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2007年10月22日

極端な場合を考えて見通しをよくします。 2007-10-22



極端な場合を考えて見通しをよくします。

箱の中に3と書かれたカードと5と書かれたカードがそれぞれたくさん入っています。この箱からカードを何枚か取り出し、書いてある数の合計を調べます。たとえば、合計9になるのは3のカードが3枚取り出される場合のみの1通りです。このとき合計2003になる取り出し方は何通りありますか。


ノーヒントです。
 

なるべくたくさんの3のカードをつかって2003を表すことにする。

すると2003÷3=667余り2より、3のみで2003を作ることは不可能です。そこで余り2に着目し、
2003=3×666+5×1
より666枚の3のカードと、1枚の5のカードで作る組み合わせが出来ることを確認する。

ここで、合計の2003を変えずにカードの組み合わせを変えていく。
つまり、合計を変えないようにしながら、3のカードを減らし、5のカードを増やす。
(なぜなら3のカード666枚は最多の場合だから)

合計を変えないためには減らした3のカードの合計と増やした5のカードの合計が同じになるようにしなくてはいけない。

つまり3と5の最小公倍数に着目して、3のカードを5枚分合計15減らし、
5のカードを3枚分合計15増やすという作業によって、組み合わせを変えていけばよい。


3のカード666枚を5枚ずつ減らしていく作業は666÷5=133余り1より133回実施することができる。

よって組み合わせは最初に見つけたものと合わせて134通り考えられる。

答え:134通り


様々な組み合わせを考える問題はまず極端な場合を考えて、
どれくらいの範囲にあるのか、概算をすると見通しがよくなります。

つるかめ算と同じ考え方です。本問はなるべく多くの5のカードを使う場合からスタートしても解くことができます。


また、次に取組むことになる「和を一定に保つ」ための作業は、いろいろな形に姿を変え出題されます。
当然、増やした分を減らす、掛けた分を割るという還元作業をすればよいのですが、そう単純にはいきません。

本問は減らすときには3が単位となり、増やすときには5が単位となります。

このように、還元するときに単位が変わる
(水を捨てるときと入れるときの単位時間当たりの水量が違うなど)のが常套なので、
両者を丁寧にそろえる作業から手をつけていきましょう。


2007年10月15日

問題文の「少なくとも」をうまく言い換えて、計算を出来る形にします。 2007-10-15



問題文の「少なくとも」をうまく言い換えて、計算を出来る形にします。


Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさん、Fさん、Gさんの7人がかけっこをしました。 ありえる着順を考えます。AさんがBさん、Cさんの少なくとも1人よりも先にゴールするような着順は何通り考えられますか。同着はないものとします。


ノーヒントです。
 

Aさんが、BさんとCさんの少なくともどちらかより先にゴールするということは、Aさんは「この3人の中で最下位ではない」と言い換えることが出来ます。

ここで考えられるすべての着順は
7×6×5×4×3×2×1=5040通りありますが、これらはAさん、Bさん、Cさんの3人にだけ注目して、
(ア)3人の中でAさんが最下位
(イ)3人の中でBさんが最下位
(ウ)3人の中でCさんが最下位
の3つに分けることができます。
問われているのは(ア)以外ですが、(ア)も(イ)も(ウ)も同じ確率で起こりうるので、
(イ)と(ウ)の合計は5040×2/3=3360通り。

答え:3360通り


言い換えの効用について学ぶ問題です。

「少なくとも」という表現は幅がありますので、その幅をしっかりと確定させ、計算処理するための下地を作る必要があります。

特に場合の数に関しては、問題文の指示する数えるべきものをうまく言い換えると簡単に数えられるものに変換できることがあります。

「問題文の条件は、より使いやすい形に言い換えることはできないか」と探る視点と、正しく言い換える正確な論理能力が問われる問題でした。


2007年10月01日

問題文に明記されていない隠れた条件をつかって絞り込みます。 2007-10-01



問題文に明記されていない隠れた条件をつかって絞り込みます。


のぼるくんは、1から順番に1、2、3、4、5・・・・とある数字まで黒板に書きました。のぼるくんがその中の1個の数字を消してしまいました。すると残りの数の平均は590/17になりました。のぼるくんの消した数を求めなさい。


