前・午後を使って答えなさい)。    (金光学園)      


図 1や図2をにらめっこしていると余計に混乱します。そもそも影の長さと向きは、差し込む太陽の方向と高度が決めるということに立ち返ってみてください。


(1) A・・・ア  B・・・ク  C・・・ウ
(2) イ
(3) F
(4) 午後6時


(1) まず、A、D、H の位置での観測時、太陽が南中しているから、影は真南・真北にのびる。
  (↑ 上記解説の意味が分からない人は、もう少し学習がすすんでからこの問題を考えること)

上図のように、A・Hそれぞれの位置の地平線がどうなっているのかを考える。
A は南側から太陽の光が当たる → 影は北にできる → (ア)か(イ)
H は北側から太陽の光が当たる(30-23.4=6.6度分だけ) → 影は南にできる → (ウ)か(エ)

Aの影が(イ)だとすると、それより影が明らかに長くなるHでの影を(ウ)か(エ)から選べない。
よって、Aの影は (ア)であり、Hの影はそれより明らかに短い(ウ) となる。

Bに関しては、Aと同じ緯度であるため、Aと同じ角度で、南側から太陽がさしこむ。
また、自転の方向を考えると太陽は西側から差し込む。 
つまり 南西から太陽の光が差し込む → 影は北東方向にのびる 
したがって解答を得る。

(3) マッチ棒の長さが共通ですから、影の長さはそれぞれの位置の地平線に対する、
   太陽の差し込む角度によります。 
   太陽の差し込む角度は、緯度が同じならば同じです。よって、Dと緯度が同じFが解答。

(4) 時差をきめるのは経度です。
(同一経度上の時刻は等しいということの詳細解説は割愛します。
この図で言えば、例えばC-F-G は同じタイミングで南中を迎えます。)

したがって、Gの南中時刻とCの南中時刻は等しい。
CはAにくらべ、90度東側に存在する。つまり 90度分、例えば、先に南中を迎えたり、朝日を迎える。
360度回転するのに24時間かかるので、90度分だと、6時間分 (360度:24時間=90度:時間)
先に南中を迎える。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・ 仕組みを理解して初めて暗記を行うこと
  → 暗記はしようとしてするのではなく、完全な理解と同時に自然としてしまうもの
理科天体分野ほど、教科書知識の丸暗記により点数を落とすことにつながる
分野はないでしょう。

頭の中で物事をグルングルン動かさなくてはいけないという性質上、この分野を苦手とする生徒は
大変多いのが実情です。

「上弦の月の一週間後は満月だ」 
「北極星の周りを星は反時計回りに回る」
「夏のほうが日が長い」
「月の公転周期と、満月から満月になるまでの期間は2.2日ずれる」
「冬至の日の南中高度は90度-緯度-23.4度だ」

などということを、他者に説明できない状態で暗記していると、

「あれ、上弦だっけ、下弦だっけ?」
「あれ、南の空では反時計?時計回り?」
「南半球ではどうなるの?単純に反対?」
「冬至の南中高度の式中の記号はプラスだっけマイナスだっけ?」

などと、すぐに受験生の暗記主義を打ち崩すべく用意された問題に混乱することとなります。
たとえば、本問(1)でも

「冬の季節に北半球では太陽は南側を通って東から西へ進む」という知識からでもA=ア は解答可能です。ですが、上記カッコの丸暗記で済ませている場合、 Hを考える際に「あれ、南半球の時はどうなるんだっけ」と戸惑うことは必至でしょう。丸暗記で足元をすくわれることの多い事の例です。

前回の今週の1問でも書きましたが、
「とりあえず覚えてしまえ」という勉強法および指導法は、
長く将来にわたって活きる能力をつけるという目的に対しては悪です。

自分が原則を理解したうえで学習を進めているのか、
(上に紹介した天体分野の約束事を他者に説明できますか??)
自分の教師は将来にわたり役立つ学習指導をしているのか
(あなたの指導者は「とりあえず覚えちゃって」などと言っていませんか??)
を計るのに良い機会を提供してくれる1問です。


