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2006年12月04日

同じ意味のものを見抜く力が問われます。 2006-12-04



同じ意味のものを見抜く力が問われます。


下の式のア、イ、ウ、エの中には、それぞれ1、2、3、4の4 つの数字が1回ずつ入ります。計算した結果の答えは何通り考えられますか。

(東大寺学園中)



「入れ替えても同じ」を排除します。


ア、 イとウ、エはそれぞれ入れ替えても答えは変わらないので、
(ア、イ)側に2つ、(ウ、エ)側に2つの数を振り分ける振り分け方を考えればよい。

(ア、イ:ウ、エ)
=(1、2:3、4)(1、3:2、4)(1、4:2、3)(2、3:1、4)(2、4:1、3)(3、4:1、2)
の6通り考えられる。

ここで

ア×イ+ウ×エ=ウ×エ+ア×イ

が成り立つことを考えると

この6通りは
3組の答えをそのままに入れ替え可能な組み合わせが重複していることがわかる。

つまり
(1、2:3、4)と(3、4:1、2)、 (1、3:2、4)と(2、4:1、3)、 (1、4:2、3)と(2、3:1、4)
はそれぞれ同じ答えを導く組み合わせである。
よって求める場合の数は
6÷2=3
答え3通り


場 合の数のポイントは重複の排除と数え忘れの防止の2点です。
本問は重複の排除に関する少しレベルの高い問題です。
高校生の勉強での有名問題です。

ある集団を2つに分けるとき、
その2つの集団が交換可能かどうかをチェックするというのは
重複を避けるうえで欠かせないプロセスです。

「クラスを2つに分けて野球の試合をする」などが代表的です。

つまりAチーム、Bチームのメンバーはそのままメンバーをそっくり入れ替えても
対戦する意味は変わらないのです。

本問は典型問題ですが、重複の排除は問題文の与えられた条件をかなり深く、
適切に解釈しなくてはいけません。

それを見抜く洞察力は一朝一夕で獲得できるものではありませんが、
必ずチェックするという姿勢だけは見につけたいものです。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
同質、異質を見分ける力が大切

本問では、「交換可能なもの」を正確に把握することが一番のポイントです。

交換可能かどうかは本問のように明らかなものばかりだけでなく、
問題文の条件の下、数の性質や論理性を活用して
「言い換えることができる」ことも含まれます。

「同じものはどれか」と探す作業の中に、
「言い換えてみるとどうなるのか」という視点を加えると
同値、同質のものを見つける確率が格段に高まります。

たとえば
「Aは9の倍数」と
「Aは9で割り切れる」と
「A=?×9」と
「Aの各桁の数を合計すると9の倍数」
はそれぞれ同じことを言い換えただけですが、
そうするだけで新たな重複を見つけたり、論理展開の突破口が開かれる可能性が高まります。
同質、異質を見分けようとする姿勢とその力。
本問はその基本中の基本を問う良問でした。


2006年11月27日

思い切った視点の切り替えが求められる問題です。 2006-11-27



思い切った視点の切り替えが求められる問題です。

下の図のように4つの長方形と2つの台形からできた容器に水が 入っています。これにさらに水を注ぎ込んだところ、水面の高さは21cm上昇し、水面の面積は252平方センチメートルになりました。
(1)最初の水面の高さは何cmですか。
(2)最初の水面の面積は何平方センチメートルですか。
(3)省略
                             (大阪星光学院中)



「立体図形の問題」だということにとらわれると選択肢が狭まってしまいます。


(1)
下のように真横から見た形で平面図形として考えます。
alt="" style="height: 188px; width: 234px;">
水を増やす前の水面をFL、注ぎ足したあとの水面をEMとします。

求めるのはFB=CGの長さです。

EMの長さは、252÷12=21cm
AI=EH=FG=BC=9cmなので
HMの長さは21-9=12cm

ここで三角形CIDと三角形CHMの相似を考えると
ID:HM=(30-9):12=7:4
よって
CI:CHも7:4
CI=84cmなので
CH=84×4/7=48cm
GHは、水を注ぎ足したときの水面の上昇分なので問題文より21cm。
よってもとめるべきCGの長さは
48-21=27cm
答え: 27cm

