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2007年09月03日

普連土学園中より。実験→法則発見→日常生活への応用、実験問題の古典です。 2007-09-03



普連土学園中より。実験→法則発見→日常生活への応用、実験問題の古典です。


[実験]
 手順1 3つの1000mlビーカーに0℃,50℃,100℃の水を入れた。
 手順2 冷蔵庫で冷やした500ml入りの炭酸飲料のペットボトル3本のふたをそっと開けた。
  
各ビーカーにペットボトルを1本ずつ入れて観察した。

問1 [実験B]の結果から,水の温度が上がると,気体の溶け方はどう変化すると考えられますか。

間2 真夏の太陽が照りつけるとき,車の窓を閉め切った状態にしておくと,フロントガラス付近の温度は70℃位まで上がります。このため栓を開けていないコーラなどの缶入り炭酸飲料をフロントガラス付近に置きっぱなしにしておくと,缶が破裂することがあります。[実験]の結果を使ってこの理由を説明しなさい。

(普連土学園中・抜粋)



問1がヒントです。
 

問1 水の温度が上がると、溶ける気体の量は少なくなる
問2 炭酸飲料の温度が上がり、溶けていられる気体の量が少なくなり、とけ切れなくなった気体が飲料の外にでていき飲料缶中の圧力が高くなるから。


問1 「温度が上がると出てくる泡の量が多くなる」では正解にはなりません。表を読んでいるだけです。表から物事を一般化する思考力・語彙力が求められています。

問2 缶が破裂するのは、「缶中の気体が増えたから」ではなく「缶中の圧力が上がったから」です。


~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
実験データを一般化し、個別事象に当てはめて考えるという実験→思考→応用の基本中基本を身につける

与えられた事象を一般化して考えることができるといのはまさに知的成長の1ステップです。

複数のデータや事象をただその個別数値・現象と取られるのでなく、そこから全体に当てはめられる法則を導く。
さらに、その法則をつかって他の事象について考える。

まさに科学者と言われる人々が長い歴史の中で繰り返し行ってきたプロセスであり、小学生の皆さんがこれから
学問の道に限らず絶えず求められる思考回路です。

そういった思考ができる生徒を求めるのはもちろん本問出題校だけではありません。
この機会に、実験(具体例) → 一般化 → 他の個別事象への当てはめ 
というプロセスを意識してみてください。


2007年08月13日

桜蔭中より。実験データを単なる記号としてではなく意味のある数字としてイメージできないと解けません。 2007-08-13



桜蔭中より。実験データを単なる記号としてではなく意味のある数字としてイメージできないと解けません。


卵の新しさは、食塩水の中に入れて、うくかしずむかで見分けられるということで、つぎの実験をしました。

(1)買ったばかりの卵A、Bと、冷蔵庫の中に長い間入れたままだった卵C、Dを用意しました。

 卵AとCの重さはそれぞれ60gで、卵BとDはそれぞれ50gでした。また、卵Aの体積をはかったら55cm3でした。
(2)重さが100gのビ-カーa~eを用意し、それぞれに水を200cm3ずつ入れました。水1cm3の重さは1gです。ビーカーb~eにそれぞれ下の表の重さの食塩を加えてよくかき混ぜて、全部とかしました。食塩水の体積は、下の表のようになりました。

(3)ビーカーa~eに卵A~Dを静かに入れて、卵がうくか、しずむかを調べました。結果は、下の表のようになりました。

なお、表の中で「途中で止まる」とは、上の図のような状態です。体積1cm3あたりの重さが、食塩水と卵とで等しくなる時に卵は途中で止まります。

つぎの問いに答えなさい。
間1つぎの文の( )~( )にあてはまる数値を下のア~コより1つずつ選んで記号で答えなさい。
ビーカーbの食塩水1cm3の重さは、約( )gになります。卵Cの体積は約( )cm3になります。ビーカーdに卵Aを入れて、上ざら天びんで重さをはかると( )gになります。

ア 0  イ 0.97  ウ 1.03  エ 53.4  オ 55.0  カ 58.3  キ 61.9  ク 335  ケ 390  コ 445

間2 つぎの(1)、(2)の水溶液に卵Aを入れました。卵Aが「うく」ものにはア、「途中で止まる」ものにはイ、「しずむ」ものにはウを記入しなさい。

(1)ビーカーeに、さらに水200cm3を加えてうすめた食塩水。
(2)アルコール50cm3(重さ40g)に、水50cm3を加えた水溶液(体積は97cm3)

