メイン

数の性質 アーカイブ

2007年07月16日

麻布中より。問題文の条件の本質をしっかりと読み取りましょう。 2007-07-16



麻布中より。問題文の条件の本質をしっかりと読み取りましょう。


父母とこども3人の家族があります。父は母より5歳年上で、こどもは2歳ずつ年がはなれています。父母がともに20歳以上のとき、最初のこどもが生まれました。父母の年齢の和と子供の年齢の和が等しくなるときの、父母の年齢と子供の年齢の例を1つ書きなさい。ただし、父母はともに80歳以下の例で答えなさい。

(麻布中))


こどもの年齢の和にはある条件が隠れています。


それぞれの年齢の和の条件について整理する。

父母の年齢の和は、
「父の年齢」+「母の年齢」=「母の年齢+5」+「母の年齢」=「母の年齢」×2+5
なので奇数である。

さらに父は80歳以下なので、母は80-5=75歳以下である。
つまり父母の年齢の和は80+75=155歳以下である。

また、3人のこどもの年齢の和は
「長男」+「次男」+「三男」=「次男+2」+「次男」+「次男-2」=「次男」×3
なので3の倍数である。

以上より父母、そして3人兄弟の年齢の和として「155以下」で「奇数」で「3の倍数」を考えればよいことになる。

大きい順に試してみる。

等しくなる年齢の和が153歳の時、
父は79歳、母は74歳となる。このとき、こどものねんれいの和は53歳、51歳、49歳である。
母と長男の年齢差は21歳、つまりは長男は母が21歳のときに生まれているから、問題文の条件に合う。

よってこれらの年齢は問題文の条件に適した年齢の一例である。

答え:父79歳、母74歳、こども53歳、51歳、49歳


問題の提示のされ方から、答えが何通りか考えられることがわかります。

場合の数についても共通する考え方ですが、答えの幅を確定させるためには、
その条件をきちんと整理できていなくてはいけません。

問題文を徹底的に精査し、条件を洗い出すことが必要です。

本問では、父母、こどもそれぞれの年齢の和に関しての条件を洗い出した後は、
最初の試行(年齢の和は153歳の場合)で適切な答えにたどり着くことが出来ますが、
その条件自体は問題文で与えられる数字を単純に線分図化しても発見が難しい、
高度な条件の抽出問題でした。


2007年06月18日

灘中より。割り算の筆算ができますか? 2007-06-18



灘中より。割り算の筆算ができますか?


整数(A)を整数(B)で割ると、商が32で余りが10であった。さらに割り算をつづけて小数第3位まで求めると商は32.322となり、余りが出た。(A)(B)に入る数を求めなさい。

(灘中)


「割り算を続ける」という作業を筆算で確認してみてください。


商が32、余りが10の状態からさらに割り算を続けるというのは、
余りの10を整数(B)で割るということです。

その商が32に続く小数部分となります。

つまり
10÷B=0.322・・・である。
よってB=31.05・・・・からB=31
ゆえにA=32×31+10=1002

答え:A:1002  B:31


計算や筆算の仕組みを理解し、きちんとイメージできるかどうかが問われています。

50分で15問ですから、本問に割くことのできる時間はだいたい2分程度です。

普段から定石問題についても深い考察をしていくことが大切です。

本問は割り算の筆算の手順についてイメージできればとても簡単な問題です。

「割り算を続ける」とは、「余りを割り続ける」という作業なのです。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
計算技術の仕組みと意味の理解が大切

灘中ではよく出題されるポイントとして、 筆算や各種の法則などを
使うことには慣れていてもその仕組みや意味をきちんと説明すること
が難しい知識を必要とされるものがあります。

かつては壮大な虫食い算などが主流でしたが、最近は本問のような
計算の経過を文章で与えるという形式が好まれています。

本問も普通の割り算を文章化しただけなのですが、とたんに混乱して
しまう生徒も少なくありません。

一度低学年にするような形で説明する機会を持たせると、高学年
でも様々な計算技術の中に気付きを得られると思います。


それらの気付きなしでは、本校の1日目を高得点で乗り切ることは
不可能です。当たり前の知識に関しても表面的な理解に留まらず、
きちんと検討する。 1日目の問題はそういった付け焼刃では身に
付かない勉強への基本姿勢を測定する問題だといえるでしょう。 。


