2007年04月23日

親和中より。隠れた制限を見抜く力が求められます。 2007-04-23



親和中より。隠れた制限を見抜く力が求められます。


りんごとみかんの2種類の果物があります。りんごとみかんを1個ずつとって,皿に盛っていくと,どちらかがなくなったので,残った果物の1個ずつに,はじめにあったりんごの数だけのキャラメルを合わせて皿に盛っていきました。果物がすべてなくなるまでに,キャラメルは全部で153個使いました。はじめに,果物は2種類合わせて,最も多くて何個ありましたか。
また,最も少なくて何個ありましたか。

(親和中)


「1個ずつにキャラメルを何個かずつ対応させると153個になる。」は、大きな制限を与えています。


1回に盛られるキャラメルの数をN個とすると、
それを何回か繰り返す、つまり何倍かすると153になるということです。
これはNが153の約数であることを意味します。

153を素因数分解すると3×3×17となります。
よって1回に盛られるキャラメルの個数の候補は1、3、9、17、51、153のいずれかです。
これはりんごの個数の候補が1、3、9、17、51、153であることを意味します。

また、盛られた回数はりんごとみかんの差を表しています。
キャラメルの個数が1個のとき、盛られた回数は153回。

同様に
3個のとき51回、
9個のとき17回、
17個のとき9回、
51個のとき3回、
153個のとき1回
であるから、

りんごとみかんの個数の差の候補は りんごの個数が
1個のとき153、
3個のとき51、
9個のとき17、
17個のとき9、
51個のとき3、
153個のとき1となります。

よってりんごとみかんの合計を考えると、最も少ないのはりんご17個みかん8個の25個。
最も多いのはりんご153個みかん154個の307個。

答え:最少25個、最多307個


どこから手をつけてよいかがわかりにくい問題です。


153の素因数分解により約数が6個しかないことを発見できると、
作業量に見通しがつき手が進むことになります。


本問はキャラメルは整数個であること、
そして何回か「繰り返した」結果が153個であるということが
1回に盛られるキャラメルの数の候補(つまりりんごの個数の候補)に大きな制限を与えているのです。

最後のポイントは、キャラメルの盛られた回数は「差」を表しているだけで、
りんごとみかんのどちらを多くするかは決定されていないという点です。

最少ではりんごが多く、最多ではみかんが多くなっているという点が最後の注意力が求められる点です。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
隠れた制限を見つけ出す力が大切

本問は「りんごの数と同じ数のキャラメルを繰り返し皿にもったら153個になった。」
という文章の分析にたどり着くかどうかが大きな分かれ目となります。

とても複雑であいまいな日本語を、厳格な数的条件へと読み換える力です。

これは、普段から与えられた問題文を、
常に「式で考えると?」「図で考えると?」といった視点でチェックする姿勢が必要になります。

当日気付くために必要なのは、運やひらめきだけでなく、
普段からこのような姿勢をとる習慣をつけておくことです。



2007年04月16日

ラサール中より。パターンを生み出す基本原理を見つけ出す力が問われます。 2007-04-16



ラサール中より。パターンを生み出す基本原理を見つけ出す力が問われます。


1もしくは2を小さい順に左から並べて、ある整数を1と2のみの和として表すことを考えます。例えば、5という整数については1+1+1+1+1、1+1+1+2、1+2+2の3通り考えられます。このようにして2006を1と2のみの和として表すとき、その表し方は何通りありますか。

(ラ・サール中)


順序は自動的に決まりますので、それ以外の部分にのみ着目すればよい問題です。


小さい順に並べるので、場合分けされるのは1と2の個数によってのみであることに着目する。
2の個数は最大でも2006÷2=1003より
2+2+・・・・・・+2という形で1003個。

つまり2の個数は0から1003個までの1004通り考えられる。
よって、2006を1と2の和で表す表し方は1004通り。

答え:1004通り


問題に例示されている5の表し方は、
2の個数を1つずつ増やすことでパターンを考えていけるというヒントです。

1の数に着目しても、5個、3個、1個という形で見分けにくくなりますが、場合の数は求まります。

あるものを様々な形で表させる問題のポイントは、
それぞれの表し方の間にある関係性に注目することです。

本問では2つの「1」が1つの「2」に変換されますので、
それぞれの個数に着目しながらパターンを考えます。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
パターンを生み出す原理に着目することが大切