間3 この実験の場合、卵の新しさを見分けるのに最も適した食塩水はどれですか。ビーカーの記号で答えなさい。

間4 つぎの(1)、(2)の文について正しいものには○、まちがっているものには×をつけなさい。
(1)適した食塩水を使うと卵の新しさを見分けるのに、卵の重さをはかる必要はない。
(2)同じ重さなら、古い卵は新しい卵より体積が大きい。

(桜蔭中)


実際の試験(当時算数と合わせて55分)では、実際の値を求めて比較する時間はありません。概算力と、それを支える「数字から起きていることをイメージする力」が求められます。


問1 )①ウ ②カ ③ケ
問2 )(1)ウ (2)ウ
問3 ) c
問4 )(1)○ (2)○


問題文を精読し、「浮く・沈む」というのは「1cm3あたりの重さ」の大きさの違いによることを確認します。

問1)
ビーカーbの重さは210g、 体積は204cm3となるので「1cm3あたりの重さ」は 210g/204cm3 となり 1よりわずかに大きい値となります。ここで、210÷204を筆算している生徒は、桜蔭中が必要としない生徒となることでしょう。210/204 が 「だいたい1より少しだけ大きい数」となるというイメージ力を求められています。

卵Cはこの食塩水bと密度が等しいことから、60/? =1.03  ?は60より少しだけ小さい数となる。60と55の差である5の0.03倍は、 0.15にしからない。よって選択肢オの55は除外できる。60÷58.3 と 60÷55などとやっていては試験時間中に解ききれません。
この概算の方法はここでは詳しくはしまぜん。各自「なんとか計算を早くしよう」と拘泥した先に手に入れるテクニックです。各自考えてみてください。

食塩を水にとかしても、食塩の重さは変わらないので、
ビーカーd=卵の重さ + 溶けた食塩の重さ + 水200cm3の重さ + ビーカーの重さ
     = 60g + 30g + 200g + 100g = 390g

問2)
(1) 水400cm3、食塩40gを加えた状態となり、これは水200cm3に食塩を20g加えたもの(ビーカーc)と同じ「1cm3あたりの重さ」となります。
(2)アルコールの「1cm3あたりの重さ」は 90g/97cm3 となり 1よりも小さい値。卵Aは重さ60g体積55cm3(問題文より)なので、卵Aの「1cm3あたりの重さ」は1よりも大きく、アルコール中で沈みます。

問3)
「浮き・沈み」の違いが最もはっきり現れるビーカーを選ぶ。

問4)
たまごを「浮くもの」「沈むもの」に分けることができる。cのビーカーに対して、沈むA,Bが買ったばかりのもの、C,Dが冷蔵庫に保管しておいたものであることから、新しい卵は古い卵に比べて「1cm3あたりの重さ」が大きいことが分かる。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
数字に意味を持たせる姿勢が大切

本文は、十分な時間を与えられれば比較的平易な
計算問題と、実験考察問題です。

合否に影響を与えたのは、短時間にこの問題をとりきる力の有無だと断言できます。
各問題ごとに、それぞれ「1cm3あたりの重さ」の計算をしていたのでは間違いなく時間切れです。

「1より大きい」「1より小さい」
「分母が大きくなれば、全体は小さくなる」
「55の1.03倍はどうやっても60にはとどかない」 等、
概算する能力の有無が求められています。

解説中にも書きましたがこの能力は、一朝一夕には身につきません。
また、1行計算問題集を大量に繰り返しても決して身につきません。

概算力を身につける方法は、唯一、数字を単なる記号でなく、意味のあるかたまりとして
イメージすることです。

例えば、 5.2 / 4.9  を1.06であると計算できることよりも、「1よりも少しだけ大きい数だ」と
イメージできることです。

実際の社会でも、数字の細かい計算よりも、概算によって全体を把握し、判断をしたり方針を立てたりする
能力のほうが遥かに重宝されています。

もちろん正確な計算能力も必要ですが、数式をたんなる記号の羅列としてとらえるだけでは、
計算能力以上のものは身につきません。

(参考)
http://www.lojim.jp/calculation/quiz.cgi


2007年07月02日

頌栄より。対照実験から仮説を導く基本問題です。 2007-07-02



頌栄より。対照実験から仮説を導く基本問題です。


サツマイモを半分に切って水栽培をし、芽や根がどこから出るかを調べた。イモができたとき、茎に近かった方をA、その反対側をBとして実験を行ったところ、(1)~(4)のような結果を得た。

(1)Aの上下をそのままにして栽培すると、芽は上から、根は下から出た。
(2)Aの上下をさかさまにして栽培すると、芽は下から出、その根元から根が出た。(3)Bの上下をそのままにして栽培すると、芽は上から、根は下から出た。

