2007年09月10日

「約数」の基本問題です。「割り算」において注意すべきポイントを確認しましょう。 2007-09-10



「約数」の基本問題です。「割り算」において注意すべきポイントを確認しましょう。


656をある整数で割ると、いくらか余り、859を割ると余りが1減り、1198を割ると余りがさらに1減る。ある整数をすべて答えなさい。


実は「約数」の典型問題です。
 

問題文の「859を割ると余りが1減る」という条件は、「860を割ると余りが同じ」と言い換えることができます。
また、
「1198を割ると余りがさらに1減る」という条件は、「1200を割ると余りが同じ」と言い換えることができます。

つまり問題は656、860、1200を割って余りが同じになる整数を求めるということになります。

下の線分図のように考えると、それぞれの数の差である204と340が「ある整数」で割り切れることがわかります。
この2つの数の公約数は1、2、4、17、34、68です。

ここで656を割ったときの余りは2以上でなくてはならないことから、ある整数は3以上でなくてはいけないので、

答えは4、17、34、68の4つ。


「3つの整数を割った余りが同じ」というタイプの問題です。
出題されるときは、小問としてテキストに載っているものとほぼ同じ形です。
線分図で余りを左側によせてそろえる点が難しく、必ず一度は取組んでおかないと初見で解くのというのは非現実的なものです。
あまり変形の余地のない問題ですので、本問はかなり手が加えられている部類に入ります。
また割る数や余りを算出する問題では、「余りは割る数より小さい」という割り算の重要な制限を必ず意識しなくてはいけません。
そうすれば、本問のような複雑な問題文の中からでも、「余りは2以上」と「割る数は3以上」という条件を抽出することが出来るでしょう。



2007年09月03日

普連土学園中より。実験→法則発見→日常生活への応用、実験問題の古典です。 2007-09-03



普連土学園中より。実験→法則発見→日常生活への応用、実験問題の古典です。


[実験]
 手順1 3つの1000mlビーカーに0℃,50℃,100℃の水を入れた。
 手順2 冷蔵庫で冷やした500ml入りの炭酸飲料のペットボトル3本のふたをそっと開けた。
  
各ビーカーにペットボトルを1本ずつ入れて観察した。

問1 [実験B]の結果から,水の温度が上がると,気体の溶け方はどう変化すると考えられますか。

間2 真夏の太陽が照りつけるとき,車の窓を閉め切った状態にしておくと,フロントガラス付近の温度は70℃位まで上がります。このため栓を開けていないコーラなどの缶入り炭酸飲料をフロントガラス付近に置きっぱなしにしておくと,缶が破裂することがあります。[実験]の結果を使ってこの理由を説明しなさい。

(普連土学園中・抜粋)



問1がヒントです。
 

問1 水の温度が上がると、溶ける気体の量は少なくなる
問2 炭酸飲料の温度が上がり、溶けていられる気体の量が少なくなり、とけ切れなくなった気体が飲料の外にでていき飲料缶中の圧力が高くなるから。


問1 「温度が上がると出てくる泡の量が多くなる」では正解にはなりません。表を読んでいるだけです。表から物事を一般化する思考力・語彙力が求められています。

問2 缶が破裂するのは、「缶中の気体が増えたから」ではなく「缶中の圧力が上がったから」です。


~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
実験データを一般化し、個別事象に当てはめて考えるという実験→思考→応用の基本中基本を身につける

与えられた事象を一般化して考えることができるといのはまさに知的成長の1ステップです。

複数のデータや事象をただその個別数値・現象と取られるのでなく、そこから全体に当てはめられる法則を導く。
さらに、その法則をつかって他の事象について考える。

まさに科学者と言われる人々が長い歴史の中で繰り返し行ってきたプロセスであり、小学生の皆さんがこれから
学問の道に限らず絶えず求められる思考回路です。

そういった思考ができる生徒を求めるのはもちろん本問出題校だけではありません。
この機会に、実験(具体例) → 一般化 → 他の個別事象への当てはめ 
というプロセスを意識してみてください。