場合の数の基本は、「もれなくだぶりなく」です。

「広い視野」が必要になりますが、そもそもなるべく「広く」考えるのは当然の姿勢ですから、
具体的に身につけられる着眼点が必要になります。

それは、漠然と数えるのではなく、パターンを生み出す原理を見つけることに集中することです。
やみくもに見つけようとするのではなく、スタート地点と基本原理を見つけ、
あとは機械的にパターンを作り出していくことが大切なのです。

本問はある程度の書き出しや問題文での例示から、
基本原理である「2つの1と1つの2の交換」を見つけ出すことではじめて「1004通り」という膨大な数にたどり着けるのです。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
知識をストックすると同時に、思考の基本フレームを意識する。

個々の知識をストックする機会は多いのですが、思考のフレームをストックすることがなにかと少ないのが、

中学受験という現場です。

丸暗記学習を悪者扱いするあまり、思考フレームのストックまでもおろそかにされてはいませんか。

十把一からげに「暗記は悪!」といっていては脳が成長しませんよ。

おそらく開成中学の受験生は全員「二酸化炭素は水に溶けやすい」ということを知っています。

「二酸化炭素は水に溶けやすい」という知識と、

「大気の二酸化炭素は意外に増えていない」という事実・現象を結びつけるものが、

選択肢の洗い出し→仮説検証という思考技術です。

理科に限らず全科目において、そしてなんだかの問題・課題を解決するために不可欠のテクニックです。

未知の問題に出会ったとき、とりあえず、登場する事象の構成要素を書き出し、そのそれぞれを検証するという方法を身につけるよう意識してみてください。



2007年04月02日

開成中より。知っていれば簡単ですが、知らない時にどうすればいいのかを考えさせられる問題です。 2007-04-02



開成中より。知っていれば簡単ですが、知らない時にどうすればいいのかを考えさせられる問題です。


これまで人類は長い間、二酸化炭素を発生させてきただけでなく、それを減らす努力をしてきませんでした。それにもかかわらず空気中の二酸化炭素の体積の割合は意外に大きくなっていません。この理由は、日光を利用した植物の働きの他にも考えられます。それはどのような理由でしょうか、15字以内で君の考えを述べなさい。

(開成中)


二酸化炭素の特徴を思い出し、そこから結論を探します。


海や川にとけこむから。


こういった問題を知識として解くのではなく、思考結果として解くことができることが本当の学力だと思います。

出発点は、登場人物である「二酸化炭素」の特徴を洗い出すことからです。

空気よりわずかに重く、無色無臭であり、燃えることはなく、水に溶けやすい・・・。

この中で大気中の二酸化炭素の量に関係しそうなものは・・・・。ここでピンとくるわけですね。


~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
問題を分解し、既存の知識と比較していく姿勢が大切

数の問題は、問題の本質を見抜くことが難しい分野の1つです。

本問も一瞬とまどってしまう受験生も多かったのではないでしょうか。
灘中の1日目は50分で13問。瞬時に見当をつけ、分解して既知の問題に結びつけることが求められます。

時間が無い中で、ある程度の粘り強い変形作業が要求されるので、
同時に別の解法を検討したりや撤退のタイミングを考えるなど高度な処理能力が必要となります。


普通の受験生にとっては、問題をじっくり読み、類題をしっかりと検討するという姿勢を身につけるのに適した良問です。



2007年03月26日

灘中より。粘り強い類推能力が問われます。 2007-03-26



灘中より。粘り強い類推能力が問われます。


5桁の36の倍数で、2、3、5のどれもがいずれかの桁にあらわれる整数(例えば53928など)のうち最も小さいものを答えよ。

(灘中)