(4)Bの上下をさかさまにして栽培すると、芽は下から出、その根元から根が出た。

問)
この実験から分かることを、 (a)芽の出かた (b)根の出かた それぞれについてまとめなさい。

(頌栄中・抜粋)


Aの部分とBの部分の違いはなんでしょうか。


(a)芽は上下の置きかたに関係なく、もともと茎に近かった部分から出る。

(b)根は、もともとの位置に関係なく、下に置いた部分から出る。


芽、根についてそれぞれ(1)~(4)の共通点を探します。

芽の置き方については、上下の置き方に無関係であることがわかる。
ここからは「気付かなくてはいけない」ところではあるが、そもそもAとBの部分は何が異なるかを考えると、
「もともと地中にあったときに茎に近かったかどうか」という点に着目できる。

この点に着目すれば、
切り取る前に最も茎に近かった場所から、芽が出ていることが分かる。

根については、単純に(1)~(4)の共通点を探すことで、下に置いた部分から根が出ていることが分かる。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
まず仮説をたてる方法を知る

科学の世界では常識であり、ロジカルシンキングの授業でも多く取り上げる「仮設を立てる」というテーマ。

多くの参考書や問題集、また授業でも取り上げられるこの種の問題ですが、
ではどうやって仮説をたてるのかということには全く触れていないのが実情ではないでしょうか。

仮説を立てる重要な方法の1つは「共通点と差異」(同じここと違うこと)に注目することです。

違いを明確にし、対象をグループ分けし、そのグループの中で共通点を探す。
たとえば、A~Dの対象物の共通点がすぐに見つからない。そういった場合、 A~Dの対象物をグループ分けできる差異を見つけ、
そのグループの中で共通点を考えます。

こういった方法論は、たしかに日々の実験や試行錯誤で身につくものですが、まずフレームとして学習する機会を持つべきではないでしょうか。


2007年06月11日

麻布中より。求められているのは直感力や発想力なのでしょうか。 2007-06-11



麻布中より。求められているのは直感力や発想力なのでしょうか。


高いところから静かに小石を落とすと,小石はどのように落ちていくでしょう。

 16世紀から17世紀に活躍したイタリアの学者ガリレオ・ガリレイは,この「落体の運動」について初めてくわしい実験を行い,その法則を明らかにしました。そのころの学者はみんな「重い物体のほうが軽い物体より速く落ちる」と考えていました(図1)。ガリレオは「重い物体も軽い物体も同じ高さから落とすと,同じ速さで落ちて同時に地面に落下する。」と主張して,ピサの斜塔の上から大小2つの鉄の砲弾を落とす実験をしてみせたという話が伝わっています。

 ガリレオは実験だけでなく,(1)同じ高さから物体を落としたとき,重い物体のほうが,軽い物体より速く落ちると仮定すると,矛盾が生じることを示しました。以下この矛盾について考えます。

 大きく重い鉄の球A,小さく軽い鉄の球B,そして,A,Bと大きさと重さがそれぞれ等しい2つの鉄の球を接着剤でくっつけたものをCとし(図),それらを同時に同じ高さから落とすとどうなるか考えてみます。

まずCをひとかたまりのものと考えます。

問1 下線部(1)の仮定が正しいとすると,A,B,Cはどの順で落下することになりますか。下のア~オの中から選びなさい。
ア.A,B,Cの順に落下する。
イ.A,C,Bの順に落下する。
ウ.C,A,Bの順に落下する。
エ.AとCが同時に落下し,Bが後で落下する。
オ.Aが先に落ち,後でBとCが同時に落下する。

 つぎにCを重い球の部分と,軽い球の部分の2つに分けて考えると,(2)(1)の仮定から,重い球の部分は速く落ちようとし,軽い球の部分はおそく落ちようとして,たがいに引き合うことになります。

問2 下線部(2)から考えると,A,B,Cはどの順で落下することになりますか。問1のア~オの中から選びなさい。

問3 問1,問2から考えると,「重いものが軽いものより速く落ちる」という仮定はまちがっていることになります。その理由を説明しなさい。

(麻布中・抜粋)


知識を当てはめようとせず、これまで使ったことのある「考え方」を当てはめてください。


問1 ウ
問2 イ
問3 「重いものが軽いものより早く落ちる」とすると、その仮定にもとづいてCを一つのかたまりと考えるときと、CをAとBの二つの部分で考えたときで、本来同一となるはずの実験結果が異なる。これは明らかにおかしい。よって、最初の仮定が誤っていたということが言える。



