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理科 アーカイブ

2008年11月03日

前回に続き、新傾向問題は「誘導にのれるか」が勝負の鍵です。 2008-11-03



前回に続き、新傾向問題は「誘導にのれるか」が勝負の鍵です。

生物が子孫を残すとき、多くの場合で子は親と似ていることに気がついた太郎君は、図書館でいろいろと調べてみました。
すると、親の持っている特徴は子に伝わっていき、それを遺伝とよぶことを知りました。

また、この遺伝について最初に詳しい研究をしたのは、オーストリアの司祭であったメンデルです。
メンデルは、エンドウという植物を観察していたところ、図1のような2種類の形の種子があることに気づきました。
そして、その形のちがいを利用して、次のような4つの実験を行いました。これについて、あとの問いに答えなさい。

<実験1> 丸い種子をまいて受粉をくり返すと、何度受粉をしても丸い種子しかできなかった。
<実験2> しわの種子をまいて受粉をくり返すと、何度受粉をしてもしわの種子しかできなかった。
<実験3> 実験1、2でできた丸い種子としわの種子をまいて、人工的に一方の花粉をもう一方のめしべに付けると、その子は丸い種子しかできなかった。
<実験4> 実験3のあと、子の種子をまいて受粉させて孫を作ったところ、丸い種子としわの種子ができた。

種子を丸くする遺伝子をX、種子をしわにする遺伝子をYとすると、実験1で作った種子のもつ遺伝子はXXとなり、実験2で作った種子のもつ遺伝子はYYとなるはずです。実験3で、丸い種子の親から子へ伝わる遺伝子はX、しわの種子の親から伝わる遺伝子はYとなるので、表1のように子のもつ遺伝子はすべてXYとなることがわかります。

ここで、種子を丸くする遺伝子Xの方が、種子をしわにする遺伝子Yよりも強くあらわれる性質をもっているので、子はすべて丸い種子であることが説明できるのです。
そして、この性質を優性とよびます。実験4では、XYの遺伝子をもつ子が親になって孫をつくるので、表2のように孫のもつ遺伝子は4通り考えられます。ただし、表の中には実際の孫の遺伝子の組み合わせは書かれていません。


問1 
実験4でつくった孫の種子について、丸い種子としわの種子の割合は何:何ですか。

問2 
実験4でつくった孫の種子をすべてまき、自然に受粉をさせると、丸い種子としわの種子の割合は何:何になりますか。
ただし、エンドウは自然界では自家受粉を行います。

問3 
オシロイバナは、不完全優性という性質をもつ植物です。
例えば、オシロイバナの赤い花と白い花で子を作ると、子はピンク色の花をさかせます。
これは、赤い花になる優性の遺伝子Pが不完全であるために、白い花になる遺伝子QとでできたPQが、赤ではなく中間のピンク色になってしまうのです。ピンク色の花と白い花で子を作ると、赤色の花は何%の割合であらわれますか。  

 























  ただ「決まり」に従うだけです。



問1 3:1
問2 5:3
問3 0%



問1 それぞれの遺伝子を組み合わせると、下の図 のようになります(赤=丸い種子)。


問2 自家受粉をするエンドウは、人工的に手を加 えない限りその花の中で受粉が行われるので、同じ 組み合わせの遺伝子で遺伝が繰り返されていきます。 よって、問1の4つの組み合わせに対して、下の図 のような組み合わせが考えられます。

問3 ピンク色の花がもつ遺伝子の組み合わせはPQ、 白色の花がもつ遺伝子の組み合わせはQQなので、右 の図のような遺伝になります。ここで、赤色の花がも つ遺伝子はPPしかないので、この場合赤色の花がさ くことはないことがわかります。


 
 


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2008年10月27日

新傾向問題は「誘導にのれるか」が勝負の鍵です。 2008-10-27



新傾向問題は「誘導にのれるか」が勝負の鍵です。

 すべての物質は、原子と呼ばれる非常に小さな粒でできています。私たちの身のまわりにある空気の中にも様々な気体が存在していますが、それらの気体もすべて、原子がもととなってできているのです。そして、原子どうしが互いに結びつくことで分子と呼ばれるかたまりを作っています。

