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地学 アーカイブ

2009年07月28日

地震の問題、解く自信はありますか?2009-07-28



地震の問題、解く自信はありますか?

 ある地震についてP波とS波の到着時刻の情報を集めてみました。下の図は、そのいくつかの地点からのデータをもとに、グラフにしたものです。これについて、次の問いに答えなさい。

(1) この地震が発生した時刻は、何時何分何秒ですか。

(2) ある地点では、P波が届いてからS波が届くまでに1分10秒かかりました。
 この地点の震源からのきょりは何kmですか。  
























 ありません。



(1)2時59分50秒
(2)560km



 地震が起こると、震源から必ずP波とS波という2種類の波が同時に出されます。
このとき、P波の方がS波よりも速いため、観測地点では先にP波が届くことになります。
このP波がもたらすゆれは非常に小さなものなので「初期微動」とよばれ、遅れてやってくるS波がもたらす大きなゆれは「主要動」とよばれます。

 また、P波が届いてからS波が届くまでの時間を、初期微動が続いている時間ということで「初期微動継続時間」といいます。
 では、問題を見ていきます。

(1) 地震が発生した時刻は、P波とS波が同時に出された時刻と言い換えられますから、初期微動継続時間が0秒の地点と考えることができます。
 また、P波やS波が震源からのきょり0kmの地点に到着した時間と考えることもできます。

 いま、図でS波に注目すると、200kmの道のりに50秒かかっていることがわかります。
つまり、震源からのきょりが200km地点にいくまでにも50秒かかりますから、3時0分40秒-50秒=2時59分50秒となります。

(2) P波もS波もそれぞれ一定の速さで進みますから、図のとおり時間と震源からのきょりは比例します。
 よって、P波とS波の差にあたる「初期微動継続時間」も震源からのきょりに比例することがわかります。

 図から、震源からのきょりが400km地点では初期微動継続時間が50秒なので、初期微動継続時間が70秒であれば、400×(70/50)=560kmとわかります。

 ちなみに、震源からのきょりは以下のような式でも求められます。これは、大森公式とよばれ、算数の速さの考え方を使うと証明も可能です。

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2009年07月21日

自分で導ける公式は、より記憶に残ります。2009-07-21



自分で導ける公式は、より記憶に残ります。

 次の図は、東京(北緯36°)における春分の日の地球と太陽の位置関係を表しています。この図の中に、この日の南中高度を書き入れ、求めなさい。ただし、必要な線などは消さずに残し、例のように、黒くぬりつぶして示すこと。
























高度は、地面(地平線)からどれくらいの高さにあるかを表しています。




 高さを書き込む上で、まずは「地平線」を正しく書かなければなりません。地球は球体ですが、観測者の地球に対する小ささを考えれば平面と考えることができるので直線で表せます。また、太陽は地球から十分に遠いため、地球に届く光は太陽が放つ光の一部でしかありません。よって、平行光線であり、春分の日(秋分の日)はそれが赤道と平行になります。
 これより、90°-36°=54°と計算できるのです。

 また、北緯をN°とすれば、この作図から「春分の日の太陽の南中高度=90°-N°」という公式が導けたことになります。

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2009年03月09日

中学入試の近年の傾向 麻布中より 2009-03-09



2009年 麻布中学入試より

 体積や、ものの長さや重さをはかるとき、本当に厳密な意味で数値をはかることは非常に困難です。たとえば、最小のけたの表示が1gの電子てんびんXで砂糖の重さをはかったとき、「20g」の表示が出たとします。これは、砂糖の重さが厳密に「20.00000…g」であることを意味しているのではなく、表示できる値の最小のけたの次の位(この場合は小数第1位)を四捨五入して「20g」と表示していると考えることにします。
 つまり、この場合、本当の重さは( ア )g以上、( イ )g未満ということになります。
 また、別の電子てんびんYは最小のけたの表示が0.01gで、このはかりで砂糖の重さをはかったときに「20.00g」の表示が出たとすると、本当の砂糖の重さは( ウ )g以上、( エ )g未満ということになります。
 このとき、「表示された重さ」と「本当の重さ」との値の差を「誤差」といいます。