問2 大きい球の重さをG、小さい球の重さをgとする。 G>g。

AとCをくらべる。C大きな球はCの小さな球に引っ張られるためAの球よりも遅く落ちる。 

BとCを比べる。Cの小さな球はCの大きな球に引っ張られるためBの球よりも速く落ちる。

これより、Cの球は、Bよりも速く落下し、Aよりも遅く落下する。

問3 <<とある事象が間違っていることを説明する方法>>
   
とある事象が正しいとして、話を続けると明らかな矛盾や、あきらかな事実との相違があることを説明。
⇒よって、とある事実が正しいという仮定がまちがっている。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
思考方法で分類された学習方法を確立してほしい

麻布中学や武蔵中学でよくあるタイプの問題ですが、教科書に掲載されているような問題とは全く違い、おそらく同様の問題を解いたことのある受験生はいないと思います。

見たところ、勘のいい小学校低学年・中学年の生徒でも正解できるのではないかとすら思われます。
(実際、教室では3年生で複数人正解の記述ができていました。)

麻布中は、これまでの受験勉強の内容ではなく、ひらめきや直感力、勘の良さを持った生徒を欲しているということでしょうか。

もちろんそんなことはありません。

この問題などは典型的に「論理の積み重ね」を行う訓練をしてきたか、仮設を持って話を進める訓練をしてきたか、そして、「説明する」といった作法を体系的に学習してきたか、を試している問題です。

たしかに教科書や問題集の章立て構成に従い、学習塾のカリキュラム消化につき合わされっぱなしの生徒にとってこの種の問題は大変やっかいです。

教科書の章立てでの勉強方法は確かに便利で分かりやすいです。しかし、「今日は滑車の章だから滑車の知識をつかって問題を解く」というような学習パターンが身についてしまうと、上のような問題に対して対応できなくなることがあります。


日々の学習の中で、自分が使っている思考方法をたえず意識する。
「この問題は典型的な推論問題だな」「この問題はいつもの『間違っていることを証明』するタイプだな」
e.t.c

与えられた知識分野別の章立てカリキュラムだけでなく
「思考法で分類された学習方法」を自分で実践すべきです。


2007年05月21日

桐朋中より。基礎知識は複合化できてこそ理解したといえます。 2007-05-21



桐朋中より。基礎知識は複合化できてこそ理解したといえます。


aグラムのアルミニウムを試験管に入れ、これにbグラムの塩酸を入れたところ、アルミニウムがすべてとけました。とけた後の水溶液の重さをはかったところ、cグラムでした。この水溶液を加熱して、水を蒸発させていくと、にごりはじめ、水が無くなるとdグラムの個体Eが得られました。


問1
以下の量の組み合わせで、右に記した重さが大きい場合は、「右」、左に記した重さが大きい場合は「左」、等しい場合は「同」と書きなさい。
(1)(aグラム+bグラム、cグラム)
(2)(cグラム、dグラム)
(3)(aグラム、dグラム)

問2
個体Eをdグラム取り、これがちょうどとけるまで水を加えました。ここで生じる水溶液の重さがfグラムとすると、fとcではどちらが大きいですか。次のア~エから1つ選び、記号で答えなさい。
ア. fの方が大きい
イ. cの方が大きい
ウ. fとcは等しい
エ. これだけでは判断できない

(桐朋中・抜粋)


受験生ならだれでも知っている反応です。現象を丸暗記せずに式のかたちで理解できていますか。


問1 (1)左 (2)左 (3)右
問2 イ


下の(化学)式が書けるかどうかですべては決まります。
書けない人は、どういった反応が起きているのかという理解をおこたり、教科書に書いてある結果のみを暗記し
理解したつもりになっている人です。

そして大事な基礎知識が反応の前後で質量の変化はありません。つまり上記反応の左辺と右辺の質量は等しくなります。
また、塩酸水溶液が、塩酸が水に溶けたものだという基礎知識がきちんと応用できるかどうかも確認すべき点ですね。

問1
(1)上式を参考にするまでもなく、逃げていった水素の分だけcが軽くなります。
(2)上式参照
(3)塩酸とアルミニウムの反応は、大雑把に言えば、「塩酸が2つに分解し、一つは水素として気体として空気中に出ていき、もう一方はアルミニウムと化合する」反応です。アルミニウム自体は複数に分かれてはいません。

問2
「にごりはじめる」という状態がどういう状態であるかに着目できるかどうかが鍵となります。
にごりはじめる→飽和水溶液となるということであり、これがつまりfの状態です。

cグラムから水をとりのぞいて、fグラム になるのですから c>fです。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
知識の複合化ができるまで理解を掘り下げる