(2)
求めるべき面積は
FL×12で求めることが出来る。

ここで三角形LKMと三角形CIDの相似を考える。

LK:CI=21:84=1:4
よってKM:IDも1:4
ID=21cmなので
KM=21×1/4=5.25cm

よってEK=FL=EM-KM=21-5.25=15.75
故に求めるべき面積は
15.75×12=189平方センチメートル
答え: 189平方センチメートル


面積を求める問題では、

「目で見て見当をつける」

という作業が大きな重要性を持っています。

相似、合同や二等辺三角形、正三角形の発見は、
大体の見当をつけて、確認作業をするというプロセスで
ほとんどの場合に対応しているといえるでしょう。

本問のように、立体上の面積を求める場合、
与えられる図は多くの場合が斜め上方からの描写になります。

こうして与えられた図形上において、
面積を求めるべき図形は、当然実際とは違った形で描かれます。

そのような状況では、合同や相似の活用など
「目で見て見当をつける」
ことを手がかりに進める解法を発見しづらいのは言うまでもありません。

面倒くさがらずに平面に落とし込む。

その図を見ると、
頭が平面図形モードに切り替わり
「補助線」「合同、相似」などへの感度が高まるのです。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
場面に応じて最適な視点に切り替えることが大 事

今週の一問で何度も扱っている「単純なモデルへの変換」という思考技術ですが、

本問は「単純化」という効用だけでなく、

「見慣れた形式へと土俵を移す」

ことに大きな価値があります。

解説にもあるとおり、見たことのある風景の中では
武器を選択する判断力も格段に高まるのです。

初めての問題に対応するとき、
「今までに同じ問題に出会わなかったか」
と考えるパターン認識力をもつことは応用力の第一歩ですが、

単純に同じ問題を探すのではなく問題を分解して
「自分の知っている知識・技術を使える部分はどこか」
という思考でとっかかりをつかむという
高次のパターン認識力を持つことはさらに大きな武器になります。

その場その場で視点を切り替える柔軟性と思い切りの良さが問われる良問です。


2006年11月13日

武蔵中より。問題文のヒントを常に頭に置いておく。参照する力が問われます。 2006-11-13



武蔵中より。問題文のヒントを常に頭に置いておく。参照する力が問われます。

AさんとBさんはそれぞれ羊を飼っています。二人とも飼ってい る羊の数は10の倍数です。A、Bの二人とも1日に14頭ずつ羊の毛を刈ると、かかる日数の合計は72日になります。また、19頭ずつ刈るとAの方がBよ り7日早く終わります。A、Bが飼っている羊はそれぞれ何頭ですか。


                             (武蔵中)


途中で行き詰ったら、本文に戻りましょう。


14 頭ずつで合計72日なので
合計14×72=1008頭いるともできるが、
最終日は1頭しか刈らなかった場合も考えられるので、
最低14×70+2=982頭
であることも考えられる。

この条件より羊の合計頭数は982~1008頭であると考えられる。
ここで、頭数は10の倍数であることを鑑みて、
990頭か1000頭であることがわかる。

次に19頭ずつ刈るとAのほうが7日早く終わるので、差は
最小19×6+1=115頭(Aは最終日に19頭刈り、Bは最終日に1頭しか刈らなかった場合)
最大18+19×7=151頭(Aは最終日に1頭しか刈らず、Bは最終日も19頭刈った場合)
ここでも、頭数の差は10の倍数であることを鑑みて
差は120か130か140か150頭であることがわかる。

ここで合計頭数と差を使った和差算で合計の頭数を、
結果が10の倍数になるものに限って求めると
(A:B)=(440:560)(430:570)(430:560)(420:570)
が候補となる。

この中でそれぞれを14で割って、
商+1の合計が72になる(14頭ずつ刈って合計72日かかる)
のは、(430:570)のみである。

よってA:430頭 B:570頭

答え:A: 430頭 B:570頭

本問の難しさは、解答の進め方にあります。

子供達は、計算式が連なって、最後に答えが出る形式に慣れきっていますし、
答えを取捨選択させるにしても最後の段階に限られているからです。

計算を進める度に、幅が出てしまう。
それを本文の条件に戻って取捨選択し、また進めていくという今回のような形は、
試験中とても不安に思うことでしょう。

最後の答えを、再度問題文に代入することですっきり確認できないこと
(~日で刈り終わる頭数には幅があるからです。)も難しくしています。

このタイプの問題にあたって慣れておくことは大切です。
本文は、この年度の入試の中では、
試験時間内に確信を持って終わらせることが最も難しかった部類に入る問題です。