 ここで、すべての原子からはそれぞれ決まった数の棒が出ており、この棒どうしが結びつくことで分子ができているものと考えてみます。つまり、人が手を伸ばして握手するのと同じように、原子どうしが結びついてるのです。このことから、原子から出ている棒を「結合の手」と呼ぶことにします。

 例えば、水素、酸素、窒素などの気体は、それぞれ図1のような水素原子、酸素原子、窒素原子が2つずつ結びついてできており、それらの結びつき方を表したのが図2です。ただし窒素分子はここでは表わされていません。また、以下の問いでは考えやすくするために、下記のような決まりを作ります。

<決まり>
・すべての原子の結合の手は、2本以上が同じところから出ることはない。
・それぞれの結合の手が結びつくときは、必ずまっすぐに結びつく。
・それぞれの結合の手は、まっすぐに結びつくために90°だけ回転することができる。
・原子が分子をつくるとき、すべての結合の手が結びつき、結合の手があまることはない。

 また、異なった原子が結びついて、別の物質を作ることもあります。
例えば、水は水素原子2つと酸素原子1つが図3のように結びついてできています。また、図4は炭素原子をあらわしていますが、結合の手は表されていません。

問1 アンモニアは、窒素原子1つと水素原子3つが結びついてできています。このとき、アンモニア分子はどのように表されますか。

問2 メタンは、炭素原子1つと水素原子4つが結びついてできています。このことから、炭素原子には結合の手が何本あると考えられますか。

問3 二酸化炭素が水にとけると、炭酸水という水溶液になります。つまり、二酸化炭素分子と水分子が結びつくことで炭酸水となるのです。そして、炭酸水分子は図5のように原子が配置されていることがわかっています。このとき、結合の手はどのようになっていますか。

 























 ただ「決まり」に従うだけです。



問1
 

問2 4本

問3
  



問1 水素原子は、結合の手が1本しかないため、2つ以上の原子と結びつくことができません。つまり、水素原子どうしが結びつくことは考えられない(それで水素分子になってしまう)ので、水素原子はすべて窒素原子と結びつかなければなりません。

問2 問1と同様に、水素原子はすべて炭素原子と結びつくと考えられます。水素原子が4つ結びつくためには、炭素原子には4本の結合の手が必要です。

問3 まず、下の図のようにそれぞれの原子にA~Fの記号をつけて説明することにします。


1)Fの水素原子は、結合の手が1本であるためにEと結合しなければなりません。よって、ここでEの結合の手が1本使われます。
【Fの結合終了】

2)Eの残ったもう1本の結合の手は、BかDと結合することになりますが、仮にDと結合した場合、D、E、Fの結合の手がすべて使われてしまい、A~Cの原子と結びつくことができなくなってまいます。よって、Eの残りの結合の手は、Bと結びつくしかありません。
【Eの結合終了】

3)Dの水素原子は、Eと結合できないので、Aと結合するしかありません。
【Dの結合終了】

4)Aの残ったもう1本の結合の手は、Bと結合するしかありません。
【Aの結合終了】

5)残ったBとCは、それぞれ2本ずつ結合の手があまっているので、ここで2本ずつ結びつくことがわかります。
【すべての結合終了】


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2008年10月06日

「実験」は、遊びではなく「確かめるための道具」です。2008-10-06



「実験」は、遊びではなく「確かめるための道具」です。

空気中の水蒸気の量とその変化について次の実験をしました。

<実 験>
手順1 
図1のような5リットル の大きさのペットボトルの内部を十分に乾燥させる。
手順2 
スポイトを使って、ペットボトルの中に水てきを2つぶ落とし、温度計のついたゴムせんでふたをしたあと、そのゴムせんのまわりをテープで巻く。
手順3 
そのペットボトルを、図2のように温風器であたため、内部の水をすべて蒸発させる。
手順4 
次に、ペットボトルを冷やし、ペットボトルの内部がくもりはじめたときの温度を記録する。
手順5 
スポイトから落とす水てきのつぶの数を3つぶ、4つぶ、5つぶ、6つぶと変え、それぞれについて手順1~4をくり返す。
 
設問 下線部のように、ペットボトルを冷やす方法として最も適切なものを、次のア~オから選び、記号で答えなさい。

   ア.ペットボトルをそのままにして冷やす。
   イ.ペットボトルに水をかけて冷やす。
   ウ.ペットボトルを半分くらい水につけて冷やす。
   エ.ペットボトルをすべて氷水につけて冷やす。
   オ.ペットボトルを半分くらい氷水につけて冷やす。






















ただ冷やすだけならば・・・?




