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2006年07月10日

今週 は桜蔭中より1問です。 2006-07-10



今週 は桜蔭中より1問です。


『カエルが、からだのどこを使って産卵池の位置を知るのか』を 調べるために以下の実験を行いました。

【実験】池に向かうカエルを池から50~200m離れたところでつかまえて,3つのグループ(う)、(え)、(お)に分け、以下のようにしました。

グループ(う):目が見えないようにした後、(う)の目印をつける
グループ(え):鼻でにおいがかげないようにした後、(え)の目印をつける
グループ(お):目や鼻には何もせず、(お)の目印をつける
 
 グループ(う)、(え)、(お)のカエルをつかまえた場所で放し、1週間で、どれくらい池にたどり着いたかを調べた結果が図3です。

問4 【実験】の結果について、つぎの問い(1)~(4)に答えなさい。


(1) 池の位置を知るのに、カエルが主に目を使って いるといえる場合は○、いえない場合は×を書きなさい。
(2) (1)はグループ(う)~(お)のどれとどれ の結果を比べるとわかりますか。
(3) 池の位置を知るのに,カエルが主に鼻を使って いるといえる場合は○、いえない場合は×を書きなさい。
(4) (3)はグループ(う)~(お)のどれとどれ の結果を比べるとわかりますか。

                                      (桜蔭中)



上記、(1)から(4)を解くにはヒントはい らないと思います。この問題は、解答の先にとても大事な考え方を知るチャンスがあります。必ず解説にも目を通してください。

(1) × 
(2) (う)と(お)
(3)○
(4) (え)と(お)


こ の問題の隠れたポイントは、
(2)で、なぜ、(う)と(え)をくらべてはいけないか
(3)で、なぜ、(う)と(え)をくらべてはいけないか
が説明できるかどうかです。

(上記が説明できなくても試験では解答できてしまうのが残念なところです)

グループ(う) → 目隠し
グループ(え) → 鼻せん
グループ(お) → なにもしない

ソラマメの発芽実験問題が有名ですが、この問題も対照実験について扱った問題です。
「対照実験とは」 → 「比べることにより結果の理由を特定する実験」
→ 「2者の異なる点が1つだけならば、生じた結果の原因は、その異なる点だと結論ずける方法論」

グループ(う)とグループ(お) 
・・・・ 異なる点は、「目隠しをしているかどうか」 の1点

グループ(う)とグループ(え)
・・・・ 異なる点は、「目隠しをしているかどうか」と、「鼻せんをしているかどうか」の2点

となります。グループ(う)とグループ(え)を比べても、池に帰ってくるカエルの割合が違う原因が、特定できないのです。異なる点が2つあるからです。ど ちらが理由なのか特定できません。

この問題は、本来、
「カエルが目をあまり使っていない」ことを言うために、(う)と(え)をくらべてはいけない理由を説明しなさい。
とするべきだったのではないでしょうか。  (答えは、「(う)と(え)は異なる点が2つあるから」)

「一つの結論に対して、一つだけの相違点をみつける」
対照実験の根本を理解しているかを確認してください。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
「対照実験」のような基本的方法論の徹底理解をすること

以前にも同様のメッセージを読み解きました。とかく頻出の対照実験問題ですが、
上位校ほどその根本的意味の理解を確認してきます。

さて、教室で本問を扱いました。学年問わず8割の生徒は正解できましたが、こと、

(2)で、なぜ、(う)と(え)をくらべてはいけないか
(3)で、なぜ、(う)と(え)をくらべてはいけないか

という問いを追加すると、白紙になってしまう生徒がほとんどでした。
(対照実験の意味が理解できていない証拠です。)

「目隠ししても、多くのカエルが帰ってくるけど、
鼻せんをすると、ほとんどのカエルがかえってこられない。」

日常の感覚だと、上のセンテンスからでも、「カエルにとって目は大事ではない」と
結論づけることもできそうです。
しかし、この日常の感覚を疑い、科学的な方法論で物事を判断するスキルを
桜蔭中は求めているのです。