倍数の制限、偶奇の判断、は答えの幅に大きな制限を加える
隠れた条件となることが多いので常にチェックする習慣をつけたいものです。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
式の展開を、与えられた具体的な状況から切り 離してはいけない。

本問のように多くの式を連ねていかなければならない問題では、
いつのまにか本文の内容が頭から離れてしまいがちです。

式はあくまで本文が与えてくれた具体的状況を簡潔に翻訳したものに過ぎません。

行き詰ったときの突破口は、しばしば本文に明記されている条件です。

本文とつかず、はなれず、適度な距離を保ちながら論を進めること。
これは、式の展開の長さが算数の数倍になってくる数学における大切な姿勢です。

本問は、この姿勢の基本部分が身についていることを問う良問です。


2006年11月06日

慶応普通部より。正確さと大雑把さのバランスが問われます。 2006-11-06



慶応普通部より。正確さと大雑把さのバランスが問われます。

次のようにある規則で数が並んでいます。

(1)1段目で左から10番目の数はいくつですか。
(2)32は何段目で左から何番目ですか。

                             (慶應普通部)


全部書き出せば確実に正解ですが、答えの周辺までざっくり計算することで時間を短縮できます。


(1)
規則は、左下から右上にむけて単調に増加するというものです。
図のように三角形の中に入る数字の個数を考えれば、
「一番左の~段目」や「1段目の~番目」を見つけることができます。

1段目の左から10番目の数は、
一辺に10個の数が置かれた直角二等辺三角形に使う数字の数と同じです。
これは1+2+3+・・・・・・+10=55
答え:55

(2)
(1)の考え方を使うと1段目の左から9番目は45、8番目は36であることがわかる。7番目は28であるから、32は、8段目の1番左から始まり1段目 の左から8番目で終わる周期の中にあることがわかる。
8段目の1番左は29であるから、ここを含め4つ左上にすすんだ5段目の左から4段目が32となる。
答え:5段 目の左から4番目


規則性のポイントは、迅速性と確実性のバランスをとることです。
最悪すべて書き出せばよいのですが、
それでは時間が足りないような出題構成になっています。

本問でも見つけた規則性を使って

「~段目の一番左はいくつだろう」

という形で一気に進めてしまい、
その結果から微調整していくという姿勢が必要です。

超えても、足りなくてもとりあえず概算をして正答との距離を縮めるという技術は、
単調な計算練習による成果の何倍ものスピードを身につけることになります。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
概算によるよい意味での大雑 把な見当づけが大切

上位校の中には、明らかに試験時間に対して問題数の多い
「処理能力が問われる」と呼ばれる試験を行う学校があります。

本校をはじめとして慶応中等部、女子学院、灘などです。

これらの学校の求める「処理能力」とは単純に
ひらめきが速い、計算が速い、字を書くのが速い
といったものではありません。

必要とされているのは、雑多な情報の中から、
重要なポイントにのみ着手する取捨選択の能力です。

「ここまでは大雑把な計算でも間違いなく近づける。ここからは丁寧に。」

という境目をきちんと見つけ出すこ とです。

前者が過剰になれば誤答となり、
後者が過剰になれば時間が足りなくなるのです。

これには、普段からすべてを書き出した場合と、
最短距離をかなえてくれる計算技術を見比べて
その仕組みをしっかりと理解しておくことが大切です。

普段の勉強で~通りを書き出して正解して満足するのではなく、
数の性質の見地から計算で解ける部分を見つけ出すことが大切です。


2006年10月23日

慶応 普通部より。数を整理する力を測定します。 2006-10-23



慶応 普通部より。数を整理する力を測定します。


3を1以上の整数の和で表すと1+2、1+1+1の2通りになります。5をおなじように1以上の整数の和で表す方法は何通りありますか。
                             (慶應普通部)