テーマが「倍数と見た目の関係」であることに気づくことが突破口です。


36の倍数であるということは、36=4×9より、4と9の倍数でもあるということです。

9の倍数は、各桁の数字の和が9の倍数となっています。

5桁のうち2、3、5の合計10はすでに決まっているので、
残りの2つの数字は合計8もしくは17となります。

合計8から考えると(1、7)(2、6)(3、5)(4、4)
合計17から考えると(8、9)
が候補になります。

また、4の倍数は下2桁の数が4で割りきれる数である。

最小のものを求める問題なので(1、7)で1を一万の位にもってくることから検討をする。

すると、残りの2、3、5、7から下2桁に4の倍数である72をつくることができるので、
求める数は13572であることがわかる。

答え.13752


倍数判定は、一般に2、3、5などの(大きくても13ぐらいまで)の知識しか習いません。


しかし、基本的な方針や組み合わせることの例示などで
比較的簡単に応用力をつけることができる分野でもあります。


問題の形式が見慣れないものになっていますが、
本問は「倍数判定」の問題であるという見当をつけることがスタート地点です。

あとは、誰もが知っている知識の組み合わせと効率的で論理的なしらみつぶしです。


~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
作業量を概算し、見通しを立てるという思考が大切

本問では大きな差はでませんが、解説にあるような「作業量の概算」はとても大切な技術です。

時間制限のある試験において、そもそもその手法の作業量に現実味があるのかどうかを判断する力です。

不適格であれば、他の手法を探すことになります。
このような効率的な状況判断をもたらしてくれるのが「作業量の概算」です。

解説を読んでみると、「書き出せば一番速かった。」ということや、
「既に書き出してはいたがそもそも無理な量だった。」という経験が誰しもあるかと思います。

見通しを立てる冷静な思考によって、必要となる時間が大きく異なってくる良問でした。



2007年03月19日

高槻中学校より。「作業の概算」で手法を取捨選択します。 2007-03-19



高槻中学校より。「作業の概算」で手法を取捨選択します。


0より大きい4つの整数a、b、c、dがあります。
a×b=28 b×c=126 c×d=45 のとき、a、b、c、dの値を求めなさい。

(高槻中)


どこから「しらみつぶし」に取り掛かるかによって、作業量がかわります。


a=2、b=14、c=9、d=5


ヒントにもあるように、選択肢の絞込みの際、最初の一歩を慎重に検討することが大切です。

a×b=28にのみ着目してスタートすると、
(a,b)の組み合わせは (1,28) (2,14) (4,7) が候補になります。

しかし、次のb×c=126の126を素因数分解すると2×3×3×7なので、
bの候補は1、2、7、14が残ってしまいます。

逆にc×d=45に着目すると(c,d)の候補は(1,45)(5,9)になります。

この中で126の因数となりうるのは1と9だけですし、
bは明らかに2桁の数なのでc=1は候補からはずれ、c=9が確定します。


どちらからスタートしても答えにたどりことは出来ますが、
スタート地点で少し立ち止まって考えるだけで作業量を減らすことができます。


~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
作業量を概算し、見通しを立てるという思考が大切

本問では大きな差はでませんが、解説にあるような「作業量の概算」はとても大切な技術です。

時間制限のある試験において、そもそもその手法の作業量に現実味があるのかどうかを判断する力です。

不適格であれば、他の手法を探すことになります。
このような効率的な状況判断をもたらしてくれるのが「作業量の概算」です。

解説を読んでみると、「書き出せば一番速かった。」ということや、
「既に書き出してはいたがそもそも無理な量だった。」という経験が誰しもあるかと思います。

見通しを立てる冷静な思考によって、必要となる時間が大きく異なってくる良問でした。



2007年03月13日

今週は洛南高等学校附属中より1問です。 2007-03-13



今週は洛南高等学校附属中より1問です。


ある商品をいくつか仕入れました。1日目は定価で売ったところ、14個が売れ残りました。ここで売るのをやめると、仕入れ値2個分だけ損をすることになる ので、残りを2日目には仕入れ値の半額で、3日目には仕入れ値の1/4の価格で販売して売り切ることができました。全体として得られた利益は仕入れ値4個 分でした。
(1)3日目に売れた商品は何個ですか。
(2)省略

(洛南高等学校附属中)


