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2006年08月14日

女子学院中算数入試より。「複雑で身近なものに算数を使うための基本姿勢とは?」 2006-08-14



女子学院中算数入試より。「複雑で身近なものに算数を使うための基本姿勢とは?」


1図のような、直方体と三角柱をつなげた形の五角柱の密閉された容器があり、下から15cmの 高さまで水が入っている。これをさかさまにして、水面と上の面が平行になるようにすると2図のようになる。

五角形ABCDの 面積を求めなさい。
(女子学院中)   


さぼらず、求めたい部分の図 形を書き出して見ましょう。


面 ABCDEを底面として考えると、
水の容積は、1図において底面はCDFG、高さは7cmとして考える
ことができ、2図においては底面ABHIE、高さは7cmとできる。

1図と2図で水の容積は同じ、高さはともに7cmであるから、
1図の底面である四角形CDFG(3図)と
2図の底面である五角形ABHIE(4図)
の面積は同じだということになる。

それゆえ、3図、4図の水と触れていない部分である
五角形ABGFEと
四角形HCDI
の面積も同じとなる。

よって求めるべき五角形ABCDEの面積は3図で考えると
五角形ABGFE+四角形GCDF となる。

五角形ABGFEの面積=四角形HCDI=7×8=56 平方cm
四角形GCDF=15×7=105 平方cm
よって
五角形ABCDE=56+105=161 平方cm
答え:161 平方cm



問題の図は、状況をすべて説明してくれる角度で描かれていますが、
これが問題の単純化を妨げています。


解答のような形で、求める平面図形をしっかりと把握することがもっとも大切です。

この視点で考えると、
五角形ABGFEの面積が超えなくてはいけないハードルであることが明らかになり、
方針が定まります。

今週の一問でも何度か取り上げていますが、
立体図形の単純化(=平面化)
はとても大切な技術です。


立体図形の中の面についてとりあげる問題は、
平面図形として考えればかなりやさしい問題でも、
立体の中に描かれたままでは、辺や角の関係を正確にイメージすることはとても難しくなります。
面倒でも書き出してみる几帳面さが求められます。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
基本的なモデルを考える視点が大切

女子学院中の算数は、
「基本的な問題をすばやく処理する能力が問われる」
と言われますが、いざ過去問を見てみると、
教科書や基本問題集では見たことのないような図形、設定がほとんどです。

本校の問題の特徴は、
「超基本的な算数技術を、身近な題材に対して適用させる。」
ことです。

身近な題材とは、
「具体的な容器に入った水」「点ではなく人や乗り物の移動」「数の計算ではなく値段の計算」
など生活に密着してはいますが、算数の題材としては極めて数値化しにくいものです。

このようなタイプの問題に取り組むなかで、普段から
「これはそもそもどの算数の技術が問われているの か」
について検討する習慣をつけておくことが大切です。

さもなければ問題の本質とは関係のない設定に振り回されて終わってしまいます。

ほとんどの生徒にとって、算数・数学はそのもののために勉強するのではなく、
実生活で出会うものを計算、測量するためのものです。

複雑な対象を、計算可能な形に落とし込む工夫を求める本問は、
高い学識を活かし実社会で活躍する人材を輩出する本校の指導方針を反映した良問です。


2006年07月31日

女子学院中算数入試より。「数えるものが見えていますか」計算力の前提となる、計算技術への理解を問う問題です。 2006-07-31



女子学院中算数入試より。「数えるものが見えていますか」計算力の前提となる、計算技術への理解を問う問題です。


1から120までの数字が1つずつ書いてある紙があります。
この紙に書かれている「2」「1」「0」それぞれの数字の個数を求めなさい。

(女子学院中)    


教科書10ペー ジから20ページまでの宿題は、全部で11ページですよ。


・ 「2」について
一の位にあらわれる「2」は
2、12、22、32、・・・・・112の12個
十の位にあらわれる「2」は
20~29、120の11個
百の位にあらわれる「2」はない
よって合計23個

