桜蔭中より。教室・実験室での学習を地球規模の視点に応用する目を養います。 2007-02-12



桜蔭中より。教室・実験室での学習を地球規模の視点に応用する目を養います。


問 お風呂の中では両手の親指だけでも体を支えることができます。水などの液体の中に物体を入れると,液体が物体を浮かせる力(浮力)が働くためです。この浮力の大きさは物体がおしのけた量の液体の重さに等しいことがわかっています。水1立法cmの重さを1.0gとして次の問いに答えなさい。


北極の氷山(すべて氷でできています)の海面下の体積は,海面上に出ている体積よりずっと大きいことが知られています。この氷山の海面上の体積は全体の何%ですか。この氷山の氷1立法cmの重さを0.96g,海水1立法cmの重さを1.2gとして計算しなさい。

(桜蔭中 抜粋 改題)


北極の氷も、ビーカーの中の木片も浮力をうけて浮いていることに変わりはありません。


氷山全体の体積を100立方cmとする。すると、氷山の重さは96g。

この重さと、浮力がつりあっているのだから、かかっている浮力は96g。

だから、氷山が押しのけた液体の重さが96g。

氷山が押しのけた体積 × 1.2 = 96 となるため、

氷山が押しのけた体積 = 8 (立法cm) =「氷山の水面下の体積」

氷山全体を100立方cmとしたのだから、8%

答え  8.0%


「液体に浮いている物体にかかる浮力ってどうやってもとめるの?」と聞くと、

「体積!」と答えるとんでもない生徒がいますが、正しくは、まさに問題文にある、

「浮力の大きさは物体がおしのけた量の液体の重さに等しい」

です。

浮力の問題で、単位を考えずに機械的に「重さと、沈んでいる体積がつりあっている」と考えている生徒は

要注意です。


~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
与えられた定理を正しく理解する。

本問はもともとは、海水1立法cmを1gと考えてよい問題でしたが、今回、
浮力の意味を再確認できるように 海水の密度をいじってみました。

定理や公式は、正しく理解できて初めて武器や道具となるのです。
中途半端な理解は、そこを突かれることで大きなハンディキャップとなります。

また、学校や塾、問題集で慣れ親しんだ原理原則でも、ひとたび自然現象や、
地球規模の事象のかたちで問われると硬直してしまう生徒が多いものです。

これは、反復練習に過度に偏り、定理の理解を怠ることが原因です。

足腰を鍛えていない、トップアスリートはいませんよね。
骨太の土台を築くことを忘れないでほしい、という出題校からのメッセージを汲み取ってください。



2007年02月05日

独協埼玉中より。「求めるもの」を言い換える力が問われます。 2007-02-05



独協埼玉中より。「求めるもの」を言い換える力が問われます。


1から10までの整数が1つずつ書かれた10枚のカードがあります。この中から2枚以上のカードをとりだし、そのカードに書かれている数の合計を考えます。
(1)3枚のカードをとりだすとき、合計が10になる場合は何通りありますか。
(2)3枚のカードをとりだすとき、合計として考えられる数は何通りありますか。
(3)何枚かのカードをとりだすとき、合計が48になる場合は何通りありますか。
(4)省略

(独協埼玉 抜粋)


「取出し方」は、「残し方」ともいえます。


(1)
左に最小値を持ってくるように整理する書き出しによって
(1、2、7)(1、3、6)(1、4、5)(2、3、5)の4通りがわかります。
答え:4通り

(2)
最小は(1、2、3)の時で6、最大は(8、9、10)の時で27である。
この間の値については、(1、2、3)の「3を10まで1ずつ増やす」 「2を9まで1ずつ増やす」「1を8まで1ずつ増やす」ことによってすべてをつくることができる。
よって27-6+1=22通り
答え:22通り

(3)
カードは1から10までの10枚であり、その合計は(1+10)×10÷2=55である。
今回、取り出したカードの和は48なのでこの10枚から55-48=7より合計で7になるように残せばよい。
残る7の作り方はの5通りある。
よって取り出す48の作り方も5通りになる。
答え:5通り