値段の実数が全く提示されていませんね。うま く処理してください。


仕入れ値を1とすると、3日間の利益は4であった。

1日目の時点では、2の損が出てしまう状況である。
これは、残りの14個分で0円の売り上げと計算したことによる。

よって、2日目、3日目の2日間で、この14個によって6個分の売り上げを得られればよい。
0.5のものと、0.25円のものを合わせて14個売って、6の売り上げを得る。

つるかめ算を使うと

0.5×14=7
7-6=1
1÷(0.5-0.25)=4・・・3日目に0.25で売った個数

答え 4個


解答では仕入れ値を1で処理しましたが、100で処理したほうが小数を使うことを避けられ、 賢明でしょう。

ポイントは、つるかめ算です。

本問は一見、「仕入れ値・定価・割引」の典型問題です。

つるかめ算の使いどころに関して、しっかりと整理されていなければ
思いつくことは難しいかもしれません。

最初にわからない数を文字でおくという習慣の ない小学生にとって、
解答の途中でつるかめ算のような算術で解を求めるというのはとても難易度の高い問題となります。

「未知数が2、合計とそれぞれが含まれる関係式が1つという条件が満たされれば、つるかめ算」
という整理をしているかどうかが分かれ目です。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・今習っている技術は何のためなのか。一般化する能力が大切です。

差集め算、過不足算などは、計算技術です。

中学生になると方程式と呼ばれるものです。

教科書においては、それぞれの算術がタイトルとなって、
習得しやすい典型問題を繰り返すことになります。
しかし、これらは、あくまで算術。

未知数の数と条件の整理によって、あらゆる分野に適応させるべき技術なのです。

図形の問題の最中に、つるかめ算、相当算を想像できるでしょうか。
それどころか、和差算を想像することすら難しい生徒がたくさんいます。

一体何のための算術なのか。

それを理解できなければ、中学以降の数学はゼロからのスタートになってしまいます。

「小学生のやる算術は頭の柔らかさを鍛えるもの。中学以降の、頭をあまり使わない機械的な方程式とは違う。」という考え方は、あまりにも方程式の機能と奥 深さ、壁の高さを無視したものです。

まずは、それぞれの算 術を使える条件を洗い出してみること。

それが、昔ながらの算術をわざわざ勉強した時間を有意義なものにし、
わざわざ出題する中学校の期待にこたえるスタートとなるでしょう。



2007年03月12日

ラ・サール中より。自然科学・理科の学習で特に必要な能力「式の意味を日本語で理解する」というスキル。 2007-03-12



ラ・サール中より。自然科学・理科の学習で特に必要な能力「式の意味を日本語で理解する」というスキル。


<1> ある地域で生活する動物の数をおおまかに予想する方法を考えてみましょう。ある地域に1000匹の動物が生活しています。このうちの100匹をつかまえて印を付け,逃がします。再びこの地域から100匹をつかまえ,10匹に印が付いていたとすると,式(X)をつくることができます。ただし,式(X)を利用して,動物の数を予想するには次のA~Dの条件を満たしていなければなりません。

 A 印を付けたものと,印を付けていないものが自由に動きまわり,十分混じり合うこと。
 B 調査する地域で,動物の数の変化や入れ代わりがないこと。
 C 付けた印が,とれないこと。
 D 印を付けたものと,印を付けていないものの,つかまりやすさに差がないこと。

<2> 畑で生活するモンシロチョウの数の調査についてまとめました。畑において,飛んでい るモンシロチョをつかまえたところ,150匹がオス,50匹がメスでした。これらすべてに印を付け,つかまえた場所で逃がしました。翌日,再び同じ場所で同じ時間に飛んでいるモンシロチョウをつかまえたところ, 160匹がオス,60匹がメスでした。その中には,前日に印を付けたものがオスに80匹,メスに6匹含まれていました。この調査において,オスとメスでつかまえた数に違いが生じたのは,メスは卵を産むために,オスほど飛びまわることができないからです。

(1)<1>の式(X)について,(つかまえた後,印を付けた動物の数)をP,(ある地域で生活する動物の数)をQ,(再びつかまえた中で印が付いている動物の数)をR,(再びつかまえた動物の数)をSとした場合,式(X)として成り立つものを選びなさい。