この実験は、空気中の水蒸気量とその変化についての実験です。

その中で「ペットボトルを冷やす」という操作が必要になっているわけですが、
その手順4の目的は「ペットボトルの内部がくもりはじめたときの温度を調べる」ことです。

ペットボトル内の空気に含まれる水蒸気が水滴に変化することでくもりが発生するわけですから、
下線部のように冷やす必要があることがわかります。

ここで、変化の瞬間を記録するのに好都合な条件を考えれば、急激に冷やすことは避けなければなりません。
ゆっくり冷やすべきであることと、手順3で温風器によって水滴を蒸発させていることから考えれば、
室温(常温)で冷やすことが最も適切であることがわかるのです。
 

さて、この問題を「実験の意図」に目を向けず、ただ下線部だけに注目してしまっていたらどうでしょう。
おそらく、その多くの子供たちはイやエを選ぶのではないでしょうか。

ヒントのように、ただ冷やすだけならばできるだけ冷たいものに触れさせることが最善の方法と考えられるからです。
現に、大手進学塾の選抜試験では、大半がエを選択しているようです。


 同じ1つの操作であっても、目的によって適切な方法は変わるのです。

実験から遠ざかり、テキストばかりで学習することから生まれた理科嫌いな生徒は、
何か大切なこと(本来学び取るべきもの)を忘れている気がします。


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2008年09月15日

条件整理力という全ての科目に通じる基礎能力を手に入れてください。2008-09-15



条件整理力という全ての科目に通じる基礎能力を手に入れてください。


①~⑦の水溶液は、下の7つの水溶液のどれかです。下の実験をもとに、それぞれの水溶液が何であるか答えなさい。ただし、A~Eと結果1~5の順番は対応しているとは限りません。

水酸化ナトリウム水溶液
過酸化水素水
炭酸水
ホウ酸水溶液
アンモニア水
うすい塩酸
石灰水

A 水溶液にアルミはくを入れたところ、とけたものを○と表す。
B 水溶液に赤色リトマス紙をつけたところ、色が変わったものを○と表す。
C 水溶液を蒸発皿にとり、アルコールランプで加熱したところ、においがしたものを○と表す。
D 水溶液に青色リトマス紙をつけたところ、色が変わったものを○と表す。
E 水溶液を蒸発皿にとり、アルコールランプで加熱したところ、固体が残ったものを○と表す。

問  ①~⑦の水溶液はそれぞれ何ですか。


ノーヒントです。


①石灰水 ②ホウ酸水 ③アンモニア水 ④炭酸水 ⑤うすい塩酸 ⑥過酸化水素水 ⑦水酸化ナトリウム水溶液



下の表を見てみると、水溶液によって反応を示す実験の個数が異なることがわかります。

これにより、どの実験にも反応しない⑥が過酸化水素水、
1つだけ反応する④が炭酸水とわかります。

すると実験Dが実験結果4と判明するので、同じく実験Dに反応する残りの水溶液に注目すると、ホウ酸水と塩酸です。

この2つも反応する実験の個数が異なるので、②がホウ酸水(○が2個)で⑤が塩酸(○が3個)とわかります。続いて、ホウ酸水がもう1つ反応を示したのが実験Eですから、これが実験結果2となります。このようにして、残りも特定することが可能です。


この問題は、実験結果1~5が、実験A~Eのうちどの結果なのかが不明であるところが難しく感じる原因です。

そこで、とりあえず7つの水溶液に対してA~Eの実験を行ってみて、表に整理してみると、
反応を示す実験の個数に差異があることに気づけるのです。

水溶液の分析実験の中に、理科的性質を絡めた条件整理の要素を含んだ良問です。

ぜひ、誰かに解説できるくらい自分の頭の中で整理してほしい問題といえます。


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2008年09月08日

複数の段階を踏んだ計算問題は、中学入試理科の主流となりつつあります。2008-09-08



複数の段階を踏んだ計算問題は、中学入試理科の主流となりつつあります。


植物の光合成と呼吸について調べるために、同じ大きさのメダカ2匹と、葉の面積がほぼ等しいオオカナダモ3つを用意し、同量の水を入れた容器A~Eに次のように入れました。