2006年03月06日

今週は桜蔭中理科より1問です。 2006-03-06



今週は桜蔭中理科より1問です。


 地球上に存在する水の重さの97%が海水です。その他の2%が南極大陸やグリーンランドの氷河、1%が北極海の氷山や地下水などであると考えられていま す。南極大陸やグリーンランドの氷河だけがすべて海水となると、関東地方のかなりの部分は完全に海水面の下になると予想できます。このとき海水面の高さは およそ何メートル上昇(じょうしょう)しますか。
 答えは四捨五入して整数で答えなさい。ただし、海水面の上昇により陸地の面積は変わらず、また水温の変化などによる水の体積変化もないものとします。必 要があれば下の数値をしようしなさい。

地球の表面積全体に対する陸地の割合 :29パーセント
海の平均の深さ :3800メートル
地球の半径 :6400キロメートル
(桜蔭中)


物事をいかにシンプル化できるか、モデル化で きるか、です。
「必要あれば」とあるとき大抵ヒントの数値は使うものですが、本問では・・・


78 メートル

問題文には(水⇔氷)の体積変化を無視するとあるので、南極の氷すべてが溶けると、地球上の水が2%分増加することになる。

(もとからある海水の体積):(増加した海水の体積)
=97 : 2
=(もとからある海の深さ):(増加した海面の高さ)
=(3800メートル): ?

よって、?= 3800 / 97 ×2 =78.35・・・

答え 78  メートル



球の表面積・体積を習っていないのですから、球で考え始めたらアウトです。
(仮に大人が、球で考え始めても海面と陸地の標高差の条件がないのでドツボにはまります)

では、どうするのでしょうか。

地球を直方体のシンプルなモデルとして考えます。
(「そんなの思いつかない」と思うかもしれないでしょうが、球を書いてみたり、円を書いてみたりして試行錯誤を続ければ行き着くはずです。)

上図の ? が求めたい、海水面の上昇分です。
問題文には(水⇔氷)の体積変化を無視するとあるので、南極の氷すべてが溶けると、地球上の水が2%分増加することになる。

(もとからある海水の体積):(増加した海水の体積)
=97 : 2
=(もとからある海の深さ):(増加した海面の高さ)
=(3800メートル): ?

よって、?= 3800 / 97 ×2 =78.35・・・

答え 78  メートル


「南極の氷がすべてとけると、海面が約70メートルあがる」と言うのは、有名な話です。
(ためしに、「南極の氷」 「溶ける」 「海面」 といったキーワードで検索してみてください)


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・複雑な事象を、シンプルに考えることができますか?
・手持ちの知識をつかって数段階におよぶ思考を展開できますか?

解説にも書きましたが大人がこの問題にトライすると、大抵、球の断面図の絵を書き、
4πr2乗等の表面積の公式をいじくり、途中で挫折します。また、与えられた数式を
いじっているうちにそれらしい答えがでることもありません。

物事をシンプルに考えられますか。複雑な物事を、シンプルなモデルとして捉えられますか。
これが今回桜蔭が投げかけているメッセージです。

そして、「シンプルに考える」というのは、一朝一夕にできる能力ではありません。

答えまでの作業マップを絶えず頭に描いては修正していく必要がある問題が桜蔭では頻出です。
目の前の数字や数式をいじくり答えにたどり着くことはありません。答えを求めるために求めなくては
いけないもの、さらにその求めなくてはいけないものを求めるために、必要なものはなにか、
絶えず数歩先を見ながら処理を行う能力が必要なのです。
その処理を繰り返した先に本問のようなシンプルなモデル化があるのです。

いくつもの模式図をかき、自分ができること、できないことを考えた末に上のような直方体の
モデルにたどり着くのです。そして桜蔭中学が求めているのが、まさにそういった経験をつんでいる生徒なのです。