 ア.P:Q=S:R  イ.P:S=Q:R  ウ.P:S=R:Q  エ.P:Q=R:S

(2)<2>の畑で生活するモンシロチョウのオスとメスの数をそれぞれ予想しなさい。

(ラ・サール中)


A:B=C:Dというのは、Bの中にAがいる割合と、Dの中にCがいる割合が同じであると読むことができます。


(1)エ.P:Q=R:S

(2)オス:300匹 メス:500匹


(1)
問題文をじっと見ていても答えにたどり着くまでに時間がかかってしまいます。

問題文を自分の言葉で読み替えるのがコツです。(と、いってもそれが難しいのですが・・)

Q匹のうち、P匹に印をつけて、それをまたごちゃごちゃにまぜます。

つまり

Q匹のうち、P匹はいつでも印がついている というわけです。 (Q=100 P=10 ならば いつでも10匹に1匹は印)

つまり、どういった数をとりだしても、その中には、〈Q匹中 P匹〉という割合で印のついた個体がいます。

これを式にあらわすと、P:Q=R:S になります。

【別解】
また、より統計学的に考えると、

どの集団にも P/Q の割合で 印のついた個体が存在するので、

R=S×(P/Q) ⇒ P:Q=R:S

(なんにせよ、この種の問題を解くには、しっかり問題文を読み込める読解力が最低限必要となります。)

(2)
(1)で導いた比例の式に条件となる数字を当てはめます。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
具体的な数字を一般化する力を培う

この種の問題は問題集をいくらやってもなかなか出会うことはありません。
多くの受験生にとって、初めて出会う問題になったのではないでしょうか。

しかし、ここで「難しい。よく分からない」と投げ出す生徒と、
「とにかくもう一度よく読んで考えてみよう。」という生徒の差がまさに合否の差になったのでしょうか。

そういった意味で、初見の問題に対する粘り強さ、基本的な数式の意味の根本理解、
数に対するセンス、思考力を瞬時にチェックする良問といえますね。

とりわけこの問題でチェックできるのが、「数字を一般化する能力」です。
具体的な数字や事象を読み解き、それを文字式にしたり、図式化する。言ってしまえば簡単ですが、
受験から社会生活まで大きな差を生む大事な能力です。


具体的な数字を処理するというのは与えられた公式・定理・フレームに物事を当てはめることです。
しかし、本問出題校が求めるものは、物事をあてはめる応用力以上に、フレームを生み出す創造力です。
社会の枠にはまる人間でなく、枠を創りだす人間になってほしいという卒業生に求める資質がこの問題からも汲み取れます。



2007年03月05日

灘より。 2007-03-05



灘より。


連続した5つの整数の積が2441880であるとき、これら5つの数のうち最も小さなものを答えなさい。

(灘中)


ある数の約数は、素因数の組み合わせでつくることができます。


2441880を素因数分解すると
2×2×2×3×3×3×5×7×17×19
となる。


並べ替えると
17×(2×3×3)×19×(2×2×5)×(3×7)
=17×18×19×20×21


よって掛け合わせて2441880になる5つの連続した整数は17、18、19、20、21である。


答え:17


「様々な約数が存在する。」は「素因数の組み合わせ方が複数ある。」と同義です。
この考え方が本問の突破口です。

素因数分解をすると素数の17と19が現れるので、その周辺の数から(まずは間の18)検討します。
素因数分解を利用して、「ある数の約数は何通りか。」を求める問題には全員必ず取り組んでいるはずなので、
そこからの類推が求められます。
また指導する側としては、その問題に取り組むときにきちんと理解させておくことが大切です。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
数の成り立つ仕組みについての様々な視点が大切

ある数を数詞としてだけでなく、様々な角度から性質を調べ、
成り立ちを考える姿勢が本問のような問題への対応力の源泉です。

九九の成り立ちから始まり、分配の法則など考えるきっかけとなる問題に出会ったときに、
一歩立ち止まって掘り下げることが大切でしょう。

本校の小問群は、解いてきた問題の量ではなく、思考の積み重ねによって身に付けた瞬発力が必要です。

数のしくみを普段から楽しんでみるような姿勢を持つ本校の求める人材像を選別するのにふさわしい良問でしょう。



2007年02月26日

ラ・サール中より。「割り算」の仕組みの理解力が問われます。 2007-02-26



ラ・サール中より。「割り算」の仕組みの理解力が問われます。


下の(ア)、(イ)にあてはまる数を求めなさい。

13時35分(ア)秒÷18=(イ)分18秒

(ラ・サール中)