「感覚を疑え!」などと格好良く言い放つことは簡単ですが、「疑い方」が伝えられていないのが
現在の理科教育の現状ではないでしょうか。
「感覚を疑う」ことは、闇雲に疑心暗鬼になることではありません。
また、「感覚」は否定すべきものではありません。

自分の直感・常識・感覚を補強し、視点を増やすために、対照実験のような基本的な方法論を
徹底的に理解する必要があるのです。


2006年05月29日

今週 は麻布中理科より1問です。 2006-05-29



今週は麻布中理科より1問です。


 生き物の体は,脳もふくめてたくさんの正常なたんぱく質でつくられています。ウシの海綿状脳症(狂牛病)は,異常なたんぱく質が体の中に入り,それが病原体となって起きます。この異常なたんぱく質が脳に入ると,脳が必要としている正常なたんぱく質が足りなくなって,脳が海綿状(スポンジ状)になってしまうのです。
 ヒトでも,狂牛病の病原体と同じような異常なたんぱく質が体に入ることにより,脳がスポンジ状になる病気が知られています。その異常なたんぱく質Xはヒ トの体に入ると,正常なたんぱく質AをXに変える働きをします(図1)。XはAを変化させますが,自分自身は変化せずxのままです。また,このXがヒトの 体の中にまったく無いときAはxになりません。
>
問1 なぜ,このXが体の外から少量でも入ると,重大な病気になってしまうのですか。図1から考えて説明しなさい。

問2 もし,このXがAをXに変化させるときに,自分はYという別のたんぱく質に変化してしまうとすると,XとYの量はどうなりますか。下のア~カの中か ら,正しいもの2つを選びなさい。
ア.Xは増えていく  イ.Xは変わらない  ウ.Xは減っていく
エ.Yは増えていく  オ.Yは変わらない  カ.Yは減っていく
  

 上のように,ヒトの体の中でつくられたたんぱく質が,それ自身をつくることに関係していることはよくあります。体に必要なたんぱく質Cはそのようなたん ぱく質で,たんぱく質Bからつくられます。そしてこのCは,BからCへの変化をおさえる働きをします(図2)。またBはいつもつくられていて,Cはゆるや かに分解されています。
>
間3 つぎの(1),(2)の場合,BからCがつくられる量はどうなりますか。図2を参考にして答えなさい。
 (1) 何らかの原因でCの量が増えたとき
 (2) 何らかの原因でCの量が減ったとき

問4 ヒトの体を健康に保つために必要なたんぱく質の多くは,図1のXをつくるような経路ではなく,図2のCをつくるような経路でつくられます。そうなっ ている利点について図1,図2を比べて説明しなさい。 


たんぱく質Aが仮に、10個だけ存在し、そこにたんぱく質Xが1個投入されると。。。。 とシミュレーションしてみてください。


問1  
Xの作用により、AはXとなる。XはXのままであることから、時間がたつと正常なたんぱく質AはすべてXとなってしまうから。

問2
エ, イ

問3
(1)減る (2)増える

問4
図1の経路だと特定のたんぱく質が極端に増えたり、減ったりするが、図2の経路だと、特定のたんぱく質が増えたり減ったりしても、それを抑える方向の働き が生じ、たんぱく質の量が一定に保たれるという利点がある。


問 1 
仮に正常なたんぱく質Aが10個あるとします。そこに、1つの異常たんぱく質Xが混じると、1個の正常たんぱく質Aが1個のXとなります。つまり、Aが9 個、Xが2個。つぎには、この2個のXの働きで、A2個がXに変化するので、Aは7個、Xは4個となります。この動作を繰り返すとAはなくなってしまいま す。

10A + X → 9A + 2X → 7A + 4X → 3A + 8X → 0A + 11X

問2

・AはXになる
・もとからあったXはYになる

以上から、全体としては AがYに変わる 変化だと考えることができる。
つまり、Xの量は不変、Yの量は増える。

問3
「Bは放っておくとCに変化し、つくられたCは今度は自分が作られるのを邪魔する」とイメージします。

Cが増えると、B→C の変化は邪魔されます。
Cが減ると、B→Cの変化は邪魔者が少なくなり、B→Cの変化量は増えます。

問4
問3から考えます。
Cが増えると、BからCが作られる変化はおさえられ、結果、Cはそれ以上なかなかふえません。問題文にあるように、Cがゆるやかに分解されると、Cは減る ことになり、BからCが作られる変化は促進され、結果Cは増えます。そしてCが増えると・・・・