・「1」について
一の位にあらわれる「1」は
1、11、21、31、・・・・111の12個
十の位にあらわれる「1」は
10~19、110~119の20個
百の位にあらわれる「1」は
100~120の21個
よって合計53個

・「0」について
一の位にあらわれる「0」は
10、20、30、40、・・・・・120の12個
十の位にあらわれる「0」は
100~109の10個
百の位にあらわれる「0」はない
よって合計22個

答え: 「2」23個、「1」53個、「0」22個


単 純な「数える」問題です。
2、12、22、32、・・・、112
が瞬時に「12個」だと判断できるでしょうか。
2、12、22、32、・・・、112
下線部に気をとられて11個と数えてしまう生徒(大人も)多いのではないでしょうか。
日付、ページ数など「○~△まで」を正確に数える技術と確認の癖をつけておきたいものです。

また、「位ごとに数える」という視点も大切です。
上位校で近年頻出の考え方ですので、数の並び方の確認も兼ね、
ぜひ取り組んでおきたい問題です。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
無意識に使っている技術の深い理解が大切

低学年で学ぶ「大きな数」や、四則演算の筆算などの単元で丁寧に取り扱われる「位」の考え方は、
10進法の仕組みを考える良い機会です。

高学年で学ぶ計算を簡単にするテクニックは、
これらの仕組みに依存しているにも関わらず
しだいに表面的なテクニックのみが頭の中に残ってしまうことになりがちです。

「位ごとに数える」などという単元はありません。しかし、
計算と数えることは似 て非なるものです。

「何を数えるのか」が正確にわかって初めて役に立つのが計算です。
自分の使っている計算技術の仕組みや、
そもそも何を数えているのかについて再度確認しておきたいものです。

たとえば場合の数の「6C2」=6×5÷(2×1)についてきちんと説明が出来るかどうかなど
はいわゆる「応用力」の差となってあらわれてきます。
誰でも知っている(と思いがちな)題材で、仕組みの深い理解を問う良問です。


2006年07月24日

東大寺学園中より1問です。 2006-07-24



東大寺学園中より1問です。


4個の円(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)が図1のように交わ り、10個の部分に分かれています。
 この10個の部分に0、1、2、3、4、5、6、7、8、9の数字を、同じものを2度使わないように、しかもそれぞれの円の中の数字の和が同じ値(Aと する)になるようにわりあてます。例えば、図1のようにわりあてると、
 円(ア)の和は9+0+3+4+7=23
 円(イ)の和は0+3+2+6+7+1+4=23
 円(ウ)の和は3+4+8+2+6=23
 円(エ)の和は4+7+6+1+5=23
となり、A=23です。


(問) 図2の□の中にそれぞれ数字を当ては めなさい。

        (東大寺学園中)


ノーヒントです。


図 3のように、分かれている10個の部分にB ~Kの記号をつける。
円(ア)の中の数字の和は、B+C+D +E +F
円(イ)の中の数字の和は、C+D+E+F+H+G+K
円(ウ)の中の数字の和は、D+E+G+H+I
円(エ)の中の数字の和は、E+F+G+K+J