こういった数え上げのポイントは、最も大きな数を固定して整 理することです。


以 下の表の6通り


正確に数え上げるポイントは、
「間違えにくい手法で数える」ことに尽きます。

今回でいえば、1+4,2+3,1+1+3,1+2+2,・・・・
といった書き出し方は間違いやすいものです。

「500円を100円玉と50円玉と10円玉で支払う支払い方は何通り?」

といったタイプのものが代表的ですが、
何か1つのもの(大きなものが一般的です)を固定して、
残りを考えるという手法は一度経験しておくべきです。

また、50円玉が1つ減れば、
10円は5枚増えるというそれぞれの数の関係を
しっかりととらえることも数え間違いや数え忘れを避けるには有効です。

本問は、普通部の問題としては標準です。
受験生のレベルを考えればかなり簡易な問題で
間違える生徒は皆無といえる問題です。

上記のような数え上げの意識を確認するということに加え、
次のような面白い問題の元となるので取り上げ問1
9を3以下の整数の和で表す方法は何通りありますか。

問2
12を1+1+10のように3つの整数の和で表す方法は何通りありますか。

ともに大学入試での超有名問題ですが、
小学生でも正答率はほとんど変わらないでしょう。
ともに答えは12通りです。
まずは間違えずに書き出すことに注力してみましょう。
12通り書き出せたらまず合格です。

この問題の面白いところ、
それはこの2つの問題の答えは必然的に同じになっているのです。
その理由を考えて見ましょう。


~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
数を整理する力が大切

数 をその場で必要な形で整理する能力は、
数の規則性、対称性などに対する感覚を必要とするものです。

九九の表や、倍数・約数の関係など数多くの問題に触れ、
答えを探し出すだけでなく、
数の性質に絡めてなぜそのような手法で答えをだすことができるのか
について考えてみる習慣をつけておきましょう。

パスカルの三角形などわかりやすいものを取っ掛かりに、
小学生の算数の中でもっとも奥深い「数の性質」に興味を持ち、
掘り下げる視点をもつことが良いかもしれません。


2006年10月16日

栄光学園中より。他者への説明とは何なのか。真っ当な論理性を問う良問です。 2006-10-16



栄光学園中より。他者への説明とは何なのか。真っ当な論理性を問う良問です。


下の図の8つの空欄に、それぞれ異なるように整数を1つずつ入れていきます。このとき、空欄に入るどの数もその両隣の数の平均にすることができますか。理 由をつけてこたえなさい。

(栄光学園中)


とあることが「出来る」ことを説明するには、例を1つ挙げればよいのです。「出来ない」ことを説明するには、す こし考えなくてはいけませんね。


できない。

(理由)
異なる2つの数AとBの平均の数は、
A>BのときAより小さく、Bより大きい数である。

またA<BのときAより大きく、Bより小さい数となる。
つまり空欄の中にある異なる整数のうちの1つを考えたとき、
両側の数の平均であるということは、左右どちらかの数よりも大きく、
どちらかの数より小さいということになる。

しかし、8つの空欄にすべて異なる整数を入れるとき、
必ず「最大の数」が存在する。
その両側には、その数よりも小さい2つの数しか置くことができず、
間の最大の数をより小さな2つの数の平均にすることはできない。

以上の理由よりすべての空欄に異なる整数を入れ、
そのどの数も両隣の数の平均にすることはできない。



可能と不可能の説明は、
小学生の論理 性をはかるには格好の題材となります。

可能の証明は1つの例を挙げて終わりです。

ただし、不可能の説明には、高度な論理性が求められます。

反例を何個挙げても十分に説明したことにはならないということを、
事例を挙げながら理解させることが大切です。

これは中学生以降の証明問題への耐性を鍛えることに通じます。

類題を元にして、
教師、保護者の方々がしっかりと時間をかけて
説明することが必要な領域になります。

教室内で見られた別解として、
「1つの数AC の平均Bに関して、AとB、BとC の差は等しい。
するとC の隣のDとその隣のEとの差もそれぞれ等しくなり
8つの数の隣の数との差はすべて等しくなってしまう。・・・」

も上で解答として挙げたものとほぼ同数でした。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
論理性に対する高い意識が大切