と増えては減り、減っては増えるというプロセスを延々と繰り返すことになります。
これにより存在するたんぱく質の量が一定に保たれます。

とある最適な量のたんぱく質を保つという人間のメカニズムです。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・いくつかの結論を重ねて、求められる結論に到達する持久力が必要

まず気付いてほしいのが、本問は生物分野の知識は何一つ必要とされてはいない点です。
題意を噛み砕いて説明すれば、小学校低学年の生徒でも回答可能です。
純粋に、「AならばB」「Aだ。ということはBだ。」という思考を積み重ねることで回答する、
論理思考力を計る問題です。

結局この問題で必要とされる能力・技術とはなんなのでしょうか。
それは、公式やパターン学習を完全に捨てた、結論を積み上げる持久力です。
簡単に言えば、バテずに「ってことは」を積み重ねる力です。

一つの結論が出た後に、その結論をつかって新たな結論に向かう。そしてさらに、その次の結論に。
大人にとっては普段から慣れたこの能力・スキルですが、小学生にとっては我々の想像以上に
困難な作業となることがあります。特に、積み重ねるべき結論の数に比例して音を上げる生徒は
増えるのです。

論理思考力と言われるものは、往々にして脳の「結論積み上げ持久力」だと言い換え可能です。
普段から、安易に答えを確認しようとせずに、複数のヒントから答えにたどり着くという、「積み重ね」
を訓練する環境を作ることが必要です。

分からなかった問題に対して、答えや解説を提示するのではなく、
ヒントを徐々に与え答えまで導くような学習環境づくりこそ、保護者・先生のやるべきことだと思います。


2005年12月26日

今週は桜蔭中学の理科入試問題から抜粋です。 2005-12-26



今週は桜蔭中学の理科入試問題から抜粋です。


問  2003年8月27日、21世紀最大という「火星大接近」が話題になりました。火星とその他の太陽系の星について、図と表を参考にして以下の問いに答えなさい。

問 水星の方が金星より太陽に近いのに、表面温度が金星の方がが高いのはなぜか。次のア~エから選びなさい。

ア) 水星は太陽のまわりを金星に比べ高速で回っているので太陽からの熱を受け取りにくい
イ) 水星の体積が金星に比べて小さいため熱を受け取る量が少ない
ウ) 水星の地表は水におおわれていて暖まりにくい
エ) 金星の大気が熱を吸収して温度が下がりにくい



知識問題ではありません。問題文にあるように図と表を参考にして解く、資料読解問題です。



問題文中の表から、水星には大気がなく、金星の大気はその大部分が二酸化炭素であることが分かる。

頻繁に話題になる地球温暖化現象を思い出す

二酸化炭素が大気におおく含まれることで星の温度が上がる


頻繁にニュースや科学トピックで話題になり、
また教科書にも必ず載っている
「二酸化炭素が増えると、地球の温度が高くなり、南極の氷がとけることで海面が上がる」
という話を資料と結び付けられるかが鍵となる問題です。

(記号選択問題ですのでこのトピックを思い出した時点で正解はできます。)

また、ここで「なぜ大気に二酸化炭素が多いと大気の温度が上がるのだろうか」
と考えることが重要なのです。もちろん小学生はこのことを習いません。

しかし、
「きっと、二酸化炭素は熱をたくわえる性質があるのだ」
と仮説を立てることが重要なのです。

この仮説が立てられれば、たとえこの問題が完全記述の問題でも正解が導けます。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・ マニアックな知識に頼らず、与えられた資料と常識から仮説を立てる能力が重要

この問題を見て、また市販の過去問題集でこの問題の解説を見て、
「金星の大気が二酸化炭素だらけなんて知らないよ。なんて難しい問題だ・・」
「二酸化炭素が多いと、保温効果があるなんて習ってないよ」
と言っているようでは、どうやっても桜蔭中レベルには合格できません。