(1)と(2)は取り出し方に着目、
(3)は残し方に着目させるという構成が対応力を要求する問題です。


場合の数の鉄則ではありますが、選ばれないものに着目することは近年頻出です。
類題には、や、リレーの選手の選び方で選ばれない生徒の場合の数に着目させるものや、

ふたのある容器へ水を入れる問題で水の入っている部分ではなく、
水の入っていない部分に着目させるものなどがあります。

本問のようにその値が一対一対応する残りに着目する思考は中学生以降にとても重要になってくるものです。
答えを出せれればよいというものではありません。
良い機会ですから解説を熟読してその意味を確認することが必要です。



2007年01月29日

渋谷教育学園渋谷中学より。表面的な知識ではなく論理の積み上げを行わせる1問。 2007-01-29



渋谷教育学園渋谷中学より。表面的な知識ではなく論理の積み上げを行わせる1問。


 地球上では,いろいろな物が太陽の熱をうけとります。うけとった熱は,ほかの物に伝わりながら,宇宙へ放出されていきます。うけとった熱のほうが多いと温度は上がり,放出された熱のほうが多いと温度は下がります。うけとる物によって,温まりやすさ,さめやすさにちがいがあります。水は,どちらかというと,温まりにくく,さめにくい性質をもっています。このような性質の物は,その中に多くの熱をためることができ,地球上からの熱の放出を防いでいます。

 地球上では,赤道付近が最もうけとる熱が多くなっています。また,赤道付近では,うけとる熱にくらべて放出される熱が少なく,北極や南極の近くでは逆にうけとる熱よりも放出される熱のほうが多くなっています。このままでは,赤道付近はどんどん暑くなり,極付近はどんどん寒くなってしまいますが,実際には熱が移動するので,そのようなことはありません。

 空気が冷やされると,空気中にふくむことのできる水蒸気の量が少なくなるため、ふくむことのできなくなった水蒸気は,液体の水になります。こうしてできた水の粒が空気中にただよっているのが雲や霧(きり)です。また,何かの表面についたのが露(つゆ)です。
                             

(1)空が雲でおおわれた日は晴れた日にくらべ,1日のうちの気温の変化が小さくなります。 気温が上がらないのは,太陽の光が当たらないのが原因です。では,夜から朝にかけて気温があまり下がらないのはなぜですか。その理由を上の文の内容にそって説明しなさい。

(2) 平野部で朝に霧が発生していると,その日の天気は良くなることが多いです。その理由を簡単に説明しなさい。
         
(3)秋の朝,地面は乾いているのに,駐車場にとめてあった自動車の車体には,夜露がついていました。地面に露がついていないのに,自動車の車体に露がついているのはなぜですか。その理由を上の文の内容にそって説明しなさい。


(渋谷教育学園渋谷 抜粋)


霧ができるとはどういうことですか。そしてそもそも気温が下がるとはどういうことですか。


(1)地温が大気に放出されるのを雲がさまたげるから
(2)霧の発生の原因は急激に温度が下がったことだと考えられる。急激に温度が下がったということは、地上の熱が大量に大気中に放出されためであり、上空に熱の放出をさまたげる雲がなかったと考えられるから。
(3)自転車が地面にくらべより温度が大きく下がったから。


「気温が上がる」という事象は太陽の存在からイメージしやすいのですが、
「気温が下がる」というのはいったい何がおきているのかきちんと考えたことがある小学生はごく少数です。

まず、気温をあげているのは、直接的には太陽の光ではありません。
太陽の光が地面を暖め、そして地面が空気を暖めているのです。

気温が下がるということは、地面が熱を放出し、そして冷え、周辺の空気の熱を奪うということです。
(熱は高いところから低いところへしか伝わりません。
多くの生徒が間違えて理解していますが、 何かが冷えるのは、冷たい何かが伝わったのではなく、熱をうばわれるからです)

これを前提として、

霧が発生 →なぜなら、温度が急に下がったから → なぜなら、地面が急に冷えたから → なぜなら、地面の熱が大量に放出されたから → 熱の放出をさまたげる雲が上空になかったから