1から連続する整数の平均は、数を1つ消してもある範囲内でしか増減しません。
 

平均が590/17ということは、1つ消してしまった後の数字の個数は17の倍数になります。・・・・・ (条件1)


平均の 590/17=34 と 12/17 です。
ここで1からある数Aまでの連続する整数の平均について考えます。

ここから1つの数字を消すことにします。1を消したときに平均は最も大きく増加します。その増える値は必ず0.5です。
また、Aを消したときに平均は最も大きく減少します。その減る値もまた必ず0.5です。
つまり元々の平均は34と12/17から+-0.5の範囲内にあることになります。・・・・・ (条件2)


さらに、いくつかの連続する整数の平均は必ず整数もしくは小数部分が0.5になります。 ・・・・・(条件3)

条件1から3より、元々の平均は34.5で、1つ消した後の数字の個数は68個、つまり元々の数字の個数は69個になります。
1から69までの合計は(1+69)×69÷2=2415
また、1つ消してしまった後の数の合計は590/17×68=2360
よって消した数字は2415-2360=55

答え:55


算数オリンピックからの出題です。

条件2についてきちんと把握することが鍵となる問題でした。

1から連続する整数をならべてみてください。
平均は、最初の数1と最後の数を足して2で割ったものになることがわかるはずです。

最後の数をAとすると
(1+A)÷2で平均が求まります。

ここで1を消すと平均はもっとも高くなりますが、その値は
(2+A)÷2です。

先程の(1+A)÷2  は  1÷2+A÷2  と変形できるので、
(2+A)÷2  つまり  2÷2+A÷2  との差は  1÷2  と  2÷2  の差の 0. 5ということになります。

同様にAを消すときのことを考えるとその差は
A÷2  と  (A-1)÷2  つまり  A÷2-1÷2  との差となり、これも0.5となります。


問題文に明記されている数字や式などでは式を立ててとくには明らかに足りないとき、
問題文の裏に隠された条件を読み解くことが鍵になります。

上記の平均の増減幅に関しては、平均算でよく使われる面積図を使っても理解は可能です。

是非試みて確認しておいてください。


2007年09月17日

簡単な虫食い算ですが、論理的に解いてみましょう。 2007-09-17



簡単な虫食い算ですが、論理的に解いてみましょう。


次のア、イ、ウに入る数字を答えなさい。


アとイの数字の関係に着目するところからスタートです。
 

百の位のアの下に、アとは異なるイがきているということは、繰り上がりによって数字が変わっていることになります。

2つの数字の足し算ですから、繰り上がりとして考えられるのは1のみ。
つまりアに1を足すとイになることがわかります。・・・(1)


次に1の位の足し算に注目します。ウ+ウはアとなっています。
これはウ×2の一の位がアと考えると、アは偶数であることがわかります。・・・(2)


(1)、(2)より(ア、イ)の組み合わせは(0、1)(2、3)(4、5)(6、7)(8、9)です。
※0が偶数かどうかは議論がありますが、アの候補として0が挙がることは理解できるでしょう。


ここで十の位の足し算に注目します。イ+アは、(1)で考えたように繰り上がらなくてはいけませんので、
足すと10以上ということになります。つまり上の候補の内、適当なものは(6、7)と(8、9)の2つのみとなります。

この2つを検討します。

(6、7)だと、一の位の足し算に注目して考えられるのは3もしくは8。3で673+63=736で正解。
8は十の位で6と7の和13の一の位3に繰り上がりの1を加えても4にしかならないので不適。

(8、9)だと、一の位の足し算に注目して考えられるのは4もしくは9。4だと十の位で8と9の和が7となり不適。9はすでにイで使われたため不適。
よって答えは673+63=736の一通り。


答え:ア:6、イ:7、ウ:3


2年生クラスの問題でした。説明まで出来た生徒は少なかったのですが、
当てはめで偶然に出来たというレベルから一歩進んで説明ができるようになると、
数の持つ性質、規則への配慮が行き届くようになります。

