インタビュー企画「卒業生が語る我が母校」第5回です。卒業生の皆さんに率直に語ってもらいます。
倉方規安さん
(経歴)
早稲田中学・高等学校、早稲田大学教育学部を卒業。俳優。
ロジム:(以下L):こんにちは。今回は、倉方さんの母校の早稲田中学・高校についてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
倉方さん:よろしくお願いします。
L:いつ頃から俳優をご職業にしようと意識されたのですか。
倉方さん:本格的に取り組んだのは高校時代からです。文化祭で、演技をしたい人間、脚本を書きたい人間が集まって当時の自分たちにとって非常に本格的に取り組んだ公演が好評だったのがきっかけです。その時のメンバーを中心に劇団を立ち上げ、現在まで続いています。現在はその劇団以外の舞台やテレビ、ナレーションなどにも出演しています。
L:早稲田中・高出身者を中心とした劇団ですか。進学校のイメージもある同校の卒業後の進路としては珍しいのではないですか。
倉方さん:そうですね。ほとんどが早稲田大学に進むこともあって、卒業後の進路は企業に勤める人間が多いですね。ただ、完全に独自路線を歩んでいる人間も少なくありません。私の周りで見ると、両極端で中途半端な人間は少ないですね。
L:両極端?
倉方さん:そう。大企業や先生仕事でばりばりがんばっているか、マニアックな分野でプロとして活躍するかのどちらかですね。小さくまとまっていないところがとても魅力的で刺激を受けています。
L:そのお友達と出会った早稲田中学校を志望した理由を覚えていらっしゃいますか。
倉方さん:その頃は中学受験という名の親のレールがあってというか・・・
親が地元の公立=不良の集まりという固定観念があったんですよね。それでなんとなく日能研に入り・・・で、なんか響きが良くて早稲田を狙っていました。家族に早稲田の卒業生がいるわけでもなく、本当になんとなくという感じ。早実は二科目で、偏差値が若干高いのでやめました。慶応普通部も同様の理由で辞めました。そして慶応中等部は落ちました(笑)。
L:入学前の情報からどのようなイメージをお持ちでしたか。
倉方さん:自由な学校という評価が高かったイメージがありましたね。しかし、入ったら自由にも感じたけど制服もあるし、進学校を銘打っているから結構まじめでもある。バスケ部とか盛んだったから、スポーツにも打ち込めました。私は、生徒は意外ときちんとしている部分もあるのだなという印象を持ちました。
L:学校の指導なども結構きちんとしているのですか。
倉方さん:それは厳しくないんじゃないかな。服装などもボタンが外れていても多少注意されるくらい。皆外していました。でも朝のホームルームが早かった印象があります。8時くらいに登校だった気がする。それに慣れれば大学が楽に感じる。会社入っても楽に感じるかも・・・。
L:生徒はけっこうまじめで、学校の指導は厳しくない。なにかとても居心地が良さそうな感じがしますね。
倉方さん:そうですね。私は、担任に恵まれたと思います。6年間持ち上がりで学年担当の先生の顔ぶれはかわらないので、どのような先生にあたるかはとても重要です。わたしの学年は、とてもゆったりとしていた感じでした。最低限のことは注意されますが、頭ごなしにおこられたりすることはほとんどありません。気づくのを待つという姿勢です。
L:勉強面などはいかがでしたか。
倉方さん:勉強は普通にやっていれば大丈夫です。僕は完全に推薦狙いだったので、中間期末はかなり頑張った。授業中寝まくって、人にノート借りて、100点とる輩もいるので、普通の要領の良さがあれば結構楽ができるんじゃないかな。ただ、授業中寝まくって、さらに直前の勉強やらなくなる人もいて、その人は受験になるんです。まあ、最後のがんばりだけで東大などにいく人もいるので、すべてはその人次第。学校から色々強制されることはありませんでした。
L:推薦などは限られた人数ですよね。獲得するのは大変ではないのですか。
倉方さん:僕的にはそんなにライバルなど意識せずにやったけど、先輩などは、1点を争うから、生徒間で色々なかけひきがあったという時代もあったというのを聞いたことがあります。当時は、推薦が三割ぐらいだったのですが、意外に早めに推薦を諦める人も多く、バランスが良い学年に在籍していた気がします。
L:推薦の模試や外部受験のために塾に通う生徒は多いのですか。
倉方さん:塾には周りの影響で行ってました。 今思うと、塾は必要でなかった気もします。 でも、自己管理ができない人は塾は必須だったとも思います。 学校も塾もどれだけ良い先生と会うかがポイントだと思いますので、塾の営業の人の話を聞くより、 帰り際の塾生に塾の感想や印象を聞くのが一番早いと思います。 推薦の模試に対応するには、普通レベルの参考書を購入し、 それを何度も繰り返しこなせば、僕は大丈夫だと思います。学校の勉強プラス参考書でOKだと思います。 塾に通ってないで、外部受験で大学に入った人は 多くいると思いますが 彼らの勉強法はわかりません。そういった情報は、とくに流通していない学校なんです。
L:大学入学後に勉強が大変だったりすることはありませんでしたか。
倉方さん:早稲田高校出身は結局は推薦組だから、勉強に関していえばなんだかんだで受験組には勝てないわけですよ、実際のところ。ただ最初の頃はなんとなくの差を感じていたけど、学年が上がったり、卒業後となってみると、あとはその人の人間性次第。皆、大学なんて不真面目だから結局同じになる。要領よく過ごし、就職活動がんばればなんとかなる気がしたなぁ(笑)。みんな頭が良かったけど、地方出身者も多いので、友達はこちらから話しかければすぐできる環境でしたよ。