つまり、雲がなかったわけです。雲がない → 晴れ ということです。


~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
数段階の「だから」「なぜなら」に耐える粘り強さを。

以前にも同じメッセージをあつかったと思います。
「論理的思考力」とはまさに、断片的なヒントや知識を「だから」や「なぜなら」でつなぐ力です。

「あの人は優秀」「あの人はあたまがいい」といわれる生徒に共通して身についているのが、
長い時間をかけて、何段階にもおよぶ「だから」をつなげあわせる忍耐力 です。

普段から、塾や学校で反射・反復練習に終始している生徒や、すぐに保護者や先生から答えや解説を
受け取っているような生徒には決して身につかない能力です。

たとえばですが、

「ツバメが低いところを飛ぶと雨がふる」
http://freedom.mitene.or.jp/~tsune/page8-4-12.html
(ロジムでは低学年の生徒でもイメージしやすいように、羽が重くなるという説明を採用しています。)
この内容を、

まず大人が生徒に一旦説明する 
→ 
生徒が大人にその内容を説明する

というのはロジムでもやっている論理積み上げの練習の一つです。

ぜひご家庭でもやってみてください。たとえば、途中で
「虫が低いところを飛ぶから、ツバメも低いところをとぶ」という説明になるかと思います。
ここでも厳しく「なんで虫が低いところを飛ぶと、ツバメが低いところをとぶのかの説明がぬけている」と指導してみてください。

大人と違って小学生はすぐにコツをつかんでくれるはずです。



2007年01月22日

東邦大東邦中。今年度入試から速報第一弾。公式の構造を見抜く力が問われます。 2007-01-22



東邦大東邦中。今年度入試から速報第一弾。公式の構造を見抜く力が問われます。


下の図のように直角三角形ABCとCDEが頂点B、C、Dが同一直線上になるように並んでいます。このとき、三角形BCEの面積を求めなさい。

(東邦大東邦中)


底辺と高さがそれぞれわからなくても面積は求めることができます。


求める三角形BCEの底辺を辺BCと考えると高さは辺EDとすることができる。
よって、求める面積は辺BC×辺ED÷2で求めることができる。

ここで三角形ABCとEDCが相似であることに着目する。すると
辺AB:辺BC=辺ED:辺DCが成り立つ。
つまり
7:辺BC=辺ED:4
ゆえに
7×4=辺BC×辺ED=28

求める三角形の面積は
辺BC×辺ED÷2なので
28÷2=14

答え:14平方センチメートル


円に内接する正方形の面積を与えて円の面積を求めさせる問題
(半径はわからないが、半径×半径の値はわかるというタイプ)の類題です。

本問も、同様に明らかにわからないであろう底辺と高さを個別にとらえずに、
まとめて考えてみるという視点が大切です。

これは、どの教科書、参考書にものっている円の問題に取り組んだ後に、
一般化された解法として習得しておかなければ対応できない問題です。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
公式の構成要素の意味を吟味することが大切

本問で取り扱ったもの以外にも一般的に知られている公式の中で、
いくつかの項目をまとめて考えると見通しが立つというものがいくつか存在します。

例えば、扇形の面積を「半径×弧÷2」と変形できたり、
半径/母線で円錐の中心角を求めることができるものもその例です。

無味乾燥な数式も見方を変えると図形的な意味をとらえることができることがよくあります。

面積図はその代表例です。
面積図というと、小学生用の受験のテクニックのように思われがちですが、
数式の図形的性質に着目して解くというのは中学生以降では常套手段です。

遠回りだとか、本質的でないといって避けることなく、
数式に含まれているそれらの性質を楽しむ姿勢が大切です。
本問はその姿勢が問われる良問です。



2007年01月15日

桜蔭中より。なぜ、教科書から離れ、身の周りの科学を題材にするととたんできなくなってしまうのでしょうか。 2007-1-15



桜蔭中より。なぜ、教科書から離れ、身の周りの科学を題材にするととたんできなくなってしまうのでしょうか。


今年は1991年ですが、このように数字の順序を逆にしても変わらない年は、来年から10000年までに(ア)回あります。このうちで4つの数字の和が20になるのは(イ)回あります。

(桜蔭中)


1991「年」に惑わされないことです。


求めるべき年は、「ABBA」年という形をしていると考える。

現在1991年で、来年1992年から10000年の間を考えるので次は2002年。

つまりAは2~9、Bは0~9を考えればよい。

ABの組み合わせは、

A:8通り×B:10通り=80通り

(ア)80通り この中の組み合わせで合計20になるものを考える。
ABBAの合計が20であるからABの合計が10であるものを考えればよい。
Aは2~9までの8通り考えられ、それぞれに合計で10となるBが1通りずつ対応するので
A+B=10となるAとBの組み合わせは8通りある。