「自 分の立てた命題を、説明するために必要な要素は何なのか。」

中学生以降の高度な勉強、そして研究に関して、
これを見つけ出す感覚ほど重要であり、必要とされる素養は他にないといってもよいでしょう。

現在の中学受験のための塾の授業形態は圧倒的に
「インプット→自習による定着→テスト」というスタイルがとられています。

しかし、中学生以降の高いレベルの勉強において「答え」のみを提示し、
その正誤のみで評価されるような機会はほとんどありません。

入試に出ない から、などという理由で他者に対する説明能力を鍛えないことは、
入学以降の勉 強姿勢に大きく影響します。

またこの能力は普段から意識していなければ伸びることはありません。

本問は、東京大学など入試のほぼすべての問題が記述形式であり、
高い説明能力が求められる学校への合格率において、
圧倒的な結果を残している本校が求める人物像が見て取れる良問だと言えるでしょう。


2006年10月02日

市川中より。立体の問題ですが、求められるのは平面図形の高い分析能力です。 2006-10-02



市川中より。立体の問題ですが、求められるのは平面図形の高い分析能力です。


下の図は1辺4cmの立方体を点A、P、Qを通る平面と、点B、Q、Rを通る平面で切断し、2つの三角すいを切り取った立体です。この立体の表面積を求め な さい。ただし、点P、点Q、点Rはそれぞれ立方体の辺のちょうど真ん中の点です。

(市川中)

三角形PQAとQRBの面積がネックですね。直接求めることは出来ません。


表面積は

・底面と奥の正方形2枚(4×4)
・側面の台形2枚(上底2、下底4、高さ4)
・手前の三角形1枚(底辺4、高さ4)
・上部の五角形1枚(4×4の正方形から直角二等辺三角形2枚を切り取ったもの)
・切り口の三角形2枚

から構成されています。

底辺と高さが明らかでない切り口の三角形2枚の面積を求めます。
図は、立方体を真上から見た図です。

求めるべき切り口の三角形QRBと上部に作られる三角形QRCを比較する。

すると、
辺QRは二つの三角形に共通

QBとQCはともに正方形の一辺の中点から反対側の頂点に引かれた線であるため同じ長さ

RBとRCも同様

以上より三角形QRBと三角形QRCは、「3つの辺の長さが同じ」なので合同です。

もう1つの切り口の三角形PQAも同様。

よって切り口の2つの三角形の面積は、
上部に作られる三角形QRCの面積で代用します。

三角形QRCの面積は、

正方形(4×4)から直角三角形(2×4÷2)を2つと、
直角二等辺三角形(2×2÷2)

を1つ除いたものです。

よって面積は6平方センチメートル。

以上より

表面積は

底面と奥の正方形2枚:(4×4)×2枚=32
側面の台形2枚:[(2+4)×4÷2]×2枚=24
手前の三角形1枚:4×4÷2=8
上部の五角形1枚:4×4ー(2×2÷2)×2枚=12
切り口の三角形2枚:6×2枚=12

を合計して88平方センチメートル

答え:88平方センチメートル



昨年度の市川中の問題の中でも難問です。
切り口の三角形の面積については、誰もが着目し行き詰るでしょう。

ポイントは、

立体上の面積は、必ず平面にとらえなおすことです。

問題用紙に記載されている斜め上方からの図では、
感覚的にポイントとなる合同を見つけにくくなっています。

同じ長さの辺なども、そのような表記では違って見えるからです。

特に面積は相似、合同、比などの発見が突破口になります。
面倒くさがらずに面積問題として平面にする作業に取り組むことが大切です。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
モデルの単純化が大切

立体ということで与えられた図だけを見ていても同様です。

そもそも立体であることは、
本問において惑わす要素にしかなっていません。

立体上の面積は、該当の部分を平面に書きおこすというのは定石ですが、
このように見た目に惑わされず本質のみを単純モデルとして考える思考法はとても大切です。

平面図形の面積の問題に取り組んでいるときは、
皆さん必ず相似合 同を考えるものですが、
立体上となるとと たんに頭の中から消えてしまうものなのです。


単純化することで、視界も広がり様々な方策が思い浮かびます。
トップクラスの生徒もこぞって受験する本校の最後の砦にふさわしい問題です。

合同に関しても三角形の合同条件がしっかり頭に入っていなければ
確信を持ちにくくしているところは、
平面に落とし込んだあとも確固たる力が求められる難問です。


2006年09月25日

麻布中より。簡単な図形の面積の公式を何パターンも思いつけますか。 2006-09-25



麻布中より。簡単な図形の面積の公式を何パターンも思いつけますか。


下の図のように1辺10cmの正方形の内側で接している円と、その円周上に頂点がある正方形があります。内側の正方形の面積を求めなさい。

(麻布中)