虫食い算の説明を書くというのは四則演算のそれぞれの仕組みについて考えるのには絶好の教材です。
数学の女王「整数」の入り口として、是非活用してください。


2007年09月10日

「約数」の基本問題です。「割り算」において注意すべきポイントを確認しましょう。 2007-09-10



「約数」の基本問題です。「割り算」において注意すべきポイントを確認しましょう。


656をある整数で割ると、いくらか余り、859を割ると余りが1減り、1198を割ると余りがさらに1減る。ある整数をすべて答えなさい。


実は「約数」の典型問題です。
 

問題文の「859を割ると余りが1減る」という条件は、「860を割ると余りが同じ」と言い換えることができます。
また、
「1198を割ると余りがさらに1減る」という条件は、「1200を割ると余りが同じ」と言い換えることができます。

つまり問題は656、860、1200を割って余りが同じになる整数を求めるということになります。

下の線分図のように考えると、それぞれの数の差である204と340が「ある整数」で割り切れることがわかります。
この2つの数の公約数は1、2、4、17、34、68です。

ここで656を割ったときの余りは2以上でなくてはならないことから、ある整数は3以上でなくてはいけないので、

答えは4、17、34、68の4つ。


「3つの整数を割った余りが同じ」というタイプの問題です。
出題されるときは、小問としてテキストに載っているものとほぼ同じ形です。
線分図で余りを左側によせてそろえる点が難しく、必ず一度は取組んでおかないと初見で解くのというのは非現実的なものです。
あまり変形の余地のない問題ですので、本問はかなり手が加えられている部類に入ります。
また割る数や余りを算出する問題では、「余りは割る数より小さい」という割り算の重要な制限を必ず意識しなくてはいけません。
そうすれば、本問のような複雑な問題文の中からでも、「余りは2以上」と「割る数は3以上」という条件を抽出することが出来るでしょう。


2007年08月27日

大分中より。誰もが解いているあの問題の理解度が問われます。 2007-08-27



大分中より。誰もが解いているあの問題の理解度が問われます。


1から200までの番号が書いてあるドアが並んでいます。
また200人の子供がいて、それぞれに1から200までの番号がつけられています。最初、ドアはすべてしまっています。
子供達は1番の子供から順に自分の番号の倍数が書いてあるドアの状態を変化させます。状態を変化させるというのは、開いているドアは閉めて、閉まっているドアは開けるということです。
(1)(2)省略
(3)1番から200番までのドアで開いているドアは全部で何個ありますか。

(大分中)


ドアの状態は、子供が来る回数に従って交互に変化します。

ドアは閉まっている状態からこれらの作業がスタートします。子供が1回やってくると開けられ、2回目にやってきた子供によって閉められます。
このように開いている状態と閉まっている状態は交互に発生するので、子供が来た回数が奇数ならば常に開いているといえ、偶数ならば常に閉まっているといえます。

子供が来る回数が奇数、つまり約数が奇数個ある番号のドアが、すべての作業を終えたとき開いているドアということになります。
約数が奇数個とは、平方数つまり同じ数を掛け合わせた数です。
1×1=1番、2×2=4番、3×3=9番、4×4=16番、5×5=25番・・・14×14=196番

以上の14個の番号が付いているドアが開いていることになります。

答え:14個


「約数が3個ある数とはどのような数か?」ほぼすべての塾のテキストの約数の単元に出てくる問題です。

素数の二乗とだけ覚えているようでは、本文の「約数は奇数個」に対応できなかったでしょう。

本質的にはこちらのほうが理解は簡単なはずなのにです。

ある数の約数は通常2つで1組で捉えられます。
18の約数は(1と18)(2と9)(3と6)などお互いに掛け合わせて18になるものです。

つまり通常は偶数個あると考えられます。

しかし奇数個しかないということはその組の中に同じ数のもの、
たとえば16に対する(4と4)などが存在することを意味します。

つまり約数が奇数個とは、同じ数を掛け合わせたものなのです。

テキストによく出てくる約数が3個のものとは、その中でも特種なものなのです。

約数の個数などは基本問題として扱われますが、単にかけ算を利用して答えを探す作業だけでなく、
個数や種類などについて考察する機会にすることが大切です。

カリキュラムではすぐに、連除法や公式を利用した約数の個数の算出などに重点が移ってしまうからです。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
公式の背景にある数の性質を知ることが大切