容器A:水のみを入れた。
容器B:水にオオカナダモを入れた。
容器C:水にオオカナダモを入れ、アルミはくで包んだ。
容器D:水にメダカを入れた。
容器E:水にオオカナダモとメダカを入れた。

<実験> 数日間くみ置きした水道水を使ってA、B、C、Eをつくり、ふたをして十分な光を1時間当てた あと、それぞれの容器の酸素量を測定した結果、下の表のようになった。

(1) オオカナダモがこの1時間でつくった酸素量は、何mgですか。
(2) メダカの呼吸によって、この1時間で使われた酸素量は、何mgですか。


それぞれの容器内で何が起こっているのでしょうか。


(1) 5.3mg
(2) 2.6mg



植物のはたらきのうち、重要な3つは光合成、呼吸、蒸散です。植物は光が当たると光合成を行い、自ら養分(デンプン)を作り出すことができます。そして、このときに二酸化炭素を取り入れて酸素に変えて出しています。また、作った養分からエネルギーを取り出す呼吸を行うと、光合成とは逆に酸素を取り入れて二酸化炭素に変えて出します。そして、この呼吸は光を必要とはしないので、一日中絶えず行っているのです。さらに、メダカは呼吸によって酸素を取り入れて二酸化炭素を出しています。


・Bでは、オオカナダモが光合成と呼吸を行いますが、十分な光があたっていると考えられるので光合成の方がさかんです。よって、二酸化炭素が減ることになります。

・Cでは、光があたらないためにオオカナダモは光合成を行うことができません。よって、呼吸のみを行う ので二酸化炭素が増えていきます。

・ Dでは、メダカが呼吸のみを行います。つまり、Cと同じ状態になります。

・Eでは、オオカナダモが光合成と呼吸を行うと同時に、メダカが呼吸を行います。ここで、光合成は酸素量が増えるはたらき、呼吸は酸素量が減るはたらきですから、表にまとめると、

Cの結果から、オオカナダモの呼吸によって1時間あたり0.8mgの酸素が減っていることがわかります。
よって、Bに注目をすればオオカナダモの呼吸によって0.8mg減っているにもかかわらず、結果4.5mg増えているので、光合成によって5.3mg増えることがわかります。同様に、Eに注目すればメダカの呼吸によって減った酸素量が求められます。


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2008年08月18日

状態変化と体積・重さの関係は簡単なようで複雑です。 2008-08-18



状態変化と体積・重さの関係は簡単なようで複雑です。


下の図1は、ビーカーにある量の水を入れた状態を表しています。そこに、ある大きさの氷を入れた状態を表したのが図2です。さらに、その氷が完全にとけた状態を表したのが図3です。ただし、それぞれの図で水面の高さは正しく表されているとは限りません。これについて、次の問いに答えなさい。

問1 図1と図2で、どちらの水面が高いですか。次のア~エから選び、記号で答えなさい。

  ア.図1の方が高い。
  イ.図2の方が高い。
  ウ.図1も図2も変わらない。
  エ.これだけではわからない。

問2 図2と図3で、どちらの水面が高いですか。次のア~エから選び、記号で答えなさい。

  ア.図2の方が高い。
  イ.図3の方が高い。
  ウ.図2も図3も変わらない。
  エ.これだけではわからない。


水と氷の体積を比べると…、危険です。


問1 イ
問2 ウ



問1 
水中に入った氷の分だけ水がおしのけられます。これにより、見かけ上水の体積が増えますから、水面は高くなります。


問2 
状態変化(固体⇔液体⇔気体の変化)に伴い、体積は変化しても重さは変化しません。
氷が浮くのは「氷の重さと等しい浮力がはたらく」からに他なりません。

ここで、浮力はおしのけられた液体の体積と同じ重さの分だけはたらくので、浮いた氷の重さと同じ重さをもつ分だけの水がおしのけられていることになります。

つまり、この氷が水に変わっても、おしのけられる水の体積は変わらないのです。

よって、図2から図3で水面の高さが変化することはありません。

まとめ
 固体よりも液体の方が体積が大きいという基本知識に対し、例外として「水よりも氷の方が体積が大きい」ということはあまりにも有名です。しかし、単に体積の変化ばかりに目を向けては、本来変わるはずのない重さを絡めた問題で大きな誤りを導いてしまいます。