正方形・円の面積はどのようにしてもとまるのだったでしょうか。


ポイントは、正方形の面積は「対角線×対角線÷2」でも求めることができることです。

内側の正方形の1辺は、求めることができません。

しかし対角線は、円の直径と同じであることがわかります。

そしてこの円の直径は、外側の正方形の1辺と同じ長さ、つまり10cmです。

内側の正方形の対角線が10cmであることから求める面積は
10cm×10cm÷2=50平方センチメートル

答え:50 平方センチメートル


ここ数年、中堅・上位校の一行問題で流行の問題です。

円の面積を習い終わった4,5年生の時点でじっくり考えさせたい問題です。

円周率3.14の意味や、半径×半径の値との関係など、
円の面積を求める公式の要素一つ一つをしっかりと考えておくことでしか対応できません。

例えば、円の面積の公式の成立過程を理解していると、
半径と弧の長さだけでおうぎ形の面積を求めることができます。

このように、求積の公式の要素が、習ったとおりに素直に与えられていない問題は、
式の数学的な意味やほかの図形との関係性の理解力が問われます。

その週のテストに追われるように公式を覚えて済ましてしまっていると、
入試本番で痛い目にあいます。もう一度確認する機会にしてみてください。

~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
数式の意味を様々な角度から見る能力が大切

たとえば円の面積を求める公式:半径×半径×3.14を覚えたとします。

それでは、ある円が与えられたときに半径の長さがわからなければ
円の面積は求められないのでしょうか。

実は、半径は不明でも、「半径×半径」の値は求めることが出来る場合が数多くあります。

上記の公式の変数の部分を過不足なく把握しておくことで、
必要な条件を必要な形で探し当てることができます。

面積などの公式、そしてその公式の成立過程をしっかりと見直すことで
「どの値がわかれば算出できるのか。」という視野を広げておくことが大切です。

既存の知識として与えられたものを鵜呑みにせず
分解して確かめる姿勢は、
まさに麻布中の求める科学的な検証能力と同じものだということが出来るでしょう。


2006年09月11日

城北中より。「身の回りの算数」に向き合う姿勢が大切です。 2006-09-11



城北中より。「身の回りの算数」に向き合う姿勢が大切です。


ある月の月曜日の日にちの数字の和が66のとき、この月の2日は何曜日でしょうか。

(城北中)      


同じ曜日の日付には、大きな制限が存在します。


同じ曜日の日付は、前の週+7日となっています。
つまり
1週目をX日とすると
2週目:X+7
3週目:X+7+7
4週目:X+7+7+7
5週目:X+7+7+7+7
となっているのです。
ここで、Xが何日であれ、5週目まであるとすると、そこに含まれる「7」の数は10個となり、
日付の和は「X×5+70」、つまりXが1日でも日付の合計は75日になるのです。
今回、考える月曜日の日付の和は66なので、この月に月曜日は4日しかなかったことがわかります。
よって4週目までの日付の合計の式より
X×4+7×6=66
となり、Xつまり1週目の日付は6日です。
6日が月曜日の月では、2日は木曜日となります。

答え:木曜日



今週の一問でも何度か取り上げた
「問題文では明記されていないあたりまえの制限を活用する。」
問題です。

今回の「日付」は、その中でもよく出題される題材です。
初見の場合、「日付の合計だけで曜日が決まってくるのか。」という壁にぶつかります。

通常の塾のカリキュラムでは、連続する整数の和など類題も数多く学ぶことになりますが
このタイプの制限は、見た目を変えて出題しやすくまた、問題文の中に埋もれて見にくくなっています。

整数倍や人数と比などの形で抽象化してまとめておかなければ、
なかなか気づけるほどの認識力は身につきません。
解答を読むと、「気づかなかった」というレベルで済ましてしまいがちですが、
日ごろのまとめる作法が問われる問題です。