問5 空欄( ア )~( エ )にあてはまる数値を答えなさい。

問7 H君とT君が、電子てんびんX(2000gまではかれるものとします)を用いて、ちょうど5%の濃さの食塩水をつくる方法を考えました。
(H君の方法)5gの食塩を95gの水に溶かす。
(T君の方法)50gの食塩を950gの水に溶かす。
「H君とT君の方法を比べると、より正確な5%の濃さの食塩水を作りやすいのはどちらですか」と先生にたずねられたS君は、「どちらの方法でも誤差は最大で0.5gなので、どちらの方法でも同じです」と答えました。
あなたが先生に同じ質問をされたら、どのように答えますか。理由を示して書きなさい。  






















ありません。


問5 ア19.5 イ20.5 ウ19.995 エ20.005

問7 
濃さの誤差の最大を求めてみると、H君では0.5g÷100g×100=0.5%になり、T君では0.5g÷1000g×100=0.05%になるので、T君の方がより正確といえます。



 重さをはかるための同じ電子てんびんXを使うかぎり、S君の言うとおり誤差は最大で0.5gです。

しかし、濃さを求める際には全体の重さで割ることになるので、できるかぎり大量の食塩水を作るほうが誤差は小さくなるのです。

 このように、いろいろな値をはかるときには誤差の影響を考えなければならず、それをできるかぎり小さくするためにさまざまな工夫が行われています。受験理科で頻出なのは「ふり子の周期」を求める際の「10往復の時間をはかり、10で割る」でしょう。

このように、同じテーマでも形や題材をかえて目新しく感じさせる出題は、中学入試理科の近年の傾向といえます。



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2009年01月19日

地球の動きは、時刻のズレを生んでいます。 2009-01-19



地球の動きは、時刻のズレを生んでいます。

 東京(北緯35°、東経139° )で、水平な台の上に適当な長さの棒を垂直に立てて、
太陽の光によってできる棒の影の先端の1日の動きを記録しました。下に示した図は、
太陽が南中したときの棒の影の先端が、棒に最も近づく日と、棒から最もはなれる日の記録です。
これを見て、あとの問いに答えなさい。なお、Cは南北を示す線です。

問1 図の線A、Bはそれぞれいつの日の記録ですか。次のア~エから選び、それぞれ記号で答えなさい。
  ア.夏至      イ.冬至      ウ.春分の日     エ.秋分の日

問2 図の線Bで、正午の棒の影の先端はどのあたりですか。から選び、番号で答えなさい。

問3 9月23日ごろの記録を書き込むと、どのようになりますか。次のア~エから選び、記号で答えなさい。

 























問2 時刻とは、何を基準に決められているでしょうか。


問1 A…ア B…イ
問2 
問3 イ


問1
 棒の影は、太陽が高ければ高いほど短くなり、棒の先端は棒に近づきます。
よって、問題文の「太陽が南中したときの棒の影の先端が、棒に最も近づく日と、
棒から最もはなれる日の記録」から、これは夏至と冬至の日の記録であることがわかります。

問2
 東京は正午に南中しません。
兵庫県明石市よりも東にある地域では、正午以前に太陽が南中してしまうので、
正午には太陽は真南よりも西側に移っています。よって、影は若干東側にできますから、答えはとなります。

問3
春分・秋分の日の日かげ曲線は直線になります。
ここで、イとウを比較すると、下の図を見てもわかるとおり春分・秋分の日の影の先端は
冬至のときよりも夏至のときに近いことがわかります。よって、答えはイとなります。



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2008年11月24日

正しく「比べる」ことはできますか。 



正しく「比べる」ことはできますか。


図1の地域の地層のようすを調べるために、3つの地点A~Cで深さ22mまでボーリングを行ったところ、図2のようになりました。は、下に示すような岩石の層でできています。地層は曲がったりずれたりしていませんが、一定の向きにかたむいています。図1の点線は、5mごとに同じ高さの地点を結んだもので、北の方が高くなっています。



各地点の間のきょりを水平にはかったところ、地点Bは地点Aから南に200mのところにありました。また地点Cは地点Bから東に200mで南に40mのところにありました。

いま、図3のように地層がかたむいている場合、「地層は100mにつき5m、西の方が高くなっている」といいます。3地点のボーリングの結果から、地層は東西方向、南北方向にどのようにかたむいていると考えられますか。次の文のXとYには適する数を入れ、PとQには適する方角を書きなさい。

南北方向には、100mにつきXm、Pの方が高くなっている。
東西方向には、100mにつきYm、Qの方が高くなっている。

 