「考えに考えて、結局シンプルなモデルにたどり着く」科学者が得る喜びとは、
こういったものなのかもしれません。


2006年02月13日

今週は桜蔭中入試・理科より1問です。 2006-02-13



今週は桜蔭中入試・理科より1問です。


 温暖 化による海水面の上昇(じょうしょう)は、氷や雪がとけて海水を増加させることがおもな原因となります。北極海の氷山と南極大陸の氷河が、それぞれ同じ重 さとけた場合、海水面の上昇に与える影響(えいきょう)はどのようにちがいますか。つぎのア~ウから選びなさい。

ア. 北極海の氷山による影響(えいきょう)が大きい
イ. 南極大陸の氷河による影響が大きい
ウ. 同じ量ならば、変わらない                       

(桜蔭中)


まず、北極海の氷山と、南極大陸の氷河の違いはなんでしょうか。


答え. イ

北極海の氷山がとけても海水の深さは変わらない 


ヒントにも書きましたが、
・北極海の氷山
・南極大陸の氷河
の2者の違いはなんでしょうか。

氷が水面に浮かんでいるのか、地上にのっているのかです。

これに気付いた時点で、基礎学習を積み重ねている生徒なら即答できたはずです。

「コップの中に氷が浮いています。この氷がすべてとけると、コップの中の水面はどうなりますか」
という有名な問題を思い出してください。思い出せなくても、考えてみてください。

水は凍る際、体積が増えます。もちろん重さは変わりません。
氷全体の重さと、水面下の氷の体積×1.0g がつり合っています。
なので、水面上に出ている氷の体積が、水が凍る際に増えた分の体積になります。よね。
(上記3行の詳細解説は省略します。どの参考書を見ても載っているはずですので、
分からなかったら確認してください)

つまり、コップの氷がとけても、水面の高さは増えません。水面は高さ変わりません。

北極の氷山は、コップの氷と同様に考えられます。
とけても海水面の高さは変わりません。

南極大陸上の氷河は、水面に浮いていた氷と違い、
氷(水)の体積はもともと、海水の体積とはカウントされていないため、とけた分はそのまま
海水の増分となります。 


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・未知の問題を、身近な出来事・既知の問題に置き換えることが重要
ロジムの講義でも、またこの「今週の1問」でもお馴染みの科白です。
あまりにおなじみ過ぎて、「またですか・・・」という声が聞こえてきそうですが、

それだけ多くの中学で問われる重要事項であり、
それだけ多くの小学生が苦手とする能力だと断言できます。
(小学生に限らず、むしろ中学生、高校生、大学生、社会人になっても「優秀」と呼ばれるかどうかのファクターとな る能力なのではないでしょうか)

はじめて見た問題を、「知らない」「忘れた」「習ってない」では何も進みません。
この問題をみて「南極?北極?え、習ってないよ」という発言をするようでは先はありません。

南極大陸の氷河と北極の氷山の違いをまず洗い出し、その違いから、
既知の知識につなげる(本問では、コップ中の氷の問題)。

未知の問題・困難に遭遇し、既知のパーツを集め、解決に向かう。
「受験を通り越して、真に問題解決力を持つ生徒を育てたい」
という名門桜蔭中学からのメッセージを読みとれる1問です。


2006年01月30日

今週は武蔵中学理科入試より1問です。 2006-01-30



今週は武蔵中学理科入試より1問です。


 ある 干潟で,ある晴れた日に,「海水面の高さ」と「貝を食べに集まる鳥の数」を調べたところ,下のグラフ1とグラフ2のようになりました。

(1)干潮のとき,貝を食べに集まる鳥が少ないのはなぜだと思いますか。最もふさわしい理由を次の(ア)~(エ)の中から1つ選んで,記号を○で囲みなき い。
     
(ア) 鳥を集う動物がたくさんあらわれるから
(イ) ほとんどの貝が沖の方に行ってしまうから
(ウ) 貝がすっかり砂の中にもぐってしまうから
(エ) 貝が海水におおわれてしまい,鳥が見つけにくいから