それぞれの円の数字の和の合計は等しいことに着目すると
円(ア)の合計=円(イ)の合計より
共通部分のC、D、E,Fを除いた、B=H+G+Kである。

ゆえに求めるべき数字の一つ(上の□)B=2+7+0=9
円(イ)の合計=円(ウ)の合計より、
共通部分のD、E、G、Hを除いた C+F+K=I

ゆえに求めるべき数字の一つ(左下の□)I=3+5+0=8
円(イ)と円(エ)も同様に考えると
共通部分のE、F、G、Kを除いたC+D+H=J

ゆえに求めるべき数字の一つ(右下の□)J=3+1+2=6
となる。


複 数の要素から成立しているものどうしを比較する問題です。

低学年のときに、天秤で勉強した内容の発展形です。
複数の要素から成立しているものの比較のポイントは、

「差に関係している要素はどれか」

について、正確に把握することです。

それ以外のものは視界から外す、つまり引いてしまっても問題ありません。
また、正確に把握できていれば、双方に同値のものを加えて変形させて考えることもできます。

今回は、それぞれの円の値となっている要素をきちんと列挙して、検討することが
突破口になります。低学年の教室でも正答率は高くなりました。


~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
隠れた制限に対する探究心が 大切

魔 方陣など、一見当てはめで解けそうな問題にも、
論理的な突破口を検討する姿勢は入学後の勉強の姿勢として
強く求められるものです。

「答えを狭める要素は何かないのだろうか。」

無限に広がって見える選択肢を前にして
立ち止まりとことん考え抜く姿勢を持ったものだけが、
正答にすばやくたどり着くことができます。

答えを得ることだけが本番では大切です。
しかし、本問は、

普段の勉強の中でプロセスを大切にしてきた生徒と
そうでない生徒との間に明確な差

が生まれるようなボリュームで設計されている良問だといえます。


2006年07月17日

大阪星光学院中より1問です。普段の問題演習に対する姿勢が問われます。 2006-07-17



大阪星光学院中より1問です。普段の問題演習に対する姿勢が問われます。


下の図のような、AからGまでの道があり、その距離は30km です。道ABとFGは平地で、他は坂道です。平地を時速4km、坂道は、上りを時速2km、下りを時速6kmで歩くと、AからGへ行くのに7時間30分か かり、逆にGからAへ行くのに11時間30分かかります。
AからGへ行くとき、すべての下りの距離の和は上りの距離の和より何km長いですか。

(大阪星光中)


ノーヒントです。


問題で与えられた図は、下のように上りと下りをそれぞれ1つにまとめて考えることができます。
AからGへ行くのに7時間30分、GからAへ行くのに11時間30分かかったということは、
つまりAからGへ進むときのほうが、GからAへ進むときよりも合計の距離は同じでも、
下りの部分が多いということです。それは、下の図の丸で囲まれた部分のことです。

つまり、この部分の長さを求めればよい。
問題は、時速6キロで歩く時と、時速2キロで歩くときに
11時間30分-7時間30分=4時間
の差がつく距離を求めるということになる。

時速6キロと時速2キロは、速度の比は3:1。
つまり同じ距離を進むのにかかる時間の比は1:3となる。
この比の差の2が4時間なので、比の1つ分は2時間となる。
時速6キロでかかる時間は2×1=2時間、時速2キロでかかる時間は2×3=6時間である。
よって、求める距離は
時速6キロ×2時間=12キロ(時速2キロで考えても時速2キロ×6=12キロ)
答え:12 キロ


ポ イントは、そもそも問題において「上りと下りの合計」が問われているということ。
また与えられた時間が、AからGとGからAという単位で考えられていることです。

この状況を鑑みて、単純化つまり
「問われている数値を求めるために必要十分な形に変形」することが突破口になります。

そもそもこの単純化(モデル化)によってよけいな情報をそぎ落とす技術は、
限られた知識しか持っていけない試験会場において初見の問題を解く上でもっとも重要なものです。

本問のようにそもそもの情景自体を変形させるのは、なかなかレベルの高いものですが、
普段の問題演習のなかで、「取り組んだ問題は単純化すると、どの基本問題に行き着くのか」
について考えることは単純化(モデル化)の技術力を高めます。
本文では、有名な「峠を含んだ速さと比」の基本問題に行き着くのです。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
実験、体験から学ぶ基本姿勢が大切

単純化、モデル化に完全な正解はありません。
自分が同じだと思った類題が本質的には違っていたり、
違うと思っていたものが本質的には同じだったりすることが多々あります。

大切なことは、次に出会った問題、事象に自分で考えたモデルを当てはめ、修正していく仮説 検証能力です。

この能力を身につけるための大前提は、
手探りの中で仮説を立ててみるという姿勢です。
教科書の目次に並ぶタイトルが、最適な整理基準とは限りません。
(むしろ近年ではこれらのタイトルを横断した出題が意識的に増やされているとさえ言えます。)

