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化学 アーカイブ

2008年10月27日

新傾向問題は「誘導にのれるか」が勝負の鍵です。 2008-10-27



新傾向問題は「誘導にのれるか」が勝負の鍵です。

 すべての物質は、原子と呼ばれる非常に小さな粒でできています。私たちの身のまわりにある空気の中にも様々な気体が存在していますが、それらの気体もすべて、原子がもととなってできているのです。そして、原子どうしが互いに結びつくことで分子と呼ばれるかたまりを作っています。

 ここで、すべての原子からはそれぞれ決まった数の棒が出ており、この棒どうしが結びつくことで分子ができているものと考えてみます。つまり、人が手を伸ばして握手するのと同じように、原子どうしが結びついてるのです。このことから、原子から出ている棒を「結合の手」と呼ぶことにします。

 例えば、水素、酸素、窒素などの気体は、それぞれ図1のような水素原子、酸素原子、窒素原子が2つずつ結びついてできており、それらの結びつき方を表したのが図2です。ただし窒素分子はここでは表わされていません。また、以下の問いでは考えやすくするために、下記のような決まりを作ります。

<決まり>
・すべての原子の結合の手は、2本以上が同じところから出ることはない。
・それぞれの結合の手が結びつくときは、必ずまっすぐに結びつく。
・それぞれの結合の手は、まっすぐに結びつくために90°だけ回転することができる。
・原子が分子をつくるとき、すべての結合の手が結びつき、結合の手があまることはない。

 また、異なった原子が結びついて、別の物質を作ることもあります。
例えば、水は水素原子2つと酸素原子1つが図3のように結びついてできています。また、図4は炭素原子をあらわしていますが、結合の手は表されていません。

問1 アンモニアは、窒素原子1つと水素原子3つが結びついてできています。このとき、アンモニア分子はどのように表されますか。

問2 メタンは、炭素原子1つと水素原子4つが結びついてできています。このことから、炭素原子には結合の手が何本あると考えられますか。

問3 二酸化炭素が水にとけると、炭酸水という水溶液になります。つまり、二酸化炭素分子と水分子が結びつくことで炭酸水となるのです。そして、炭酸水分子は図5のように原子が配置されていることがわかっています。このとき、結合の手はどのようになっていますか。

 























 ただ「決まり」に従うだけです。



問1
 

問2 4本

問3
  



問1 水素原子は、結合の手が1本しかないため、2つ以上の原子と結びつくことができません。つまり、水素原子どうしが結びつくことは考えられない(それで水素分子になってしまう)ので、水素原子はすべて窒素原子と結びつかなければなりません。

問2 問1と同様に、水素原子はすべて炭素原子と結びつくと考えられます。水素原子が4つ結びつくためには、炭素原子には4本の結合の手が必要です。

問3 まず、下の図のようにそれぞれの原子にA~Fの記号をつけて説明することにします。


1)Fの水素原子は、結合の手が1本であるためにEと結合しなければなりません。よって、ここでEの結合の手が1本使われます。
【Fの結合終了】

2)Eの残ったもう1本の結合の手は、BかDと結合することになりますが、仮にDと結合した場合、D、E、Fの結合の手がすべて使われてしまい、A~Cの原子と結びつくことができなくなってまいます。よって、Eの残りの結合の手は、Bと結びつくしかありません。
【Eの結合終了】

3)Dの水素原子は、Eと結合できないので、Aと結合するしかありません。
【Dの結合終了】

4)Aの残ったもう1本の結合の手は、Bと結合するしかありません。
【Aの結合終了】

5)残ったBとCは、それぞれ2本ずつ結合の手があまっているので、ここで2本ずつ結びつくことがわかります。
【すべての結合終了】


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2008年10月06日

「実験」は、遊びではなく「確かめるための道具」です。2008-10-06



「実験」は、遊びではなく「確かめるための道具」です。

空気中の水蒸気の量とその変化について次の実験をしました。

<実 験>
手順1 
図1のような5リットル の大きさのペットボトルの内部を十分に乾燥させる。
手順2 
スポイトを使って、ペットボトルの中に水てきを2つぶ落とし、温度計のついたゴムせんでふたをしたあと、そのゴムせんのまわりをテープで巻く。
手順3 
そのペットボトルを、図2のように温風器であたため、内部の水をすべて蒸発させる。
手順4 
次に、ペットボトルを冷やし、ペットボトルの内部がくもりはじめたときの温度を記録する。
手順5 
スポイトから落とす水てきのつぶの数を3つぶ、4つぶ、5つぶ、6つぶと変え、それぞれについて手順1~4をくり返す。
 
