今週は、灘中入試から算数分野の一問です。 2005-12-12
今週は、灘中入試から算数分野の一問です。
6桁の 整数 5ABC15 が999の倍数となるとき、3桁の整数 ABC を求めなさい。
(灘中学校)
「999の倍数」とは、どのような数なのか?について考えることが出発点になります 。
5ABC15は999の倍数であることから、
5ABC15=999×□と表すことができる。
この□に入る整数を探しだす。
まず、□は3桁の数である。
なぜなら、
1.最大の2桁の数99を代入しても6桁の数にはならない。(答えは98901となる)
2.最小の4桁の数1000を代入しても、999000となり、問題の数をこえてしまう。
からである。
それでは、この3桁の数を考える。
まず一の位が5であることが確定する。
5ABC15の一の位が5であることから、
999の一の位の9と、□の一の位を掛け合わせた場合の
商の一の位が5となることがわかる。
よって、
□の一の位は5となるのである。
このことから、
百の位も5となることがわかる。
なぜなら
百の位が6だとすると、
□が最小の605の場合でも999×605=604395となり不 適。
また百の位が4だとすると、
□が最大の495の場合でも999×495=494505となり不 適。
だからである。
この時点で5ABC15=999×5☆5 と置くことができる。
以下、☆に0から数字を代入して調べる。
☆=0のとき…504495
☆=1のとき…514485
☆=2のとき…524475
☆=3 , ☆=4, ・・・・・・・・・・
☆=8のとき…584415
(☆=8を代入して初めて 5ABC15 というカタチになる)
よって、ABC=844 答え 844
虫食い算の典型問題です。
1.概算で桁数を判別する。
2.九九の答えの特徴についての知識を活かす。
という2つの作業で、桁数すらわからない「□」を見つける労力が大幅に減ります。
いずれも、虫食い算の基本的な作業です。
このように、ある数を計算ではなく
数に関する知識で求めなくてはいけない問題は実は多くありません。
知識を使わなければ、「数式化⇒算術による計算作業」では、試験時間を超える膨大な時間を要し、まったく手も足もでないという状況に陥ることも事実です。
実は、この2つの作業は、「正確で迅速な計算力」を支える大きな柱です。
小数の計算における小数点の打ち間違いは、
概算によってほぼ確実に避けることができます。
本番ではあまり出題されることのない虫食い算ですが、
本問は、計算問題や数の性質の重要性について考える
良い機会となるメッセージ性のある良問といえるでしょう。
灘中をはじめとする上位校の計算問題は、単純な反復練習だけではなく、数の性質について日ごろから注目し、考察を重ねながら解いてきたかどうかで大きな差 が生まれます。低学年でも太刀打ちでき、とても多くのことを学べる内容ですので、是非取り組んでみましょう。
~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・定義・仕組みの根本的な理解が大切
灘中学校の1日目は、
膨大な量を適切にこなす正確性とスピードが問われる問題構成となっています。
それをこなすには、反復練習で身に付けたスピードだけでは太刀打ちできません。
基本知識の深い理解からのみ導き出せる洗練された解法で、
簡潔に解き進めなくてはいけません。
普段何気なく活用している、公式や知識は結果にすぎません。
それぞれの背景について、
しっかりと説明することができるのかどうかが問われています。
良く使う簡単な知識ほど、その背景を忘れてしまいがちなのです。
.本問では、もっとも基本的な、「九九と計算」に関して問われています。
「一の位が5になる九九を挙げてみよう!それらに共通点や規則性はあるかな?」
小学校2年生のクラスで必ず取組む問題です。
この知識を忘れてし まうだけでなく、いつのまにか解説という結果だけを吸収しようする姿勢になってしまっていては、本問にはもちろん、上位校の問題、そして入学後の勉強にも 対応することはできないでしょう。
掛け算や割り算の筆算や、つるかめ算や差集め算などの算術を中心に「なぜその方法で答えがでるのか?」について考えた り、九九、分数などの仕組みについてもう一度復習してみることはとても大きな意義があることでしょう。
「2つの三角形が相似ならば・・・」
についての知識はとても確かなものになっているかと思いますが、
「2つの三角形が相似となる条件」
について正確に挙げることのできる生徒は意外なほどに少ないのです。