この問題であつかっている内容は、我々が普段「塩酸」として扱うものが本来「塩酸水溶液」であることの理解であったり、
塩酸とアルミニウムの反応であったり、飽和水溶液の知識であったり、
それぞれは基礎中の基礎といった知識です。

が、これらがうまく複合され出題されると、その知識理解の甘さが露呈するものです。

「基礎問題はわかるのに応用になるとどうも」 といった声の大半はここにあるのですが、
こういった場合、基礎問題も本来分かっていないのです。本当に「理解」したというレベルまでいっていないのです。

この問題が教えてくれることの一つは、
「基礎として紹介される事象でも、それを応用するには想像を超える努力が必要であること」であり、
「簡単に『理解した』と納得しない癖をつける大切さ」です。

そして、保護者・指導者は、苦労をいとわず、そして決められたカリキュラムを消化することにとらわれることなく、
教科書レベルの事象の深堀の重要性を生徒に今一度説くべきです。
本当に生徒は、基礎レベルの知識を理解しているのか。疑ってかかることも時には必要です。


2007年04月30日

開成中より。問題文を読み解く力。グラフの二段階読解。 2007-04-30



開成中より。問題文を読み解く力。グラフの二段階読解。


あきら君は,ミツバチに興味を持ったので,ミツバチについてよりくわしく調べてみることにしました。ミツバチは,ミツを探しにいくときには胃の中はほとんどからの状態で巣から飛び出していきます。ミツバチが花のミツをすうと,胃にミツをため,それを巣に持ち帰って巣にたくわえていきます。屋外で飼われているミツバチについて,まず巣の中にミツを用意して,ミツをすわせたとき(これを「巣内」とします)の重さを調べました。次に,巣から出ていくとき(「出巣時」とします)の重さと,ミツを集めて巣にもどってきたとき(「帰巣時」とします)の重さを調べました。このときの重さの変化は,すべてすったミツによるものだと考えられます。それについて100匹ずつのミツバチの重さを調べ、どの重さのミツバチが何匹いるかを調べたものをグラフにまとめました。

問1 ミツバチの胃の中には、平均的に何mgのミツをためることができると考えられますか。もっとも適切な数値を、次のア~オの中から1つ選び、記号で答えなさい。

ア 30mg イ 40mg ウ 70mg エ 120mg オ 150mg

問2 ミツを見つけるのに成功したミツバチは、1匹あたり平均して、どのくらいのミツをすってもどってきたと考えられますか。もっとも適切な数値を、次のア~オの中から1つ選び、記号で答えなさい。

ア 30mg イ 40mg ウ 70mg エ 120mg オ 150mg

(開成中・抜粋)


帰巣時のグラフの山がきれいに二つに分かれていることに着目します。


問1 ウ(70mg) 
問2 イ(40mg)


問1
まず、たとえば、100mgのミツバチが二匹、80グラムのミツバチが1匹いたら、
平均の1匹の体重は、(100mg×2匹 + 70mg×1匹)÷3匹=90mg となる。
この平均の考え方を理解していることが出発点となります。

巣内の状態では満腹であり、出巣時には、胃の中のミツは空になっている(だから、巣から出てミツをとりにいく)と、考えると、
(ミツバチが胃に蓄えられるミツの量)=(ミツバチの巣内の体重)-(ミツバチの出巣時の体重) で求められる。
ミツバチの巣内の体重=(140mg×10匹 + 150mg×80匹 + 160mg×10匹)÷100匹=150mg
ミツバチの出巣時の体重=(70mg×20匹 + 80mg×60匹 + 90mg×20匹)÷100=80mg
となり、この差の70mgが解答となる。

問2
帰巣時の体重のグラフを見ると山がきれいに二つできていることに気がつきます。
このグラフのカタチをみて「ん?なぜだ?」と立ち止まれるかどうかがこの問題を解けるかどうかの分かれ道となります。
ここで頭に「?」が浮かべば、二つの山のうち左側は「ミツを取ってくることができなかったハチだ」と考えることができます。
なので、グラフ右側の山のミツバチだけを考えます。

(ここは厳密に考えるとまだ考察ポイントがあります。後述。)

(ミツバチが取ってこられるミツの量)=(ミツバチの帰巣時の体重)-(ミツバチの出巣時の体重)で求められる。
ミツバチの帰巣時の体重=(100mg×1匹+110mg×7匹+120mg×24匹+130mg×7匹+140mg×1匹)÷40匹=120mg
ミツバチの出巣時の体重=80mg ←問1より
となり、この差の40mgが解答となる。
-------------------------------------------------------------------