設問 下線部のように、ペットボトルを冷やす方法として最も適切なものを、次のア~オから選び、記号で答えなさい。

   ア.ペットボトルをそのままにして冷やす。
   イ.ペットボトルに水をかけて冷やす。
   ウ.ペットボトルを半分くらい水につけて冷やす。
   エ.ペットボトルをすべて氷水につけて冷やす。
   オ.ペットボトルを半分くらい氷水につけて冷やす。






















ただ冷やすだけならば・・・?




この実験は、空気中の水蒸気量とその変化についての実験です。

その中で「ペットボトルを冷やす」という操作が必要になっているわけですが、
その手順4の目的は「ペットボトルの内部がくもりはじめたときの温度を調べる」ことです。

ペットボトル内の空気に含まれる水蒸気が水滴に変化することでくもりが発生するわけですから、
下線部のように冷やす必要があることがわかります。

ここで、変化の瞬間を記録するのに好都合な条件を考えれば、急激に冷やすことは避けなければなりません。
ゆっくり冷やすべきであることと、手順3で温風器によって水滴を蒸発させていることから考えれば、
室温(常温)で冷やすことが最も適切であることがわかるのです。
 

さて、この問題を「実験の意図」に目を向けず、ただ下線部だけに注目してしまっていたらどうでしょう。
おそらく、その多くの子供たちはイやエを選ぶのではないでしょうか。

ヒントのように、ただ冷やすだけならばできるだけ冷たいものに触れさせることが最善の方法と考えられるからです。
現に、大手進学塾の選抜試験では、大半がエを選択しているようです。


 同じ1つの操作であっても、目的によって適切な方法は変わるのです。

実験から遠ざかり、テキストばかりで学習することから生まれた理科嫌いな生徒は、
何か大切なこと(本来学び取るべきもの)を忘れている気がします。


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2008年09月15日

条件整理力という全ての科目に通じる基礎能力を手に入れてください。2008-09-15



条件整理力という全ての科目に通じる基礎能力を手に入れてください。


①~⑦の水溶液は、下の7つの水溶液のどれかです。下の実験をもとに、それぞれの水溶液が何であるか答えなさい。ただし、A~Eと結果1~5の順番は対応しているとは限りません。

水酸化ナトリウム水溶液
過酸化水素水
炭酸水
ホウ酸水溶液
アンモニア水
うすい塩酸
石灰水

A 水溶液にアルミはくを入れたところ、とけたものを○と表す。
B 水溶液に赤色リトマス紙をつけたところ、色が変わったものを○と表す。
C 水溶液を蒸発皿にとり、アルコールランプで加熱したところ、においがしたものを○と表す。
D 水溶液に青色リトマス紙をつけたところ、色が変わったものを○と表す。
E 水溶液を蒸発皿にとり、アルコールランプで加熱したところ、固体が残ったものを○と表す。

問  ①~⑦の水溶液はそれぞれ何ですか。


ノーヒントです。


①石灰水 ②ホウ酸水 ③アンモニア水 ④炭酸水 ⑤うすい塩酸 ⑥過酸化水素水 ⑦水酸化ナトリウム水溶液



下の表を見てみると、水溶液によって反応を示す実験の個数が異なることがわかります。

これにより、どの実験にも反応しない⑥が過酸化水素水、
1つだけ反応する④が炭酸水とわかります。

すると実験Dが実験結果4と判明するので、同じく実験Dに反応する残りの水溶液に注目すると、ホウ酸水と塩酸です。

この2つも反応する実験の個数が異なるので、②がホウ酸水(○が2個)で⑤が塩酸(○が3個)とわかります。続いて、ホウ酸水がもう1つ反応を示したのが実験Eですから、これが実験結果2となります。このようにして、残りも特定することが可能です。