~今回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
「身の回りの算数」に向き合う姿勢が大切

本問に一度取り組んでおけば、類題は問題なく解けることになります。

しかし、本問を通して学ばなければならないのは、
「問題文の日本語に隠された数学的な意味を探りながら読む習慣」
の大切さです。

算数や数学を使ってとくべき問題は、身の回りにたくさんあります。
しかし、その問題は数式によっては与えられていません。

「算数として考えると・・・、数学的に考えると・・・」という普段からの問いかけだけが、
日本語として与えられる条件と数式を行ったりきたりする能力を育みます。

カレンダーという身近なものに含まれる算数を探求させる本問は、
問題を離れた世界で数学的思考の適用力を測る良問です。


2006年08月28日

浦和明の星中より。基本問題の目先を上手に変えた問題です。 2006-08-28



浦和明の星中より。基本問題の目先を上手に変えた問題です。


下の図のように、点Oを中心とする半径60mと半径40mの2つの半円があります。
明子さんは、点Aから出発して半径60mの半円の円周上を点Aから点Bまで往復し、
星子さんは点Cから出発して半径40mの円周上を点Cから点Dまで往復します。

2人の速さは同じで、星子さんが点Cから点Dまでの片道を移動するのに50秒かかります。
2人が同時に出発するとき、次の問いに答えなさい。

(1)初めて点Oと2人の位置が一直線上に並ぶのは出発してから何秒後ですか。
(2)2度目に点Oと2人の位置が一直線上に並ぶのは出発してから何秒後ですか。

 
(浦和明の星中)           


「一直線上」をしっかりと意識すると、見慣れた問題に落としこめます。


(1)
星子さんの回転する角度は180÷50=3.6度/秒
明子さんの回転する速度は同じだが、
より半径の大きい半円を回っているので、同じ時間で回転する
角度は小さくなる。

半径の比が60:40=3:2であるので、同じ長さの弧に対する中心角は2:3となる。

よって回転する角度は3.6×2/3=2.4度/秒
一直線上になるということは、つまり二人合わせて180度回転した時であるから、
180÷(3.6÷2.4)=30秒後
答え:30秒後 

(2)
2度目に一直線上になるということは、2人の回転した合計角度が540度になるときです。
540÷(3.6÷2.4)=90秒後
答え:90秒後


時計の針の問題以外で回転 角の速さを考える問題に取り組んだことのある生徒はほとんどいなかったのではないでしょうか。

当日、後回しにした生徒も多かったようですが、時計を想像すればかなりの易問です。

ポイントは、一直線の 状態をきちんと記入してみること。

そして、その状態を求める上での必要条件を整理することです。
一直線上について検討する作業を通じて、回転角を活用することにたどり着きます。

(2)は意外と気づかないまま受験を迎えてしまう生徒が多いのですが、旅人算の隠れた基本です。

「距離がわからなくても、ある区間ABにおいてA、Bから向かい合って出発し
X分後に出会った二人が2回目に出会うのは3X分後。」

絵を描いて二人が進む距離を考えるとわかります。

~今 回の問題から導かれる出題校からのメッセージ~
普段から問題に含まれている重要項目を確認することが大切

浦和明の星中の算数は、入学後の数学に耐えられる生徒を集めようという意志が
強く感じられる内容になっています。

図形の性質を活かして式を立てるなど、
単純に図形センスを測定する問題と括ることのできない内容になっています。

ポイントは、図形の性質について深い理解をしておくこと、求積の公式についてその成り立ちをしっかりと理解しておくことです。

「正方形だから・・・」だけでなく、
「・・・・だから正方形」「正方形とは・・・」

などの形で知識を再確認しておくことが有益でしょう。

本問は、角速度について正しくイメージする基本的な力を問う問題です。
時計の問題との類似性を見抜けないのは、

「角度と速度の問題」がいつのまにか「時計の針の出会う問題」

という表面的な形でインプットされてしまっているからです。(実際の出題も多いのですが。)

本質的な部分をくずさず、目先を変えてくるという、
普段から、一段深いレベルで問題を分析する習慣の大切さを問いかけてくる良問です。



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