比べるには、基準が必要です。


X…2.5、P…北、Y…3.5、Q…東


この問題の場合、図1に5mおきの等高線が引かれているので、例えばB、C地点の標高を100mと設定してみます
(実際に標高を答えるのではなく、あくまで比べるだけなのでとりあえず設定することが有効です)。

すると、A地点の標高は115mとわかります。これらを、それぞれ地質柱状図の地表面に書き込んでいくと、

A、B、Cの層で明らかに同じと考えられるの境界線を調べると、

南北…AとB→200mで5mだけAが高いことから、100mあたり2.5m北の方が高い。
東西…BとCをこのまま比べるわけにはいかない(南北にもちがいがある!)ので、

上の図1のようにBから南に40m行ったD点を設けると、DとCを比べればよいことになります。

ここで、南北のかたむきからBで標高90mにあるの境界線は、Dでは89mにあることがわかります。

また、同じ境界線がCでは標高96mにありますから、東に200m行くと地層が7m高くなることがわかります。

よって、100mあたり3.5m東の方が高いことになります。

さて、南北の傾きを調べるにあたって、
AとBを比較する際にただ図2の地質柱状図の傾きからBの方が高いと思い込みませんでしたか?


地質柱状図は、あくまでその地点における地表からの深さを表しているわけですから、
ことなる地点を比べるためには何かをそろえなければなりません。

これは問題の設定によりますが、その問題の中で明らかに同じ高さである層を基準にすればよいのです。

この問題のように、特に同じ高さとわかる層がない場合は、標高を設定して比べることが有効です。
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2008年06月23日

初見の問題は、難しいと思い込んでいませんか?2008-06-23

タイトル 2008-06-23



初見の問題は、難しいと思い込んでいませんか?


地層がいつごろできたものかは、地層の中に含まれている物質が長時間かかって別の物質に変化する性質を利用して求めることができます。そのような物質の中にウランとよばれる物質があり、ウランは7億年たつと、もとの重さの半分が鉛という物質に変化します。すなわち、
 100gのウランは7億年たつと50gが鉛に、さらに7億年たつと残り50gのウランのうち25gが鉛に変化することになります。

問題 
とある地層を調べると、ウランの重さが1.0g、ウランから変化したと考えられる鉛の重さが7.0gでした。この地層ができたのは、今からおよ そ何億年前ですか。答えが割り切れないときは、小数第一位を四捨五入して整数で答えなさい。



問題文から、ウランは7億年ごとに半分が鉛に変化していることがわかります。


21億年前



問題文から、ウランは7億年ごとに半分が鉛に変化していることがわかります。

例えば、最初のウランを1とすると、
[第1段階]7億年後にはウランが1/2になり、鉛が1/2できています。→ウラン:鉛=1:1   [第2段階]さらに7億年後には、1/2のウランが半分になるので1/2×1/2=1/4になり、そのときにできた1/4の鉛をあわせて鉛は全部で1/2+1/4=3/4できています。→ ウラン:鉛=1:3 

[第3段階]さらに7億年後には、1/4のウランが半分になるので1/4×1/2=1/8になり、そのときにできた1/8の鉛をあわせて鉛は全部で3/4+1/8=7/8できています。→ ウラン:鉛=1:7 

ここで、問題ではウラン1.0g、鉛が7.0gになっているので、上記から第3段階まで進んでいることがわかります。よって、答えは21億年前となります。

この問題では、7億年ごとにウランの半分が鉛に変わっていくわけですが、結果的にウランと鉛の合計量は変化しません。つまり、上記のように最初にウランが1あったとすれば、第2段階以降における鉛の量は、(1-ウランの量)で求めることができます。また、このことを利用すると次のような別解で比較的簡単に求められます。

[別解1]
さかのぼって考えると、鉛は1段階もどるごとに倍になっていくことがわかります。よって、結果の1段階前は鉛が1×2=2gあったことになるので、ウランに変化したのは2-1=1gとわかります。よって、ウランはこのとき7-1=6gあったことになります。このようにして、1段階ずつさかのぼってみると、

[別解2]
鉛とウランの合計量は一定であることに気づければ、この問題でははじめ鉛が1+7=8gあったことがわかります。1段階さかのぼるごとに鉛の量は2倍になっていきますから、1g→2g→4g→8gと3段階さかのぼればよいのです。よって、7億年×3=21億年前となります。