本問では、以下の誤答が目立ちます。

◇図2の氷よりも図3で水に変化した方が体積は減るのだから…ア

◇氷がとけて水になれば、水の量が増えるから…イ

浮力の考え方を用いれば簡単に理解できることですが、そうでなければ上記のような誤答を招くか、大きく悩む問題ではないでしょうか。ぜひ、じっくり考えて理解してください。

また、このことからさらに図2で水面上に飛び出している氷の体積が、ある重さの水が凍ったときに増えた体積の分であることがわかります。これも、ぜひ考えてみましょう。



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2008年07月28日

あたなは、図を疑う勇気がありますか。 2008-07-28




あたなは、図を疑う勇気がありますか。

 下の図のように、長さ100㎝の糸を図のような天井からつるし、100gのおもりをつけたふり子があります。はじめ、おもりをA点から静かにはなしたところ、おもりはA点とB点のあいだを往復しました。図のC点はおもりの一番低いところです。C点と天井の角であるD点の間の長さは50㎝です。このとき、図のACとBCの長さについて、正しいものを次のア~エから選び、記号で答えなさい。
 ア.ACはBCよりも長い。
イ.ACはBCよりも短い。
ウ.ACとBCの長さは同じである。
エ.特にきまりはないので、これだけではわからない。



ふり子の運動(軌道)は、あくまでも円の周回運動(の一部)です。




 ACの運動の中心は糸のつけ根です。また、BCの運動の中心はDです。
よって、右の図のように軌道を描いてみると、答えは明らかです。問題の図
ではAC=BCに見えますが、実際はちがうのです。ひっかけです。

まとめ
 入試問題には、図が多く登場します。そして、これらの図は、必ずしも正確に描かれているとは限りません。

「ん?」と思ったときほど、図の見た目で解答の見当をつけてしまいがちですが(こういう場合に限って、誤答であることが多い)、このような場合にこそ注意が必要です。

これは理科に限ったことではありません。たとえば算数の求角問題で、勝手に直角と思い込んでしまったり、勝手に二等辺三角形と決め付けてしまったり…ということも同じです。与えられていない条件には必ず根拠があるはずですから、その場合は必ずチェックする必要があるのです。

 本問の場合、条件としてAC=BCと与えられていれば悩むことはないのですが、そうではない以上、きちんと吟味しなければなりません。そのためには、背景に隠れた本質を理解しておくことが、やはり重要ですね。


2008年07月14日

納得するには、それなりの知識が必要になります。 2008-07-14



納得するには、それなりの知識が必要になります。


 下の図のように、温度計を入れた3本の試験管A、B、Cに、それぞれ水、氷、砂を20gずつ入れ、水は0℃に、氷と砂は-10℃に冷やしました。そして、同じように加熱しながら時間と温度の変化を調べた結果、下の表のようになりました。表の中の空らんX~Zにあてはまる数値を、それぞれ答えなさい。


ヒントではありませんが、実はXの正答率が非常に低いです。

X…100
Y…0
Z…23



まずは、状態変化について説明します。

物質には、固体、液体、気体と3つの姿があり、これは温度によって変化していきます。
つまり、外から与えた熱エネルギーによって温度が上がっていき、姿を変化させられる温度になったところで変化しはじめるのです。

このとき、受け取ったすべての熱エネルギーを変化のために使うので、その間温度は一定になります。
つまり、受け取った熱エネルギーの使い道は、
(1)温度上昇、
(2)状態変化しかないということです(厳密には、発熱・吸熱が関係しています)。