またこの問題の解説を読んだ上で、
「なるほど。金星の大気は二酸化炭素なのか。覚えてしまえ」
という学習をしているようでは将来が不安です。

・「知らない」という事実を受け入れること
・与えられた情報を冷静に読み取ること
・常識(知っていること)を与えられた情報と組み合わせて仮説をたてること

まさに中学入試にとどまらず、高等教育、さらに実社会で活躍するのに
必須な能力ではないでしょうか。桜蔭中が求める生徒が持つ能力です。

ロジムの授業や「今週の1問」ではおなじみのメッセージではありますが、

「知らない」「習ってない」では、何も起こらない。そこで終わります。
与えられた情報から仮説をつくり、推論を行い、解答に少しずつ近づく思考力が、中学校が、そして社会が求める力なのです。

(参考)
未知の問題に出会ったときに、どうやって仮説・推論を組み立てるのか。これがまさにロジカルシンキングです。 (ロジムテキストより抜粋)


2005年12月05日

今週は、早稲田中入試から理科分野の一問(抜粋)です。 2005-12-05



今週は、早稲田中入試から理科分野の一問(抜粋)です。


植物の 体の表面から水が蒸発するしくみを調べる実験をしました。下図のように目もりをつけた試験管に水を入れ,これに新しいツバキの枝をさしたものを A~D 4個用意し,風通しのよい日かげにおいた。下の表のように条件を変え,数日後に水面のさがった量をしらべたところ表の結果をえた。これをもとにして, (1)~(5)の問いに答えなさい。

(ただし、ワセリンは水や空気を通さない)

(1)葉の表側・葉の裏側・茎の表面から蒸発した水の量の 目もり数はそれぞれいくつですか。

(2)葉の表側にワセリンをぬったとすると,水面がさがった目もり数はいくつになりますか。             

(早稲田中 改)


・親切にも「ワセリンは水や空気を通さない」と注意書きが問題文中にあります。つまり、ワセリンを塗った箇 所からは、蒸散(植物が水分を水蒸気として空気中に放出すること)が行われないということです。
・なぜDでも水面が減っているのでしょうか。


(1)葉の表側 6 / 葉の裏側 58 / 茎の表面 3 
(2)62


暗記学習ではなく、考えて問題を解くことができる生徒の思考プロセスに沿って解説します。この問題の最初の 鍵は、水面からの蒸発を捉えられるかどうかです。
「表から、葉の表・葉の裏・茎 から試験管の水が外に出されているんだな」

「あれ、まてよ、D の試験管の水も減っている。ということは、葉の表裏・茎以外からも水が減る原因があるのだ。」

「水面からの蒸発だろう(ここでは、水面から蒸発ということに気付かなくても、葉の表裏・茎以外からも水減らす要因があるということに気付 けばいいのです)」

このように、論理的に実験において影響をあたえる要因を考えることがスタートです。

D の試験管から 
水面からの蒸発=1 (目盛り)


C の試験管から
茎からの蒸散 + 水面からの蒸発 =4 (目盛り) 
茎からの蒸散 +   1  (目盛り)    =4 (目 盛り) 
茎からの蒸散  =3 (目盛り) 

B の試験管から
葉の表からの蒸散 + 茎からの蒸散 + 水面からの蒸発 =10 (目盛り) 
葉の表からの蒸散 + 3 (目盛り) + 1 (目盛り)  =10 (目盛り)
葉の表からの蒸散 = 6 (目盛り)


A の試験管から
葉の裏からの蒸散+ 葉の表からの蒸散+茎からの蒸散+水面からの蒸発 =68 (目盛り) 
葉の裏からの蒸散 + 6 (目盛り) + 3 (目盛り)  + 1 (目盛り) =68 (目 盛り)
葉の裏からの蒸散 =58 (目盛り)


下のような表を即座につくってもいいでしょう。

2.jpg

(2) 葉の裏からの蒸散 と 茎の表面からの蒸散 と 水面からの蒸発 の3つをたすと
   58+3+1 で62

こういった、条件を変えて、その差違(他と異なるところ)から特定したい情報を導く実験を『対照実験』といいます。

たとえば、今 りんご の重さを特定したいとします。しかし、りんごの重さを直接測ってはいけないというルールがあるとします。
また、今、みかんの重さと、 かごの重さと、 みかんとりんごをかごに入れた時の重さは分かっているとします。 この場合、