2007年04月23日

親和中より。隠れた制限を見抜く力が求められます。 2007-04-23



親和中より。隠れた制限を見抜く力が求められます。


りんごとみかんの2種類の果物があります。りんごとみかんを1個ずつとって,皿に盛っていくと,どちらかがなくなったので,残った果物の1個ずつに,はじめにあったりんごの数だけのキャラメルを合わせて皿に盛っていきました。果物がすべてなくなるまでに,キャラメルは全部で153個使いました。はじめに,果物は2種類合わせて,最も多くて何個ありましたか。
また,最も少なくて何個ありましたか。

(親和中)


「1個ずつにキャラメルを何個かずつ対応させると153個になる。」は、大きな制限を与えています。


1回に盛られるキャラメルの数をN個とすると、
それを何回か繰り返す、つまり何倍かすると153になるということです。
これはNが153の約数であることを意味します。

153を素因数分解すると3×3×17となります。
よって1回に盛られるキャラメルの個数の候補は1、3、9、17、51、153のいずれかです。
これはりんごの個数の候補が1、3、9、17、51、153であることを意味します。

また、盛られた回数はりんごとみかんの差を表しています。
キャラメルの個数が1個のとき、盛られた回数は153回。

同様に
3個のとき51回、
9個のとき17回、
17個のとき9回、
51個のとき3回、
153個のとき1回
であるから、

りんごとみかんの個数の差の候補は りんごの個数が
1個のとき153、
3個のとき51、
9個のとき17、
17個のとき9、
51個のとき3、
153個のとき1となります。

よってりんごとみかんの合計を考えると、最も少ないのはりんご17個みかん8個の25個。
最も多いのはりんご153個みかん154個の307個。

答え:最少25個、最多307個


どこから手をつけてよいかがわかりにくい問題です。


153の素因数分解により約数が6個しかないことを発見できると、
作業量に見通しがつき手が進むことになります。


本問はキャラメルは整数個であること、
そして何回か「繰り返した」結果が153個であるということが
1回に盛られるキャラメルの数の候補(つまりりんごの個数の候補)に大きな制限を与えているのです。

最後のポイントは、キャラメルの盛られた回数は「差」を表しているだけで、
りんごとみかんのどちらを多くするかは決定されていないという点です。

最少ではりんごが多く、最多ではみかんが多くなっているという点が最後の注意力が求められる点です。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
隠れた制限を見つけ出す力が大切

本問は「りんごの数と同じ数のキャラメルを繰り返し皿にもったら153個になった。」
という文章の分析にたどり着くかどうかが大きな分かれ目となります。

とても複雑であいまいな日本語を、厳格な数的条件へと読み換える力です。

これは、普段から与えられた問題文を、
常に「式で考えると?」「図で考えると?」といった視点でチェックする姿勢が必要になります。

当日気付くために必要なのは、運やひらめきだけでなく、
普段からこのような姿勢をとる習慣をつけておくことです。


2007年03月26日

灘中より。粘り強い類推能力が問われます。 2007-03-26



灘中より。粘り強い類推能力が問われます。


5桁の36の倍数で、2、3、5のどれもがいずれかの桁にあらわれる整数(例えば53928など)のうち最も小さいものを答えよ。

(灘中)