この問題は、実験結果1~5が、実験A~Eのうちどの結果なのかが不明であるところが難しく感じる原因です。

そこで、とりあえず7つの水溶液に対してA~Eの実験を行ってみて、表に整理してみると、
反応を示す実験の個数に差異があることに気づけるのです。

水溶液の分析実験の中に、理科的性質を絡めた条件整理の要素を含んだ良問です。

ぜひ、誰かに解説できるくらい自分の頭の中で整理してほしい問題といえます。


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2008年08月18日

状態変化と体積・重さの関係は簡単なようで複雑です。 2008-08-18



状態変化と体積・重さの関係は簡単なようで複雑です。


下の図1は、ビーカーにある量の水を入れた状態を表しています。そこに、ある大きさの氷を入れた状態を表したのが図2です。さらに、その氷が完全にとけた状態を表したのが図3です。ただし、それぞれの図で水面の高さは正しく表されているとは限りません。これについて、次の問いに答えなさい。

問1 図1と図2で、どちらの水面が高いですか。次のア~エから選び、記号で答えなさい。

  ア.図1の方が高い。
  イ.図2の方が高い。
  ウ.図1も図2も変わらない。
  エ.これだけではわからない。

問2 図2と図3で、どちらの水面が高いですか。次のア~エから選び、記号で答えなさい。

  ア.図2の方が高い。
  イ.図3の方が高い。
  ウ.図2も図3も変わらない。
  エ.これだけではわからない。


水と氷の体積を比べると…、危険です。


問1 イ
問2 ウ



問1 
水中に入った氷の分だけ水がおしのけられます。これにより、見かけ上水の体積が増えますから、水面は高くなります。


問2 
状態変化(固体⇔液体⇔気体の変化)に伴い、体積は変化しても重さは変化しません。
氷が浮くのは「氷の重さと等しい浮力がはたらく」からに他なりません。

ここで、浮力はおしのけられた液体の体積と同じ重さの分だけはたらくので、浮いた氷の重さと同じ重さをもつ分だけの水がおしのけられていることになります。

つまり、この氷が水に変わっても、おしのけられる水の体積は変わらないのです。

よって、図2から図3で水面の高さが変化することはありません。

まとめ
 固体よりも液体の方が体積が大きいという基本知識に対し、例外として「水よりも氷の方が体積が大きい」ということはあまりにも有名です。しかし、単に体積の変化ばかりに目を向けては、本来変わるはずのない重さを絡めた問題で大きな誤りを導いてしまいます。

本問では、以下の誤答が目立ちます。

◇図2の氷よりも図3で水に変化した方が体積は減るのだから…ア

◇氷がとけて水になれば、水の量が増えるから…イ

浮力の考え方を用いれば簡単に理解できることですが、そうでなければ上記のような誤答を招くか、大きく悩む問題ではないでしょうか。ぜひ、じっくり考えて理解してください。

また、このことからさらに図2で水面上に飛び出している氷の体積が、ある重さの水が凍ったときに増えた体積の分であることがわかります。これも、ぜひ考えてみましょう。



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2008年07月14日

納得するには、それなりの知識が必要になります。 2008-07-14



納得するには、それなりの知識が必要になります。


 下の図のように、温度計を入れた3本の試験管A、B、Cに、それぞれ水、氷、砂を20gずつ入れ、水は0℃に、氷と砂は-10℃に冷やしました。そして、同じように加熱しながら時間と温度の変化を調べた結果、下の表のようになりました。表の中の空らんX~Zにあてはまる数値を、それぞれ答えなさい。


ヒントではありませんが、実はXの正答率が非常に低いです。

X…100
Y…0
Z…23



まずは、状態変化について説明します。

物質には、固体、液体、気体と3つの姿があり、これは温度によって変化していきます。
つまり、外から与えた熱エネルギーによって温度が上がっていき、姿を変化させられる温度になったところで変化しはじめるのです。

このとき、受け取ったすべての熱エネルギーを変化のために使うので、その間温度は一定になります。
つまり、受け取った熱エネルギーの使い道は、
(1)温度上昇、
(2)状態変化しかないということです(厳密には、発熱・吸熱が関係しています)。

いま、試験管A(水)に注目してみましょう。

最初0℃だったものが、規則的に変化していることがわかります。
水は、0℃で氷→水に変化し、100℃で水→水蒸気に変化します。
つまり、0℃から100℃の間では状態変化が起こらないため、受け取った熱エネルギーをすべて温度上昇に使っていることになります。

2分間で12℃ずつ上昇していることから、18分後は96+12=108としたいところですが、
100℃を越えてからは水→水蒸気の状態変化が起こることで、温度上昇は起こらなくなります。