2007年08月27日

大分中より。誰もが解いているあの問題の理解度が問われます。 2007-08-27



大分中より。誰もが解いているあの問題の理解度が問われます。


1から200までの番号が書いてあるドアが並んでいます。
また200人の子供がいて、それぞれに1から200までの番号がつけられています。最初、ドアはすべてしまっています。
子供達は1番の子供から順に自分の番号の倍数が書いてあるドアの状態を変化させます。状態を変化させるというのは、開いているドアは閉めて、閉まっているドアは開けるということです。
(1)(2)省略
(3)1番から200番までのドアで開いているドアは全部で何個ありますか。

(大分中)


ドアの状態は、子供が来る回数に従って交互に変化します。

ドアは閉まっている状態からこれらの作業がスタートします。子供が1回やってくると開けられ、2回目にやってきた子供によって閉められます。
このように開いている状態と閉まっている状態は交互に発生するので、子供が来た回数が奇数ならば常に開いているといえ、偶数ならば常に閉まっているといえます。

子供が来る回数が奇数、つまり約数が奇数個ある番号のドアが、すべての作業を終えたとき開いているドアということになります。
約数が奇数個とは、平方数つまり同じ数を掛け合わせた数です。
1×1=1番、2×2=4番、3×3=9番、4×4=16番、5×5=25番・・・14×14=196番

以上の14個の番号が付いているドアが開いていることになります。

答え:14個


「約数が3個ある数とはどのような数か?」ほぼすべての塾のテキストの約数の単元に出てくる問題です。

素数の二乗とだけ覚えているようでは、本文の「約数は奇数個」に対応できなかったでしょう。

本質的にはこちらのほうが理解は簡単なはずなのにです。

ある数の約数は通常2つで1組で捉えられます。
18の約数は(1と18)(2と9)(3と6)などお互いに掛け合わせて18になるものです。

つまり通常は偶数個あると考えられます。

しかし奇数個しかないということはその組の中に同じ数のもの、
たとえば16に対する(4と4)などが存在することを意味します。

つまり約数が奇数個とは、同じ数を掛け合わせたものなのです。

テキストによく出てくる約数が3個のものとは、その中でも特種なものなのです。

約数の個数などは基本問題として扱われますが、単にかけ算を利用して答えを探す作業だけでなく、
個数や種類などについて考察する機会にすることが大切です。

カリキュラムではすぐに、連除法や公式を利用した約数の個数の算出などに重点が移ってしまうからです。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
公式の背景にある数の性質を知ることが大切

「数の性質」はとても幅広く、苦手にしている生徒も多い分野です。

数学の1分野としてとても奥の深いものですから、それは当然です。
しかし、中学入試で扱われるものは、小学生が知ること、発見することが難しいものはほとんどなく、
何気なく使いこなしているものです。

まずは、「偶数と奇数」や「1桁の数の倍数」などについての性質についての確認から始めてみましょう。
テキストや学校の教科書などには丁寧な説明が書かれています。

結局は公式で済んでしまうからといってとばし読みせず、書き出しや実験などに取り組んでしっかりと考察をしてみることが必要です。
公式がどのような仕組みで機能しているのか、具体的なイメージをもっていれば、簡単な応用をすぐに見抜くことができるようになるのです。



2007年08月20日

昭和女子中より。「特珠算を使える条件」についての理解度が問われます。 2007-08-20



昭和女子中より。「特珠算を使える条件」についての理解度が問われます。


下の図で斜線部分の面積が61平方センチメートルで、白い部分の面積が148平方センチメートルのとき、AC、CDの長さをそれぞれもとめなさい。

(昭和女子中)


「図形」分野の問題ではありません。

斜線部分の2つの三角形の底辺を4倍してみます。
CF´の長さは20cmになり、CG´の長さは36cmになり、斜線部の面積は61×4=244平方センチメートルになる。

ここで、CF´=CBなので、三角形ABCと三角形ACF´の面積は同じ。
よって上図の斜線部244平方センチメートルと白い部分148平方センチメートルの差は三角形CDEと三角形DCG´の差となる。

この2つの三角形は高さがCDで共通、底辺がそれぞれ12cmと36cmであるから、
(36-12)×CD÷2=244-148=96
という式が成り立つ。

よってCD=8cm
白い部分の面積は148平方センチメートルで、三角形CDFの面積は12×8÷2=48センチメートルなので、
三角形ABCの面積は148-48=100平方センチメートル。