(2)
 ① 鳥が貝を食べにたくさん集まるのは,海水面の高さがどのようなときですか。
 ② ①で答えた海水面の高さのときに.鳥がたくさん集まるのはなぜだと思いますか。 君の考えを書きなさい。
                          
  (武蔵中)


海水面が低いときは、エサがたくさんとれるため、鳥が多く干潟に下りてくるはずだ という短絡的な思考にと らわれてしまうとなかなか前に進みません。自分の常識ではなく、グラフを事実として思考を組み立てる能力が必要です。


(1) (ウ)
(2) 
①満潮と干潮の間の範囲で、海水面が浅いとき
②鳥にとってエサとなるカニ・貝殻等が干潟の表面近くに上がってくるため。


(1)
(2)

思考の流れとしては、 
水があふれているときは、鳥はもぐってエサをとることは難しいだろうから、水がなくなったときに鳥はエサを求めて集まるはずだ。 → いや、まてよ、グラ フを良く見ると水が最も干いたとき、集まる鳥の数は最大ではない・・・ → ??? → なんでだ??? 

こう考えると、
(ア)→鳥を襲う動物の登場を類推できる情報がない。
(イ)→貝が水深のある場所を求めて移動するとしたら、貝は最初から深い海にいればいいはずです。
(エ)→海水が干上がったときのことが問題になっています
はそれぞれ正解にはなりません。

貝は、海水が干上がると(≒水深が浅くなると)地表面近くにでてくるのですが、海水が干上ってしまうと、逆に砂の中にもぐりこんでしまい、鳥にとっては かえって見つけにくくなるということがグラフ・問題から類推できます。

(3)鳥が集まるのは、もちろんエサをとるためです。それを上手に説明できますか?という問題です。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・与えられた資料が事実です。あなたの常識は事実ではありません
・仮説をつくり、撤回し、また思考を組み立てる。この作業を面倒と思ってほしくない

与えられた前提(本問の場合はグラフ)から考察し、未知の結論に至る。多くの学問の基本であり、中学入試、とりわけ上位校と言われる学校で多く問われる能 力です。

ここで学校側が確認したいのが、
「あなたの主観ではなく、与えられた前提を事実として思考を組み立てられますか」
ということ。

ハイレベルな問題では、たいてい主観・常識をもって臨むとどこかで「あれ?」という箇所に当たります。
そこで、常識(多くは独断)を捨て、白紙に帰り、改めて与えられた条件から思考を組み立てることが必要となります。

本問でいえば、まず「貝は水深が浅ければ浅いほど表面にでてくるんだろう」という常識・最初の仮説を、グラフを見ていかにすばやく修正できるかなのです。

(仮説の取捨選択をすばやく行い、トライ&エラーの回数を増やすという重要な能力については、
ロジム授業、または今後の「今週の1問」で扱います。)

常識やヒントを元に仮説を作る。そして、その仮説に矛盾が生じたらすばやく撤回し、あたらしく思考を構築する。
受験勉強にとどまらず、「考える」という作業にとって必ず必要なこの能力を武蔵中では
受験生に求めているのです。


2005年12月26日

今週は桜蔭中学の理科入試問題から抜粋です。 2005-12-26



今週は桜蔭中学の理科入試問題から抜粋です。


問  2003年8月27日、21世紀最大という「火星大接近」が話題になりました。火星とその他の太陽系の星について、図と表を参考にして以下の問いに答えなさい。

問 水星の方が金星より太陽に近いのに、表面温度が金星の方がが高いのはなぜか。次のア~エから選びなさい。

ア) 水星は太陽のまわりを金星に比べ高速で回っているので太陽からの熱を受け取りにくい
イ) 水星の体積が金星に比べて小さいため熱を受け取る量が少ない
ウ) 水星の地表は水におおわれていて暖まりにくい
エ) 金星の大気が熱を吸収して温度が下がりにくい