「数の性質」はとても幅広く、苦手にしている生徒も多い分野です。

数学の1分野としてとても奥の深いものですから、それは当然です。
しかし、中学入試で扱われるものは、小学生が知ること、発見することが難しいものはほとんどなく、
何気なく使いこなしているものです。

まずは、「偶数と奇数」や「1桁の数の倍数」などについての性質についての確認から始めてみましょう。
テキストや学校の教科書などには丁寧な説明が書かれています。

結局は公式で済んでしまうからといってとばし読みせず、書き出しや実験などに取り組んでしっかりと考察をしてみることが必要です。
公式がどのような仕組みで機能しているのか、具体的なイメージをもっていれば、簡単な応用をすぐに見抜くことができるようになるのです。


2007年08月20日

昭和女子中より。「特珠算を使える条件」についての理解度が問われます。 2007-08-20



昭和女子中より。「特珠算を使える条件」についての理解度が問われます。


下の図で斜線部分の面積が61平方センチメートルで、白い部分の面積が148平方センチメートルのとき、AC、CDの長さをそれぞれもとめなさい。

(昭和女子中)


「図形」分野の問題ではありません。

斜線部分の2つの三角形の底辺を4倍してみます。
CF´の長さは20cmになり、CG´の長さは36cmになり、斜線部の面積は61×4=244平方センチメートルになる。

ここで、CF´=CBなので、三角形ABCと三角形ACF´の面積は同じ。
よって上図の斜線部244平方センチメートルと白い部分148平方センチメートルの差は三角形CDEと三角形DCG´の差となる。

この2つの三角形は高さがCDで共通、底辺がそれぞれ12cmと36cmであるから、
(36-12)×CD÷2=244-148=96
という式が成り立つ。

よってCD=8cm
白い部分の面積は148平方センチメートルで、三角形CDFの面積は12×8÷2=48センチメートルなので、
三角形ABCの面積は148-48=100平方センチメートル。

BCの長さは20cmであるから、CDと同様に求めてAC=10cm

答え:AC=10cm、CD=8cm


本問は「消去算」に分類される問題です。

2つの未知数について方程式でいう加減法をつかって解く問題です。

斜線部も白い部分もまとめての面積しか与えられておらず、1まとまりとして考えます。
すると、2つの未知数を取り扱う特珠算だと判断できます。

求積問題では、高さ、底辺などの公式のパーツを算出していくタイプと、
相似、和差算、消去算などを活用して面積を1つの値として取り扱うくタイプがあります。
本問は後者の中でも不慣れな生徒の多い問題です。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
特珠算の仕組みを理解していることが大切

本問のように、特珠算を見慣れない題材(特に図形)で出題すると正答率は格段に低くなります。

特珠算は、方程式の代用品と考えて差し支えないものです。
つまり「未知数の数とその数以上の条件式が存在する」という状況を把握したのならば、使えるものなのです。

このように一般化して消化できておらず、
切手やフルーツなどの題材でのみ機械的に練習を積み重ねている生徒には手も足もでず、
また解説を理解することも不可能な問題です。

出題者は、負の数の理解と処理能力が必要となる方程式の使用は期待していません。
「状況を把握して、適切な手法を選ぶ」力を身につけておくことを要求しているのです。

これは、その日に学ぶ内容がタイトルとしてつけられているカリキュラムでは身に付きにくい力です。
普段から、「どのようなときに、なぜそう解くのか」を理解しながらさまざまな解法を学んでいく姿勢が必要です。