正解のない中で、自ら試行錯誤の中で体系化を試みる姿勢は、同校の求める人物像です。
そして本問は、その姿勢を数年間の受験勉強の中で身につけてきたかを問う良問となっています。


2006年07月03日

今週はフェリス女学院中より1問です。 2006-07-03



今週はフェリス女学院中より1問です。


大 と小のサイコロが合わせて18個あります。この18個のサイコロを同時にふったら、出た目の平均は4でした。大のサイコロだけの出た目の平均は3.4でし た。小のサイコロだけの出た目の平均は、どのような場合がありますか。すべての場合を求めなさい。割り切れないときは小数第2位を四捨五入して小数第1位 までの数で答えなさい。
                                        (フェリス女学院中)



「サイコロの目」というだけで、大きな制限が ついてきます。


サイコロの目は整数1~6によって構成されています。

つまり、複数のサイコロをふったときに出た目の和は、
1~6の組み合わせである「整数」であるということが前提となります。

また、問題文の条件に大のサイコロの出た目の平均が 3.4 
つまり17/5であることが与えられています。

ここから、大のサイコロの個数は、5の倍数であることがわかります。
つまり、大のサイコロの個数は、5個、10個、15個のいずれかになります。

・大が5個の場合の小のサイコロの平均
 (4×18-3.4×5)÷(18-5)=4.23・・・=4.2 (割り切れないので四捨五入)

・大が10個の場合の小のサイコロの平均
 (4×18ー3.4×10)÷(18-10)=4.25(割り 切れるので四捨五入はなし)

・大が15個の場合の小のサイコロの平均
 (4×18-3.4×15)÷(18-15)=7・・・サイコロの目は6までしかないので不適格
 
以上より

答え  4.2  ・  4.75


「隠れた制限」つまり、問題文にはいちいち明記されないが、
当然の前提として答えに制限を加えるものです。

本問では、平均=3.4から 5の倍数である という制限を導き出すことと、
最後に「平均7」は、1~6で構成されるサイコロにおいてはあり得ない

という2つが隠れた制限になります。
このような倍数制限など、気付けば検討範囲が数通りにまで狭め ることができる典型例は、

十分に頭に入れておける数しか存在しません(例えば日付や個数 など)。
この分野のみをしっかりとピックアップした参考書はほとんど存在しません。
そして、解説のなかでは「そういえばそうだった。うっかりしてた。」といった形で受け流してしまいがちです。
一度、このような隠れた制限にどういうものがあるのかまとめておくことが必要です。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・問題文に出てくる物語を具体的にイメージす ることが大切
本問は、「サイコロ」や「平均の計算の手順」についてのイ メージを失い、
数式のみを元にして試行錯誤をしたとたんに、落とし穴にはまります。

本問に限らず、すでに長い歴史のある中学入試、
とくに上位校では単純な先取り学習で身につけた数式処理で解くことができるような問題は
ほとんど出題されません。

算数には、数学の土台としてだけでなく、

「日本語を論理的にしっかりと読む力」

「身の回りのものを工夫して測量する力」などといった力を養成 する目的もあります。



ポイントは、問題文を読みながら具体的なものをイメージすること。


問題文を一度よんで、しっかりと図解できる生徒は、イメージしながら読めている証拠です。

この作業を、面倒くさがらずに取り入れてみることで

速さ、平均など抽象的なものを数値化している世界が一気に具体的なものとして身につきます。



そうするだけで、

「直感としてあり得ない数値」をはじくことができるようになるのです。


2006年06月26日

今週は浦和明の星女子中より1問です。 2006-06-26



今週は浦和明の星女子中より1問です。


明子さんとお父さんは、それぞれA地点を出発して、8km離れたB地点まで行き、すぐに折り返してA地点まで戻ってくることにしました。お父さんは、明子 さんが出発してから何分か遅れて出発し、B地点の手前3kmの地点で明子さんを追い越しました。そして、B地点を折り返した後、B地点から1kmの地点で 明子さんとすれ違いました。明子さんは、お父さんがA地点に戻ってきてから110分後に、A地点に戻ってきました。ただし、明子さんとお父さんは、それぞ れ一定の速さで歩いたものとします。