*上記の「山の左側はミツをとってこられなかったハチだ」と仮定し、解答を得ていますが、厳密にはそうでない場合もありえます。

たとえば、出巣時70mgが20匹おり、このうち、12匹がミツをとれずに帰ってきて、8匹が80mgになって帰ってきた。
出巣時80mgが60匹おり、このうち、28匹がミツをとれずに帰ってきて、12匹が90mgになり、1匹が100mgになり、7匹が110mgになり、12匹が120mgになって帰ってきた。
出巣時90mgが20匹おり、このうち、12匹が120mgとなり、7匹が130mgとなり、1匹が140mgとなって帰ってきた。
という場合を想定すると、与えられたグラフと同様のものが描けます。この場合、問2と同じ解答は導くことはできません。
つまり、左側の山が「ミツをとってこなかったハチ」ではない場合もあり得、その場合この問題は解答を得られません。
グラフをみて、きれいな二つの山から考察し、仮定を立てる力を試す問題であるという点で良問ではありますが、「そうはならない可能性」がある点に問題文でなにかしら触れるべきであるという思いはぬぐえません。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
グラフの裏側にあるメッセージを探る

解説でも触れたように、本問の鍵は、グラフの読み取りです。
たんなる読み取りではなく、グラフが語る事象を読み解く能力です。

グラフをみて、そのグラフが何を語るかは数段階あります。

たとえば、人口増減のグラフをみて、
「日本の人口は減っている」ということを読むことが第一段階。
「このままだと、労働力が不足するかもしれない」という仮説を含んだ思考を創るのが第2段階です。

グラフを正確によみとることはもちろん大事ですが、
その先にある事象を考えることが求められています。


2007年04月02日

開成中より。知っていれば簡単ですが、知らない時にどうすればいいのかを考えさせられる問題です。 2007-04-02



開成中より。知っていれば簡単ですが、知らない時にどうすればいいのかを考えさせられる問題です。


これまで人類は長い間、二酸化炭素を発生させてきただけでなく、それを減らす努力をしてきませんでした。それにもかかわらず空気中の二酸化炭素の体積の割合は意外に大きくなっていません。この理由は、日光を利用した植物の働きの他にも考えられます。それはどのような理由でしょうか、15字以内で君の考えを述べなさい。

(開成中)


二酸化炭素の特徴を思い出し、そこから結論を探します。


海や川にとけこむから。


こういった問題を知識として解くのではなく、思考結果として解くことができることが本当の学力だと思います。

出発点は、登場人物である「二酸化炭素」の特徴を洗い出すことからです。

空気よりわずかに重く、無色無臭であり、燃えることはなく、水に溶けやすい・・・。

この中で大気中の二酸化炭素の量に関係しそうなものは・・・・。ここでピンとくるわけですね。


~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
問題を分解し、既存の知識と比較していく姿勢が大切

数の問題は、問題の本質を見抜くことが難しい分野の1つです。

本問も一瞬とまどってしまう受験生も多かったのではないでしょうか。
灘中の1日目は50分で13問。瞬時に見当をつけ、分解して既知の問題に結びつけることが求められます。

時間が無い中で、ある程度の粘り強い変形作業が要求されるので、
同時に別の解法を検討したりや撤退のタイミングを考えるなど高度な処理能力が必要となります。


普通の受験生にとっては、問題をじっくり読み、類題をしっかりと検討するという姿勢を身につけるのに適した良問です。


2007年03月12日

ラ・サール中より。自然科学・理科の学習で特に必要な能力「式の意味を日本語で理解する」というスキル。 2007-03-12



ラ・サール中より。自然科学・理科の学習で特に必要な能力「式の意味を日本語で理解する」というスキル。


<1> ある地域で生活する動物の数をおおまかに予想する方法を考えてみましょう。ある地域に1000匹の動物が生活しています。このうちの100匹をつかまえて印を付け,逃がします。再びこの地域から100匹をつかまえ,10匹に印が付いていたとすると,式(X)をつくることができます。ただし,式(X)を利用して,動物の数を予想するには次のA~Dの条件を満たしていなければなりません。

 A 印を付けたものと,印を付けていないものが自由に動きまわり,十分混じり合うこと。
 B 調査する地域で,動物の数の変化や入れ代わりがないこと。
 C 付けた印が,とれないこと。
 D 印を付けたものと,印を付けていないものの,つかまりやすさに差がないこと。