すなわち、Xは、100℃となります。


続いて、試験管B(氷)に注目すると、

2分後から12分後まで0℃で一定であることがわかります。
これはまさに、氷→水の状態変化が起こっている証です。

ここで、16分後を見てみると、温度が11℃まで上昇しています。
つまり、すでに状態変化が終わり、温度上昇の段階に入ったということです。
水になってからは、試験管Aと同じ変化が起こるはずですから、2分間で12℃変化しなければなりません。

よって、Yは11-12=-1℃と考えられます。

しかし、12分後で0℃だった状態から下がることはあり得ないので、Yは0℃ということになります。


このグラフを見て分かるとおり、14分の段階ではまだ氷があり、
14分を過ぎてすべて水に変化し終えたあとで再び温度上昇がはじまったと考えられます。
すべて水に変化したあとであれば、試験管Aと全く同じ状態になるので、
2分間で12℃変化していきます。

よって、Zでは11+12=23℃を示すことになります。

まとめ

 まず、X…108、Y…-1、Z…22と誤答していませんか?

「水の状態変化」であることをあまり考慮せず、ただ表から「予想」した結果ではないでしょうか。

理科の実験では、データからの予想と、予め持っている知識を合わせなければ正答を導き出せない問題が多数あります。
(その力が重要視されている証拠です)

実験から得られた情報をもとに仮説を立て、それを論理的に証明する手順と同じですね。

 さて、その意味で最も大きな意味を持つのはXです。

表だけみれば明らかに108ですが、解説のとおりそうなるはずがありません。
しかし、小学校2年生くらいにこの表を見せ、Xに入るのは?と問えばおそらく全員が108と答えるでしょう。

そのようなはずがないと言われて「あっ!そうか」と思えるのは、水の状態変化についての知識を持っている者だけでしょう。
やはり、予備知識や周辺知識を持っている者とそうでない者とでは大きな差が開くようです。

ちなみに、大手進学塾のある選抜試験では、X、Y、Zどれも受験者の半分以上が上記のとおり誤答を導いていたようです。



2008年03月03日

暁星中入試より。ごく身近な現象に「?」を感じられるかを問う超良問です。 2008-03-03



暁星中入試より。ごく身近な現象に「?」を感じられるかを問う超良問です。


アイスクリームや冷凍食品の保冷剤として利用されるものの1つにドライアイスがあります。

(1)ドライアイスを室温に放置しておくと、すべて気体に変わってしまいます。この気体の名前を答えなさい。
(2)ビーカーに水を用意してドライアイスを入れると、図1のように白い泡が発生し、白い煙がビーカーから流れ出ます。この白い煙は何ですか。
(3)図1の状態でしばらく放置すると、白い煙の発生が終わりました。このとき、図2のようにビーカーの底には白い固体が沈んでいました。この固体は何ですか。      (暁星中)


二酸化炭素は無色気体ですね。白いのはなんですか??ヒントにはなってませんが。


(1)二酸化炭素
(2)水 (細かい水の粒)
(3)氷


(1)ドライアイスは二酸化炭素が固体になったものです。(ちなみに二酸化炭素は液体の状態はありませんね。)

(2)大人でも自信満々に「二酸化炭素」と答える人が多いですが、二酸化炭素は無色気体です。白いわけがありません。あわが水中を通過して上昇する間に、水が水蒸気として泡の中に入り込みます。この水蒸気がさきほどまでドライアイスだった二酸化炭素にひやされて、水にもどり細かい水滴として泡の中に存在します。 

(3)ビーカーの中の水が氷になります。


ドライアイスという身近な物質への観察眼、さらに立ち止まって「ちょっとまてよ」と考えることができるかどうかを問う問題です。

塾で機械のように「ドライアイスは二酸化炭素が固体になったもの」と暗記しているだけの生徒は来て欲しくない。
いくつかの知識や経験を組み合わせ、自らが「ちょっとまてよ?」と思考を開始できる生徒がほしいという、
暁星中からの強いメッセージを感じます。


2008年02月04日

操作の「理由」に目を向けます。結局解答能力とはロジカルかどうかですし、ロジカルかどうかとは因果関係に目を向けられるかどうかです。 2008-02-04



操作の「理由」に目を向けます。結局解答能力とはロジカルかどうかですし、ロジカルかどうかとは因果関係に目を向けられるかどうかです。



上のような装置をつかって、発生した二酸化炭素の体積を測定したいと考えました。上の図の方法ではうまくいかず、工夫が必要であるとわかりました。
どのような工夫が考えられますか。下の図の点線部に書き込みなさい。