2007年08月06日

巣鴨中より。超基本問題であることを見抜く力が問われます。 2007-08-06



巣鴨中より。超基本問題であることを見抜く力が問われます。


400以下のすべての8の倍数について百の位の数の和を求めなさい。

(巣鴨中)


そもそも百の位の数字とはどのようなものがあるのでしょうか。


400以下の数が対象ですから、そもそも百の位の数は1、2、3、4が対象です。
これはつまり
「100から199まで」「200から299まで」「300から399まで」「400」
のそれぞれの範囲の中にある8の倍数の数を明らかにすればよいことになります。

「100から199まで」の8の倍数の個数を求める。
まず1から199までに8の倍数は
199÷8=24あまり7 より24個ある。

そして1から99までに8の倍数は
99÷8=12あまり3  より12個ある。
よって「100から199まで」の8の倍数は
24-12=12個ある。

また、
「200から299まで」の8の倍数の個数を求める。
まず1から299までの8の倍数は
299÷8=37あまり3 より37個ある。

そして1から199までの8の倍数は上で求めた24個。
よって「200から299まで」の8の倍数は
37-24=13個ある。

さらに
「300から399まで」の8の倍数の個数を求める。
「1から399まで」の8の倍数は
399÷8=49あまり7 より49個ある。

そして1から299までの8の倍数は上で求めた37個。
よって「300から399まで」の8の倍数は
49-37=12個ある。

そして
「400」は8の倍数なので「400」も数えいれる対象となる。

問われているのは百の位の数の和であるから
「100から199まで」は百の位の数は「1」で12個あるので和は1×12=12
「200から299まで」は百の位の数は「2」で13個あるので和は2×13=26
「300から399まで」は百の位の数は「3」で12個あるので和は3×12=36
「400」の百の位の数は「4」で1個あるので和は4×1=4
よってこれらの和は
12+26+36+4=78

答え:78


あまり見かけない形で表現されていますが、
内容は「100から199までの8の倍数の個数を求めなさい」という問題と同じです。

個数を数えているうちに「百の位の数の和」を求めよと問われていることを忘れ、
個数の合計を答えてしまわないようにすることが少々の注意点といえる問題です。

しかし、入試という緊張感のある状況ではこの「あまり見かけない形」への対応力によって大きく差がでます。
本問は大問の1問目です。1行計算問題と比較するとやはり骨のある問題です。
典型問題を様々な角度から検討し、類題にあたっておくことが大切です。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
普段からの基本問題の本質を検討する姿勢が大切

本質的には非常に簡単な問題に対し、本問のようなレベルの
「見かけの装飾」を施された位で対応できなくなるということでは、
勉強が「パターン暗記」になっていると言わざるをえないでしょう。

指導する人間はよく「このようなタイプの問題は・・・」という言葉を使いがちですが、
子供たちにとって大きな障壁は「このようなタイプ」を判別することです。

「このようなタイプ」とはいったい何を指しているのか。見分ける指標は何か。そしてどのような類題がありえるのか。

これらのことを子供たちに考えさせ、見抜く力を養わなくては、
算数重視の難関校にはまったく歯が立たなくなります。

6年生後半の応用期に突然算数の得点が下がってくるのは
このような勉強をしてこなかったことに大きな原因があります。

1つ1つの基本問題に対して、「この問題はなぜこのようにとくのか」について検討しましょう。

本問は、高いレベルの理系教育を受け続ける上で必須の、
このような勉強姿勢を1問目からしっかり測定しようとしている良問でした。


2007年07月30日

専大松戸中より。 使用する特殊算の判断能力が問われます。 2007-07-30



専大松戸中より。 使用する特殊算の判断能力が問われます。


直角三角形ABCと直角三角形DBEを下の図のように重ねました。
(1)三角形ABCと三角形DBFの面積の比を最も簡単な整数の比で表しなさい。
(2)(3)省略

(専大松戸中)


線分比にだけとらわれると行き詰まります。


AD:DB=1:1より、三角形ADFの面積:三角形DBFの面積=1:1
BC:CE=2:3より、三角形FBCの面積:三角形FCEの面積=2:3
ここで、三角形ABCの面積は6×(6+6)÷2=36、
三角形DBEの面積は6×(6+9)÷2=45より