L:早稲田中・高で役に立ったなと思えるイベントや授業はあり
ましたか。
倉方さん:イベントは利根川歩行。今あるのか知らないけど、あれはなんだかんだで最後達成感がある。利根川を6年に分けてひたすら歩くだけなんですけど、オリジナルのイベントだったと思います。授業は特には・・・。ただ、わりとレベルが高い授業をやっていた記憶があります。あまり「指導をする」という意識がない学校だと思うので、学校の個性については印象がないですね。
L:まるで大学みたいですね。
倉方さん:基本的に自分から動かないと何もないという点ではそうですね。勉強面では、推薦枠が少ないこともあり、それなりの緊張感が生徒のほうにあるんだと思います。完全な付属校に比べて程よいのでしょう。私は、人柄のよい先生と仲間に恵まれたのでその点は非常によい財産を得たと感じています。
L:印象にのこっていらっしゃる先生についてお聞かせ頂けますか。
倉方さん:印象に残っている先生というのは、僕の中では卒業しても尚、付き合えている先生ということになります。そういった先生は素敵だと思います。
もう辞めてしまいましたが、数藤先生、平田先生、小菅先生、現役でもいらっしゃる上野先生、岡嶋先生などが良い意味で印象に残っています。未だに舞台も観に来てくれています。
先生にとっては永遠に巡る多くの卒業生がいるわけですが、その中でも卒業後も気にかけてくださる先生は僕的には好印象ですね。もちろん生徒側も受け身ではだめで、どんどんアタックしていくことが必要です。それに対して、どれだけ返ってくるか?返りが大きい先生ほど、良い先生の称号をもらえているのではないでしょうか?逆に、こまめで面倒見が良いというタイプの先生はあまりいない印象です。
L:部活なども自由なのですか。
倉方さん:私はバスケットボール部だったのですが、こちらはきちんと管理・指導されました。OBを含めて指導体制がしっかりしています。バスケット部として、チャレンジャー精神 と 努力 と 心を込めてという3つのことを学びました。学校が特に理想とする生徒像をもっているわけではないと思うのですが、部活ではかなりしっかりと指導されました。全く自由な部活もあると思うので、これは顧問の先生次第です。
L:全体としては自由で、部活などの選択によっては非常にしっかりとした指導もあるというのは良いバランスなのでは。
倉方さん:そうですね。基本的にやりたくないことをやらされる場面はほとんどなかったので、不満などは思いつきません。ただ、現在の生徒たちからは、進学校寄りになって厳しくなったという話を聞きます。残念ですね。そういう学校は、他にも沢山あるのだから自由さを貫いてほしいですね。まあ、最近の保護者からの希望もあるのでしょうが、バリバリ勉強させたいのならそういう学校に入学させれば?と思います。最近は部活の日数も制限かかっているらしいですし、学校の姿勢としてなにより卒業生に対してあまり親切ではなくなった・・・。ま、これも先生によると思いますが、すべてに対してゆったり構えた学校であってほしいです。
L:ご自身のお子さんを入学させたいと思いますか。
倉方さん:本人の意思も聞きたいところだし難しいところです。もし行きたいと言えば、尊重します。ただ僕らがいたころとは変わったようなので現役の先生たちには確認してみたいところです。 自由度がなくなった早稲田には親の立場として考えてもあまり魅力を感じません。
L:卒業後のつながりに関して、早稲田中・高はいかがですか。
倉方さん:他の学校を経験していないので善し悪しの判断はつきません。ただ、職業柄ディア関係、たとえばテレビ局、たとえばマスコミ、製作会社に比較的卒業生が多いので つながったところもあります。先輩は後輩を可愛がるのは人間の特性ではないでしょうか? 大学だと学部が違うと微妙ですが、 早稲田高校出身なら同じ先生などの話で意気投合できますよね。まあ、そういった仕事関係を抜きにしても、今でも付き合う仲間は中高時代が圧倒的に多いです。 それは学校の特性ではなく、たまたまその仲間が良かったのかもしれないのですが。
L:どのような子供に合っている学校だと思いますか。
倉方さん:中学受験を経て、ある程度勉強が出来る人間が集まっている割には、勉強の出来だとか順位だとかに固執しない校風です。生徒も先生も。多少厳しくなったのかもしれないけれど、私の在学時から先生が総入れ替えしたわけではないし、その点はベースとして残っていると思います。ですから、勉強は自主的にやるべきときに出来る、もしくはしたいという土台がある子供にとっては時間を自由に出来る学校だと思います。こまめに管理されることはありませんから。私も、部活や演劇などに勉強そっちのけで集中した時期もありましたし、それぞれの生徒がそれぞれのペースで楽しめる学校です。その反面、自主的に動けない子供は、全く得るものがないでしょうね。受け身の人間は、成績などに関わらず評価されませんし、早稲田の良さを感じられないと思います。
L:ありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。
次回は、豊島岡女子学園中・高卒業生の孫康子さんです。ご質問を受け付けています。(締め切り8月15日)