どのような工夫が必要か ⇒ なぜそもそも工夫が必要か
 


二酸化炭素を集めるために、水上置換法はつかえません。二酸化炭素が水に溶けてしまいますね。よって点線部分では、発生した二酸化炭素を水に溶けない気体に置き換える装置が必要になります。二酸化炭素が発生した体積分だけ、水に溶けない気体が水上置換装置に流れ込むような仕組みを考えます。

水に溶けない気体は入手のしやすさから(みのまわりの)空気とします。

また、発生する二酸化炭素は空気に比べ重いので、二酸化炭素をフラスコに入れるガラス管は底まで伸ばし、一方空気が出て行くべきガラス管は短くしておく必要がある。

一度やったことがあれば容易に解答できる問題なので、「覚えておく」ということも大事ですが、初見だとしても「そもそもなぜ工夫しなくてはいけないのか」と考えるだけで正答を生み出すことへの大きな近道となるはずです。


2007年09月03日

普連土学園中より。実験→法則発見→日常生活への応用、実験問題の古典です。 2007-09-03



普連土学園中より。実験→法則発見→日常生活への応用、実験問題の古典です。


[実験]
 手順1 3つの1000mlビーカーに0℃,50℃,100℃の水を入れた。
 手順2 冷蔵庫で冷やした500ml入りの炭酸飲料のペットボトル3本のふたをそっと開けた。
  
各ビーカーにペットボトルを1本ずつ入れて観察した。

問1 [実験B]の結果から,水の温度が上がると,気体の溶け方はどう変化すると考えられますか。

間2 真夏の太陽が照りつけるとき,車の窓を閉め切った状態にしておくと,フロントガラス付近の温度は70℃位まで上がります。このため栓を開けていないコーラなどの缶入り炭酸飲料をフロントガラス付近に置きっぱなしにしておくと,缶が破裂することがあります。[実験]の結果を使ってこの理由を説明しなさい。

(普連土学園中・抜粋)



問1がヒントです。
 

問1 水の温度が上がると、溶ける気体の量は少なくなる
問2 炭酸飲料の温度が上がり、溶けていられる気体の量が少なくなり、とけ切れなくなった気体が飲料の外にでていき飲料缶中の圧力が高くなるから。


問1 「温度が上がると出てくる泡の量が多くなる」では正解にはなりません。表を読んでいるだけです。表から物事を一般化する思考力・語彙力が求められています。

問2 缶が破裂するのは、「缶中の気体が増えたから」ではなく「缶中の圧力が上がったから」です。


~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
実験データを一般化し、個別事象に当てはめて考えるという実験→思考→応用の基本中基本を身につける

与えられた事象を一般化して考えることができるといのはまさに知的成長の1ステップです。

複数のデータや事象をただその個別数値・現象と取られるのでなく、そこから全体に当てはめられる法則を導く。
さらに、その法則をつかって他の事象について考える。

まさに科学者と言われる人々が長い歴史の中で繰り返し行ってきたプロセスであり、小学生の皆さんがこれから
学問の道に限らず絶えず求められる思考回路です。

そういった思考ができる生徒を求めるのはもちろん本問出題校だけではありません。
この機会に、実験(具体例) → 一般化 → 他の個別事象への当てはめ 
というプロセスを意識してみてください。


2007年08月13日

桜蔭中より。実験データを単なる記号としてではなく意味のある数字としてイメージできないと解けません。 2007-08-13



桜蔭中より。実験データを単なる記号としてではなく意味のある数字としてイメージできないと解けません。


卵の新しさは、食塩水の中に入れて、うくかしずむかで見分けられるということで、つぎの実験をしました。

(1)買ったばかりの卵A、Bと、冷蔵庫の中に長い間入れたままだった卵C、Dを用意しました。

 卵AとCの重さはそれぞれ60gで、卵BとDはそれぞれ50gでした。また、卵Aの体積をはかったら55cm3でした。
(2)重さが100gのビ-カーa~eを用意し、それぞれに水を200cm3ずつ入れました。水1cm3の重さは1gです。ビーカーb~eにそれぞれ下の表の重さの食塩を加えてよくかき混ぜて、全部とかしました。食塩水の体積は、下の表のようになりました。