りんごの重さ= みかんとりんごをかごに入れた重さ - かごの重さ -みかんの重さ

で求めることが可能です。
このように対照実験をもちいると、直接測定不能なデータを得ることができわけです。

この対照実験はきわめて論理を要し、また科学の世界では基本中の基本とされる考え方です。なので、高校・中学入試は頻出となっています。
上位校では、対照実験の結果からの考察だけでなく、「正しく対照実験を行うにはどういった設定で、何と何を比べればいいのか」を問われることもありま す。

また、この問題も国語読解力によっ て大 きく差が開く問題です。問題文から、「どんな実験をしているのか」を把握できない生徒が多数でした。実験操作になれることも大事ですが、そ れ以上に問題文に書いてあることを、自分の言葉に翻訳して理解する、また図示するという能力が必要となります。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・基本的かつ重 要な方法論を理解する ~実験の本質を俯瞰(ふかん)してほしい~
 解説にも書きましたが、今回の実験は対照実験という有名な実験方法論です。このワセリンの問題のほかにも、唾液とデンプンの問題、光合成の問題、ソラマ メの発芽の問題等として入試問題には頻出です。さらに言えば上位校では対照実験の状況設定を行う能力が最も重要なのです。つまり、「あと、どの実験をすれ ば欲しい情報が得られるか」を思考する能力です。「差違をつかって欲しいデータを導く」という思考です。

「ほしい情報をどうやったら手に入れることができるのか」を試行錯誤し、最短の方法でそれを手に入れ、整理し考察するという能力は入試に限らず広く社会で求められています。もちろん、そういった社会で多分に求められる能力を備えた生徒を、中学が欲しがるのは至極当たり前ではないでしょうか。

この問題を通して、
「へー、葉の裏からの蒸散が一番おおいんだ。おどろき。」
と思うのも大事ですが、
それ以上に、
「へー、なるほど、こういう実験をすれば 分からないデータを手に入れることができるんだー。おどろき。」と考えて欲しいものです。


・図示するチカラ、整理するチカラ~手を動かしてください~
今回の問題は、問題文と提示された表をにらめっこしていたのでは回答にはたどり着かないはずです。解説で書いたような表を即座に自分でつくることができる か、もしくは、解説に書いたように、蒸発部分を特定する「言葉の式」を組み立てることができるか、が鍵になるのです。

そういった作業をする間に「あ、水面からも蒸発するんだ!」と気付くわけです。基礎知識など要りません。試行錯誤をきちんとするか、試行錯誤の間に 「ん??」と考えることができるかが求められるているのです。

ロジムでも、問題とひたすらにらめっこしながらうんぬんうなっている生徒が時々います。そして「表にしてごらん」「問題文を箇条書きにしてごらん」と言い うと、瞬時に解けてしまうことが大半です。とにかく手を動かすことを怠けないで下さい。

「最も簡単で最も効果 のある学習法は問題文を箇条書きに直す習慣をつけること」と言われるのも、あながち大げさではないのです。むしろ、その通りだと思います。


2005年10月24日

今週は、理科分野からの一問です。 2005-10-24



今週は、理科分野からの一問です。


 天気のよい日には、太陽が昇るにつれて温かく感じるようになりま す。太陽による、ものの暖まり方や、気温と地中の温度の変化について考えてみましょう。

  太陽の光を利用して、日なたで1リットルの水をできるだけ早く温める工夫をしました。

(1) 次の1)、2)のような工夫をしたところ、水が早く温まりました。その理由をそれぞれ書きなさい。

工夫1) 水を金属製の容器に入れた。
理由:                                

工夫2) 容器にふたをした。
理由:                              

(2) 上の1)、2)以外にも、いろいろな工夫があるでしょう。そのうち3つを考え、工夫と理由を書きなさい。

(武蔵中 改題 平成12年)