いま、試験管A(水)に注目してみましょう。

最初0℃だったものが、規則的に変化していることがわかります。
水は、0℃で氷→水に変化し、100℃で水→水蒸気に変化します。
つまり、0℃から100℃の間では状態変化が起こらないため、受け取った熱エネルギーをすべて温度上昇に使っていることになります。

2分間で12℃ずつ上昇していることから、18分後は96+12=108としたいところですが、
100℃を越えてからは水→水蒸気の状態変化が起こることで、温度上昇は起こらなくなります。

すなわち、Xは、100℃となります。


続いて、試験管B(氷)に注目すると、

2分後から12分後まで0℃で一定であることがわかります。
これはまさに、氷→水の状態変化が起こっている証です。

ここで、16分後を見てみると、温度が11℃まで上昇しています。
つまり、すでに状態変化が終わり、温度上昇の段階に入ったということです。
水になってからは、試験管Aと同じ変化が起こるはずですから、2分間で12℃変化しなければなりません。

よって、Yは11-12=-1℃と考えられます。

しかし、12分後で0℃だった状態から下がることはあり得ないので、Yは0℃ということになります。


このグラフを見て分かるとおり、14分の段階ではまだ氷があり、
14分を過ぎてすべて水に変化し終えたあとで再び温度上昇がはじまったと考えられます。
すべて水に変化したあとであれば、試験管Aと全く同じ状態になるので、
2分間で12℃変化していきます。

よって、Zでは11+12=23℃を示すことになります。

まとめ

 まず、X…108、Y…-1、Z…22と誤答していませんか?

「水の状態変化」であることをあまり考慮せず、ただ表から「予想」した結果ではないでしょうか。

理科の実験では、データからの予想と、予め持っている知識を合わせなければ正答を導き出せない問題が多数あります。
(その力が重要視されている証拠です)

実験から得られた情報をもとに仮説を立て、それを論理的に証明する手順と同じですね。

 さて、その意味で最も大きな意味を持つのはXです。

表だけみれば明らかに108ですが、解説のとおりそうなるはずがありません。
しかし、小学校2年生くらいにこの表を見せ、Xに入るのは?と問えばおそらく全員が108と答えるでしょう。

そのようなはずがないと言われて「あっ!そうか」と思えるのは、水の状態変化についての知識を持っている者だけでしょう。
やはり、予備知識や周辺知識を持っている者とそうでない者とでは大きな差が開くようです。

ちなみに、大手進学塾のある選抜試験では、X、Y、Zどれも受験者の半分以上が上記のとおり誤答を導いていたようです。



2008年06月30日

「当たり前」のことが、大きなヒントになることもあります。 2008-06-30



「当たり前」のことが、大きなヒントになることもあります。


 廊下や階段に、2ヶ所にあるスイッチで、点灯させたり消灯させたりできるライトがあります。下の図はそのしくみを再現した回路図を途中まで書いたものです。以下の約束にしたがって、回路図に導線を書き加えて完成させなさい。
 


ヒントがあったら面白くありません。




 落ち着いて考えてみましょう。2つのスイッチそれぞれでON、OFFができるわけですから、経路は2つなければなりません。1つの経路でスイッチが2つある場合、片方で回路を遮断してしまえば、他方でどのようにしても回路をつなげることはできるわけがありません。

よって、まず1本の道を作ります(上の図A-B)。
そして、切り替え用に別にもう1本の道を作ります(上の図のC-D)。
これにより、一方で回路を遮断してももう一方で回路をつなげることができるのです。


まとめ
 平成15年度入試で、渋谷教育学園幕張中で出題されて話題になった問題です。さらに、平成19年度入試において桐朋中と鴎友学園女子中で同時に出題されたことで一気に認知度が広がりました。時間をかけて考えれば気付くことですが、試験時間内で初見問題として処理するにはパニックに陥る対策甲斐のある問題です。

 この問題でのポイントは、「そもそも」の前提条件を考えることが必要です。解説にもあるとおり、スイッ
チ2つでON、OFFができるわけですから、経路は2つなければなりません。

たとえば算数でも、未知の1つの値を求めるためには、1つの式があれば十分ですが、未知の2つの値を求めるためには2つの式が必要です(消去算・代入算)。

このように、「そもそも」の前提条件に意識が向けられることは、問題を処理する大きな武器になることも少なくないのです。

この問題は理科の問題ですが、電流を題材にした「前提条件を意識して処理させる」という出題者の大きな意図が隠された良問といえるでしょう。


2008年06月23日

初見の問題は、難しいと思い込んでいませんか?2008-06-23

タイトル 2008-06-23



初見の問題は、難しいと思い込んでいませんか?