割り算の筆算の仕組みを思い出しましょう。「位ごとに分ける作業をする」です。


(ア)を18で割った答えは、(イ)の部分には影響しない。
よって
13時45分=815分から
815分÷18=45.2777・・・
ゆえに(イ)は45

すると
13時45分(ア)秒÷18=45分18秒
となる。
つまり
45分18秒×18=13時45分(ア)秒
(ア)=24

答え:(ア)24、(イ)45


割り算の筆算は、百の位の数、つまり百のかたまりをいくつかに分け、次に十の位の数字分の10のかたまりをまた分ける。
という作業の繰り返しです。

分ける作業を位ごとに毎回行っているのです。

今回でいえば、13時を18で割った答えと、45分を18で割った答えと、

(ア)秒を18で割った答えを足し合わせたものが答えつまり商になるのです。

そう考えれば(ア)は60秒未満ですから18で割ってもその答えは4秒未満です。

すでに商には18秒がありますから、(イ)の部分に影響は与えていないことがわかります。

(ア)がなかったとしても商は(イ)分~秒なのです。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
「数える」手段に対する深い理解が大切

本問のような割り算の考え方は、筆算の仕組みに対する深い理解が背景にあります。

そもそも四則演算の筆算は、「位ごとの数をかたまりとして扱う」ことです。


機械的に行えるだけでは、せっかく時間をかけて身に付けた筆算の技術を応用できません。
きちんとその構造を理解することで「効率よく数える」ことの意味を理解し、
正確で迅速な数え上げの技術が身に付くのです。

まずは、3年生レベルの筆算の仕組みから。

低学年の生徒にも説明できるようにしておくことは、必ず役に立ちます。
一行問題ですが、真の計算力を測る良問でした。



2007年02月12日

フェリス女学院中より。普段使っている数の仕組みの理解が問われます。 2007-02-12



フェリス女学院中より。普段使っている数の仕組みの理解が問われます。


1から2000までの整数のうち、数字の7を使っていない数はいくつありますか。

(フェリス女学院中)


7が抜けるということは数字の種類が9つになってしまうということです。


7以外の9つの数字を使って1から順に表現することは、9進法を意味します。

十の位は9の位になり、百の位は81(9×9)の位になり、千の位は729(9×9×9)の位になります。

この場合、2000は2×1000ではなく、2×729を表すことになります。
これは1から順に9つの数のみを使って数を並べていった場合、2000は2×729=1458番目ということを意味します。

つまり、7以外の9つの数を使ったものは1~2000までの間に1458個あることになります。


答え:1458個


10進法の意味を深く理解していることが問われています。

10進法とは、「数字が0から9までの10種類しかないから、
9の次の数を2つの数字をつかって10と表す。」ことです。

普段わたし達は、1から10までを一括りにしてとらえる傾向がありますが、
「0から9までの10種類」という感覚を持つことが大切です。

N進法の問題は無意味に思われ、クイズのようにとらえられてしまうことの多い分野ですが、
この分野の勉強を、普段なじみ深い10進法や日時における
60進法、7進法、24進法などについて再考する機会にしてほしいものです。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
基本的な数の仕組みに対する理解が大切

算数を勉強する目的として様々なものが挙げられますが、もっとも現実的な問題は、
「ものの数をただしく数え、表すことができるようになる。」なのではないでしょうか。

すべての数を10個の数字で表現する。
数字を書く位置によって表している単位が違う。

など高学年になり当たり前になった時期にこそ、
もう一度振り返ってその仕組みをおさらいすることで新たに発見することもあるのではないでしょうか。

計算の正確さ、速さは繰り返しの練習以上に数の仕組みの理解が高めてくれます。
10進法の意味をきちんと考えるきっかけになる良問でした。




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