知識問題ではありません。問題文にあるように図と表を参考にして解く、資料読解問題です。



問題文中の表から、水星には大気がなく、金星の大気はその大部分が二酸化炭素であることが分かる。

頻繁に話題になる地球温暖化現象を思い出す

二酸化炭素が大気におおく含まれることで星の温度が上がる


頻繁にニュースや科学トピックで話題になり、
また教科書にも必ず載っている
「二酸化炭素が増えると、地球の温度が高くなり、南極の氷がとけることで海面が上がる」
という話を資料と結び付けられるかが鍵となる問題です。

(記号選択問題ですのでこのトピックを思い出した時点で正解はできます。)

また、ここで「なぜ大気に二酸化炭素が多いと大気の温度が上がるのだろうか」
と考えることが重要なのです。もちろん小学生はこのことを習いません。

しかし、
「きっと、二酸化炭素は熱をたくわえる性質があるのだ」
と仮説を立てることが重要なのです。

この仮説が立てられれば、たとえこの問題が完全記述の問題でも正解が導けます。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・ マニアックな知識に頼らず、与えられた資料と常識から仮説を立てる能力が重要

この問題を見て、また市販の過去問題集でこの問題の解説を見て、
「金星の大気が二酸化炭素だらけなんて知らないよ。なんて難しい問題だ・・」
「二酸化炭素が多いと、保温効果があるなんて習ってないよ」
と言っているようでは、どうやっても桜蔭中レベルには合格できません。

またこの問題の解説を読んだ上で、
「なるほど。金星の大気は二酸化炭素なのか。覚えてしまえ」
という学習をしているようでは将来が不安です。

・「知らない」という事実を受け入れること
・与えられた情報を冷静に読み取ること
・常識(知っていること)を与えられた情報と組み合わせて仮説をたてること

まさに中学入試にとどまらず、高等教育、さらに実社会で活躍するのに
必須な能力ではないでしょうか。桜蔭中が求める生徒が持つ能力です。

ロジムの授業や「今週の1問」ではおなじみのメッセージではありますが、

「知らない」「習ってない」では、何も起こらない。そこで終わります。
与えられた情報から仮説をつくり、推論を行い、解答に少しずつ近づく思考力が、中学校が、そして社会が求める力なのです。

(参考)
未知の問題に出会ったときに、どうやって仮説・推論を組み立てるのか。これがまさにロジカルシンキングです。 (ロジムテキストより抜粋)


2005年10月24日

今週は、理科分野からの一問です。 2005-10-24



今週は、理科分野からの一問です。


 天気のよい日には、太陽が昇るにつれて温かく感じるようになりま す。太陽による、ものの暖まり方や、気温と地中の温度の変化について考えてみましょう。

  太陽の光を利用して、日なたで1リットルの水をできるだけ早く温める工夫をしました。

(1) 次の1)、2)のような工夫をしたところ、水が早く温まりました。その理由をそれぞれ書きなさい。

工夫1) 水を金属製の容器に入れた。
理由:                                

工夫2) 容器にふたをした。
理由:                              

(2) 上の1)、2)以外にも、いろいろな工夫があるでしょう。そのうち3つを考え、工夫と理由を書きなさい。

(武蔵中 改題 平成12年)


(1)
 工夫1:日なたにおいた鉄の棒と、プラスチックの棒では触れたときの温度に違いがあるのは感覚的に分かるはず です。さて、それでは金属の性質を考えてみましょう。
 工夫2:ふたをするときとしないときで、変わるものは何かということに着目しましょう
(2)身の回りで、温度が高いものを思い浮かべ、どうしてそれが高温になっているのか考えてみましょう。