地層がいつごろできたものかは、地層の中に含まれている物質が長時間かかって別の物質に変化する性質を利用して求めることができます。そのような物質の中にウランとよばれる物質があり、ウランは7億年たつと、もとの重さの半分が鉛という物質に変化します。すなわち、
 100gのウランは7億年たつと50gが鉛に、さらに7億年たつと残り50gのウランのうち25gが鉛に変化することになります。

問題 
とある地層を調べると、ウランの重さが1.0g、ウランから変化したと考えられる鉛の重さが7.0gでした。この地層ができたのは、今からおよ そ何億年前ですか。答えが割り切れないときは、小数第一位を四捨五入して整数で答えなさい。



問題文から、ウランは7億年ごとに半分が鉛に変化していることがわかります。


21億年前



問題文から、ウランは7億年ごとに半分が鉛に変化していることがわかります。

例えば、最初のウランを1とすると、
[第1段階]7億年後にはウランが1/2になり、鉛が1/2できています。→ウラン:鉛=1:1   [第2段階]さらに7億年後には、1/2のウランが半分になるので1/2×1/2=1/4になり、そのときにできた1/4の鉛をあわせて鉛は全部で1/2+1/4=3/4できています。→ ウラン:鉛=1:3 

[第3段階]さらに7億年後には、1/4のウランが半分になるので1/4×1/2=1/8になり、そのときにできた1/8の鉛をあわせて鉛は全部で3/4+1/8=7/8できています。→ ウラン:鉛=1:7 

ここで、問題ではウラン1.0g、鉛が7.0gになっているので、上記から第3段階まで進んでいることがわかります。よって、答えは21億年前となります。

この問題では、7億年ごとにウランの半分が鉛に変わっていくわけですが、結果的にウランと鉛の合計量は変化しません。つまり、上記のように最初にウランが1あったとすれば、第2段階以降における鉛の量は、(1-ウランの量)で求めることができます。また、このことを利用すると次のような別解で比較的簡単に求められます。

[別解1]
さかのぼって考えると、鉛は1段階もどるごとに倍になっていくことがわかります。よって、結果の1段階前は鉛が1×2=2gあったことになるので、ウランに変化したのは2-1=1gとわかります。よって、ウランはこのとき7-1=6gあったことになります。このようにして、1段階ずつさかのぼってみると、

[別解2]
鉛とウランの合計量は一定であることに気づければ、この問題でははじめ鉛が1+7=8gあったことがわかります。1段階さかのぼるごとに鉛の量は2倍になっていきますから、1g→2g→4g→8gと3段階さかのぼればよいのです。よって、7億年×3=21億年前となります。

まとめ

 理科の問題の中にも、算数的処理をすることで楽になるものは決して少なくありません。

この問題が別解2 で処理できるならば、どれだけ入試で有利であるかは容易に想像できるでしょう。
しかし、それ以外の解法は 普段避けるべきなのでしょうか。

 いいえ、それはちがいます。

 たとえばこの問題のように、多くの生徒が初見と感じる問題に「最適な解法」がその場で即座に浮かぶはず がありません。そもそも、自分が最適と思った解法であっても、それを越える適当な解法が出てくることもそ う珍しいことではありません。

 要は、「知らない、わからない」という段階から、「調べる、確かめる」という段階を経て、正答を導き出す中で、何か規則を見出すことが非常に重要なことといえます。

これは時に、特別な解法を知っていて即答できることよりも絶大な力を発揮することが多いものです。

 近年、子供たちは間違えることを恐れて一発で(妙に美しく)正答を得ようとしなければならないと思い込んでいる姿が多く感じられます。そうではない、いかに多くの考え方を知るか、気付くか、ということが大切なのではないでしょうか。

 これこそ、受験(合格)が目的なのではなく、「成長」が目的である学習の軸であるといえるでしょう。


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2014年07月

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