まとめ

 理科の問題の中にも、算数的処理をすることで楽になるものは決して少なくありません。

この問題が別解2 で処理できるならば、どれだけ入試で有利であるかは容易に想像できるでしょう。
しかし、それ以外の解法は 普段避けるべきなのでしょうか。

 いいえ、それはちがいます。

 たとえばこの問題のように、多くの生徒が初見と感じる問題に「最適な解法」がその場で即座に浮かぶはず がありません。そもそも、自分が最適と思った解法であっても、それを越える適当な解法が出てくることもそ う珍しいことではありません。

 要は、「知らない、わからない」という段階から、「調べる、確かめる」という段階を経て、正答を導き出す中で、何か規則を見出すことが非常に重要なことといえます。

これは時に、特別な解法を知っていて即答できることよりも絶大な力を発揮することが多いものです。

 近年、子供たちは間違えることを恐れて一発で(妙に美しく)正答を得ようとしなければならないと思い込んでいる姿が多く感じられます。そうではない、いかに多くの考え方を知るか、気付くか、ということが大切なのではないでしょうか。

 これこそ、受験(合格)が目的なのではなく、「成長」が目的である学習の軸であるといえるでしょう。


2007年12月03日

なぜか皆さん苦手の地層問題。お決まりの問題を1問。 2007-12-03



なぜか皆さん苦手の地層問題。お決まりの問題を1問。


地層の見えるがけを調べたら、地層は図1のようになっていました。この図をもとにして、次の問いに答えなさい。





(1)地層(ウ)をくわしく調べたら、図2のようになっていました。(ア)~(カ)の地層のうち、最初にできた地層はどれですか。


(2)地層(ウ)と(エ)の間に、ある動物が住んだ穴のあとが残っていました。図3はそれをスケッチしたものですが、地層のでき方から考えてありえないものはどれですか。





(ウ)の地層に着目。わざとらしく大きい砂と小さい砂が上下に分かれていますね。


(1)イ
(2)A


図2の意味を考えます。

(ウ)の地層ができるに際し、海底で砂や石がつもるのですが、

大きい粒→比較的早くつもった
小さい粒→(ゆらゆらと)時間をかけてゆっくりつもった

と考えられます。バケツにいろいろな大きさの石や砂をいれ、大きな水槽にひっくり返すと、細かい砂はしばらく水中に停滞し、時間をかけて水槽の底にたどりつきます。これと同じ原理です。

なので、(ウ)の地層は、上側が古い地層、下側が新しい地層となります。よって、(ウ)より古い地層は(イ)となります。
(ア)は明らかに最新の地層ですね。

「なぜ古い地層と新しい地層の上下が逆なの?新しい地層が上にきまってるじゃないですか?」
と疑問の方は教科書で「しゅう曲」と言う言葉を引いてみて下さい。

(2)は(1)が分かれば問題ないはずです。

地層の問題では典型中の典型です。同じ地層の中で粒の大きさが問題で触れられていないか、絵でみてわかるようになっていないか、チェックは忘れないようにしてください。

思考力というより注意力を確認するもんだいでしたが
まさに「一度はやっておきたい問題」 ではないでしょうか。

一度はやっておかないと入試会場にはいけない問題ですね。


2007年10月08日

一度でも「なぜだろう」と思ったことのある現象は、習ったときに頭に残るものです。 2007-10-08



一度でも「なぜだろう」と思ったことのある現象は、習ったときに頭に残るものです。


地球から見ると、月は自転をしているのに、月の裏側の模様が絶えず見えない理由を述べなさい。


ノーヒントです。
 

月の自転周期と、地球を回る公転周期が等しいから。


あまりに有名な問題ですが、一度はやはり出会っておくべき問題ですのでこの機会に。

月が自ら一回転してるうちに、地球の周りを一回転しています。

これは、文字で言われても理解しづらいので、下の図を参考に自分でノートに絵を書いてみてください。
(こういった、頭の中で物体を動かさなくてはいけない分野では教科書をじっとにらんでいても理解できた気になるだけで、身にはつきません。自分の手を動かし、紙の上で再現できて初めて理解できているとするべきです。)

また、ここで疑問に思ってほしいこととして、
「なぜ、月の自転周期と公転周期がいっしょなの?もともとそうなの?それは偶然?」ということです。

これは、実は偶然ではなく、地球の重力により月はわずかですが楕円形になります。下の図を見ると分かりますが、楕円形の状態で、公転周期よりも自転周期がすこしでも遅くなったり早くなったりすると、楕円の月はわずかに斜めになり、月の重力とのバランスが悪くなります。