<2> 畑で生活するモンシロチョウの数の調査についてまとめました。畑において,飛んでい るモンシロチョをつかまえたところ,150匹がオス,50匹がメスでした。これらすべてに印を付け,つかまえた場所で逃がしました。翌日,再び同じ場所で同じ時間に飛んでいるモンシロチョウをつかまえたところ, 160匹がオス,60匹がメスでした。その中には,前日に印を付けたものがオスに80匹,メスに6匹含まれていました。この調査において,オスとメスでつかまえた数に違いが生じたのは,メスは卵を産むために,オスほど飛びまわることができないからです。

(1)<1>の式(X)について,(つかまえた後,印を付けた動物の数)をP,(ある地域で生活する動物の数)をQ,(再びつかまえた中で印が付いている動物の数)をR,(再びつかまえた動物の数)をSとした場合,式(X)として成り立つものを選びなさい。

 ア.P:Q=S:R  イ.P:S=Q:R  ウ.P:S=R:Q  エ.P:Q=R:S

(2)<2>の畑で生活するモンシロチョウのオスとメスの数をそれぞれ予想しなさい。

(ラ・サール中)


A:B=C:Dというのは、Bの中にAがいる割合と、Dの中にCがいる割合が同じであると読むことができます。


(1)エ.P:Q=R:S

(2)オス:300匹 メス:500匹


(1)
問題文をじっと見ていても答えにたどり着くまでに時間がかかってしまいます。

問題文を自分の言葉で読み替えるのがコツです。(と、いってもそれが難しいのですが・・)

Q匹のうち、P匹に印をつけて、それをまたごちゃごちゃにまぜます。

つまり

Q匹のうち、P匹はいつでも印がついている というわけです。 (Q=100 P=10 ならば いつでも10匹に1匹は印)

つまり、どういった数をとりだしても、その中には、〈Q匹中 P匹〉という割合で印のついた個体がいます。

これを式にあらわすと、P:Q=R:S になります。

【別解】
また、より統計学的に考えると、

どの集団にも P/Q の割合で 印のついた個体が存在するので、

R=S×(P/Q) ⇒ P:Q=R:S

(なんにせよ、この種の問題を解くには、しっかり問題文を読み込める読解力が最低限必要となります。)

(2)
(1)で導いた比例の式に条件となる数字を当てはめます。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
具体的な数字を一般化する力を培う

この種の問題は問題集をいくらやってもなかなか出会うことはありません。
多くの受験生にとって、初めて出会う問題になったのではないでしょうか。

しかし、ここで「難しい。よく分からない」と投げ出す生徒と、
「とにかくもう一度よく読んで考えてみよう。」という生徒の差がまさに合否の差になったのでしょうか。

そういった意味で、初見の問題に対する粘り強さ、基本的な数式の意味の根本理解、
数に対するセンス、思考力を瞬時にチェックする良問といえますね。

とりわけこの問題でチェックできるのが、「数字を一般化する能力」です。
具体的な数字や事象を読み解き、それを文字式にしたり、図式化する。言ってしまえば簡単ですが、
受験から社会生活まで大きな差を生む大事な能力です。


具体的な数字を処理するというのは与えられた公式・定理・フレームに物事を当てはめることです。
しかし、本問出題校が求めるものは、物事をあてはめる応用力以上に、フレームを生み出す創造力です。
社会の枠にはまる人間でなく、枠を創りだす人間になってほしいという卒業生に求める資質がこの問題からも汲み取れます。


2007年02月12日

桜蔭中より。教室・実験室での学習を地球規模の視点に応用する目を養います。 2007-02-12



桜蔭中より。教室・実験室での学習を地球規模の視点に応用する目を養います。


問 お風呂の中では両手の親指だけでも体を支えることができます。水などの液体の中に物体を入れると,液体が物体を浮かせる力(浮力)が働くためです。この浮力の大きさは物体がおしのけた量の液体の重さに等しいことがわかっています。水1立法cmの重さを1.0gとして次の問いに答えなさい。


北極の氷山(すべて氷でできています)の海面下の体積は,海面上に出ている体積よりずっと大きいことが知られています。この氷山の海面上の体積は全体の何%ですか。この氷山の氷1立法cmの重さを0.96g,海水1立法cmの重さを1.2gとして計算しなさい。

(桜蔭中 抜粋 改題)