BCの長さは20cmであるから、CDと同様に求めてAC=10cm

答え:AC=10cm、CD=8cm


本問は「消去算」に分類される問題です。

2つの未知数について方程式でいう加減法をつかって解く問題です。

斜線部も白い部分もまとめての面積しか与えられておらず、1まとまりとして考えます。
すると、2つの未知数を取り扱う特珠算だと判断できます。

求積問題では、高さ、底辺などの公式のパーツを算出していくタイプと、
相似、和差算、消去算などを活用して面積を1つの値として取り扱うくタイプがあります。
本問は後者の中でも不慣れな生徒の多い問題です。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
特珠算の仕組みを理解していることが大切

本問のように、特珠算を見慣れない題材(特に図形)で出題すると正答率は格段に低くなります。

特珠算は、方程式の代用品と考えて差し支えないものです。
つまり「未知数の数とその数以上の条件式が存在する」という状況を把握したのならば、使えるものなのです。

このように一般化して消化できておらず、
切手やフルーツなどの題材でのみ機械的に練習を積み重ねている生徒には手も足もでず、
また解説を理解することも不可能な問題です。

出題者は、負の数の理解と処理能力が必要となる方程式の使用は期待していません。
「状況を把握して、適切な手法を選ぶ」力を身につけておくことを要求しているのです。

これは、その日に学ぶ内容がタイトルとしてつけられているカリキュラムでは身に付きにくい力です。
普段から、「どのようなときに、なぜそう解くのか」を理解しながらさまざまな解法を学んでいく姿勢が必要です。



2007年08月13日

桜蔭中より。実験データを単なる記号としてではなく意味のある数字としてイメージできないと解けません。 2007-08-13



桜蔭中より。実験データを単なる記号としてではなく意味のある数字としてイメージできないと解けません。


卵の新しさは、食塩水の中に入れて、うくかしずむかで見分けられるということで、つぎの実験をしました。

(1)買ったばかりの卵A、Bと、冷蔵庫の中に長い間入れたままだった卵C、Dを用意しました。

 卵AとCの重さはそれぞれ60gで、卵BとDはそれぞれ50gでした。また、卵Aの体積をはかったら55cm3でした。
(2)重さが100gのビ-カーa~eを用意し、それぞれに水を200cm3ずつ入れました。水1cm3の重さは1gです。ビーカーb~eにそれぞれ下の表の重さの食塩を加えてよくかき混ぜて、全部とかしました。食塩水の体積は、下の表のようになりました。

(3)ビーカーa~eに卵A~Dを静かに入れて、卵がうくか、しずむかを調べました。結果は、下の表のようになりました。

なお、表の中で「途中で止まる」とは、上の図のような状態です。体積1cm3あたりの重さが、食塩水と卵とで等しくなる時に卵は途中で止まります。

つぎの問いに答えなさい。
間1つぎの文の( )~( )にあてはまる数値を下のア~コより1つずつ選んで記号で答えなさい。
ビーカーbの食塩水1cm3の重さは、約( )gになります。卵Cの体積は約( )cm3になります。ビーカーdに卵Aを入れて、上ざら天びんで重さをはかると( )gになります。

ア 0  イ 0.97  ウ 1.03  エ 53.4  オ 55.0  カ 58.3  キ 61.9  ク 335  ケ 390  コ 445

間2 つぎの(1)、(2)の水溶液に卵Aを入れました。卵Aが「うく」ものにはア、「途中で止まる」ものにはイ、「しずむ」ものにはウを記入しなさい。

(1)ビーカーeに、さらに水200cm3を加えてうすめた食塩水。
(2)アルコール50cm3(重さ40g)に、水50cm3を加えた水溶液(体積は97cm3)

間3 この実験の場合、卵の新しさを見分けるのに最も適した食塩水はどれですか。ビーカーの記号で答えなさい。

間4 つぎの(1)、(2)の文について正しいものには○、まちがっているものには×をつけなさい。
(1)適した食塩水を使うと卵の新しさを見分けるのに、卵の重さをはかる必要はない。
(2)同じ重さなら、古い卵は新しい卵より体積が大きい。