(1)明子さんとお父さんの速さの比を、最も簡単な整数の比で表しなさい。
(2)明子さんの速さは分速何mですか。
                                        (浦和明の星女子)


速さを求めるために必要な要素は決まっていま す。



(1)上の図のC地点で、父が明子さんを追い越す。
ここを起点とすると、Dで二人が再会するまでに、
同じ時間で父は〔C~B〕+〔B~D〕=4km歩き、
明子さんは〔C~D〕=2km歩いたことになる。

よって、速さの比「明子さん:父」=2:4=1:2 答え 1:2  

(2)(1)と同様に、C地点を起点に考えると、C地点を同時に出発したあと、
Bを折り返し地点としてAまでの11kmで110分の差がついたことになる。
二人の速さの比は、1:2なので、同じ距離を歩くのにかかる時間の比は2:1である。

この比の差である1が110分であったのだから、
明子さんがCからBを経由してAまでの11kmを歩くのにかかった時間は、110×2=220分である。
よって、明子さんの分速は 11000(m)÷220(分)=50m/分
答え  50m/分


速 さ=距離÷時間
速さの比は、「同じ距離」を移動するのにかかった時間の比
といった、当然の定義を見失わないことが大切です。

速さと比の問題は、様々な場所や、
出来事(折り返し、忘れ物による引き返し、途中で速度が変わるなど)によって、
問題文が長く、見た目が仰々しいものが多くなっています。

しかし、突破口は1つです。
速さ、距離、時間のうち、2つが揃う場面を探し出すことです。

本問でもC地点で父が明子さんに追いついてはじめて、
「2人が同時にスタートした」という条件がそろいます。
「どこから解いたらよいのか分からない」は、
「なにがわかれば答えがでるのか」という意識の欠如が大きな原因です。
速さの場合は基本は3つの要素です。
「必要な要素を洗い出して確認する」ことが基本です。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・定義の深い理解が大切
速さを求めるのに一体何が必要なのか。
これは、難しいことではありません。

ただし、表面的な複雑さに目を奪われ、自分が今何を求めなくてはいけないのか、
についてしっかりとした方針が立てられないと、求値のための作業に集中できなくなります。

このレベルの問題は、「何を求めるのか」が決まったあとの計算も複雑なものになりがちです。
この複雑さによって、一行問題にかわり計算力を試しているともいえます。

つまり、正確に「これを求めれば答えにたどりつく」という方針をたてていないと、
長く複雑な計算の末に無意味な数値にたどり着いてしまうのです。

「何を求めるのか」は、数少ない選択肢を正確に確認しさえすれば
明らかになることが多いものです。

絶対に必要な要素の有無の確認は、定義についてしっかりと理解していることを
必要とするまさに質の高い基本問題といえる良問です。


2006年06月12日

筑波大付属中より1問です。 2006-06-12



今週 は筑波大付属中より1問です。


7/2 mのひもを切って、1/3mのひもをつくります。ひも は何本つくれますか。また、何m余りますか。      


商とあまりの単位。そして、割り算の意味をきちんと確認しましょう。


7/2 ÷1/3  = 21/2      となる。
この割り算の商である 21/2 は、
7/2 の中に、1/3 が 21/2 本とれるという意味である。

つまり、きちんと 1/3 mとれたひもは10本であり、
それに 1/2  本という足りないものがあまるということ。

1/2  本= 1/3 × 1/2 = 1/6 m

つまり、あまりは、 1/6   mとなる。

答え 10本とれて 1/6  m余る



ま さか、こんな簡単な問題に、、。と、
当時の優秀な受験生たちが何人も引っかかった問題です。
誤りはすべて、あまりを1/2としたものです。

割り算の意味「相当の計算」「分配の計算」をしっかりと理解し、
商、あまりの意味(=単位)をきちんと意識できるのかどうかが試されました。

四則演算の意味を正しく理解していなければ、
中学以降の文字を使った数式中心の世界を渡っていけません。
特に難しく、奥の深い「余り」を中心にしっかりと意味を考える時間をとっておきたいものです。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・ 「計算方法を知っている」ことと、
「計算の意味を理解している」ことは違う
・「筑波大附属は、基本問題中心だから、基本問題集を何度もくり返すべき」