(イ)8通り

答え(ア)80(イ)8


本問では、「1991」は「せんきゅうひゃくきゅうじゅういち」ではなく、
「いち、きゅう、きゅう、いち」という数字の列だととらえることがポイントです。

各位の数を入れ替えるのですから、順番に意味があり、位が与える意味はなくなります。
「ABBA」という2種類の箱に2種類の数字を入れるという場合の数の定石問題です。

ABBAが4桁であることからAには0が入らない、
またすでに1000年代の最後の該当年数1991年を超えているわけですから1も入らないことにも注意が必要です。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
問題になっている条件を過不足なく把握することが大切

本問のように「数の性質」「場合の数」が

具体的な状況(本問では年数)に落とし込まれた瞬間に数の基本性質への感度が低くなり、

使いこなせなくなることがよくあります。

立体図形の面の上に配置された平面図形において「相似」「合同」など平面図形の基本的な解法が思いつかなくなるのと同様です。

コツは、絶えず

「問題文がその場で与えた条件」と
「題材となっているもの(整数や図形)が持っている条件」

を分けて整理する意識を持つことです。

中学入試では、どちらかに意識が偏っていると(多くの場合前者に偏ります)必ず行き詰り時間を致命的に消費しますし、
後者に意識が到達すると一気に易問となることが多くなっています。

本番では本問に割くことのできる時間は2分位です。
最初の小問集合の中に配置されていますが、全体に影響し、上記の処理能力を判別する良問となっています。



2007年01月08日

桜蔭中より。なぜ、教科書から離れ、身の周りの科学を題材にするととたんできなくなってしまうのでしょうか。 2007-1-8



桜蔭中より。なぜ、教科書から離れ、身の周りの科学を題材にするととたんできなくなってしまうのでしょうか。


自転車は2つの輪じくをチェーンでつないだ道具です。さくらさんは自転車の性質を調べるために次の実験1、2を行いました。それぞれの実験について、以下の問いに答えなさい。

[実験1]さくらさんは、ペダルをおす力と後輪が地面をおす力の関係を調べるために、図4のようなそうちを使って実験を行いました。ペダルにおもりをのせたとき、後輪に伝わる力をばねはかりではかることができます。図4は自転車のペダル、ペダルのじく、チェーン、後輪、後輪のじく、スタンド、軽いひも、定かっ車、ばねはかりを表したものです。

(1)ペダルの長さが25cm、ペダルのじくの半径が10cm、後輪の半径が30cm、後輪のじくの半径が5cmの自転車のペダルに、30kgのおもりをのせました。
  図4の状態でつり合ったとき、ばねはかりは何kgをさしますか。ただし、ペダルのじくがチェーンを引く力は後輪のじくにそのまま伝わっているものとします。

(2)この自転車のペダルにのせるおもりはかえずに、後輪がばねはかりを引く力を大きくするには、どのような工夫をしたらよいですか。下のア~クから4つ選びなさい。
ア.ペダルのじくの半径を大きくする
イ.ペダルのじくの半径を小さくする
ウ.後輪のじくの半径を大きくする 
エ.後輪のじくの半径を小さくする
オ.後輪の半径を大きくする      
カ.後輪の半径を小さくする
キ.ペダルの長さを長くする     
ク.ペダルの長さを短くする

[実験2]次に、さくらさんはペダルの回転数と後輪の回転数の関係を調べるために、実験1で使用したばねはかり、定かっ車を取り外し、手でペダルを回し、後輪の回転数を調べました。

(3)さくらさんがペダルを1分間に120回転させると、後輪は1分間に何回転しますか。
(4)ペダルの回転数を(3)のままで、後輪の回転数を上げるには、どのような工夫をしたらよいですか。上の(2)のア~クから2つ選びなさい。

(桜蔭中)