(桜蔭中)


実際の試験(当時算数と合わせて55分)では、実際の値を求めて比較する時間はありません。概算力と、それを支える「数字から起きていることをイメージする力」が求められます。


問1 )①ウ ②カ ③ケ
問2 )(1)ウ (2)ウ
問3 ) c
問4 )(1)○ (2)○


問題文を精読し、「浮く・沈む」というのは「1cm3あたりの重さ」の大きさの違いによることを確認します。

問1)
ビーカーbの重さは210g、 体積は204cm3となるので「1cm3あたりの重さ」は 210g/204cm3 となり 1よりわずかに大きい値となります。ここで、210÷204を筆算している生徒は、桜蔭中が必要としない生徒となることでしょう。210/204 が 「だいたい1より少しだけ大きい数」となるというイメージ力を求められています。

卵Cはこの食塩水bと密度が等しいことから、60/? =1.03  ?は60より少しだけ小さい数となる。60と55の差である5の0.03倍は、 0.15にしからない。よって選択肢オの55は除外できる。60÷58.3 と 60÷55などとやっていては試験時間中に解ききれません。
この概算の方法はここでは詳しくはしまぜん。各自「なんとか計算を早くしよう」と拘泥した先に手に入れるテクニックです。各自考えてみてください。

食塩を水にとかしても、食塩の重さは変わらないので、
ビーカーd=卵の重さ + 溶けた食塩の重さ + 水200cm3の重さ + ビーカーの重さ
     = 60g + 30g + 200g + 100g = 390g

問2)
(1) 水400cm3、食塩40gを加えた状態となり、これは水200cm3に食塩を20g加えたもの(ビーカーc)と同じ「1cm3あたりの重さ」となります。
(2)アルコールの「1cm3あたりの重さ」は 90g/97cm3 となり 1よりも小さい値。卵Aは重さ60g体積55cm3(問題文より)なので、卵Aの「1cm3あたりの重さ」は1よりも大きく、アルコール中で沈みます。

問3)
「浮き・沈み」の違いが最もはっきり現れるビーカーを選ぶ。

問4)
たまごを「浮くもの」「沈むもの」に分けることができる。cのビーカーに対して、沈むA,Bが買ったばかりのもの、C,Dが冷蔵庫に保管しておいたものであることから、新しい卵は古い卵に比べて「1cm3あたりの重さ」が大きいことが分かる。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
数字に意味を持たせる姿勢が大切

本文は、十分な時間を与えられれば比較的平易な
計算問題と、実験考察問題です。

合否に影響を与えたのは、短時間にこの問題をとりきる力の有無だと断言できます。
各問題ごとに、それぞれ「1cm3あたりの重さ」の計算をしていたのでは間違いなく時間切れです。

「1より大きい」「1より小さい」
「分母が大きくなれば、全体は小さくなる」
「55の1.03倍はどうやっても60にはとどかない」 等、
概算する能力の有無が求められています。

解説中にも書きましたがこの能力は、一朝一夕には身につきません。
また、1行計算問題集を大量に繰り返しても決して身につきません。

概算力を身につける方法は、唯一、数字を単なる記号でなく、意味のあるかたまりとして
イメージすることです。

例えば、 5.2 / 4.9  を1.06であると計算できることよりも、「1よりも少しだけ大きい数だ」と
イメージできることです。

実際の社会でも、数字の細かい計算よりも、概算によって全体を把握し、判断をしたり方針を立てたりする
能力のほうが遥かに重宝されています。

もちろん正確な計算能力も必要ですが、数式をたんなる記号の羅列としてとらえるだけでは、
計算能力以上のものは身につきません。

(参考)
http://www.lojim.jp/calculation/quiz.cgi



2007年08月06日

巣鴨中より。超基本問題であることを見抜く力が問われます。 2007-08-06



巣鴨中より。超基本問題であることを見抜く力が問われます。


400以下のすべての8の倍数について百の位の数の和を求めなさい。

(巣鴨中)