(3)ビーカーa~eに卵A~Dを静かに入れて、卵がうくか、しずむかを調べました。結果は、下の表のようになりました。

なお、表の中で「途中で止まる」とは、上の図のような状態です。体積1cm3あたりの重さが、食塩水と卵とで等しくなる時に卵は途中で止まります。

つぎの問いに答えなさい。
間1つぎの文の( )~( )にあてはまる数値を下のア~コより1つずつ選んで記号で答えなさい。
ビーカーbの食塩水1cm3の重さは、約( )gになります。卵Cの体積は約( )cm3になります。ビーカーdに卵Aを入れて、上ざら天びんで重さをはかると( )gになります。

ア 0  イ 0.97  ウ 1.03  エ 53.4  オ 55.0  カ 58.3  キ 61.9  ク 335  ケ 390  コ 445

間2 つぎの(1)、(2)の水溶液に卵Aを入れました。卵Aが「うく」ものにはア、「途中で止まる」ものにはイ、「しずむ」ものにはウを記入しなさい。

(1)ビーカーeに、さらに水200cm3を加えてうすめた食塩水。
(2)アルコール50cm3(重さ40g)に、水50cm3を加えた水溶液(体積は97cm3)

間3 この実験の場合、卵の新しさを見分けるのに最も適した食塩水はどれですか。ビーカーの記号で答えなさい。

間4 つぎの(1)、(2)の文について正しいものには○、まちがっているものには×をつけなさい。
(1)適した食塩水を使うと卵の新しさを見分けるのに、卵の重さをはかる必要はない。
(2)同じ重さなら、古い卵は新しい卵より体積が大きい。

(桜蔭中)


実際の試験(当時算数と合わせて55分)では、実際の値を求めて比較する時間はありません。概算力と、それを支える「数字から起きていることをイメージする力」が求められます。


問1 )①ウ ②カ ③ケ
問2 )(1)ウ (2)ウ
問3 ) c
問4 )(1)○ (2)○


問題文を精読し、「浮く・沈む」というのは「1cm3あたりの重さ」の大きさの違いによることを確認します。

問1)
ビーカーbの重さは210g、 体積は204cm3となるので「1cm3あたりの重さ」は 210g/204cm3 となり 1よりわずかに大きい値となります。ここで、210÷204を筆算している生徒は、桜蔭中が必要としない生徒となることでしょう。210/204 が 「だいたい1より少しだけ大きい数」となるというイメージ力を求められています。

卵Cはこの食塩水bと密度が等しいことから、60/? =1.03  ?は60より少しだけ小さい数となる。60と55の差である5の0.03倍は、 0.15にしからない。よって選択肢オの55は除外できる。60÷58.3 と 60÷55などとやっていては試験時間中に解ききれません。
この概算の方法はここでは詳しくはしまぜん。各自「なんとか計算を早くしよう」と拘泥した先に手に入れるテクニックです。各自考えてみてください。

食塩を水にとかしても、食塩の重さは変わらないので、
ビーカーd=卵の重さ + 溶けた食塩の重さ + 水200cm3の重さ + ビーカーの重さ
     = 60g + 30g + 200g + 100g = 390g

問2)
(1) 水400cm3、食塩40gを加えた状態となり、これは水200cm3に食塩を20g加えたもの(ビーカーc)と同じ「1cm3あたりの重さ」となります。
(2)アルコールの「1cm3あたりの重さ」は 90g/97cm3 となり 1よりも小さい値。卵Aは重さ60g体積55cm3(問題文より)なので、卵Aの「1cm3あたりの重さ」は1よりも大きく、アルコール中で沈みます。

問3)
「浮き・沈み」の違いが最もはっきり現れるビーカーを選ぶ。

問4)
たまごを「浮くもの」「沈むもの」に分けることができる。cのビーカーに対して、沈むA,Bが買ったばかりのもの、C,Dが冷蔵庫に保管しておいたものであることから、新しい卵は古い卵に比べて「1cm3あたりの重さ」が大きいことが分かる。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
数字に意味を持たせる姿勢が大切

本文は、十分な時間を与えられれば比較的平易な
計算問題と、実験考察問題です。

合否に影響を与えたのは、短時間にこの問題をとりきる力の有無だと断言できます。
各問題ごとに、それぞれ「1cm3あたりの重さ」の計算をしていたのでは間違いなく時間切れです。

「1より大きい」「1より小さい」
「分母が大きくなれば、全体は小さくなる」
「55の1.03倍はどうやっても60にはとどかない」 等、
概算する能力の有無が求められています。