月が斜めになった瞬間に地球の重力によりまたバランスのいい状態に戻されます。これにより、自転周期と公転周期が同じになるように、いわば「調整」されます。

他にも、木星の衛星たちも自転周期と木星に対する公転周期が同じになっていたり、多くの衛星の自転周期と公転周期は1対1または、簡単な整数比になっているとのことです。

余談ですが、こういった理科の知識は、過去に一度でも「なんでだろう」と思ったことがあると、それを学習したときに深くそして長く記憶にとどめておくことが出来ます。どんな分野でもそうですが、普段から「なんでだろう」と思えるようになりたいものです。

また保護者の皆さんは、生徒に「なんでだろうね」と問いかけ、少しでも一緒に考えることが大切です。何か疑問をもったときそれを楽しそうに調べる親を見る生徒はやはり、疑問をもつことに対して前向きです。しかし、「わからないから塾の先生にきいといで」とあしらい、普段疑問をもつことに楽しそうにしない両親から「普段から疑問を持つことが大切だよ。なんでなんでと思いなさい。」と言われても、そんなの習慣になるわけはありません。

塾講師の言うことではないかもしれませんが、生徒の習慣は確実に親の習慣と似ます。何でうちの子は・・・ という前に、まず保護者の皆様がご自身の「知に対する姿勢」を考え直してみてください。


2007年02月12日

桜蔭中より。教室・実験室での学習を地球規模の視点に応用する目を養います。 2007-02-12



桜蔭中より。教室・実験室での学習を地球規模の視点に応用する目を養います。


問 お風呂の中では両手の親指だけでも体を支えることができます。水などの液体の中に物体を入れると,液体が物体を浮かせる力(浮力)が働くためです。この浮力の大きさは物体がおしのけた量の液体の重さに等しいことがわかっています。水1立法cmの重さを1.0gとして次の問いに答えなさい。


北極の氷山(すべて氷でできています)の海面下の体積は,海面上に出ている体積よりずっと大きいことが知られています。この氷山の海面上の体積は全体の何%ですか。この氷山の氷1立法cmの重さを0.96g,海水1立法cmの重さを1.2gとして計算しなさい。

(桜蔭中 抜粋 改題)


北極の氷も、ビーカーの中の木片も浮力をうけて浮いていることに変わりはありません。


氷山全体の体積を100立方cmとする。すると、氷山の重さは96g。

この重さと、浮力がつりあっているのだから、かかっている浮力は96g。

だから、氷山が押しのけた液体の重さが96g。

氷山が押しのけた体積 × 1.2 = 96 となるため、

氷山が押しのけた体積 = 8 (立法cm) =「氷山の水面下の体積」

氷山全体を100立方cmとしたのだから、8%

答え  8.0%


「液体に浮いている物体にかかる浮力ってどうやってもとめるの?」と聞くと、

「体積!」と答えるとんでもない生徒がいますが、正しくは、まさに問題文にある、

「浮力の大きさは物体がおしのけた量の液体の重さに等しい」

です。

浮力の問題で、単位を考えずに機械的に「重さと、沈んでいる体積がつりあっている」と考えている生徒は

要注意です。


~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
与えられた定理を正しく理解する。

本問はもともとは、海水1立法cmを1gと考えてよい問題でしたが、今回、
浮力の意味を再確認できるように 海水の密度をいじってみました。

定理や公式は、正しく理解できて初めて武器や道具となるのです。
中途半端な理解は、そこを突かれることで大きなハンディキャップとなります。

また、学校や塾、問題集で慣れ親しんだ原理原則でも、ひとたび自然現象や、
地球規模の事象のかたちで問われると硬直してしまう生徒が多いものです。

これは、反復練習に過度に偏り、定理の理解を怠ることが原因です。

足腰を鍛えていない、トップアスリートはいませんよね。
骨太の土台を築くことを忘れないでほしい、という出題校からのメッセージを汲み取ってください。


2007年01月29日

渋谷教育学園渋谷中学より。表面的な知識ではなく論理の積み上げを行わせる1問。 2007-01-29



渋谷教育学園渋谷中学より。表面的な知識ではなく論理の積み上げを行わせる1問。


 地球上では,いろいろな物が太陽の熱をうけとります。うけとった熱は,ほかの物に伝わりながら,宇宙へ放出されていきます。うけとった熱のほうが多いと温度は上がり,放出された熱のほうが多いと温度は下がります。うけとる物によって,温まりやすさ,さめやすさにちがいがあります。水は,どちらかというと,温まりにくく,さめにくい性質をもっています。このような性質の物は,その中に多くの熱をためることができ,地球上からの熱の放出を防いでいます。