本校に限らず、よく聞かれる浅はかな過去問分析です。
特にハイレベル校において、
「基本問題中心」とは、「計算問題や教科書的典型問題をスピーディーかつ正確に解かせる問題構成」という意味ではありません。

四則演算や図形の成り立ちなど、基本原理を活用して、複雑な問題を美し く解く。
と定義したほうが近いでしょう。


基本原理は、必ず(とくに小学校の教科書や塾の導入章において)説明されています。
その部分を飛ばして、表面的な演習(つまりとりあえず慣れろという方法論)に走る子どもたち(むしろ指導者たち?)に強く警鐘を鳴らす問題です。

例えば、ガウスの等差数列の和の公式と台形の面積の求め方の基本原理は同じです。
どちらも必ず習う公式ですが、基本原理の類似性をしっかりと理解していると、
この2分野以外でも応用のきく考え方になります。

折角たくさんの問題に取組むのです。帰納的に収斂させ、検証するという作業を加えることで、
高い仮説検証能力を身につけることに繋がります。
「基本事項からの出題」という縛りの中で、ハイレベルの受験生に対応してきた本校の問題は、
「基本」の大切さをきちんと理解できる生徒を選りすぐるのに適した良問となっています。


2006年06月05日

市川中より1問です。 2006-06-05



市川中より1問です。


下の図のようなおうぎ形OABがあります。このとき,次の問い に答えなさい。
(1)円周率は3.14とし、おうぎ形OABのまわりの長さを、四捨五入して上から3けたのがい数で求めなさい。
(2)円周率を3として計算すると,おうぎ形OABについて,いくつかの問題が起きます。この間題の1つを13字以上52字以内で説明しなさい。(市川中)


(2) は(1)を導入として使ってみましょう。


(1)弧AB=2×3.14×1/6=1.046・・・
よって半径2つ分を加えると
1+1+1.046・・・=3.046・・・
うえから3けたのがい数に 直すと
3.05
よって
答え  3.05平 方センチメートル

(2)
(1)におい て、求めた弧ABの長さは、円周 率を3とするt
2×3×1/6=1
となり、半径と 同じ長さになる。
つまり、おうぎ 円ではなく、明らかに正三角形となってしまう。


(1)を導入に使うことが、唯一の突破口。
あとは、何百回としてきた円の面積、周の計算をどのように見つめてきたかが問われました。

導入授業で最初に示された後、
ほとんど触れられることのない公式や定数の意味をしっかりと捉えなおす出題は、
超上位レベルの学校で 出されても低正解率になります。

しかし、数の性質と同様、普段何気なく処理し ている手法の仕組みは、
大学入試にまで応用が利くとても重要な考え方です。
3年、4年、5年で「初めて習ったときの説明」を再度確認してください。
勉強が進んだ後でも、大きな気付きがあるはずです。


~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・出会った知識を掘り下げる探求心こそがすべて

円周率3騒動
(実際は、円周率を3としてすべての指導が行わるという方針だったたわけではないのですが、
大騒ぎでしたね。)の時の出題です。

当時は、東大でも似たタイプの出題がありました。

「文科省への出題による抗議」という特異な時代背景を持った出題だと捉えず、
算数の勉強姿勢を正すきっかけとしてもらいたい出題です。

そもそも、円周率とは何の「率」なのだろうか。
円の面積を求める仕組みはどのようなものか。

小学生が知識として叩き込まれるものの成り立ちには、先人たちのとても柔軟な発想が寄与しています。

「身の回りのものを測量できればよい」という立場では、
これらはブラックボックスの中に入れたままにしても全く問題はないでしょう。
それどころか、余計な体力を使わずに済みます。