解説中にも書きましたがこの能力は、一朝一夕には身につきません。
また、1行計算問題集を大量に繰り返しても決して身につきません。

概算力を身につける方法は、唯一、数字を単なる記号でなく、意味のあるかたまりとして
イメージすることです。

例えば、 5.2 / 4.9  を1.06であると計算できることよりも、「1よりも少しだけ大きい数だ」と
イメージできることです。

実際の社会でも、数字の細かい計算よりも、概算によって全体を把握し、判断をしたり方針を立てたりする
能力のほうが遥かに重宝されています。

もちろん正確な計算能力も必要ですが、数式をたんなる記号の羅列としてとらえるだけでは、
計算能力以上のものは身につきません。

(参考)
http://www.lojim.jp/calculation/quiz.cgi


2007年05月21日

桐朋中より。基礎知識は複合化できてこそ理解したといえます。 2007-05-21



桐朋中より。基礎知識は複合化できてこそ理解したといえます。


aグラムのアルミニウムを試験管に入れ、これにbグラムの塩酸を入れたところ、アルミニウムがすべてとけました。とけた後の水溶液の重さをはかったところ、cグラムでした。この水溶液を加熱して、水を蒸発させていくと、にごりはじめ、水が無くなるとdグラムの個体Eが得られました。


問1
以下の量の組み合わせで、右に記した重さが大きい場合は、「右」、左に記した重さが大きい場合は「左」、等しい場合は「同」と書きなさい。
(1)(aグラム+bグラム、cグラム)
(2)(cグラム、dグラム)
(3)(aグラム、dグラム)

問2
個体Eをdグラム取り、これがちょうどとけるまで水を加えました。ここで生じる水溶液の重さがfグラムとすると、fとcではどちらが大きいですか。次のア~エから1つ選び、記号で答えなさい。
ア. fの方が大きい
イ. cの方が大きい
ウ. fとcは等しい
エ. これだけでは判断できない

(桐朋中・抜粋)


受験生ならだれでも知っている反応です。現象を丸暗記せずに式のかたちで理解できていますか。


問1 (1)左 (2)左 (3)右
問2 イ


下の(化学)式が書けるかどうかですべては決まります。
書けない人は、どういった反応が起きているのかという理解をおこたり、教科書に書いてある結果のみを暗記し
理解したつもりになっている人です。

そして大事な基礎知識が反応の前後で質量の変化はありません。つまり上記反応の左辺と右辺の質量は等しくなります。
また、塩酸水溶液が、塩酸が水に溶けたものだという基礎知識がきちんと応用できるかどうかも確認すべき点ですね。

問1
(1)上式を参考にするまでもなく、逃げていった水素の分だけcが軽くなります。
(2)上式参照
(3)塩酸とアルミニウムの反応は、大雑把に言えば、「塩酸が2つに分解し、一つは水素として気体として空気中に出ていき、もう一方はアルミニウムと化合する」反応です。アルミニウム自体は複数に分かれてはいません。

問2
「にごりはじめる」という状態がどういう状態であるかに着目できるかどうかが鍵となります。
にごりはじめる→飽和水溶液となるということであり、これがつまりfの状態です。

cグラムから水をとりのぞいて、fグラム になるのですから c>fです。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
知識の複合化ができるまで理解を掘り下げる

この問題であつかっている内容は、我々が普段「塩酸」として扱うものが本来「塩酸水溶液」であることの理解であったり、
塩酸とアルミニウムの反応であったり、飽和水溶液の知識であったり、
それぞれは基礎中の基礎といった知識です。

が、これらがうまく複合され出題されると、その知識理解の甘さが露呈するものです。

「基礎問題はわかるのに応用になるとどうも」 といった声の大半はここにあるのですが、
こういった場合、基礎問題も本来分かっていないのです。本当に「理解」したというレベルまでいっていないのです。

この問題が教えてくれることの一つは、
「基礎として紹介される事象でも、それを応用するには想像を超える努力が必要であること」であり、
「簡単に『理解した』と納得しない癖をつける大切さ」です。

そして、保護者・指導者は、苦労をいとわず、そして決められたカリキュラムを消化することにとらわれることなく、
教科書レベルの事象の深堀の重要性を生徒に今一度説くべきです。
本当に生徒は、基礎レベルの知識を理解しているのか。疑ってかかることも時には必要です。


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