テーマが「倍数と見た目の関係」であることに気づくことが突破口です。


36の倍数であるということは、36=4×9より、4と9の倍数でもあるということです。

9の倍数は、各桁の数字の和が9の倍数となっています。

5桁のうち2、3、5の合計10はすでに決まっているので、
残りの2つの数字は合計8もしくは17となります。

合計8から考えると(1、7)(2、6)(3、5)(4、4)
合計17から考えると(8、9)
が候補になります。

また、4の倍数は下2桁の数が4で割りきれる数である。

最小のものを求める問題なので(1、7)で1を一万の位にもってくることから検討をする。

すると、残りの2、3、5、7から下2桁に4の倍数である72をつくることができるので、
求める数は13572であることがわかる。

答え.13752


倍数判定は、一般に2、3、5などの(大きくても13ぐらいまで)の知識しか習いません。


しかし、基本的な方針や組み合わせることの例示などで
比較的簡単に応用力をつけることができる分野でもあります。


問題の形式が見慣れないものになっていますが、
本問は「倍数判定」の問題であるという見当をつけることがスタート地点です。

あとは、誰もが知っている知識の組み合わせと効率的で論理的なしらみつぶしです。


~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
作業量を概算し、見通しを立てるという思考が大切

本問では大きな差はでませんが、解説にあるような「作業量の概算」はとても大切な技術です。

時間制限のある試験において、そもそもその手法の作業量に現実味があるのかどうかを判断する力です。

不適格であれば、他の手法を探すことになります。
このような効率的な状況判断をもたらしてくれるのが「作業量の概算」です。

解説を読んでみると、「書き出せば一番速かった。」ということや、
「既に書き出してはいたがそもそも無理な量だった。」という経験が誰しもあるかと思います。

見通しを立てる冷静な思考によって、必要となる時間が大きく異なってくる良問でした。


2007年03月05日

灘より。 2007-03-05



灘より。


連続した5つの整数の積が2441880であるとき、これら5つの数のうち最も小さなものを答えなさい。

(灘中)


ある数の約数は、素因数の組み合わせでつくることができます。


2441880を素因数分解すると
2×2×2×3×3×3×5×7×17×19
となる。


並べ替えると
17×(2×3×3)×19×(2×2×5)×(3×7)
=17×18×19×20×21


よって掛け合わせて2441880になる5つの連続した整数は17、18、19、20、21である。


答え:17


「様々な約数が存在する。」は「素因数の組み合わせ方が複数ある。」と同義です。
この考え方が本問の突破口です。

素因数分解をすると素数の17と19が現れるので、その周辺の数から(まずは間の18)検討します。
素因数分解を利用して、「ある数の約数は何通りか。」を求める問題には全員必ず取り組んでいるはずなので、
そこからの類推が求められます。
また指導する側としては、その問題に取り組むときにきちんと理解させておくことが大切です。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
数の成り立つ仕組みについての様々な視点が大切

ある数を数詞としてだけでなく、様々な角度から性質を調べ、
成り立ちを考える姿勢が本問のような問題への対応力の源泉です。

九九の成り立ちから始まり、分配の法則など考えるきっかけとなる問題に出会ったときに、
一歩立ち止まって掘り下げることが大切でしょう。

本校の小問群は、解いてきた問題の量ではなく、思考の積み重ねによって身に付けた瞬発力が必要です。

数のしくみを普段から楽しんでみるような姿勢を持つ本校の求める人材像を選別するのにふさわしい良問でしょう。


2007年02月12日

フェリス女学院中より。普段使っている数の仕組みの理解が問われます。 2007-02-12



フェリス女学院中より。普段使っている数の仕組みの理解が問われます。


1から2000までの整数のうち、数字の7を使っていない数はいくつありますか。

(フェリス女学院中)


7が抜けるということは数字の種類が9つになってしまうということです。


7以外の9つの数字を使って1から順に表現することは、9進法を意味します。

十の位は9の位になり、百の位は81(9×9)の位になり、千の位は729(9×9×9)の位になります。

この場合、2000は2×1000ではなく、2×729を表すことになります。
これは1から順に9つの数のみを使って数を並べていった場合、2000は2×729=1458番目ということを意味します。

つまり、7以外の9つの数を使ったものは1~2000までの間に1458個あることになります。


答え:1458個


10進法の意味を深く理解していることが問われています。

10進法とは、「数字が0から9までの10種類しかないから、
9の次の数を2つの数字をつかって10と表す。」ことです。

普段わたし達は、1から10までを一括りにしてとらえる傾向がありますが、
「0から9までの10種類」という感覚を持つことが大切です。

N進法の問題は無意味に思われ、クイズのようにとらえられてしまうことの多い分野ですが、
この分野の勉強を、普段なじみ深い10進法や日時における
60進法、7進法、24進法などについて再考する機会にしてほしいものです。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
基本的な数の仕組みに対する理解が大切