そもそも百の位の数字とはどのようなものがあるのでしょうか。


400以下の数が対象ですから、そもそも百の位の数は1、2、3、4が対象です。
これはつまり
「100から199まで」「200から299まで」「300から399まで」「400」
のそれぞれの範囲の中にある8の倍数の数を明らかにすればよいことになります。

「100から199まで」の8の倍数の個数を求める。
まず1から199までに8の倍数は
199÷8=24あまり7 より24個ある。

そして1から99までに8の倍数は
99÷8=12あまり3  より12個ある。
よって「100から199まで」の8の倍数は
24-12=12個ある。

また、
「200から299まで」の8の倍数の個数を求める。
まず1から299までの8の倍数は
299÷8=37あまり3 より37個ある。

そして1から199までの8の倍数は上で求めた24個。
よって「200から299まで」の8の倍数は
37-24=13個ある。

さらに
「300から399まで」の8の倍数の個数を求める。
「1から399まで」の8の倍数は
399÷8=49あまり7 より49個ある。

そして1から299までの8の倍数は上で求めた37個。
よって「300から399まで」の8の倍数は
49-37=12個ある。

そして
「400」は8の倍数なので「400」も数えいれる対象となる。

問われているのは百の位の数の和であるから
「100から199まで」は百の位の数は「1」で12個あるので和は1×12=12
「200から299まで」は百の位の数は「2」で13個あるので和は2×13=26
「300から399まで」は百の位の数は「3」で12個あるので和は3×12=36
「400」の百の位の数は「4」で1個あるので和は4×1=4
よってこれらの和は
12+26+36+4=78

答え:78


あまり見かけない形で表現されていますが、
内容は「100から199までの8の倍数の個数を求めなさい」という問題と同じです。

個数を数えているうちに「百の位の数の和」を求めよと問われていることを忘れ、
個数の合計を答えてしまわないようにすることが少々の注意点といえる問題です。

しかし、入試という緊張感のある状況ではこの「あまり見かけない形」への対応力によって大きく差がでます。
本問は大問の1問目です。1行計算問題と比較するとやはり骨のある問題です。
典型問題を様々な角度から検討し、類題にあたっておくことが大切です。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
普段からの基本問題の本質を検討する姿勢が大切

本質的には非常に簡単な問題に対し、本問のようなレベルの
「見かけの装飾」を施された位で対応できなくなるということでは、
勉強が「パターン暗記」になっていると言わざるをえないでしょう。

指導する人間はよく「このようなタイプの問題は・・・」という言葉を使いがちですが、
子供たちにとって大きな障壁は「このようなタイプ」を判別することです。

「このようなタイプ」とはいったい何を指しているのか。見分ける指標は何か。そしてどのような類題がありえるのか。

これらのことを子供たちに考えさせ、見抜く力を養わなくては、
算数重視の難関校にはまったく歯が立たなくなります。

6年生後半の応用期に突然算数の得点が下がってくるのは
このような勉強をしてこなかったことに大きな原因があります。

1つ1つの基本問題に対して、「この問題はなぜこのようにとくのか」について検討しましょう。

本問は、高いレベルの理系教育を受け続ける上で必須の、
このような勉強姿勢を1問目からしっかり測定しようとしている良問でした。



2007年07月30日

専大松戸中より。 使用する特殊算の判断能力が問われます。 2007-07-30



専大松戸中より。 使用する特殊算の判断能力が問われます。


直角三角形ABCと直角三角形DBEを下の図のように重ねました。
(1)三角形ABCと三角形DBFの面積の比を最も簡単な整数の比で表しなさい。
(2)(3)省略

(専大松戸中)


線分比にだけとらわれると行き詰まります。


AD:DB=1:1より、三角形ADFの面積:三角形DBFの面積=1:1
BC:CE=2:3より、三角形FBCの面積:三角形FCEの面積=2:3
ここで、三角形ABCの面積は6×(6+6)÷2=36、
三角形DBEの面積は6×(6+9)÷2=45より

三角形DBFの面積は=11.25なのでもとめる三角形ABCと三角形DBFの面積の比は
36:11.25=16:5


答え:16:5


図形が典型的な「線分比と面積比」のものなので、単純な戦略に固執してしまいがちな問題です。

AF:FCを求めることができれば三角形DBFの面積は簡単に求まるのですが、この方針はすぐに行き詰ってしまいます。
このような典型的な図形から、すぐに「線分比と面積比」を思い浮かべることができるのは、きちんと練習を積み重ねてきた証拠です。