しかし、皆さんが進もうとしている中学校は、
数学を含め新しい知の枠組みを作り出す人間を育てようとしている学校です。

「とりあえず入学してから。」「まずは目先の試験。」といった姿勢は、
結局は入学後も続き、大学受験の訓練場としてしか中学・高校の場を活かすことができないでしょう。

何よりも、ものの成り立ち・背景・本質にこだわる。

この姿勢を身につけることは、志望校対策の何倍もの力を身につけさせてくれることでしょう。
当時も今も、過去問分析に奔走する関係者に、学校が本当に欲しい人物像を見せ付けてくれる良問です。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・ 「計算方法を知っている」ことと、
「計算の意味を理解している」ことは違う
・「筑波大附属は、基本問題中心だから、基本問題集を何度もくり返すべき」

本校に限らず、よく聞かれる浅はかな過去問分析です。
特にハイレベル校において、
「基本問題中心」とは、「計算問題や教科書的典型問題をスピーディーかつ正確に解かせる問題構成」という意味ではありません。

四則演算や図形の成り立ちなど、基本原理を活用して、複雑な問題を美し く解く。
と定義したほうが近いでしょう。


基本原理は、必ず(とくに小学校の教科書や塾の導入章において)説明されています。
その部分を飛ばして、表面的な演習(つまりとりあえず慣れろという方法論)に走る子どもたち(むしろ指導者たち?)に強く警鐘を鳴らす問題です。

例えば、ガウスの等差数列の和の公式と台形の面積の求め方の基本原理は同じです。
どちらも必ず習う公式ですが、基本原理の類似性をしっかりと理解していると、
この2分野以外でも応用のきく考え方になります。

折角たくさんの問題に取組むのです。帰納的に収斂させ、検証するという作業を加えることで、
高い仮説検証能力を身につけることに繋がります。
「基本事項からの出題」という縛りの中で、ハイレベルの受験生に対応してきた本校の問題は、
「基本」の大切さをきちんと理解できる生徒を選りすぐるのに適した良問となっています。


2006年05月22日

今週はフェリス女学院中より1問です。 2006-05-22



今週はフェリス女学院中より1問です。


下の図のように、直角三角形ABCと半円があります。
部分と部分の面積の合計は136.97cmです。
部分の面積を求めなさい。 (フェリス女学院中)


まさに分野融合問題です。

問題 の図を下のようにア~ウの3つの部分に分けて考える。

問題文の条件より、イ+ウ=136.97である。・・・(1)

ここで、イ、ウにそれぞれアを加えて、半円、直角三角形として考える。
ア+イの半円の面積は13×13×3.14÷2=265.33
ア+ウの直角三角形の面積は15×26÷2=195
この2つの値の差は、そのままイとウの差として考えることが出来る。

よって
イーウ=70.33・・・(2)

(1)と(2)より
和差算によってイ、ウを算出できる。
イ=(136.97+70.33)÷2=103.65

答え 103.65cm


04: 解説
前 回の灘中の問題の最後の山場を乗り越えるための練習問題です。
面積における、和差算は単純なものであっても、相当の問題文読解力が求められます。
「和」という条件から、「差を探す」という流れが身についているかどうか。
問題形式が図形であっても、割合であっても、速さであっても同様です。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・所与の条件を丁寧に類型化する力が大切
前回の灘中の問題と同様、表面的な題材の形式とそこで使われる技術は、
塾の一般的なカリキュラムほど単純なものではありません。
図形の和差算、速さの消去算など、数多くの融合問題が存在します。

速さは・・・、流水算は・・・という単純なパターン解法の暗記では対応できません。
必要なのは、
問題分によって与えら れる条件が、どの方針に誘導しているのかを見抜く力です。

「分からない数と与えられた状況の数が同じならば消去算」
「和を与えられる場合は、差を見つければ和差算で答えが出る」
など、解法の本質をつかんでおくことが重要です。