算数を勉強する目的として様々なものが挙げられますが、もっとも現実的な問題は、
「ものの数をただしく数え、表すことができるようになる。」なのではないでしょうか。

すべての数を10個の数字で表現する。
数字を書く位置によって表している単位が違う。

など高学年になり当たり前になった時期にこそ、
もう一度振り返ってその仕組みをおさらいすることで新たに発見することもあるのではないでしょうか。

計算の正確さ、速さは繰り返しの練習以上に数の仕組みの理解が高めてくれます。
10進法の意味をきちんと考えるきっかけになる良問でした。


2006年12月25日

麻布中より。作業量の見通しの有無が、試験の全体を左右する問題です。 2006-12-25



麻布中より。作業量の見通しの有無が、試験の全体を左右する問題です。


次の問に答えなさい。
(1)0.32をできるだけ簡単な分数で表しなさい。
(2)ある分数を小数で表し、小数第3位を四捨五入すると0.32になりました。このような分数のうちで、
分母が最も小さいものを求めなさい。

(麻布中)


(2)は(1)の答えをスタートラインにしてみましょう。


(1)
32/100を約分して8/25
答え:8/25

(2)
(1)の答えである8/25は小数では0.32であるから、
「四捨五入して0.32になる」という条件に適する。
つまり、「分母が25より小さい分数」という範囲内で探せばよい。

しかし、この範囲で探すとなると
分母1:1/1
分母2:1/2,2/2
分母3:1/3~3/3
分母4:1/4~4/4   
を順に小数化して「0.315以上0.325未満」が現れるまで試行することになり、
範囲が大きくなりすぎる。

ここで分子に着目すると、
8/24が0.333・・・となり条件の範囲を超えることから、
8/25よりも分母が小さく、条件の範囲に入る分数の分子は7以下であることがわかる。
つまり分子1~7で条件に適する分母を探せばよい。

分母1について考えると
1÷0.325=3.07・・・・
1÷0.315=3.17・・・・
より分母が3.07・・・より大きく3.17以下となればよい。

この間に整数は存在しないので分母1は不適
同様に分母2以上を調べていくと
分母6について
6÷0.325=18.46・・・・
6÷0.315=19.04・・・・
となり、その範囲内に初めて整数19が現れる。
よって求める答えは6/19とすることができる。

答え:6/19


ある程度の作業を通じて絞り込んでいく問題ですが、
工夫をする力によって解答に至るまでにかかる時間が大きく変わってくる問題です。
小問のようですが、平成16年度試験の大問5番です。

見た目の簡単さによりほぼすべての生徒が取り組んだはずですが、
ほかの大問と同様手ごたえのある問題です。

調べ上げの方針を立てながらも、作業の分量をしっかりと計算し、
ほかの近道を検討する。時間配分を他の問題とバランスをとらなくていけない
本番ではとても重要な能力です。

「分母が問題になっているときに分子に着目する」これは、
図形の問題で「容器の中で水が入っている部分が問題になっているときに、
空の部分に着目する」というように様々な応用が利く思考技術です。

単問として取り組ませるよりも、
試験の中に配置することで取り組む生徒の能力を緻密に判断する問題です。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
作業の見通しを検討する力が大切

場合の数など、「地道な数え上げ」という解法が存在する分野では、
一歩間違えると途方もない作業に陥ってしまうことがあります。

また、意外と少ない書き出しで確実に答えを確認できるのにも関わらず、
計算のみで誤答に至ってしまうこともあります。

これらの分野では、「だいたいの作業量」を常にイメージしておくことが大切です。

数十の書き出しなのか、数千なのかがわかるだけでも方針がある程度固まるはずですし、
それくらいの概算はあまり知識やひらめきを必要としません。

気合を持って踏み出す地道な一歩が、どれだけの道のりに続いているのかを計算すること。
冷静と情熱の間にバランスよく立つことを求める良問です。


2006年11月13日

武蔵中より。問題文のヒントを常に頭に置いておく。参照する力が問われます。 2006-11-13



武蔵中より。問題文のヒントを常に頭に置いておく。参照する力が問われます。

AさんとBさんはそれぞれ羊を飼っています。二人とも飼ってい る羊の数は10の倍数です。A、Bの二人とも1日に14頭ずつ羊の毛を刈ると、かかる日数の合計は72日になります。また、19頭ずつ刈るとAの方がBよ り7日早く終わります。A、Bが飼っている羊はそれぞれ何頭ですか。


                             (武蔵中)


途中で行き詰ったら、本文に戻りましょう。


14 頭ずつで合計72日なので
合計14×72=1008頭いるともできるが、
最終日は1頭しか刈らなかった場合も考えられるので、
最低14×70+2=982頭
であることも考えられる。