本問では、そこで行き詰った上での思考力が問われます。
未知数と与えられた式の数が同じか、式の数の方が多い場合、消去算、鶴亀算は当然考えなくてはいけない方針なのです。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
特殊算を使える場面を正確に判断する力が大切

テキストでは消去算はたいてい「りんごと○個とみかん○個を買うと・・・円」といった問題が並んでおり、
鶴亀算では「50円切手○枚と80円切手○枚を買うと・・・円」といった問題が並んでいます。

特珠算は、その作業自体は単純で方程式のように機械的に答えを算出することができます。

しかし、特珠算が本当に難しいのは、初めてみる問題文の状況設定の中において、
その条件をしっかり読み取り使いこなすことです。

つまり特殊算は「どのような状況なら使えるのか。」ということについてきちんと一般化されて理解しておくことが大切なのです。
本問のように、違った分野の典型問題を解いている最中には、「見たことがある!」という気持ちに引きずられて、
既知の方針に固執してしまいがちです。

本問は、そのような状況下でも、冷静に他の方針を検討するという姿勢が問われている良問です。



2007年07月23日

頌栄女子学院中より。複数段階の論理展開を行うための基礎的な問題。 2007-07-23



頌栄女子学院中より。複数段階の論理展開を行うための基礎的な問題。


ニュージーランドの方が日本よりも年間の気温の変化が小さくなっています。これには、
冬にあたる時期の気温の違いが大きく関わってきます。同じ島国でありながら、
日本の冬の気温は低く、ニュージーランドの冬の気温は比較的暖かいのはなぜですか。次のヒントをもとに説明しなさい。

《ヒント1》
水は温まりにくく冷めにくい物質である。岩石や砂、土などには、水に比べると温まりやすく冷めやすい。

《ヒント2》
それぞれの国の周りの様子(下図)

(頌栄女子学院中)


日本は、温度変化の大きい大陸が近くにあり、大陸が冷えた際の影響を受け気温が下がる。

これに対し、ニュージーランドは、まわりを広い海に囲まれており、冬になって冷やされても温度の変化が小さく、
海水が冷えることでの影響が少ない。

このため 同じ島国でありながら日本とニュージーランドでは冬の気温差が生じる。


ヒント1 ⇒ 水は温度変化が小さい ⇒ 海は冬になっても、陸ほど温度が下がらない。
     ⇒ 岩石・砂・土は温度変化が大きい ⇒ 陸は冬になると、海よりも温度が下がる。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
複数段階の「だから」をつかった論理展開ができるようになってほしい

「良問」と言われる問題の多くによく見られるパターンですが、

単に、
条件・ヒント ⇒ 結論・解答

というプロセスを求めるのではなく、

条件・ヒント ⇒(だから)⇒ 考察 ⇒(だから)⇒ 考察 ⇒(だから)⇒ 結論・解答 

というように、確実に「だから」でつながる事象をつなげたり、時には言えそうな予想(仮説)をたて、
複数段階にわたって「だから」思考の積み重ねを要します。

本問は、ヒント⇒考察⇒解答 という比較的平易な種類の論理展開での解答が可能ですが、
同様の問題でも考察が数段階になったとたん多くの受験生にとって「難問」となってしまうのが、
教室での実感です。

1つの知識を学んだら、そこから「だから」を使って派生させ周辺知識を覚えるという習慣を身につけましょう。
多くの成人に関しても「だから」が正しく使われているかはそもそも疑問です。

小学生のうちから「だから」で思考を広げる訓練を積みたいものです。



2007年07月16日

麻布中より。問題文の条件の本質をしっかりと読み取りましょう。 2007-07-16



麻布中より。問題文の条件の本質をしっかりと読み取りましょう。


父母とこども3人の家族があります。父は母より5歳年上で、こどもは2歳ずつ年がはなれています。父母がともに20歳以上のとき、最初のこどもが生まれました。父母の年齢の和と子供の年齢の和が等しくなるときの、父母の年齢と子供の年齢の例を1つ書きなさい。ただし、父母はともに80歳以下の例で答えなさい。