 地球上では,赤道付近が最もうけとる熱が多くなっています。また,赤道付近では,うけとる熱にくらべて放出される熱が少なく,北極や南極の近くでは逆にうけとる熱よりも放出される熱のほうが多くなっています。このままでは,赤道付近はどんどん暑くなり,極付近はどんどん寒くなってしまいますが,実際には熱が移動するので,そのようなことはありません。

 空気が冷やされると,空気中にふくむことのできる水蒸気の量が少なくなるため、ふくむことのできなくなった水蒸気は,液体の水になります。こうしてできた水の粒が空気中にただよっているのが雲や霧(きり)です。また,何かの表面についたのが露(つゆ)です。
                             

(1)空が雲でおおわれた日は晴れた日にくらべ,1日のうちの気温の変化が小さくなります。 気温が上がらないのは,太陽の光が当たらないのが原因です。では,夜から朝にかけて気温があまり下がらないのはなぜですか。その理由を上の文の内容にそって説明しなさい。

(2) 平野部で朝に霧が発生していると,その日の天気は良くなることが多いです。その理由を簡単に説明しなさい。
         
(3)秋の朝,地面は乾いているのに,駐車場にとめてあった自動車の車体には,夜露がついていました。地面に露がついていないのに,自動車の車体に露がついているのはなぜですか。その理由を上の文の内容にそって説明しなさい。


(渋谷教育学園渋谷 抜粋)


霧ができるとはどういうことですか。そしてそもそも気温が下がるとはどういうことですか。


(1)地温が大気に放出されるのを雲がさまたげるから
(2)霧の発生の原因は急激に温度が下がったことだと考えられる。急激に温度が下がったということは、地上の熱が大量に大気中に放出されためであり、上空に熱の放出をさまたげる雲がなかったと考えられるから。
(3)自転車が地面にくらべより温度が大きく下がったから。


「気温が上がる」という事象は太陽の存在からイメージしやすいのですが、
「気温が下がる」というのはいったい何がおきているのかきちんと考えたことがある小学生はごく少数です。

まず、気温をあげているのは、直接的には太陽の光ではありません。
太陽の光が地面を暖め、そして地面が空気を暖めているのです。

気温が下がるということは、地面が熱を放出し、そして冷え、周辺の空気の熱を奪うということです。
(熱は高いところから低いところへしか伝わりません。
多くの生徒が間違えて理解していますが、 何かが冷えるのは、冷たい何かが伝わったのではなく、熱をうばわれるからです)

これを前提として、

霧が発生 →なぜなら、温度が急に下がったから → なぜなら、地面が急に冷えたから → なぜなら、地面の熱が大量に放出されたから → 熱の放出をさまたげる雲が上空になかったから

つまり、雲がなかったわけです。雲がない → 晴れ ということです。


~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
数段階の「だから」「なぜなら」に耐える粘り強さを。

以前にも同じメッセージをあつかったと思います。
「論理的思考力」とはまさに、断片的なヒントや知識を「だから」や「なぜなら」でつなぐ力です。

「あの人は優秀」「あの人はあたまがいい」といわれる生徒に共通して身についているのが、
長い時間をかけて、何段階にもおよぶ「だから」をつなげあわせる忍耐力 です。

普段から、塾や学校で反射・反復練習に終始している生徒や、すぐに保護者や先生から答えや解説を
受け取っているような生徒には決して身につかない能力です。

たとえばですが、

「ツバメが低いところを飛ぶと雨がふる」
http://freedom.mitene.or.jp/~tsune/page8-4-12.html
(ロジムでは低学年の生徒でもイメージしやすいように、羽が重くなるという説明を採用しています。)
この内容を、

まず大人が生徒に一旦説明する 
→ 
生徒が大人にその内容を説明する

というのはロジムでもやっている論理積み上げの練習の一つです。

ぜひご家庭でもやってみてください。たとえば、途中で
「虫が低いところを飛ぶから、ツバメも低いところをとぶ」という説明になるかと思います。
ここでも厳しく「なんで虫が低いところを飛ぶと、ツバメが低いところをとぶのかの説明がぬけている」と指導してみてください。

大人と違って小学生はすぐにコツをつかんでくれるはずです。


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