この条件より羊の合計頭数は982~1008頭であると考えられる。
ここで、頭数は10の倍数であることを鑑みて、
990頭か1000頭であることがわかる。

次に19頭ずつ刈るとAのほうが7日早く終わるので、差は
最小19×6+1=115頭(Aは最終日に19頭刈り、Bは最終日に1頭しか刈らなかった場合)
最大18+19×7=151頭(Aは最終日に1頭しか刈らず、Bは最終日も19頭刈った場合)
ここでも、頭数の差は10の倍数であることを鑑みて
差は120か130か140か150頭であることがわかる。

ここで合計頭数と差を使った和差算で合計の頭数を、
結果が10の倍数になるものに限って求めると
(A:B)=(440:560)(430:570)(430:560)(420:570)
が候補となる。

この中でそれぞれを14で割って、
商+1の合計が72になる(14頭ずつ刈って合計72日かかる)
のは、(430:570)のみである。

よってA:430頭 B:570頭

答え:A: 430頭 B:570頭

本問の難しさは、解答の進め方にあります。

子供達は、計算式が連なって、最後に答えが出る形式に慣れきっていますし、
答えを取捨選択させるにしても最後の段階に限られているからです。

計算を進める度に、幅が出てしまう。
それを本文の条件に戻って取捨選択し、また進めていくという今回のような形は、
試験中とても不安に思うことでしょう。

最後の答えを、再度問題文に代入することですっきり確認できないこと
(~日で刈り終わる頭数には幅があるからです。)も難しくしています。

このタイプの問題にあたって慣れておくことは大切です。
本文は、この年度の入試の中では、
試験時間内に確信を持って終わらせることが最も難しかった部類に入る問題です。

倍数の制限、偶奇の判断、は答えの幅に大きな制限を加える
隠れた条件となることが多いので常にチェックする習慣をつけたいものです。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
式の展開を、与えられた具体的な状況から切り 離してはいけない。

本問のように多くの式を連ねていかなければならない問題では、
いつのまにか本文の内容が頭から離れてしまいがちです。

式はあくまで本文が与えてくれた具体的状況を簡潔に翻訳したものに過ぎません。

行き詰ったときの突破口は、しばしば本文に明記されている条件です。

本文とつかず、はなれず、適度な距離を保ちながら論を進めること。
これは、式の展開の長さが算数の数倍になってくる数学における大切な姿勢です。

本問は、この姿勢の基本部分が身についていることを問う良問です。


2006年07月31日

女子学院中算数入試より。「数えるものが見えていますか」計算力の前提となる、計算技術への理解を問う問題です。 2006-07-31



女子学院中算数入試より。「数えるものが見えていますか」計算力の前提となる、計算技術への理解を問う問題です。


1から120までの数字が1つずつ書いてある紙があります。
この紙に書かれている「2」「1」「0」それぞれの数字の個数を求めなさい。

(女子学院中)    


教科書10ペー ジから20ページまでの宿題は、全部で11ページですよ。


・ 「2」について
一の位にあらわれる「2」は
2、12、22、32、・・・・・112の12個
十の位にあらわれる「2」は
20~29、120の11個
百の位にあらわれる「2」はない
よって合計23個

・「1」について
一の位にあらわれる「1」は
1、11、21、31、・・・・111の12個
十の位にあらわれる「1」は
10~19、110~119の20個
百の位にあらわれる「1」は
100~120の21個
よって合計53個

・「0」について
一の位にあらわれる「0」は
10、20、30、40、・・・・・120の12個
十の位にあらわれる「0」は
100~109の10個
百の位にあらわれる「0」はない
よって合計22個

答え: 「2」23個、「1」53個、「0」22個


単 純な「数える」問題です。
2、12、22、32、・・・、112
が瞬時に「12個」だと判断できるでしょうか。
2、12、22、32、・・・、112
下線部に気をとられて11個と数えてしまう生徒(大人も)多いのではないでしょうか。
日付、ページ数など「○~△まで」を正確に数える技術と確認の癖をつけておきたいものです。

また、「位ごとに数える」という視点も大切です。
上位校で近年頻出の考え方ですので、数の並び方の確認も兼ね、
ぜひ取り組んでおきたい問題です。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
無意識に使っている技術の深い理解が大切