三角形DBFの面積は=11.25なのでもとめる三角形ABCと三角形DBFの面積の比は
36:11.25=16:5


答え:16:5


図形が典型的な「線分比と面積比」のものなので、単純な戦略に固執してしまいがちな問題です。

AF:FCを求めることができれば三角形DBFの面積は簡単に求まるのですが、この方針はすぐに行き詰ってしまいます。
このような典型的な図形から、すぐに「線分比と面積比」を思い浮かべることができるのは、きちんと練習を積み重ねてきた証拠です。

本問では、そこで行き詰った上での思考力が問われます。
未知数と与えられた式の数が同じか、式の数の方が多い場合、消去算、鶴亀算は当然考えなくてはいけない方針なのです。

~今回の問題より導かれる出題校からのメッセージ~
特殊算を使える場面を正確に判断する力が大切

テキストでは消去算はたいてい「りんごと○個とみかん○個を買うと・・・円」といった問題が並んでおり、
鶴亀算では「50円切手○枚と80円切手○枚を買うと・・・円」といった問題が並んでいます。

特珠算は、その作業自体は単純で方程式のように機械的に答えを算出することができます。

しかし、特珠算が本当に難しいのは、初めてみる問題文の状況設定の中において、
その条件をしっかり読み取り使いこなすことです。

つまり特殊算は「どのような状況なら使えるのか。」ということについてきちんと一般化されて理解しておくことが大切なのです。
本問のように、違った分野の典型問題を解いている最中には、「見たことがある!」という気持ちに引きずられて、
既知の方針に固執してしまいがちです。

本問は、そのような状況下でも、冷静に他の方針を検討するという姿勢が問われている良問です。


2007年07月16日

麻布中より。問題文の条件の本質をしっかりと読み取りましょう。 2007-07-16



麻布中より。問題文の条件の本質をしっかりと読み取りましょう。


父母とこども3人の家族があります。父は母より5歳年上で、こどもは2歳ずつ年がはなれています。父母がともに20歳以上のとき、最初のこどもが生まれました。父母の年齢の和と子供の年齢の和が等しくなるときの、父母の年齢と子供の年齢の例を1つ書きなさい。ただし、父母はともに80歳以下の例で答えなさい。

(麻布中))


こどもの年齢の和にはある条件が隠れています。


それぞれの年齢の和の条件について整理する。

父母の年齢の和は、
「父の年齢」+「母の年齢」=「母の年齢+5」+「母の年齢」=「母の年齢」×2+5
なので奇数である。

さらに父は80歳以下なので、母は80-5=75歳以下である。
つまり父母の年齢の和は80+75=155歳以下である。

また、3人のこどもの年齢の和は
「長男」+「次男」+「三男」=「次男+2」+「次男」+「次男-2」=「次男」×3
なので3の倍数である。

以上より父母、そして3人兄弟の年齢の和として「155以下」で「奇数」で「3の倍数」を考えればよいことになる。

大きい順に試してみる。

等しくなる年齢の和が153歳の時、
父は79歳、母は74歳となる。このとき、こどものねんれいの和は53歳、51歳、49歳である。
母と長男の年齢差は21歳、つまりは長男は母が21歳のときに生まれているから、問題文の条件に合う。

よってこれらの年齢は問題文の条件に適した年齢の一例である。

答え:父79歳、母74歳、こども53歳、51歳、49歳


問題の提示のされ方から、答えが何通りか考えられることがわかります。

場合の数についても共通する考え方ですが、答えの幅を確定させるためには、
その条件をきちんと整理できていなくてはいけません。

問題文を徹底的に精査し、条件を洗い出すことが必要です。

本問では、父母、こどもそれぞれの年齢の和に関しての条件を洗い出した後は、
最初の試行(年齢の和は153歳の場合)で適切な答えにたどり着くことが出来ますが、
その条件自体は問題文で与えられる数字を単純に線分図化しても発見が難しい、
高度な条件の抽出問題でした。



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