そもそも、滑車やテコってなんのために発明されたのでしょうか。それが分かっていると格段に解きやすいはずです。あとはいつものように、影響を要素に分解して考えます。


(1)
30kg × 25cm/10cm × 5cm/30cm = 12.5 kg 

(2)
イ、ウ、カ、キ

(3)
240回転

(4)
ア、エ


テコも綸じくも、結局は重いものを持ち上げるために発明された道具なのです。
その仕組みは簡単に言ってしまえば

「長い距離を動かすかわりに、小さい力ですませる」

というものです。まずこの視点を持つことが大事です。
この視点を持っていないと、テコで、支点に遠いほうの力が大さくなってしまうようなミスに気付かなかったり、
そもそも、この問題のように「日常的に使われてるてこの利用」ということに注意がいきません。

(1)
・ ペダルに重りをのせると、時計回りの回転をつくる力が生じ、チェーンに力が伝わります。その際、テコの原理が働きます。
チェーンに伝わる力は、半径の逆比を考えて(←ここが分からない人は、教科書で勉強するか、塾の先生に聞いてください)
 30kg × (25cm/10cm) 

・チェーンが時計回りに回ることによって、ばねばかりにつながれたヒモを時計回りにひく。
これも、半径の逆比 を考えて、 

 (チェーンが引く力)        × (5cm/30cm) 
⇒30kg × (25cm/10cm)  × (5cm/30cm)  = 12.5 kg

(2)
(1)より、
ばねばかりの力=(おもりの重さ)×(ペダルのながさ/ペダルじくの半径)×(後輪のじくの半径/後輪の半径)

となる。「結果への影響を構成要素に分解する」 という作業を行う。

上の式をじっとにらむと、

ペダルじくの半径は、大きければ大きいほど、ばねばかりにかかる力を小さくする。
後輪くじの半径は大きくすれば大きくするほど、ばねばかりにかかる力を大きくする。
後輪の半径を大きくすれば大きくするほど、ばねばかりにかかる力は小さくなる。
ペダルながさは、大きくすればするほど、ばねばかりにかかる力を大きくする。

ことがわかる。 これより、イ、ウ、カ、キ が正解となる。

(3)
円周は、半径に比例するから、 回転数は半径の逆比に比例します。
(感覚的にも、大きいじくを回すと、多くのチェーンが巻き取られるのだから、小さいほうのじくは激しくまわりますね)

ペダルのじく(半径10cm)が120回転するのだから、
後輪のじく (半径5cm)は、まず、すくなくとも120回転よりも多く回転することをイメージする。
逆比の分、多く回転するのだから、  240回転となる。

(4)
(3)より
後輪の回転数 : ペダルの回転数 = ペダルじくの半径 : 後輪のじくの半径 
⇒ 後輪の回転数=ペダルの回転数 × ペダルじくの半径 ÷ 後輪じくの半径


となり、後輪の回転数を上げるだめには、問題文の条件より、
後輪じくの半径を小さくし、ペダルじくの半径を大きくすればよい。 よって、エ、ア

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
式処理と日本語での説明をいったりきたりできること

「今週の1問」でよくとりあげる、「現象をいくつかの要素に分解する」という能力が今回ももとめられました。
例えば、今回の回転数をいくつかの要素に分解し、それぞれの項ごとに影響を考えました。

これは実は、とてもとてもとても大事な能力と言われ、時としてこの能力が「優秀さ」そのものとして扱われることすらあります。

大人の世界では、利益を売上と費用に分解したり、
はたまた、とある商品を開発・製造から販売まで何段階にもわけて、そのそれぞれの段階で課題を考えたり、
評価を行ったり(いわゆるバリューチェーンの考え方)ですが、やはり小学生にだって、これがもとめられているわけです。

「複雑な事象を構成要素の分解する」 これこそ、多くの場面で求められる力であるとすれば、
各界で活躍する人材を輩出するいわゆる上位校の入試でこの力が問われるのは当然といえば当然です。

そして本問の注目すべきところは、そういった式をつくるにあたって、絶えず、
「日本語でイメージ」し続ける必要性を教えてくれるところです。やはり良問です。
じくの回転数と半径は逆比になる!なんていうのは、暗記すべきことではなく、問題に当たった際に、
回転する車輪をイメージして式をつくっていくことが必要なのです。

立式や 式への分解が大事だと猛進してしまうと、暗記する範囲が膨大になったり、
ちょっとしたミスに気付かないことがよくあります。とくに、テコ、滑車、浮力、熱量は、式での処理が重要かつ有効でありますが、
式が表す現象をたえずイメージしていないと、途中でなにをやっているのだか分からなくなります。