(1)
 工夫1:日なたにおいた鉄の棒と、プラスチックの棒では触れたときの温度に違いがあるのは感覚的に分かるはず です。さて、それでは金属の性質を考えてみましょう。
 工夫2:ふたをするときとしないときで、変わるものは何かということに着目しましょう
(2)身の回りで、温度が高いものを思い浮かべ、どうしてそれが高温になっているのか考えてみましょう。


(1)
工夫1)の理由:
金属は熱を伝えやすく、太陽の熱を効率良く容器中に つたえることができるから。
工夫2)の理由
熱が逃げるのを防ぐことができるから。

(2)
(工夫例1)容器の色を黒色にする 
(例1理由)黒い色は光をより多く吸収することができるから。

(工夫例2)凸レンズで光を集め、容器にあてる 
(例2理由)より多くの光の量を容器にあてることができるから。

(工夫例3)細長い容器に水を入れる /広く平らな容器に水を入れる
(例3理由)容器が太陽光を受ける表面積を大きくすることで、受ける光量の合計を増やすことができるから。

(工夫例4)容器の周囲を鏡で囲む
(例4理由)太陽から直接あたる光だけでなく、鏡から反射しゃれる光も受け取ることができるから。

(工夫例5)密閉された透明のガラス箱の中に水の入った容器を置く 
(例5理由)容器のまわりの空気の温度が保温され、周囲の暖かい空気により容器が冷えるのを防ぐから。


(1)
(工夫1)金属は熱を伝えやすい性質をもっています。

(工夫2)ふたをすることで、水面から熱が逃げるのを防ぐことができます。また、水蒸気の発生がおさえられるので気化熱による温度減少をおさせることがで き ます。

(参考)水分が蒸発するときに表面の熱を奪います。これが気化熱です。例えば、予防注射の前に、脱脂綿で消毒をします。そのときヒンヤリするのは、消毒薬 (アルコール)が蒸発するときに、腕の表面から熱を奪うからです。

(2)
早く温めるということは、
・ より多くの熱を吸収する
・ 熱の放出をより防ぐ
ということです。ここに着目します。

つまり

・より多くの熱を吸収するためには?
→より多くの光をあてる

・より熱の放出を防ぐには?
→熱がにげるのを防ぐ。熱をできるだけその場にとどめる

と考えはじめるのがスタートであり、科学的視点の基礎である論理的な考え方です。

また、身の回りの「温かいもの」がどうして温かくなっているのかを考えます。例えば、炎天下に白い帽子をかぶるのは、黒い頭髪が熱を吸収するのを防ぐため です。ビニールハウスの中が温かいのは、熱が逃げるのを防いでいるからです。

基礎的な知識を使い、柔軟な思考力により解答を導く良問です。

教科書に書いてある「より早く容器の中の水の温度を上げるには」の工夫 例を丸暗記していたのでは成績はのびませんし、「考える力」という観点から生徒の将来が不安です。

解説にも書きましたが、
「容器の温度をより早くあげる」とは
→1.受け取る熱量をふやす
→2.にげていく熱量を減らす  であり、

このように物事を構成 要素に分解して考える思考法を身に付けることが、将来につながる勉強法です。

そういった意味で、この問題は、「物事を構成要素に分解し、整理し、論理的に 結論を導く」
能力の基礎が身に付いているかを試す問題なのです。

 また、身の回りで「温かいもの」を想像して答えを導くという能力も必要とされています。身の回りの科学的事象に多く関心をもち、理由を考える。まさ に中学校が生徒に望む能力ではないでしょうか。
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~ 今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~

・物事を構成要素に分解する能力が重要
たとえば、有名な例だと、「やせる方法」を
1.エネルギー消費を増やす 
2.エネルギー摂取をへらす 
3.排せつ量を増やす(下剤の使用や脂肪除去) 
というよ うに、物事を構成要素に「もれなくだぶりなく」分解します。その要素ごとに対策を考えると言う能力は、試験問題だけでなく、科学の現場やビジネスの現場で も最 重要される能力の一つです。

・ 身の回りの科学事象にたえず関心をもつことが重要
暗記に頼らない解答作成で、やはり重要なのは「経験」からの「類推」です。できるだけ多くの身近な事象に対し「なんでだろう」を持ち、それを調べるという 習慣を持つようにして下さい。


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