(麻布中))


こどもの年齢の和にはある条件が隠れています。


それぞれの年齢の和の条件について整理する。

父母の年齢の和は、
「父の年齢」+「母の年齢」=「母の年齢+5」+「母の年齢」=「母の年齢」×2+5
なので奇数である。

さらに父は80歳以下なので、母は80-5=75歳以下である。
つまり父母の年齢の和は80+75=155歳以下である。

また、3人のこどもの年齢の和は
「長男」+「次男」+「三男」=「次男+2」+「次男」+「次男-2」=「次男」×3
なので3の倍数である。

以上より父母、そして3人兄弟の年齢の和として「155以下」で「奇数」で「3の倍数」を考えればよいことになる。

大きい順に試してみる。

等しくなる年齢の和が153歳の時、
父は79歳、母は74歳となる。このとき、こどものねんれいの和は53歳、51歳、49歳である。
母と長男の年齢差は21歳、つまりは長男は母が21歳のときに生まれているから、問題文の条件に合う。

よってこれらの年齢は問題文の条件に適した年齢の一例である。

答え:父79歳、母74歳、こども53歳、51歳、49歳


問題の提示のされ方から、答えが何通りか考えられることがわかります。

場合の数についても共通する考え方ですが、答えの幅を確定させるためには、
その条件をきちんと整理できていなくてはいけません。

問題文を徹底的に精査し、条件を洗い出すことが必要です。

本問では、父母、こどもそれぞれの年齢の和に関しての条件を洗い出した後は、
最初の試行(年齢の和は153歳の場合)で適切な答えにたどり着くことが出来ますが、
その条件自体は問題文で与えられる数字を単純に線分図化しても発見が難しい、
高度な条件の抽出問題でした。



筑波大付属中より。問題文を読む姿勢が問われます。 2007-07-16



筑波大付属中より。問題文を読む姿勢が問われます。


算数のテストの得点を調べたら、0点の人は1人もいませんでした。また、田中さんの得点から中村さんの得点をひいた差が、ちょうど山本さんの得点と同じになりました。次のうち、正しいものはどれでしょう。

(ア)田中さんの得点は、中村さんの得点と山本さんの得点の和よりも多い。
(イ)田中さんの得点と山本さんの得点の和がちょうど中村さんの得点に等しい。
(ウ)中村さんと山本さんの得点はどちらも田中さんの得点より少ない。
(エ)田中さんの得点と中村さんの得点の和がちょうど山本さんの得点に等しい。


(筑波大付属中)


「差」を扱う問題の定石手法が突破口です。


問題文の
「田中さんの得点から中村さんの得点をひいた差がちょうど山本さんの得点と同じになりました。」
を線分図で表すと下記の通りとなる。

よって
ア:田中さんの得点と中村さん、山本さんの得点の和は等しいので誤り
イ:田中さんの得点は一番高いので明らかに誤り
エ:田中さんの得点は一番高いので明らかに誤り

答え:ウ


不等式など、関係性を数式処理によって表して処理しようとすると複雑になり、
時間もかかってしまいます。

問題文の「差」という表現に着目し、線分図によって整理するという定石手法によって問題の整理が一気に進みます。

旅人算などもそうですが、与えられた情報を見やすい形に整理して、
より多くの情報を引き出すという姿勢をもっていることが必要となる問題でした。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
問題文の条件の図式化が大切

線分図をはじめとして小学生では「~図」に整理するという手法を数多く学びます。

方程式にとってかわられるという理由で避けてしまう指導者、生徒も多いのですが、
この図式化によって学べることは、方程式によって学べることとは異質のものです。

式の処理によってだけでなく、図にして幾何学的に考える作業というのは高度な数学の能力として必要となるものであり、
なにより数の性質を多面的に捉えることになる魅力的な手法です。

現実問題として、昨今の入試問題では、
方程式で処理した場合時間がかかりすぎてしまう仕掛けがされることも多くなっています。

小学生ならではの様々なものの捉え方を楽しむ姿勢が必要です。
洗練された図式化により一気に解ける。図式化の価値と面白さを教えてくれる良問でした。




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