式への分解以上に、ハイレベルな生徒にとっては、日本語で式の様子をたえずイメージすることが求められるのです。

基礎的な科学を、身の回りに利用に応用した道具の問題が近年、頻出です。
(ボート、スケボー、栓抜き、ペダル、カタパルト、エレベーターetc...)
こういった問題が苦手な生徒は、式や公式が表す現象をイメージできていないのです。

ではどうすればイメージできるようになるのか。。。  
それは他の機会ということで。



2006年12月25日

麻布中より。作業量の見通しの有無が、試験の全体を左右する問題です。 2006-12-25



麻布中より。作業量の見通しの有無が、試験の全体を左右する問題です。


次の問に答えなさい。
(1)0.32をできるだけ簡単な分数で表しなさい。
(2)ある分数を小数で表し、小数第3位を四捨五入すると0.32になりました。このような分数のうちで、
分母が最も小さいものを求めなさい。

(麻布中)


(2)は(1)の答えをスタートラインにしてみましょう。


(1)
32/100を約分して8/25
答え:8/25

(2)
(1)の答えである8/25は小数では0.32であるから、
「四捨五入して0.32になる」という条件に適する。
つまり、「分母が25より小さい分数」という範囲内で探せばよい。

しかし、この範囲で探すとなると
分母1:1/1
分母2:1/2,2/2
分母3:1/3~3/3
分母4:1/4~4/4   
を順に小数化して「0.315以上0.325未満」が現れるまで試行することになり、
範囲が大きくなりすぎる。

ここで分子に着目すると、
8/24が0.333・・・となり条件の範囲を超えることから、
8/25よりも分母が小さく、条件の範囲に入る分数の分子は7以下であることがわかる。
つまり分子1~7で条件に適する分母を探せばよい。

分母1について考えると
1÷0.325=3.07・・・・
1÷0.315=3.17・・・・
より分母が3.07・・・より大きく3.17以下となればよい。

この間に整数は存在しないので分母1は不適
同様に分母2以上を調べていくと
分母6について
6÷0.325=18.46・・・・
6÷0.315=19.04・・・・
となり、その範囲内に初めて整数19が現れる。
よって求める答えは6/19とすることができる。

答え:6/19


ある程度の作業を通じて絞り込んでいく問題ですが、
工夫をする力によって解答に至るまでにかかる時間が大きく変わってくる問題です。
小問のようですが、平成16年度試験の大問5番です。

見た目の簡単さによりほぼすべての生徒が取り組んだはずですが、
ほかの大問と同様手ごたえのある問題です。

調べ上げの方針を立てながらも、作業の分量をしっかりと計算し、
ほかの近道を検討する。時間配分を他の問題とバランスをとらなくていけない
本番ではとても重要な能力です。

「分母が問題になっているときに分子に着目する」これは、
図形の問題で「容器の中で水が入っている部分が問題になっているときに、
空の部分に着目する」というように様々な応用が利く思考技術です。

単問として取り組ませるよりも、
試験の中に配置することで取り組む生徒の能力を緻密に判断する問題です。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
作業の見通しを検討する力が大切

場合の数など、「地道な数え上げ」という解法が存在する分野では、
一歩間違えると途方もない作業に陥ってしまうことがあります。

また、意外と少ない書き出しで確実に答えを確認できるのにも関わらず、
計算のみで誤答に至ってしまうこともあります。

これらの分野では、「だいたいの作業量」を常にイメージしておくことが大切です。

数十の書き出しなのか、数千なのかがわかるだけでも方針がある程度固まるはずですし、
それくらいの概算はあまり知識やひらめきを必要としません。

気合を持って踏み出す地道な一歩が、どれだけの道のりに続いているのかを計算すること。
冷静と情熱の間にバランスよく立つことを求める良問です。



2006年12月18日

桐蔭学園中より。「回転して同じになるもの、ならないもの。」的確な分類能力が問われます。 2006-12-18



桐蔭学園中より。「回転して同じになるもの、ならないもの。」的確な分類能力が問われます。


下の図のように同じ大きさの正方形が5つあります。この5つの正方形の中に○か×の印をそれぞれ1つずつ書き込みます。回転して同じになるものは1通りと数えます。全部で何通りの書き込み方がありますか。○か×の一方しか使わなくてもよいものとします。