北極の氷も、ビーカーの中の木片も浮力をうけて浮いていることに変わりはありません。


氷山全体の体積を100立方cmとする。すると、氷山の重さは96g。

この重さと、浮力がつりあっているのだから、かかっている浮力は96g。

だから、氷山が押しのけた液体の重さが96g。

氷山が押しのけた体積 × 1.2 = 96 となるため、

氷山が押しのけた体積 = 8 (立法cm) =「氷山の水面下の体積」

氷山全体を100立方cmとしたのだから、8%

答え  8.0%


「液体に浮いている物体にかかる浮力ってどうやってもとめるの?」と聞くと、

「体積!」と答えるとんでもない生徒がいますが、正しくは、まさに問題文にある、

「浮力の大きさは物体がおしのけた量の液体の重さに等しい」

です。

浮力の問題で、単位を考えずに機械的に「重さと、沈んでいる体積がつりあっている」と考えている生徒は

要注意です。


~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
与えられた定理を正しく理解する。

本問はもともとは、海水1立法cmを1gと考えてよい問題でしたが、今回、
浮力の意味を再確認できるように 海水の密度をいじってみました。

定理や公式は、正しく理解できて初めて武器や道具となるのです。
中途半端な理解は、そこを突かれることで大きなハンディキャップとなります。

また、学校や塾、問題集で慣れ親しんだ原理原則でも、ひとたび自然現象や、
地球規模の事象のかたちで問われると硬直してしまう生徒が多いものです。

これは、反復練習に過度に偏り、定理の理解を怠ることが原因です。

足腰を鍛えていない、トップアスリートはいませんよね。
骨太の土台を築くことを忘れないでほしい、という出題校からのメッセージを汲み取ってください。


2006年12月11日

もう一歩先に踏み込む執着心が求められます。 2006-12-11



もう一歩先に踏み込む執着心が求められます。


 海では赤茶色、湖や沼では青緑色の模様が水面に見られること があります。これは,水にすむ小さな生物が異常に増えたもので,それぞれ赤潮,アオコと呼ばれています。

(1) 下のグラフからわかる,赤潮が発生する原因を書きなさい。
(2) (1)で答えたことのほかに,どのようなことが赤潮やアオコの発生に影響をあたえていますか。君の考えを書きなさい。

(武蔵中)


グラフの読み方は、(A)全体の傾向をつかむ (B)特異点(目立つところ)に着目するの2ステップが基本です。


(1) 水面にとどく太陽の光が、プランクトンが光合成を行い、また活動に適した水温にするために十分な量となること。
(2)プランクトンの栄養分となる、工場からの廃水や、家庭からの生活排水が海に流れ込むこと。


(1) で、「十分な温度となること」と解答しただけでは、満点は得られないはずです。

正解者の思考プロセスとしては、

グラフをみて、冬より、夏に赤潮が頻繁に発生することに気付く

「ってことは、温度か?」と仮説をたてる(ここまでで解答用紙に走ってしまうとダメです)

「でもまてよ。なぜ、6月と8月はは発生回数がすくないのだろう・・・」とクリティカルシンキングを持つ

(なんだろうか。と、いくつもの仮説と検証をスピーディーに行う。
ここのステップでの試行回数の多さが、「頭のよさ」につながることが多いです)

東京での6月、8月の様子を思い浮かべ、
「梅雨と台風により、曇りや雨の日多い!」ということに気付く

「つまり、赤潮の発生回数を増やしているのは、温度よりも日光照射量だ」と気付く

ロジムの教室でもよくやりますがグラフを読み、分析するコツは、
・全体をつかむ
・特異点に着目する 
です。この2点について言及すれば大抵はずすことはありません。

今回、「夏のほうが発生回数が多い」という全体傾向を掴むだけでなく、6月と8月という特異点に着目し、日光のことに言及しなくてはいけません。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
「もう一歩踏み込めるのではないか」と絶えず疑うハングリー精神

計算や語句の能力は正直どの学年でも努力でいくらでもカバーできます。

しかし、上記の「ちょっとまてよ」と疑う能力・習慣というのは、
小学校3年生前後までに身についていないと、受験を前にして一朝一夕でつくものではありません。
(上の問題でいえば、「温度」という仮説のあとに、「あれ、6月と8月は・・」と立ち止まる能力です)

ほとんどの受験生が一度は「自分はケアレスミスが多い」と思ったことがあるのではないでしょうか。
「ケアレスミス」というのは便利な言葉で、まるで不正解の免罪符のごとくに使っていませんか?

皆さんが言うケアレスミスの多くは、「注意が足りない」のではなく本当は「勉強が足りない」のです。
もっといえば、普段の勉強の中で、「もう一歩踏み込もう」、「ちょっとまてよ、、、これって。。。」
という姿勢が足りないのです。

「自分がかんたんに出せるような解答は、
だれでもできるものであって、貴重なものではないのだ」
と自覚できている小学生はあまりに少数です。
だからこそ、それを自覚し、絶えず「いやちょっとまてよ」と
考える習慣を付けるだけで、集団から一歩抜け出せるのです。

「自覚」から始めてみてはどうでしょうか。



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