低学年で学ぶ「大きな数」や、四則演算の筆算などの単元で丁寧に取り扱われる「位」の考え方は、
10進法の仕組みを考える良い機会です。

高学年で学ぶ計算を簡単にするテクニックは、
これらの仕組みに依存しているにも関わらず
しだいに表面的なテクニックのみが頭の中に残ってしまうことになりがちです。

「位ごとに数える」などという単元はありません。しかし、
計算と数えることは似 て非なるものです。

「何を数えるのか」が正確にわかって初めて役に立つのが計算です。
自分の使っている計算技術の仕組みや、
そもそも何を数えているのかについて再度確認しておきたいものです。

たとえば場合の数の「6C2」=6×5÷(2×1)についてきちんと説明が出来るかどうかなど
はいわゆる「応用力」の差となってあらわれてきます。
誰でも知っている(と思いがちな)題材で、仕組みの深い理解を問う良問です。


2006年07月03日

今週はフェリス女学院中より1問です。 2006-07-03



今週はフェリス女学院中より1問です。


大 と小のサイコロが合わせて18個あります。この18個のサイコロを同時にふったら、出た目の平均は4でした。大のサイコロだけの出た目の平均は3.4でし た。小のサイコロだけの出た目の平均は、どのような場合がありますか。すべての場合を求めなさい。割り切れないときは小数第2位を四捨五入して小数第1位 までの数で答えなさい。
                                        (フェリス女学院中)



「サイコロの目」というだけで、大きな制限が ついてきます。


サイコロの目は整数1~6によって構成されています。

つまり、複数のサイコロをふったときに出た目の和は、
1~6の組み合わせである「整数」であるということが前提となります。

また、問題文の条件に大のサイコロの出た目の平均が 3.4 
つまり17/5であることが与えられています。

ここから、大のサイコロの個数は、5の倍数であることがわかります。
つまり、大のサイコロの個数は、5個、10個、15個のいずれかになります。

・大が5個の場合の小のサイコロの平均
 (4×18-3.4×5)÷(18-5)=4.23・・・=4.2 (割り切れないので四捨五入)

・大が10個の場合の小のサイコロの平均
 (4×18ー3.4×10)÷(18-10)=4.25(割り 切れるので四捨五入はなし)

・大が15個の場合の小のサイコロの平均
 (4×18-3.4×15)÷(18-15)=7・・・サイコロの目は6までしかないので不適格
 
以上より

答え  4.2  ・  4.75


「隠れた制限」つまり、問題文にはいちいち明記されないが、
当然の前提として答えに制限を加えるものです。

本問では、平均=3.4から 5の倍数である という制限を導き出すことと、
最後に「平均7」は、1~6で構成されるサイコロにおいてはあり得ない

という2つが隠れた制限になります。
このような倍数制限など、気付けば検討範囲が数通りにまで狭め ることができる典型例は、

十分に頭に入れておける数しか存在しません(例えば日付や個数 など)。
この分野のみをしっかりとピックアップした参考書はほとんど存在しません。
そして、解説のなかでは「そういえばそうだった。うっかりしてた。」といった形で受け流してしまいがちです。
一度、このような隠れた制限にどういうものがあるのかまとめておくことが必要です。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・問題文に出てくる物語を具体的にイメージす ることが大切
本問は、「サイコロ」や「平均の計算の手順」についてのイ メージを失い、
数式のみを元にして試行錯誤をしたとたんに、落とし穴にはまります。

本問に限らず、すでに長い歴史のある中学入試、
とくに上位校では単純な先取り学習で身につけた数式処理で解くことができるような問題は
ほとんど出題されません。

算数には、数学の土台としてだけでなく、

「日本語を論理的にしっかりと読む力」

「身の回りのものを工夫して測量する力」などといった力を養成 する目的もあります。



ポイントは、問題文を読みながら具体的なものをイメージすること。


問題文を一度よんで、しっかりと図解できる生徒は、イメージしながら読めている証拠です。

この作業を、面倒くさがらずに取り入れてみることで

速さ、平均など抽象的なものを数値化している世界が一気に具体的なものとして身につきます。



そうするだけで、

「直感としてあり得ない数値」をはじくことができるようになるのです。


prev  1  |  2  |  3  |  4  |  5  next

メールで更新を受信

「今週の1問」のメール配信を受け取る場合はこちら:

アーカイブ

2014年07月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31