回転できることで、分類の基準が幅広くなります。


周りは回転すると同じものを除くので
すべて○、すべて×で2通り
○が1つ、×が1つで2通り
○が2つ(=×が2つ)については並び方で以下の2通り

周りは以上の6通り

まん中は○か×かの2通りなので全体の書き込み方は
6×2=12通り

答え 12通り


別解として、最初から○もしくは×の数で分類する方法もあります。

(1)○が0個の場合:1通り
(2)○が1個の場合:まん中か周り(どこに書き入れても回転すると同じ)のいずれかに書き込む2通り
(3)○が2個の場合(a)まん中と周りに1つ(b)周りに連続して2つ(c)周りに×と交互に2つ 以上3通り
(4)○が3個の場合:×の位置を(3)と同様に考えて3通り
(5)○が4個の場合:×の位置を(2)と同様に考えて2通り
(6)○が5個の場合:×の位置を(1)と同様に考えて1通り

合計12通り

ポイントは、分類の基準を明確に定めることです。

回転によって、問題文で与えられた5つの箱における上下左右の絶対的位置は価値がなくなり、
・内側と外側の違い
・周りに並べられた○と×の相互の位置関係
だけが回転によって失われないものになります。

与えられた条件下での分類基準を正確にとらえる力が問われています。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
与えられた条件を数的な意味に変換する力が大切

本問のポイントは「回転」の与える影響を的確にとらえることに尽きます。

ただ、算数において「回転」はとても重要な条件ですので、
その場で考えるというよりも普段から意識して勉強しておくことで十分対応できるでしょう。

まずは実験をしてサンプルを集めてみること。そして注意深く見比べる。

そこから差異を発見する能力は一朝一夕で身に付くものではありませんし、
目に見えて実感しにくいものです。

しかし、結論ありきではない状況下でそのような思考を積み重ねることは、
答えの定まらない実験、研究に取り組むうえでとても大切な姿勢です。

計算で一気に求めることが出来ない本問では、
そのような力強い考察能力によって確実に差が生まれます。



2006年12月11日

もう一歩先に踏み込む執着心が求められます。 2006-12-11



もう一歩先に踏み込む執着心が求められます。


 海では赤茶色、湖や沼では青緑色の模様が水面に見られること があります。これは,水にすむ小さな生物が異常に増えたもので,それぞれ赤潮,アオコと呼ばれています。

(1) 下のグラフからわかる,赤潮が発生する原因を書きなさい。
(2) (1)で答えたことのほかに,どのようなことが赤潮やアオコの発生に影響をあたえていますか。君の考えを書きなさい。

(武蔵中)


グラフの読み方は、(A)全体の傾向をつかむ (B)特異点(目立つところ)に着目するの2ステップが基本です。


(1) 水面にとどく太陽の光が、プランクトンが光合成を行い、また活動に適した水温にするために十分な量となること。
(2)プランクトンの栄養分となる、工場からの廃水や、家庭からの生活排水が海に流れ込むこと。


(1) で、「十分な温度となること」と解答しただけでは、満点は得られないはずです。

正解者の思考プロセスとしては、

グラフをみて、冬より、夏に赤潮が頻繁に発生することに気付く

「ってことは、温度か?」と仮説をたてる(ここまでで解答用紙に走ってしまうとダメです)

「でもまてよ。なぜ、6月と8月はは発生回数がすくないのだろう・・・」とクリティカルシンキングを持つ

(なんだろうか。と、いくつもの仮説と検証をスピーディーに行う。
ここのステップでの試行回数の多さが、「頭のよさ」につながることが多いです)

東京での6月、8月の様子を思い浮かべ、
「梅雨と台風により、曇りや雨の日多い!」ということに気付く

「つまり、赤潮の発生回数を増やしているのは、温度よりも日光照射量だ」と気付く

ロジムの教室でもよくやりますがグラフを読み、分析するコツは、
・全体をつかむ
・特異点に着目する 
です。この2点について言及すれば大抵はずすことはありません。

今回、「夏のほうが発生回数が多い」という全体傾向を掴むだけでなく、6月と8月という特異点に着目し、日光のことに言及しなくてはいけません。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
「もう一歩踏み込めるのではないか」と絶えず疑うハングリー精神