(1)
工夫1)の理由:
金属は熱を伝えやすく、太陽の熱を効率良く容器中に つたえることができるから。
工夫2)の理由
熱が逃げるのを防ぐことができるから。

(2)
(工夫例1)容器の色を黒色にする 
(例1理由)黒い色は光をより多く吸収することができるから。

(工夫例2)凸レンズで光を集め、容器にあてる 
(例2理由)より多くの光の量を容器にあてることができるから。

(工夫例3)細長い容器に水を入れる /広く平らな容器に水を入れる
(例3理由)容器が太陽光を受ける表面積を大きくすることで、受ける光量の合計を増やすことができるから。

(工夫例4)容器の周囲を鏡で囲む
(例4理由)太陽から直接あたる光だけでなく、鏡から反射しゃれる光も受け取ることができるから。

(工夫例5)密閉された透明のガラス箱の中に水の入った容器を置く 
(例5理由)容器のまわりの空気の温度が保温され、周囲の暖かい空気により容器が冷えるのを防ぐから。


(1)
(工夫1)金属は熱を伝えやすい性質をもっています。

(工夫2)ふたをすることで、水面から熱が逃げるのを防ぐことができます。また、水蒸気の発生がおさえられるので気化熱による温度減少をおさせることがで き ます。

(参考)水分が蒸発するときに表面の熱を奪います。これが気化熱です。例えば、予防注射の前に、脱脂綿で消毒をします。そのときヒンヤリするのは、消毒薬 (アルコール)が蒸発するときに、腕の表面から熱を奪うからです。

(2)
早く温めるということは、
・ より多くの熱を吸収する
・ 熱の放出をより防ぐ
ということです。ここに着目します。

つまり

・より多くの熱を吸収するためには?
→より多くの光をあてる

・より熱の放出を防ぐには?
→熱がにげるのを防ぐ。熱をできるだけその場にとどめる

と考えはじめるのがスタートであり、科学的視点の基礎である論理的な考え方です。

また、身の回りの「温かいもの」がどうして温かくなっているのかを考えます。例えば、炎天下に白い帽子をかぶるのは、黒い頭髪が熱を吸収するのを防ぐため です。ビニールハウスの中が温かいのは、熱が逃げるのを防いでいるからです。

基礎的な知識を使い、柔軟な思考力により解答を導く良問です。

教科書に書いてある「より早く容器の中の水の温度を上げるには」の工夫 例を丸暗記していたのでは成績はのびませんし、「考える力」という観点から生徒の将来が不安です。

解説にも書きましたが、
「容器の温度をより早くあげる」とは
→1.受け取る熱量をふやす
→2.にげていく熱量を減らす  であり、

このように物事を構成 要素に分解して考える思考法を身に付けることが、将来につながる勉強法です。

そういった意味で、この問題は、「物事を構成要素に分解し、整理し、論理的に 結論を導く」
能力の基礎が身に付いているかを試す問題なのです。

 また、身の回りで「温かいもの」を想像して答えを導くという能力も必要とされています。身の回りの科学的事象に多く関心をもち、理由を考える。まさ に中学校が生徒に望む能力ではないでしょうか。
-----------------------------------------------------
~ 今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~

・物事を構成要素に分解する能力が重要
たとえば、有名な例だと、「やせる方法」を
1.エネルギー消費を増やす 
2.エネルギー摂取をへらす 
3.排せつ量を増やす(下剤の使用や脂肪除去) 
というよ うに、物事を構成要素に「もれなくだぶりなく」分解します。その要素ごとに対策を考えると言う能力は、試験問題だけでなく、科学の現場やビジネスの現場で も最 重要される能力の一つです。

・ 身の回りの科学事象にたえず関心をもつことが重要
暗記に頼らない解答作成で、やはり重要なのは「経験」からの「類推」です。できるだけ多くの身近な事象に対し「なんでだろう」を持ち、それを調べるという 習慣を持つようにして下さい。


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