途方もない作業のように思えますが、無駄な何百もの問題演習よりも時間もかからず、
頭を使って普段の勉強をまとめるクセがつきますので、是非取り入れてもらいたいものです。

フェリスをはじめとして、このレベルの勉強が要求される入試問題を出題する学校は限られています。
しかし、出題されないからといって、考えない勉強法が身についてしまうと、
想像以上に入学以降の勉強に手間取ることになるのです。

学校の指導方針と強い信念が読み取れる良問です。


2006年05月15日

今週は灘より1問です。 2006-05-15



今週は灘より1問です。


下の図で、ABとCDは垂直になっています。AE=24cm、 BE=6cm、CE=18cm、DE=8cmになっています。円の面積は785cm となっているとすると、斜線部分の面積の和を求めなさい。


公式で求めようのない図形の面積を測定するには、いくつかの方針しかありません。


下の 図のように、CDに平行な補助線KLとABに平行なHGを、AB、CDと対称となるように引きます。
(交点にはそれぞれ記号をふります。)
問題の円を下のようにア~ケの9の部分に分けて考える。
斜線部=ア+イ+カ+ケ
残り=キ+ク+エ+ウ+オ
である。
斜線部と残りのそれぞれを構成する部分を比較すると
ア=キ、イ=ク、カ=エ、ケ=ウであるので、オの部分の面積がそのまま両者の差となる。
オの面積はIE×EF=18×10=180となるので、
和差算を使い、(785-180)÷2=302.5cm

答え  302.5cm


図形は単純ですが、いくつもの思考の山場がある難問です。
まず、本問のようないびつな図形の面積は、そのまま求めることはできません。

1)等積・相似の基本図形を見つける。
2)基本図形に分解する。
がオーソドックスな方針です。

2)で補助線による分解が本問の方針となります。
基本図形とは、
「正三角形や正方形、おうぎ形、等脚台形などの求積が容易なもの」、
「問題の図形と合同、相似なもの」
「対称性のある形」
の3パターンと考えてよいでしょう。

本問では、「対称性のある形」に分解してみます。
この分解という作業に短時間で論理的に
(つまり上述の基本的な選択肢の外に無駄に陥ることなく)たどり着くことが、
本問において測定されている能力といっても過言ではないでしょう。

解答のような、和差算タイプの求積問題は、一度は取組む基本問題です。
(これまで出会ったことのない人は、今回がその機会でしょう。)
そこにたどり着くまでの条件を整えさせるという難問です。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
・思考の類型化が大切
算数のカリキュラムは、題材によって分けられています。
例えば、速さ、面積、割合・・・・。
しかし、本問はそのような題材ごとのパターン演習のみで作り上げられた算数の力を
簡単に切り捨てる問題です。

中学受験算数の題材がどのようなものかは、
テキストの目次や過去問の分析表によって明らかになっています。
しかし、どのような頭 の使い方が要求されているのかに着目して勉強し、
内容を整理している生 徒はほとんどいません。
この問題を単なる求積問題の一つとして片付けているようでは、いくら量をこなしても、
このレベルの問題の要求に答えることはできません。
あるトップクラスの生徒は、本問について「ベン図の考え方と似ているかな?」と
ノートに書き記していました。自分の頭で、思考の類型化を試みている確かな証拠です。

「総合問題」とは、見たことのない題材に、基本的な思考方法を当てはめる問題です。
その「基本的な思考方法」をきちんと整理することを怠っていると、
教科書の範囲名の書いていないテストが始まる時期、全く手も足もでなくなります。
出来る子は、自然と頭の中でやっていて、出来ない子はやっていない。
そして普通 のカリキュラムは、これを要求する形では並んでいないのが現状なのです。

この差を地頭の差といって、諦めるのではなく、勉強の中つねに
「これはあの問題と頭の使い方が似ている。」といったフォローをしてあげることが指導者、
保護者として大切な作業です。



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