計算や語句の能力は正直どの学年でも努力でいくらでもカバーできます。

しかし、上記の「ちょっとまてよ」と疑う能力・習慣というのは、
小学校3年生前後までに身についていないと、受験を前にして一朝一夕でつくものではありません。
(上の問題でいえば、「温度」という仮説のあとに、「あれ、6月と8月は・・」と立ち止まる能力です)

ほとんどの受験生が一度は「自分はケアレスミスが多い」と思ったことがあるのではないでしょうか。
「ケアレスミス」というのは便利な言葉で、まるで不正解の免罪符のごとくに使っていませんか?

皆さんが言うケアレスミスの多くは、「注意が足りない」のではなく本当は「勉強が足りない」のです。
もっといえば、普段の勉強の中で、「もう一歩踏み込もう」、「ちょっとまてよ、、、これって。。。」
という姿勢が足りないのです。

「自分がかんたんに出せるような解答は、
だれでもできるものであって、貴重なものではないのだ」
と自覚できている小学生はあまりに少数です。
だからこそ、それを自覚し、絶えず「いやちょっとまてよ」と
考える習慣を付けるだけで、集団から一歩抜け出せるのです。

「自覚」から始めてみてはどうでしょうか。




2006年12月04日

同じ意味のものを見抜く力が問われます。 2006-12-04



同じ意味のものを見抜く力が問われます。


下の式のア、イ、ウ、エの中には、それぞれ1、2、3、4の4 つの数字が1回ずつ入ります。計算した結果の答えは何通り考えられますか。

(東大寺学園中)



「入れ替えても同じ」を排除します。


ア、 イとウ、エはそれぞれ入れ替えても答えは変わらないので、
(ア、イ)側に2つ、(ウ、エ)側に2つの数を振り分ける振り分け方を考えればよい。

(ア、イ:ウ、エ)
=(1、2:3、4)(1、3:2、4)(1、4:2、3)(2、3:1、4)(2、4:1、3)(3、4:1、2)
の6通り考えられる。

ここで

ア×イ+ウ×エ=ウ×エ+ア×イ

が成り立つことを考えると

この6通りは
3組の答えをそのままに入れ替え可能な組み合わせが重複していることがわかる。

つまり
(1、2:3、4)と(3、4:1、2)、 (1、3:2、4)と(2、4:1、3)、 (1、4:2、3)と(2、3:1、4)
はそれぞれ同じ答えを導く組み合わせである。
よって求める場合の数は
6÷2=3
答え3通り


場 合の数のポイントは重複の排除と数え忘れの防止の2点です。
本問は重複の排除に関する少しレベルの高い問題です。
高校生の勉強での有名問題です。

ある集団を2つに分けるとき、
その2つの集団が交換可能かどうかをチェックするというのは
重複を避けるうえで欠かせないプロセスです。

「クラスを2つに分けて野球の試合をする」などが代表的です。

つまりAチーム、Bチームのメンバーはそのままメンバーをそっくり入れ替えても
対戦する意味は変わらないのです。

本問は典型問題ですが、重複の排除は問題文の与えられた条件をかなり深く、
適切に解釈しなくてはいけません。

それを見抜く洞察力は一朝一夕で獲得できるものではありませんが、
必ずチェックするという姿勢だけは見につけたいものです。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
同質、異質を見分ける力が大切

本問では、「交換可能なもの」を正確に把握することが一番のポイントです。

交換可能かどうかは本問のように明らかなものばかりだけでなく、
問題文の条件の下、数の性質や論理性を活用して
「言い換えることができる」ことも含まれます。

「同じものはどれか」と探す作業の中に、
「言い換えてみるとどうなるのか」という視点を加えると
同値、同質のものを見つける確率が格段に高まります。

たとえば
「Aは9の倍数」と
「Aは9で割り切れる」と
「A=?×9」と
「Aの各桁の数を合計すると9の倍数」
はそれぞれ同じことを言い換えただけですが、
そうするだけで新たな重複を見つけたり、論理展開の突破口が開かれる可能性が高まります。
同質、異質を見分けようとする姿勢とその力。
本問はその基本中の基本を問う良問でした。




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